185 / 210
第二章 王国動乱
離反
しおりを挟む
青々と生い茂る木々の向こうにぽっかりと空いた剥き出しの大地が広がっている、そこに聳え立つ威容カンパーベック砦を睨みながら陣を構えている野営地には、活気が溢れていた。
それは彼らが、連戦連勝を続けているからだろう。
そんな彼らからすれば、これから難攻不落と謳われるカンパーベック砦を攻めるとしても意気消沈することはない。
何故なら彼らには、あの「軍神」ジーク・オブライエンがついているのだから。
「あぁ、どうして・・・どうしてこんな事に」
そんな沸き上がる陣中にあって、一人まるで絶望するかのように頭を抱えている者の姿があった。
その者の名前はユーリ・ハリントン、気がついたら敵方へと寝返ってしまっており、その現実を受け止められない哀れな男だった。
「あんのクソ親父、あのタイミングで裏切るか普通?そんなの予想出来ないって・・・今までと同じ感じで指令きたしさぁ、まさかそれが敵に寝返る命令だとか思わないじゃん。はぁ、何なのあいつ?」
ユーリ達が敵方に寝返ることになったのは、ジーク直筆の指令に従ったからだった。
それを思えば、彼自身もこちら側に寝返ったことは容易に想像でき、実際にユーリは父親の噂をこの陣中の至る所で耳にしていたが、会いに行って問いただそうという気は起きなかった。
「・・・やっぱり向こうに戻ろう。うん、決めた!あの親父に義理とかないし!向こうにはヘイニーさんにオリビア、リリーナ・・・陛下もいるしな!あの子達がどうなってるかも気になるし・・・よし、そうとなれば善は急げだ!」
向こうの戻ろう、そう決意したユーリの表情は明るい。
元々彼は父親であるジーク・オブライエンから勘当された身なのだ、彼の命令を律義に守る義理はない。
今まではそれでもヘイニーやリリーナ、そして娘達という大切な人を守ることに繋がるという大義名分があったが、敵に寝返ってしまえばそんな理由もなくなってしまう。
「あ、でも・・・皆が」
決断を下せば早い方がいいと、少ない荷物をすぐにまとめた彼はそのままここを出て行こうとしていた。
しかし自らの幕舎の幕へと手を掛けた彼はそこで立ち止まると、後ろを振り返る。
共にここまで一緒に戦ってきた懲罰部隊、彼らは今や彼にとって掛け替えのない仲間になっていたのだ。
「駄目、だよな。俺の勝手な事情に皆を巻き込む訳にはいかないし・・・うん、一人で行こう」
向こう側に戻りたいという事情は、ユーリ個人のものだ。
他の人間からすれば、明らかに勝ち馬であるこちら側に残りたいと思うのが自然だろう。
皆を巻き込む訳にはいかない、そう考えたユーリは幕舎の幕を捲り一人前へと足を踏み出していく。
「・・・水臭いじゃない、一人で行くなんて」
そんな彼の背中に艶のある、しかしどこか芯の強さを感じさせる声が響く。
振り返ればそこには、まるでユーリが出て行くのが分かっていたかのように幕舎の外に寄りかかっているシャロンの姿があった。
「姉さんの言う通りですぜ、兄さん!あっしらを置いていこうなんて、そんな簡単に出来ると思ってもらっちゃ困りやす!へへっ、兄さんと一緒に居ればまだまだ稼げそうなんでね」
「・・・俺も一緒だ、ユーリ」
その脇からは以前ユーリが絡んだ賭け事で儲けた金だろうか、ずっしりと重そうな袋を抱えたエディと、いつもようにむっつりとした表情のデズモンドが現れていた。
「ば、馬鹿!押すなって・・・ふわわ!?え、えっと・・・あ、あたいもあんたについてくからねユーリ!べ、別にあんたと一緒にいたいからとかじゃなくて・・・か、勝ち馬に乗るなんて、あたいの主義に反するんでね!!」
そして最後には、誰かに押されたかのようにして出てきたケイティまでもが彼の前に現れていた。
彼女はその髪の色と同じ色に顔を染めながら、誰も聞いてもいないようなことまで勝手に喋ってはユーリについていくと宣言していたのだった。
「シャロンさん、エディ、デズモンド。それにケイティまで・・・」
ユーリの下に集まり、彼一人では行かせないと囲む仲間達にユーリは思わず涙ぐむ。
「ふふっ、あたし達だけじゃないのよ?ほら、皆!」
「え?」
涙ぐむユーリの肩をポンポンと叩くデズモンドと、あわあわと慌てているケイティ。
そんな二人の様子を眺めながらウインクをして見せたシャロンは、高らかに声を上げると後ろへと手を広げる。
「隊長、俺達を置いていこうなんて・・・水臭いですぜ!!」
「そうだそうだ!俺達、一生隊長についていこうって決めてんだ!」
「ジーク・オブライエンがなんだ!俺達の隊長の方が凄ぇに決まってんだろ!!」
そこには、口々に彼の事を叫ぶ懲罰部隊の面々の姿があった。
「皆・・・いいのか、俺なんかについて来て!?こっちは泥船かもしれないんだぞ、すぐ沈んじゃうかもしれないんだぞ!?このままここにいれば勝ち馬に乗れるのに・・・それでも、それでもいいのか!?」
捨てて逃げようと思っていた者達が、自らを慕って追い駆けてくる。
その状況にふるふると震え、涙を溢れさせるユーリはそれでもこちらは楽な道じゃないんだぞと必死に叫んでいた。
「構やしねぇ!!俺らは隊長についてくぜ!!」
誰かが叫んだその言葉に、続くように雄たけびが響く。
「あぁ、あぁ!じゃあ行こう、皆!!」
ユーリは乱暴に涙を拭う、腕が擦れて目蓋がヒリヒリと痛んだ。
「いざ、カンパーベック砦へ!!」
そしてユーリは告げる、あのカンパーベック砦にもう一度向かおうと。
◇◆◇◆◇◆
雄たけびを上げながら去っていく懲罰部隊、その姿を近くの木陰から眺めていた男は、そこからスッと離れてどこかへと向かおうとする。
「あら、貴方は来ないのかしらシーマス・チットウッド?いえ、エミール・レンフィールドと呼ぶべきかしら?」
その男、シーマス・チットウッドにどこかから現れたシャロンが意味深な表情で声を掛ける。
「っ!?貴様、どこでそれを!?」
シャロンはシーマスの本名、エミール・レンフィールドの名を口にした。
まだ誰にも明かしていない筈のその名を口にしたシャロン、シーマスが彼から距離を取り厳しい表情で睨みつけるには、それだけで十分だった。
「うふふっ、乙女に秘密を尋ねるなんて野暮ねぇ・・・綺麗な女には秘密は付き物だって、教わらなかった?」
シーマスの鋭い視線は嘘を許すような色をしていない、それでもシャロンは唇に指を添えては怪しく微笑むばかりであった。
「それにしても、助かったわ。だって貴方、ユーリちゃんとの絡みに興奮する振りをしただけ騙されてくれるんだもの、本当は貴方の事を監視していたかっただけなのに・・・あ、でも安心してね。貴方の顔が好みなのは本当よ?」
「何だと?」
シャロンがユーリとシーマスの絡みに興奮していたのは、それに性的なものを感じていた訳ではなく、彼の監視が目的だったのだと彼は口にする。
彼の演技にまんまと騙されてしまっていたシーマスは、青い顔を浮かべた。
「でも拍子抜けよね。だって貴方、全然裏切る様子を見せないんだもの。あぁ、一回だけ危ない時があったけど・・・あれだけよね?ねぇシーマス、貴方本当は楽しんでいたんじゃないの?」
「馬鹿な、俺が楽しんでいただと?そんな訳がない!!」
「あらそう?」
シーマスをずっと監視していたシャロン、しかし彼は拍子抜けしていた、何故なら彼が全く裏切る素振りを見せないから。
シャロンはその理由を、彼が本心ではこの生活を楽しんでいたからだと指摘する。
シーマスはその言葉を、吠えるようにして否定していた。
「・・・この話、どこまで話した?」
「え?あぁ、安心してまだ誰にも話してないわよ?」
「なら・・・お前を消せば終わりだな」
背中に隠した短剣は、今も確かにそこにある。
シーマスはそれを手にすると、距離を測っていた。
大丈夫、ちゃんと一歩で仕留められる距離だ。
シーマスは踏み込みと共に、短剣を抜き放つ。
「―――今なら、まだ許してあげる」
抜き放った筈の短剣が、鞘へと戻される。
その声は背後から、耳元に向かって囁かれていた。
シーマスの背後、その無防備な位置にシャロンは回り込んでいたのだ、彼が抜き放とうとした短剣を手で押さえるという余裕を見せて。
「っ!?これだけの実力・・・何者だ、お前は!?」
「あら、ただのオカマちゃんよ?ただし、飛び切り美人のね」
猛烈な死の予感に、すぐさま飛び退いたシーマスは冷や汗を伝わせながらシャロンに尋ねる。
その質問にシャロンはにっこりと微笑むと、彼にウインクを返すだけだった。
「おーい、シャロンさーん!どこですかー?置いてっちゃいますよー!」
「ふふっ、これまでのようね。それじゃ、向こうに行っても頑張ってね。エミール・レンフィールドちゃん」
部隊の中にシャロンの姿がない事に気がついたユーリが、彼の事を探して声を張り上げている。
その声に振り返ったシャロンはシーマスに手を振ると、気軽な足取りでその場を後にしていくのだった。
「あれ、そう言えばシーマスもいないな・・・」
「あぁ、彼ならちょっと用事があるんですって。だから今回は同行出来ないみたいよ」
「そうですか、じゃあ仕方ないですね・・・」
ユーリ達の下へと戻ったシャロンは、シーマスがいないことにも気がついた彼に適当な理由をでっち上げていた。
「俺が、楽しんでいた?まさか、な・・・」
最後にこちらにウインクをして去っていくシャロンの姿を眺めながら、シーマスはそう呟いていた。
そしてやがて彼もその場を後にしていく、彼が本来いるべき場所、レンフィールド家へと向かって。
それは彼らが、連戦連勝を続けているからだろう。
そんな彼らからすれば、これから難攻不落と謳われるカンパーベック砦を攻めるとしても意気消沈することはない。
何故なら彼らには、あの「軍神」ジーク・オブライエンがついているのだから。
「あぁ、どうして・・・どうしてこんな事に」
そんな沸き上がる陣中にあって、一人まるで絶望するかのように頭を抱えている者の姿があった。
その者の名前はユーリ・ハリントン、気がついたら敵方へと寝返ってしまっており、その現実を受け止められない哀れな男だった。
「あんのクソ親父、あのタイミングで裏切るか普通?そんなの予想出来ないって・・・今までと同じ感じで指令きたしさぁ、まさかそれが敵に寝返る命令だとか思わないじゃん。はぁ、何なのあいつ?」
ユーリ達が敵方に寝返ることになったのは、ジーク直筆の指令に従ったからだった。
それを思えば、彼自身もこちら側に寝返ったことは容易に想像でき、実際にユーリは父親の噂をこの陣中の至る所で耳にしていたが、会いに行って問いただそうという気は起きなかった。
「・・・やっぱり向こうに戻ろう。うん、決めた!あの親父に義理とかないし!向こうにはヘイニーさんにオリビア、リリーナ・・・陛下もいるしな!あの子達がどうなってるかも気になるし・・・よし、そうとなれば善は急げだ!」
向こうの戻ろう、そう決意したユーリの表情は明るい。
元々彼は父親であるジーク・オブライエンから勘当された身なのだ、彼の命令を律義に守る義理はない。
今まではそれでもヘイニーやリリーナ、そして娘達という大切な人を守ることに繋がるという大義名分があったが、敵に寝返ってしまえばそんな理由もなくなってしまう。
「あ、でも・・・皆が」
決断を下せば早い方がいいと、少ない荷物をすぐにまとめた彼はそのままここを出て行こうとしていた。
しかし自らの幕舎の幕へと手を掛けた彼はそこで立ち止まると、後ろを振り返る。
共にここまで一緒に戦ってきた懲罰部隊、彼らは今や彼にとって掛け替えのない仲間になっていたのだ。
「駄目、だよな。俺の勝手な事情に皆を巻き込む訳にはいかないし・・・うん、一人で行こう」
向こう側に戻りたいという事情は、ユーリ個人のものだ。
他の人間からすれば、明らかに勝ち馬であるこちら側に残りたいと思うのが自然だろう。
皆を巻き込む訳にはいかない、そう考えたユーリは幕舎の幕を捲り一人前へと足を踏み出していく。
「・・・水臭いじゃない、一人で行くなんて」
そんな彼の背中に艶のある、しかしどこか芯の強さを感じさせる声が響く。
振り返ればそこには、まるでユーリが出て行くのが分かっていたかのように幕舎の外に寄りかかっているシャロンの姿があった。
「姉さんの言う通りですぜ、兄さん!あっしらを置いていこうなんて、そんな簡単に出来ると思ってもらっちゃ困りやす!へへっ、兄さんと一緒に居ればまだまだ稼げそうなんでね」
「・・・俺も一緒だ、ユーリ」
その脇からは以前ユーリが絡んだ賭け事で儲けた金だろうか、ずっしりと重そうな袋を抱えたエディと、いつもようにむっつりとした表情のデズモンドが現れていた。
「ば、馬鹿!押すなって・・・ふわわ!?え、えっと・・・あ、あたいもあんたについてくからねユーリ!べ、別にあんたと一緒にいたいからとかじゃなくて・・・か、勝ち馬に乗るなんて、あたいの主義に反するんでね!!」
そして最後には、誰かに押されたかのようにして出てきたケイティまでもが彼の前に現れていた。
彼女はその髪の色と同じ色に顔を染めながら、誰も聞いてもいないようなことまで勝手に喋ってはユーリについていくと宣言していたのだった。
「シャロンさん、エディ、デズモンド。それにケイティまで・・・」
ユーリの下に集まり、彼一人では行かせないと囲む仲間達にユーリは思わず涙ぐむ。
「ふふっ、あたし達だけじゃないのよ?ほら、皆!」
「え?」
涙ぐむユーリの肩をポンポンと叩くデズモンドと、あわあわと慌てているケイティ。
そんな二人の様子を眺めながらウインクをして見せたシャロンは、高らかに声を上げると後ろへと手を広げる。
「隊長、俺達を置いていこうなんて・・・水臭いですぜ!!」
「そうだそうだ!俺達、一生隊長についていこうって決めてんだ!」
「ジーク・オブライエンがなんだ!俺達の隊長の方が凄ぇに決まってんだろ!!」
そこには、口々に彼の事を叫ぶ懲罰部隊の面々の姿があった。
「皆・・・いいのか、俺なんかについて来て!?こっちは泥船かもしれないんだぞ、すぐ沈んじゃうかもしれないんだぞ!?このままここにいれば勝ち馬に乗れるのに・・・それでも、それでもいいのか!?」
捨てて逃げようと思っていた者達が、自らを慕って追い駆けてくる。
その状況にふるふると震え、涙を溢れさせるユーリはそれでもこちらは楽な道じゃないんだぞと必死に叫んでいた。
「構やしねぇ!!俺らは隊長についてくぜ!!」
誰かが叫んだその言葉に、続くように雄たけびが響く。
「あぁ、あぁ!じゃあ行こう、皆!!」
ユーリは乱暴に涙を拭う、腕が擦れて目蓋がヒリヒリと痛んだ。
「いざ、カンパーベック砦へ!!」
そしてユーリは告げる、あのカンパーベック砦にもう一度向かおうと。
◇◆◇◆◇◆
雄たけびを上げながら去っていく懲罰部隊、その姿を近くの木陰から眺めていた男は、そこからスッと離れてどこかへと向かおうとする。
「あら、貴方は来ないのかしらシーマス・チットウッド?いえ、エミール・レンフィールドと呼ぶべきかしら?」
その男、シーマス・チットウッドにどこかから現れたシャロンが意味深な表情で声を掛ける。
「っ!?貴様、どこでそれを!?」
シャロンはシーマスの本名、エミール・レンフィールドの名を口にした。
まだ誰にも明かしていない筈のその名を口にしたシャロン、シーマスが彼から距離を取り厳しい表情で睨みつけるには、それだけで十分だった。
「うふふっ、乙女に秘密を尋ねるなんて野暮ねぇ・・・綺麗な女には秘密は付き物だって、教わらなかった?」
シーマスの鋭い視線は嘘を許すような色をしていない、それでもシャロンは唇に指を添えては怪しく微笑むばかりであった。
「それにしても、助かったわ。だって貴方、ユーリちゃんとの絡みに興奮する振りをしただけ騙されてくれるんだもの、本当は貴方の事を監視していたかっただけなのに・・・あ、でも安心してね。貴方の顔が好みなのは本当よ?」
「何だと?」
シャロンがユーリとシーマスの絡みに興奮していたのは、それに性的なものを感じていた訳ではなく、彼の監視が目的だったのだと彼は口にする。
彼の演技にまんまと騙されてしまっていたシーマスは、青い顔を浮かべた。
「でも拍子抜けよね。だって貴方、全然裏切る様子を見せないんだもの。あぁ、一回だけ危ない時があったけど・・・あれだけよね?ねぇシーマス、貴方本当は楽しんでいたんじゃないの?」
「馬鹿な、俺が楽しんでいただと?そんな訳がない!!」
「あらそう?」
シーマスをずっと監視していたシャロン、しかし彼は拍子抜けしていた、何故なら彼が全く裏切る素振りを見せないから。
シャロンはその理由を、彼が本心ではこの生活を楽しんでいたからだと指摘する。
シーマスはその言葉を、吠えるようにして否定していた。
「・・・この話、どこまで話した?」
「え?あぁ、安心してまだ誰にも話してないわよ?」
「なら・・・お前を消せば終わりだな」
背中に隠した短剣は、今も確かにそこにある。
シーマスはそれを手にすると、距離を測っていた。
大丈夫、ちゃんと一歩で仕留められる距離だ。
シーマスは踏み込みと共に、短剣を抜き放つ。
「―――今なら、まだ許してあげる」
抜き放った筈の短剣が、鞘へと戻される。
その声は背後から、耳元に向かって囁かれていた。
シーマスの背後、その無防備な位置にシャロンは回り込んでいたのだ、彼が抜き放とうとした短剣を手で押さえるという余裕を見せて。
「っ!?これだけの実力・・・何者だ、お前は!?」
「あら、ただのオカマちゃんよ?ただし、飛び切り美人のね」
猛烈な死の予感に、すぐさま飛び退いたシーマスは冷や汗を伝わせながらシャロンに尋ねる。
その質問にシャロンはにっこりと微笑むと、彼にウインクを返すだけだった。
「おーい、シャロンさーん!どこですかー?置いてっちゃいますよー!」
「ふふっ、これまでのようね。それじゃ、向こうに行っても頑張ってね。エミール・レンフィールドちゃん」
部隊の中にシャロンの姿がない事に気がついたユーリが、彼の事を探して声を張り上げている。
その声に振り返ったシャロンはシーマスに手を振ると、気軽な足取りでその場を後にしていくのだった。
「あれ、そう言えばシーマスもいないな・・・」
「あぁ、彼ならちょっと用事があるんですって。だから今回は同行出来ないみたいよ」
「そうですか、じゃあ仕方ないですね・・・」
ユーリ達の下へと戻ったシャロンは、シーマスがいないことにも気がついた彼に適当な理由をでっち上げていた。
「俺が、楽しんでいた?まさか、な・・・」
最後にこちらにウインクをして去っていくシャロンの姿を眺めながら、シーマスはそう呟いていた。
そしてやがて彼もその場を後にしていく、彼が本来いるべき場所、レンフィールド家へと向かって。
0
お気に入りに追加
2,395
あなたにおすすめの小説
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました
ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。
そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった……
失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。
その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。
※小説家になろうにも投稿しています。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
その無能、実は世界最強の魔法使い 〜無能と蔑まれ、貴族家から追い出されたが、ギフト《転生者》が覚醒して前世の能力が蘇った〜
蒼乃白兎
ファンタジー
15歳になると、人々は女神様からギフトを授かる。
しかし、アルマはギフトを何も授かることは出来ず、実家の伯爵家から無能と蔑まれ、追い出されてしまう。
だが実はアルマはギフトを授からなかった訳では無かった。
アルマは既にギフト《転生者》を所持していたのだ──。
実家から追い出された直後にギフト《転生者》が発動し、アルマは前世の能力を取り戻す。
その能力はあまりにも大きく、アルマは一瞬にして世界最強の魔法使いになってしまった。
なにせアルマはギフト《転生者》の能力を最大限に発揮するために、一度目の人生を全て魔法の探究に捧げていたのだから。
無能と蔑まれた男の大逆転が今、始まる。
アルマは前世で極めた魔法を利用し、実家を超える大貴族へと成り上がっていくのだった。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
宮廷錬成師の私は妹に成果を奪われた挙句、『給与泥棒』と罵られ王宮を追放されました ~後になって私の才能に気付いたってもう遅い!
日之影ソラ
ファンタジー
【16日0時に一話以外削除予定しました】
※小説家になろうにて最新話まで更新中です。
錬成師の家系に生まれた長女アリア・ローレンス。彼女は愛人との間に生まれた子供で、家や周囲の人間からは良くない扱いを受けていた。
それでも錬成師の才能があった彼女は、成果を示せばいずれ認めてもらえるかもしれないという期待の胸に、日々努力を重ねた。しかし、成果を上げても妹に奪われてしまう。成果を横取りする妹にめげず精進を重ね、念願だった宮廷錬成師になって一年が経過する。
宮廷付きになっても扱いは変わらず、成果も相変わらず妹に横取りされる毎日。ついには陛下から『給与泥棒』と罵られ、宮廷を追い出されてしまった。
途方に暮れるアリアだったが、小さい頃からよく素材集めで足を運んだ森で、同じく錬成師を志すユレンという青年と再会する。
「行く当てがないなら、俺の国に来ないか?」
実は隣国の第三王子で、病弱な妹のために錬成術を学んでいたユレン。アリアの事情を知る彼は、密かに彼女のことを心配していた。そんな彼からの要望を受け入れたアリアは、隣国で錬成師としての再スタートを目指す。
これは才能以上に努力家な一人の女の子が、新たな場所で幸せを掴む物語。
勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~
竹間単
ファンタジー
【勇者PTを追放されたチートなユニークスキル持ちの俺は、美少女と旅をする】
役立たずとして勇者パーティーを追放されて途方に暮れていた俺は、美少女に拾われた。
そして俺は、美少女と旅に出る。
強力すぎるユニークスキルを消す呪いのアイテムを探して――――
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる