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第二章 王国動乱
レンフィールド家
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「あいつが・・・あいつが成功しておれば、今頃我らが王位を握っておったものを!!そのために兵を出してやり、時には自分に成り済ませる者を貸して欲しいなどという訳の分からぬ願いまで聞いてやったというのに・・・どこまで我らの足を引っ張れば気が済むのか、あの出来損ないは!!」
王都から遠く離れ、馬で西に一週間ほど走った所にある都市、鉱山都市パパゲアはレンフィールド家が所有するユトラード公爵領でも最も栄えた都市であった。
その都市でも最も大きな建物、金鉱御殿とも揶揄されるレンフィールドの館は、一面に金箔が張られた下品なほどにギラギラと輝く建物である。
その建物の主の執務室、つまりコーディー・レンフィールドの部屋から怒声と、何かを叩きつけるような音が響く。
「・・・余り興奮なされては、お身体に触りますよレンフィールド卿」
それはそのまま、彼が興奮の余り机を叩きつけた音であった。
そんな彼の姿に、対面の椅子へとゆったりと座っている先王の弟の長男、フェルデナンドがやんわりと窘めている。
彼はそっと視線を動かすと、その先で立ち竦み怒鳴り声を上げる主人に怯えている執事へと気遣うような視線を向けていた。
「落ち着けと?これが落ち着いていられますか!!王が死んだのですぞ!?しかも今度はあのいつ死んでもおかしくなかった老王ではなく、即位したばかりのジョン陛下が!!」
どうやらコーディーの机の前で硬直している執事は、王が死んだという衝撃的なニュースを伝えにここにやってきたようだ。
それを耳にしたコーディーが先ほどのように吠えていたのは、彼にそれを見越した計画があったからだ。
「私も驚いてはいるよ・・・早すぎるとね」
「えぇ、早すぎましたな!!ですが、問題はそこではないのです!!あの出来損ないが!あのシーマス・チットウッドとかいう出来損ないが計画通りリリーナ王女を攫っておれば、もはや王位は貴方のものだったという事実なのです!!だのに、奴めが・・・!!あぁ、忌々しい!!」
今、ジョン王が死ねば次に王位につくのは当然、先王の弟の長男であるフェルデナンドだ。
しかしそこに僅かな懸念があるとすれば、それはリリーナ王女の存在であった。
王の娘であるリリーナと、王位についていない先王の弟の息子であるフェルデナンド。
男系継承を基本とするリグリア王国ではフェルデナンドの方が圧倒的に優位であるのは確かだったが、その正当性を巡ってリリーナを推す者達が騒ぎ出さないとは限らなかった。
そのため彼らはそんな事態になる前に、リリーナの存在を押さえておきたかったのだ。
「シーマス?彼は確か、エミールという名前ではありませんでしたか?」
「奴など、シーマスで十分!!エミールなどという高貴な名前には勿体ないですからな!!」
シーマスが計画を失敗した事がよほど許せないのか、苛々と歩き回りながら怒鳴り声を上げるコーディー。
そんな彼の姿に目をやりながら、フェルデナンドはやれやれと肩を竦めていた。
「父上、何かあったのですか?兄上の名前が聞こえた気がしたのですが・・・」
コーディーの怒鳴り声は大きく、それはしっかりとした防音が施されたこの部屋にしても外に漏れ聞こえてしまうほどのものであった。
それでもそれが漏れ聞こえたのは、その部屋に近づくことが許された者だけにであろう。
例えば、彼の息子であるケヴィン・レンフィールドのような。
「あの者は、お前の兄などではない!!二度とその名を出すでないぞ!!何より盗み聞きなど・・・それでも我が家の跡取りか!恥を知れ!!」
コーディーの興奮は扉を僅かに開け、そこから窺うようにこちらへと視線を向けるケヴィンの可愛らしい姿を目にしても収まることはなかった。
ケヴィンはその初めて目にする父親の取り乱しように戸惑ったようで、凍り付いたようにその場で固まってしまっている。
「君の父上は今不機嫌でね、さっきの言葉は決して彼の本心ではないんだ。だから君も彼を許してやって欲しい、いいねケヴィン?」
そんなケヴィンに、フェルデナンドは優しく話しかける。
彼はケヴィンに取り乱し暴れまわっている父親の姿が見えないように、その前へと立ち塞がっていた。
「はい、分かっています殿下」
「そうか。君は賢いね、ケヴィン。さぁ、君はもう帰りなさい。子供は寝る時間だ」
しかしそんな配慮など必要ないように、ケヴィンは落ち着いた様子で彼の言葉へと返事を返す。
その反応にスッと目を細めたフェルデナンドは、ケヴィンの身体をひっくり返すと寝室へと帰るように促していた。
「やれやれ、これではどちらが子供か分からないな・・・」
ケヴィンを送り出したフェルデナンドは肩越しに振り返り、その先のコーディーへと視線を向ける。
そして彼はその二人の姿を見比べては、やれやれと肩を竦めていた。
「さて・・・オブライエンはどう動くのか?ユークレールは彼らに人質を取られているも同然、従わざるを得ないだろう。我々には彼らと敵対する道しかない・・・であれば残る一つはエマスン家、か。さてさて、彼らはどう動く?」
フェルデナンドは部屋の中で暴れるコーディーを避けるように、窓際へと移動する。
そこから彼は南方へと視線を向けていた、その先に広大な領地を持つエマスン家の動向を窺うように。
王都から遠く離れ、馬で西に一週間ほど走った所にある都市、鉱山都市パパゲアはレンフィールド家が所有するユトラード公爵領でも最も栄えた都市であった。
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その建物の主の執務室、つまりコーディー・レンフィールドの部屋から怒声と、何かを叩きつけるような音が響く。
「・・・余り興奮なされては、お身体に触りますよレンフィールド卿」
それはそのまま、彼が興奮の余り机を叩きつけた音であった。
そんな彼の姿に、対面の椅子へとゆったりと座っている先王の弟の長男、フェルデナンドがやんわりと窘めている。
彼はそっと視線を動かすと、その先で立ち竦み怒鳴り声を上げる主人に怯えている執事へと気遣うような視線を向けていた。
「落ち着けと?これが落ち着いていられますか!!王が死んだのですぞ!?しかも今度はあのいつ死んでもおかしくなかった老王ではなく、即位したばかりのジョン陛下が!!」
どうやらコーディーの机の前で硬直している執事は、王が死んだという衝撃的なニュースを伝えにここにやってきたようだ。
それを耳にしたコーディーが先ほどのように吠えていたのは、彼にそれを見越した計画があったからだ。
「私も驚いてはいるよ・・・早すぎるとね」
「えぇ、早すぎましたな!!ですが、問題はそこではないのです!!あの出来損ないが!あのシーマス・チットウッドとかいう出来損ないが計画通りリリーナ王女を攫っておれば、もはや王位は貴方のものだったという事実なのです!!だのに、奴めが・・・!!あぁ、忌々しい!!」
今、ジョン王が死ねば次に王位につくのは当然、先王の弟の長男であるフェルデナンドだ。
しかしそこに僅かな懸念があるとすれば、それはリリーナ王女の存在であった。
王の娘であるリリーナと、王位についていない先王の弟の息子であるフェルデナンド。
男系継承を基本とするリグリア王国ではフェルデナンドの方が圧倒的に優位であるのは確かだったが、その正当性を巡ってリリーナを推す者達が騒ぎ出さないとは限らなかった。
そのため彼らはそんな事態になる前に、リリーナの存在を押さえておきたかったのだ。
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シーマスが計画を失敗した事がよほど許せないのか、苛々と歩き回りながら怒鳴り声を上げるコーディー。
そんな彼の姿に目をやりながら、フェルデナンドはやれやれと肩を竦めていた。
「父上、何かあったのですか?兄上の名前が聞こえた気がしたのですが・・・」
コーディーの怒鳴り声は大きく、それはしっかりとした防音が施されたこの部屋にしても外に漏れ聞こえてしまうほどのものであった。
それでもそれが漏れ聞こえたのは、その部屋に近づくことが許された者だけにであろう。
例えば、彼の息子であるケヴィン・レンフィールドのような。
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コーディーの興奮は扉を僅かに開け、そこから窺うようにこちらへと視線を向けるケヴィンの可愛らしい姿を目にしても収まることはなかった。
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そんなケヴィンに、フェルデナンドは優しく話しかける。
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「はい、分かっています殿下」
「そうか。君は賢いね、ケヴィン。さぁ、君はもう帰りなさい。子供は寝る時間だ」
しかしそんな配慮など必要ないように、ケヴィンは落ち着いた様子で彼の言葉へと返事を返す。
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ケヴィンを送り出したフェルデナンドは肩越しに振り返り、その先のコーディーへと視線を向ける。
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「さて・・・オブライエンはどう動くのか?ユークレールは彼らに人質を取られているも同然、従わざるを得ないだろう。我々には彼らと敵対する道しかない・・・であれば残る一つはエマスン家、か。さてさて、彼らはどう動く?」
フェルデナンドは部屋の中で暴れるコーディーを避けるように、窓際へと移動する。
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