上 下
3 / 26

第3話

しおりを挟む
 私がセインの屋敷に暮らすようになってから、1ヶ月が経っていた。

 オーベル侯爵家の人達は優しくて、セインと私の婚約も納得している。
 私が宿している魔力の強さがわかるようで、ぜひ婚約して欲しいと頼まれた程だ。

 私は用意された部屋にいると、セインがやって来て1ヶ月の間に起きた出来事を話してくれる。
 リレック伯爵領では未だに私の魔法の力が残っているようで、その恩恵を受けてエイダは活躍しているようだ。

「サフィラは妹のエイダと比べられることが嫌で屋敷から逃げ出したとリレック伯爵家の領主が話し、ヴァンはエイダを新しい婚約者にした」

「エイダ達の予定通りになりましたか。私がここにいることは、知られてはいけないんですよね」

「今はまだ、その方がいい。私の婚約者と伝えるのは、リレック伯爵家とヴァンが強く後悔してからにしよう」

 手続きは魔法道具で済ませることができるから、セインを調べない限り私と婚約していることは知られないようだ。
 今の私は行方不明だとヴァン達は考えているようだけど、実際は国内にいる。
 これから私はセインと一緒に、エイダ達が後悔するのを確認していく予定だ。
 
「今後のことを考えると……私はずっと、屋敷の中にいた方がよさそうでしょうか」

「これから数日の間は、そうして欲しい。領地にかかっているサフィラの力が完全に消えた後、真っ先に被害が出るのはリレック伯爵領なのは間違いない」

 私の魔法による力は、今は使っていないから徐々に弱まっている。
 数日経つと完全に力を失い、エイダ達は後悔することになるはずだ。

 そうなればエイダ達は追い詰められていき、私を探すことができなくなりそう。
 セインの話を聞いて、私は頷いて言う。 

「モンスター達からしたら、急激に力が弱まったリレック伯爵領は襲撃する絶好の場所になりますからね」

 人々の生活を脅かすモンスター達だけど、今までリレック伯爵領にはあまり姿を現さない。
 それは私の魔法によるもので、領地内にいるとモンスター達の力が弱まってしまうからだ。

 私の力が消えた後、モンスター達からすれば、リレック伯爵領は敵が何も警戒していない場所になる。
 モンスター達は本能のままに行動するから警戒せずそこを全力で襲撃するけど、これから力を失うエイダでは対処することは不可能だ。

 私はセインと部屋で話せるのが嬉しくて、数日間は屋敷から出ないようにする。
 その後、私は報告を聞き――元家族と元婚約者は、大変な目に合っているようだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。

待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。 妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。 ……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。 けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します! 自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。

婚約破棄された令嬢のささやかな幸福

香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
 田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。  しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。 「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」  婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。  婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。  ならば一人で生きていくだけ。  アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。 「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」  初めての一人暮らしを満喫するアリシア。  趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。 「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」  何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。  しかし丁重にお断りした翌日、 「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」  妹までもがやってくる始末。  しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。 「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」  家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。

「女友達と旅行に行っただけで別れると言われた」僕が何したの?理由がわからない弟が泣きながら相談してきた。

window
恋愛
「アリス姉さん助けてくれ!女友達と旅行に行っただけなのに婚約しているフローラに別れると言われたんだ!」 弟のハリーが泣きながら訪問して来た。姉のアリス王妃は突然来たハリーに驚きながら、夫の若き国王マイケルと話を聞いた。 結婚して平和な生活を送っていた新婚夫婦にハリーは涙を流して理由を話した。ハリーは侯爵家の長男で伯爵家のフローラ令嬢と婚約をしている。 それなのに婚約破棄して別れるとはどういう事なのか?詳しく話を聞いてみると、ハリーの返答に姉夫婦は呆れてしまった。 非常に頭の悪い弟が常識的な姉夫婦に相談して婚約者の彼女と話し合うが……

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

妹とともに婚約者に出て行けと言ったものの、本当に出て行かれるとは思っていなかった旦那様

新野乃花(大舟)
恋愛
フリード伯爵は溺愛する自身の妹スフィアと共謀する形で、婚約者であるセレスの事を追放することを決めた。ただその理由は、セレスが婚約破棄を素直に受け入れることはないであろうと油断していたためだった。しかしセレスは二人の予想を裏切り、婚約破棄を受け入れるそぶりを見せる。予想外の行動をとられたことで焦りの色を隠せない二人は、セレスを呼び戻すべく様々な手段を講じるのであったが…。

婚約破棄は別にいいですけど、優秀な姉と無能な妹なんて噂、本気で信じてるんですか?

リオール
恋愛
侯爵家の執務を汗水流してこなしていた私──バルバラ。 だがある日突然、婚約者に婚約破棄を告げられ、父に次期当主は姉だと宣言され。出て行けと言われるのだった。 世間では姉が優秀、妹は駄目だと思われてるようですが、だから何? せいぜい束の間の贅沢を楽しめばいいです。 貴方達が遊んでる間に、私は──侯爵家、乗っ取らせていただきます! ===== いつもの勢いで書いた小説です。 前作とは逆に妹が主人公。優秀では無いけど努力する人。 妹、頑張ります! ※全41話完結。短編としておきながら読みの甘さが露呈…

見えるものしか見ないから

mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。 第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました

新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

処理中です...