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第二章 王国動乱
ある男の肖像
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壁の間に染み込んだ水気か、それとも夜の冷たさに姿を現した朝露か、滴った雫が男の頬を伝う。
それを舐め取った男は僅かに身じろぎし、それと共に鎖が擦れるジャラジャラとした耳障りな音が響いた。
ここは王都クイーンズガーデン、その一画に居を構えるとある邸宅の地下牢であった。
「・・・まだ、死んじゃいないさ」
その地下牢の奥、両手を鎖に繋がれ壁に貼り付けにされている男は、足元に集ってくるネズミに対してそう呟く。
男はボロボロに痩せこけており、その細い身体と動かない様子を見れば既に死んだものと周りが思うのも無理はない。
事実、彼をもう死んだものだと思ったのか、集ってきたネズミが彼の足へと噛みついては、その死肉を漁ろうとしていた。
「そらっ、よっと!・・・へへ、まだ腕は鈍っちゃいないか」
男は自らの足へと噛みついたネズミを、その足で器用に捕まえる。
「さてと、じゃあ久しぶりの肉だな・・・あーん」
両腕を鎖で繋がれた男は、捕まえたネズミを足で掴んだまま口へと近づけると、大口を開けてそれに齧り付こうとする。
迫り来る男の口に、彼の足先に掴まれたネズミは取り乱し、必死に暴れてはそこから逃れようとしていた。
「あぁ、そういえば・・・」
もはやこれまでと覚悟したネズミが目を瞑りぐったりと俯いていると、男が口へと向けていた足を止めた。
何かを思い出したように遠い目で彼方を見詰める男は、もはやそのネズミに興味を失ったのかそれを離し、解放されたネズミは慌てて逃げてゆく。
「あの時もこうして・・・こいつを捕まえてたな」
そしてその男、シーマス・チットウッドは振り返る。
全てが始まった、あの日の事を。
◆◇◆◇◆◇
その年、王都クイーンズガーデンには珍しく雪が積もり、新年祭を控える街は準備に慌てながらもどこか浮足立った様子を見せていた。
街を駆け回る子供達はその雪を珍しそうに眺めてはそれをかき集め、ぶつけ合ってはしゃいでいる。
それを注意する大人達の声もどこか浮かれており、子供達もそんな大人達の様子が分かっているのか一向に収まる様子がない。
「う、ぁ・・・」
そんな浮かれた街の景色も、少し路地を入れば一変する。
スラム街の片隅、そこではこの寒波の中で雪に埋もれ、今まさに死に逝こうとしている痩せこけた子供の姿があった。
「ちゅちゅ?ちゅ!」
そんな子供の足先に、ネズミが噛り付く。
そのネズミは、彼がもう死んでしまったものと勘違いしたのだろう。
「っ!!」
それが誤りだった。
死にかけていた子供はその最後の力を振り絞り足先を動かすと、見事にネズミを捕まえる。
「やった・・・やったぞ!なぁ爺さん、見ろよこれ!!これだけあれば、まだしばらく生きて・・・爺さん?」
足で捕まえたネズミを両手で掴み直した子供は、それに歓声を上げると後ろへと振り返る。
彼はどうやら、そこに横たわっているボロ布のような何かに向かって話しかけているようだった。
「嘘だろ爺さん?さっきまであんなに元気だったじゃんか・・・おい、おいってば!返事しろよ爺さん!!」
そうそれはもはや、ただのボロ布の塊でしかなかった。
「へ、へへへっ・・・んだよ、くたばっちまったのかよ。はっ、清々するぜ!これでこのネズミも俺が一人で・・・一人で・・・」
慌てて駆け寄り必死に揺り動かしても、凍った地面に張り付いた死肉がパラパラと剥がれ落ちるだけ。
もはや今まで一緒に暮らした老人が元には戻らないと知った子供は、捕まえたネズミを口元へと運ぶと、それを貪り食おうとする。
「う、うぅ・・・一人で、食ったってうまくねぇよ・・・何で、何で死んじまったんだよぉ、爺さぁん」
命を失い、それが温めていた熱も失っていくネズミの身体は、この冷たい外気に急激に凍り付いていく。
それへと歯を立て肉をこそげ落とす子供は、その口元を血で真っ赤に汚しながら涙を流していた。
その涙もやがて凍り付き、彼の頬に幾つかの筋を残してはひび割れていく。
「・・・これか?」
「間違いございません、旦那様」
そんな彼の目の前に、いつの間にか見知らぬ紳士が現れていた。
その紳士は明らかに身分が高く、とてもではないがこんな場所に足を踏み入れる人物とは思えない。
そんな人物が執事と思われる老人を引き連れ、彼を冷たく見下ろしていた。
「存外、汚らしいものだな」
紳士は目の前の彼をじっくりと観察すると、そう吐き捨てる。
「子供、名前は?」
そう口にする紳士に、彼は首を横に振る。
彼には名前がなかったのだ、今はもうボロ布になった老人以外に呼ぶ者のいない彼に、名前は必要なかったから。
「そうか。ではお前は今日からエミールと名乗れ、エミール・レンフィールドとな」
名前がないと告げた彼に、紳士はつまらなそうに目を細めると、そう口にする。
「喜ぶがいい、エミール。お前は私の子となるのだ、このコーディー・レンフィールドのな」
両手を広げ彼を、今エミールと名付けられた彼を祝福するように、紳士はそう告げた。
「何だそれは、ネズミか?汚らしい・・・そんなものを口にするな。食事ならば用意してある、空腹ならばそこで好きなだけ食べるといい」
紳士はエミールが口にしていたネズミを弾き飛ばすと、もはや用事は済んだと踵を返す。
エミールはその弾き飛ばされたネズミの行方を、ボーっとした表情で追っていた。
そのかつて誰かだったボロ布の方へと転がっていく、ネズミの姿を。
「どうした、来ないのか?」
ついて来ないエミールに、紳士は一度振り返るとそう口にする。
しかし彼はそれ口にすると、もう興味がないと示すようにここへとやってきた馬車へと乗り込んでいた。
「・・・行き、ます」
そう呟くと、その場に立ち尽くしていたエミールはやがてゆっくりと歩き出す。
老人が死んだ今、彼には行く場所も生きる理由も存在しなかった。
だからどっちでもよかったのだ、ついて行っても行かなくても。
「正しい判断をしたな、エミール。お前に教えてやろう、人間として生きるという事を」
腰を下ろした馬車の座席は、エミールが経験したことがないほどに柔らかかった。
それに戸惑うエミールに満足そうに笑った紳士、彼の父親となるコーディー・レンフィールドはそう呟く。
その言葉の意味を、その時のエミールはまだ知らなかった。
◆◇◆◇◆◇
そして少年の、エミールと名付けられたその少年の世界は一変する。
エミールにとって、そこで目にするものは全てが新鮮で信じられないものばかりであった。
お腹一杯口にしてもまだ余りある食べ物、どこまでも沈んでいくかのように柔らかなベッド、汚らしいと見下し蹴とばし殴り飛ばしてくるどころか優しくこちらを気遣ってくる人々。
それらは全て、路地の片隅で暮らしていた時の彼には縁がなかったものであり、ある生き物にとっては生まれながらに与えられるものであった。
そう彼は、ここにやってきて初めて本当の意味で人間になれたのだ。
その恩を返すために、彼は励んだ。
父親となったコーディーの期待に応えようと勉学に励み、剣を振るい、馬から何度振り落とされても必死にしがみつき続けた。
そしてやがて、彼が子供から少年と呼ばれる年齢になる頃には、周りから彼がレンフィールド家の跡取りであることを疑う人間はいなくなっていた。
全てが順調だったのだ、そうあの時までは。
それは彼が成人と認められ、社交界へと正式にデビューしようとする、そんな最中の出来事であった。
「エミール、聞いたぞ。今日はついにあれを負かしたそうだな?」
「いえ、実力ではありません父上。先生は手加減をしてくれたのです」
日課の訓練の終わりに訪れたコーディーは、上機嫌にエミールへとそう尋ねる。
エミールは訓練で掻いた汗をタオルで拭いながら、それに照れ臭そうに笑っていた。
「あれがそんな手合いなものか!とにかく良くやったぞ、エミール。流石は我が跡取りと褒めてやらねばならんな」
エミールの言葉にコーディーが訓練場へと視線を向ければ、そこには凶悪な面構えをした屈強な男がボコボコにされて壁へと寄りかかり、こちらへと恨めしそうな視線を向けていた。
それを目にすれば、彼が手加減をするような人間でない事は一目で分かるだろう。
コーディーはエミールの肩へと手をやると、彼を讃えるようにそこをポンポンと叩いていた。
「だ、旦那様!大変でございます、大変でございます!!」
そこに、慌てた様子の執事が飛び込んでくる。
「何だ、どうしたというのだ!?」
それに良い所を邪魔されたと、コーディーは苛立たしげに振り返る。
「ご、ご懐妊でございます!!奥様がご懐妊でございます!!」
そして執事は告げる、その崩壊の言葉を。
「ご懐妊?お、おぉ・・・そうか!孕んだか!!もはや種はないと諦めておったが・・・あれはどこか!?褒めてやらねば・・・褒めてやらねばなるまい!!」
「こちらでございます!こちらでございます、旦那様!!」
妻が妊娠した、その事実を知ったコーディーは雄叫びを上げると興奮した様子で駆け出していく。
そんな彼が見当違いの方向へと駆け出したのを見て、執事が慌てて彼の後を追い駆けていた。
「父上に、子供が生まれる・・・じゃあ、僕は?」
去っていったコーディー達に、エミールは一人残される。
彼は子供のいないコーディーが跡取りにするために、仕方なく養子とした存在だ。
そんなコーディーに子供が生まれればどうなるかなど、決まっていた。
捨てられるのだ。
◆◇◆◇◆◇
生まれたのは、男の子だった。
玉のようにぷくぷくと太り、桃のように頬を染めるその赤ん坊は周りからの愛情を一身に受けた。
それと反比例するように、エミールは周りから忘れ去られていく。
それでもエミールは励んだ、周りからの関心を取り戻そうとそれまでよりもさらに必死に。
しかし成長期も終わりつつあった彼にもはや劇的な成長は望めず、寧ろその激しい訓練はオーバーワークとなり逆効果を齎すばかりで、彼は一人空回りをし続ける。
そんな彼の痛々しい姿は余計に周りの者達を遠ざけ、いつしか彼は腫物を触るような存在として周りから扱われるようになっていた。
周りは、そんな彼にある決まりを作る。
それはつまり、コーディーの息子にしてレンフィールド家の本物の跡取り、ケヴィン・レンフィールドには彼を決して近づけてはならないという決まりであった。
しかしそんな決まり、同じ建物で暮らす二人の間で守らせ続ける事など不可能である。
あれは丁度、ケヴィンが五才の誕生日を迎えた時であった。
「エミール兄様!エミール兄様ではございませんか!?」
中でケヴィンの誕生会が盛大に催されている屋敷を、エミールは雪がちらつく中庭から見上げていた。
嫡男が生まれ、微妙な立場となったエミールはもはや社交界に出ることはなく、そうした人が集まる場所からは遠ざけられていた。
そんな彼の背中に掛かったその声は甲高く、声変わりもまだ遠い少年のものであるようだった。
「・・・ケヴィン、か?」
この屋敷の中でその条件に当てはまる人物は、一人しかいない。
その一人の姿を、エミールは振り返った先で初めて目にしていた。
四大貴族に数得られる名家レンフィールド家の跡取り、全ての人々から祝福される貴公子ケヴィン・レンフィールドの姿を。
「あぁ、良かった!人違いだったらどうしようかと思っていました。ようやくお会い出来ましたね、兄様!!」
嬉しそうにそのただでさえ血色のいい頬を真っ赤に染めながら駆けよってくる少年、ケヴィンは一目で特別な血を引いていると分かるほどに美しく愛らしい少年であった。
それが五才にして神童と噂され、エミールが必死に努力して身につけた事のほとんどを既に身につけてしまっている少年、ケヴィンの姿だった。
「たった一人の兄弟なのに、こうしてお会いするまでこうも掛かるなんて・・・おかしいとは思いませんか、兄様!?」
「あぁ、そうだな・・・」
ケヴィンはエミールに駆け寄ると、本当に嬉しそうにニコニコと笑っている。
そんな彼に気のない返事を返しながら、エミールは全く別の事を考えていた。
(今、こいつを殺しさえすれば僕がこの家の跡取りに・・・なれる。そうすれば父上も皆も、もう一度僕を見てくれる。そう、僕を・・・)
目の前の少年を殺せば、自動的に自分がこの家の跡取りに返り咲ける。
そうすればまた、全てうまくいくのだと考えるエミールは、そっとケヴィンの細い首へと手を伸ばす。
(僕を・・・見て!)
祈るような仕草でエミールは指先に力を込めた、目の前の弟の命を摘み取るために。
「・・・どうかされましたか、兄様?」
それでも、ケヴィンはこちらを無邪気に見上げるだけ。
その表情からは、欠片ほども彼を疑う感情は見受けられなかった。
手が、止まる。
「坊ちゃま!!」
響いた声に血相を変えた執事が飛び込んできて、エミールを突き飛ばしてはケヴィンを抱きかかえる。
彼はケヴィンを守るように抱きしめると、エミールの事を人殺しを見るような目で睨み付けていた。
「あやつを・・・あの反逆者を捉えろ!!あやつは坊ちゃまを手に掛けようとした反逆者だ!!生死は問わん、即刻ひっ捕らえるのじゃ!!!」
そう口にした執事の言葉に、エミールは嗤った。
何故ならそれは、正しかったからだ。
狂ったように喚きたてる執事の声に兵士がぞろぞろと現れる、彼らはやがてその腰から剣を抜き放つと、エミールに対してそれを構えていた。
「止めろ!!貴様ら、誰に手を出そうとしている!!その方は僕の兄上なのだぞ!!」
そんな彼らの背後から、まだ幼くいささか甲高過ぎるがそれでも威厳の溢れる声が響く。
「坊ちゃま!?で、ですが・・・」
その声の主、ケヴィンを振り返りながら執事は困ったような表情を浮かべている。
彼と同じように、集められた兵士達も剣を構えたままどうしたらいいのかと戸惑った様子を見せていた。
「誰に口答えしているつもりだ?僕が命令したのだぞ?二度も言わせる気か!!即刻、兵を引かせろ!!」
「は、ははっ!!」
困ったように苦笑いを浮かべる執事や兵士に、ケヴィンが向ける視線は冷たい。
そして彼が再び放った言葉に彼らはひれ伏すと、慌ててその場から立ち去っていく。
「さぁ、兄様こちらにおいでください。外は冷えますから」
こちらに手を差し出しながらニッコリと微笑むケヴィン、その手を握りながらエミールは知ったのだ、これが本物の貴族なのだと。
これこそが、本当に青き血の流れている生き物なのだと。
「・・・お前には、黒葬騎士団への潜入任務を頼みたい。あれはオブライエン家の子飼い、どうにかしてその力を削いでおきたいのだ」
後日、エミールを自室へと呼びだしたコーディーは長い沈黙の後にようやく切り出すと、そう口にした。
「畏まりました、父上」
明らかに厄介払いのためのその任務、しかしそれをエミールはあっさりと引き受ける。
「お、おぉ!そうかそうか、やってくれるか!!そうなるとそうだな、偽名も考えねばならぬな。ふぅむ、そうだなキスリング・・・は少し貴族的過ぎるか。ではユリウス・・・これも違うな。うむむ・・・シーマス、そうだシーマス・チットウッドというのはどうだ?」
「いいと思います。では父上、私はこれからシーマス・チットウッドと名乗り、黒葬騎士団の一員として働いて参ります」
エミールがそれをあっさり引き受けたのはコーディーからしても意外だったのだろう、彼は椅子から軽く飛び跳ねると驚いたように目を丸くしている。
そうしてエミールの気が変わらないうちにと急ぐ彼は、早速とばかりに任務に使う偽名を考えだして彼に授けていた。
そのシーマス・チットウッドという名を。
「・・・最後に一つ、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、何だ?」
別れの挨拶を終え、退室しようと扉へと手を伸ばしたエミールは、最後に振り返るとコーディーに尋ねる。
「この任務は、我がレンフィールド家のためになるのでしょうか?」
「何だそんな事か。当然だろう、オブライエン家を追い落とす事こそ我が家の使命!これはそのための一手なのだ!!」
エミールは尋ねる、この任務はレンフィールド家のためになるのかと。
それにコーディーはこぶしを机へと叩きつけると、力強く答えていた。
「・・・それを聞いて安心しました」
コーディーの答えに満足したエミールはにっこりと微笑むと、扉を潜り退室していく。
「この任務は、レンフィールド家のため・・・つまり、ケヴィン様のため」
コーディーの部屋から退室したエミールは、そう呟きながら足を進める。
「ケヴィン様、この身は全て貴方にお捧げ致します。正当な跡取りである貴方に、青き血の流れる本物の貴族である貴方様のために!!」
あの日、彼は誓ったのだ。
この命は彼のために、ケヴィンのために使うのだと。
例えそのために何を踏みにじる事になろうとも、と。
◆◇◆◇◆◇
「おい聞いたか?王が死んだってよ」
「はぁ、またかよ!?こりゃ、忙しくなるな」
「あぁ、そうだな」
地下牢にいれられている彼に、外の天気は分からない。
しかしそれでもあの日とは違い、外に雪は降っていない事だけ分かった。
何故ならこの街に雪が降るのは、世界が変わる時だけなのだから。
「おい、旦那様がお呼びだぞ!!」
「来た来た!分かった、今行く!」
地下牢の外、恐らく見張りに立っていたであろう兵士達が慌ただしく去っていく物音がする。
気付けばそこには静寂が訪れ彼、シーマス・チットウッドの細い呼吸の音だけが響くようになっていた。
「王が死んだ?あぁ、そうか・・・」
外の兵士達は今、何と話していたか。
王が死んだと、話していたのではないか。
そう、また王が死んだと。
「行か、なきゃ・・・あの方の、あの方の下に・・・」
そう掠れたように呟きながら、シーマスは前へと進む。
何日も何日も繰り返し糞尿を掛け続けた手枷は腐食し、ボロボロと崩れ落ちる。
その日、一人の男がジーク・オブライエンの邸宅から姿を消した。
それを舐め取った男は僅かに身じろぎし、それと共に鎖が擦れるジャラジャラとした耳障りな音が響いた。
ここは王都クイーンズガーデン、その一画に居を構えるとある邸宅の地下牢であった。
「・・・まだ、死んじゃいないさ」
その地下牢の奥、両手を鎖に繋がれ壁に貼り付けにされている男は、足元に集ってくるネズミに対してそう呟く。
男はボロボロに痩せこけており、その細い身体と動かない様子を見れば既に死んだものと周りが思うのも無理はない。
事実、彼をもう死んだものだと思ったのか、集ってきたネズミが彼の足へと噛みついては、その死肉を漁ろうとしていた。
「そらっ、よっと!・・・へへ、まだ腕は鈍っちゃいないか」
男は自らの足へと噛みついたネズミを、その足で器用に捕まえる。
「さてと、じゃあ久しぶりの肉だな・・・あーん」
両腕を鎖で繋がれた男は、捕まえたネズミを足で掴んだまま口へと近づけると、大口を開けてそれに齧り付こうとする。
迫り来る男の口に、彼の足先に掴まれたネズミは取り乱し、必死に暴れてはそこから逃れようとしていた。
「あぁ、そういえば・・・」
もはやこれまでと覚悟したネズミが目を瞑りぐったりと俯いていると、男が口へと向けていた足を止めた。
何かを思い出したように遠い目で彼方を見詰める男は、もはやそのネズミに興味を失ったのかそれを離し、解放されたネズミは慌てて逃げてゆく。
「あの時もこうして・・・こいつを捕まえてたな」
そしてその男、シーマス・チットウッドは振り返る。
全てが始まった、あの日の事を。
◆◇◆◇◆◇
その年、王都クイーンズガーデンには珍しく雪が積もり、新年祭を控える街は準備に慌てながらもどこか浮足立った様子を見せていた。
街を駆け回る子供達はその雪を珍しそうに眺めてはそれをかき集め、ぶつけ合ってはしゃいでいる。
それを注意する大人達の声もどこか浮かれており、子供達もそんな大人達の様子が分かっているのか一向に収まる様子がない。
「う、ぁ・・・」
そんな浮かれた街の景色も、少し路地を入れば一変する。
スラム街の片隅、そこではこの寒波の中で雪に埋もれ、今まさに死に逝こうとしている痩せこけた子供の姿があった。
「ちゅちゅ?ちゅ!」
そんな子供の足先に、ネズミが噛り付く。
そのネズミは、彼がもう死んでしまったものと勘違いしたのだろう。
「っ!!」
それが誤りだった。
死にかけていた子供はその最後の力を振り絞り足先を動かすと、見事にネズミを捕まえる。
「やった・・・やったぞ!なぁ爺さん、見ろよこれ!!これだけあれば、まだしばらく生きて・・・爺さん?」
足で捕まえたネズミを両手で掴み直した子供は、それに歓声を上げると後ろへと振り返る。
彼はどうやら、そこに横たわっているボロ布のような何かに向かって話しかけているようだった。
「嘘だろ爺さん?さっきまであんなに元気だったじゃんか・・・おい、おいってば!返事しろよ爺さん!!」
そうそれはもはや、ただのボロ布の塊でしかなかった。
「へ、へへへっ・・・んだよ、くたばっちまったのかよ。はっ、清々するぜ!これでこのネズミも俺が一人で・・・一人で・・・」
慌てて駆け寄り必死に揺り動かしても、凍った地面に張り付いた死肉がパラパラと剥がれ落ちるだけ。
もはや今まで一緒に暮らした老人が元には戻らないと知った子供は、捕まえたネズミを口元へと運ぶと、それを貪り食おうとする。
「う、うぅ・・・一人で、食ったってうまくねぇよ・・・何で、何で死んじまったんだよぉ、爺さぁん」
命を失い、それが温めていた熱も失っていくネズミの身体は、この冷たい外気に急激に凍り付いていく。
それへと歯を立て肉をこそげ落とす子供は、その口元を血で真っ赤に汚しながら涙を流していた。
その涙もやがて凍り付き、彼の頬に幾つかの筋を残してはひび割れていく。
「・・・これか?」
「間違いございません、旦那様」
そんな彼の目の前に、いつの間にか見知らぬ紳士が現れていた。
その紳士は明らかに身分が高く、とてもではないがこんな場所に足を踏み入れる人物とは思えない。
そんな人物が執事と思われる老人を引き連れ、彼を冷たく見下ろしていた。
「存外、汚らしいものだな」
紳士は目の前の彼をじっくりと観察すると、そう吐き捨てる。
「子供、名前は?」
そう口にする紳士に、彼は首を横に振る。
彼には名前がなかったのだ、今はもうボロ布になった老人以外に呼ぶ者のいない彼に、名前は必要なかったから。
「そうか。ではお前は今日からエミールと名乗れ、エミール・レンフィールドとな」
名前がないと告げた彼に、紳士はつまらなそうに目を細めると、そう口にする。
「喜ぶがいい、エミール。お前は私の子となるのだ、このコーディー・レンフィールドのな」
両手を広げ彼を、今エミールと名付けられた彼を祝福するように、紳士はそう告げた。
「何だそれは、ネズミか?汚らしい・・・そんなものを口にするな。食事ならば用意してある、空腹ならばそこで好きなだけ食べるといい」
紳士はエミールが口にしていたネズミを弾き飛ばすと、もはや用事は済んだと踵を返す。
エミールはその弾き飛ばされたネズミの行方を、ボーっとした表情で追っていた。
そのかつて誰かだったボロ布の方へと転がっていく、ネズミの姿を。
「どうした、来ないのか?」
ついて来ないエミールに、紳士は一度振り返るとそう口にする。
しかし彼はそれ口にすると、もう興味がないと示すようにここへとやってきた馬車へと乗り込んでいた。
「・・・行き、ます」
そう呟くと、その場に立ち尽くしていたエミールはやがてゆっくりと歩き出す。
老人が死んだ今、彼には行く場所も生きる理由も存在しなかった。
だからどっちでもよかったのだ、ついて行っても行かなくても。
「正しい判断をしたな、エミール。お前に教えてやろう、人間として生きるという事を」
腰を下ろした馬車の座席は、エミールが経験したことがないほどに柔らかかった。
それに戸惑うエミールに満足そうに笑った紳士、彼の父親となるコーディー・レンフィールドはそう呟く。
その言葉の意味を、その時のエミールはまだ知らなかった。
◆◇◆◇◆◇
そして少年の、エミールと名付けられたその少年の世界は一変する。
エミールにとって、そこで目にするものは全てが新鮮で信じられないものばかりであった。
お腹一杯口にしてもまだ余りある食べ物、どこまでも沈んでいくかのように柔らかなベッド、汚らしいと見下し蹴とばし殴り飛ばしてくるどころか優しくこちらを気遣ってくる人々。
それらは全て、路地の片隅で暮らしていた時の彼には縁がなかったものであり、ある生き物にとっては生まれながらに与えられるものであった。
そう彼は、ここにやってきて初めて本当の意味で人間になれたのだ。
その恩を返すために、彼は励んだ。
父親となったコーディーの期待に応えようと勉学に励み、剣を振るい、馬から何度振り落とされても必死にしがみつき続けた。
そしてやがて、彼が子供から少年と呼ばれる年齢になる頃には、周りから彼がレンフィールド家の跡取りであることを疑う人間はいなくなっていた。
全てが順調だったのだ、そうあの時までは。
それは彼が成人と認められ、社交界へと正式にデビューしようとする、そんな最中の出来事であった。
「エミール、聞いたぞ。今日はついにあれを負かしたそうだな?」
「いえ、実力ではありません父上。先生は手加減をしてくれたのです」
日課の訓練の終わりに訪れたコーディーは、上機嫌にエミールへとそう尋ねる。
エミールは訓練で掻いた汗をタオルで拭いながら、それに照れ臭そうに笑っていた。
「あれがそんな手合いなものか!とにかく良くやったぞ、エミール。流石は我が跡取りと褒めてやらねばならんな」
エミールの言葉にコーディーが訓練場へと視線を向ければ、そこには凶悪な面構えをした屈強な男がボコボコにされて壁へと寄りかかり、こちらへと恨めしそうな視線を向けていた。
それを目にすれば、彼が手加減をするような人間でない事は一目で分かるだろう。
コーディーはエミールの肩へと手をやると、彼を讃えるようにそこをポンポンと叩いていた。
「だ、旦那様!大変でございます、大変でございます!!」
そこに、慌てた様子の執事が飛び込んでくる。
「何だ、どうしたというのだ!?」
それに良い所を邪魔されたと、コーディーは苛立たしげに振り返る。
「ご、ご懐妊でございます!!奥様がご懐妊でございます!!」
そして執事は告げる、その崩壊の言葉を。
「ご懐妊?お、おぉ・・・そうか!孕んだか!!もはや種はないと諦めておったが・・・あれはどこか!?褒めてやらねば・・・褒めてやらねばなるまい!!」
「こちらでございます!こちらでございます、旦那様!!」
妻が妊娠した、その事実を知ったコーディーは雄叫びを上げると興奮した様子で駆け出していく。
そんな彼が見当違いの方向へと駆け出したのを見て、執事が慌てて彼の後を追い駆けていた。
「父上に、子供が生まれる・・・じゃあ、僕は?」
去っていったコーディー達に、エミールは一人残される。
彼は子供のいないコーディーが跡取りにするために、仕方なく養子とした存在だ。
そんなコーディーに子供が生まれればどうなるかなど、決まっていた。
捨てられるのだ。
◆◇◆◇◆◇
生まれたのは、男の子だった。
玉のようにぷくぷくと太り、桃のように頬を染めるその赤ん坊は周りからの愛情を一身に受けた。
それと反比例するように、エミールは周りから忘れ去られていく。
それでもエミールは励んだ、周りからの関心を取り戻そうとそれまでよりもさらに必死に。
しかし成長期も終わりつつあった彼にもはや劇的な成長は望めず、寧ろその激しい訓練はオーバーワークとなり逆効果を齎すばかりで、彼は一人空回りをし続ける。
そんな彼の痛々しい姿は余計に周りの者達を遠ざけ、いつしか彼は腫物を触るような存在として周りから扱われるようになっていた。
周りは、そんな彼にある決まりを作る。
それはつまり、コーディーの息子にしてレンフィールド家の本物の跡取り、ケヴィン・レンフィールドには彼を決して近づけてはならないという決まりであった。
しかしそんな決まり、同じ建物で暮らす二人の間で守らせ続ける事など不可能である。
あれは丁度、ケヴィンが五才の誕生日を迎えた時であった。
「エミール兄様!エミール兄様ではございませんか!?」
中でケヴィンの誕生会が盛大に催されている屋敷を、エミールは雪がちらつく中庭から見上げていた。
嫡男が生まれ、微妙な立場となったエミールはもはや社交界に出ることはなく、そうした人が集まる場所からは遠ざけられていた。
そんな彼の背中に掛かったその声は甲高く、声変わりもまだ遠い少年のものであるようだった。
「・・・ケヴィン、か?」
この屋敷の中でその条件に当てはまる人物は、一人しかいない。
その一人の姿を、エミールは振り返った先で初めて目にしていた。
四大貴族に数得られる名家レンフィールド家の跡取り、全ての人々から祝福される貴公子ケヴィン・レンフィールドの姿を。
「あぁ、良かった!人違いだったらどうしようかと思っていました。ようやくお会い出来ましたね、兄様!!」
嬉しそうにそのただでさえ血色のいい頬を真っ赤に染めながら駆けよってくる少年、ケヴィンは一目で特別な血を引いていると分かるほどに美しく愛らしい少年であった。
それが五才にして神童と噂され、エミールが必死に努力して身につけた事のほとんどを既に身につけてしまっている少年、ケヴィンの姿だった。
「たった一人の兄弟なのに、こうしてお会いするまでこうも掛かるなんて・・・おかしいとは思いませんか、兄様!?」
「あぁ、そうだな・・・」
ケヴィンはエミールに駆け寄ると、本当に嬉しそうにニコニコと笑っている。
そんな彼に気のない返事を返しながら、エミールは全く別の事を考えていた。
(今、こいつを殺しさえすれば僕がこの家の跡取りに・・・なれる。そうすれば父上も皆も、もう一度僕を見てくれる。そう、僕を・・・)
目の前の少年を殺せば、自動的に自分がこの家の跡取りに返り咲ける。
そうすればまた、全てうまくいくのだと考えるエミールは、そっとケヴィンの細い首へと手を伸ばす。
(僕を・・・見て!)
祈るような仕草でエミールは指先に力を込めた、目の前の弟の命を摘み取るために。
「・・・どうかされましたか、兄様?」
それでも、ケヴィンはこちらを無邪気に見上げるだけ。
その表情からは、欠片ほども彼を疑う感情は見受けられなかった。
手が、止まる。
「坊ちゃま!!」
響いた声に血相を変えた執事が飛び込んできて、エミールを突き飛ばしてはケヴィンを抱きかかえる。
彼はケヴィンを守るように抱きしめると、エミールの事を人殺しを見るような目で睨み付けていた。
「あやつを・・・あの反逆者を捉えろ!!あやつは坊ちゃまを手に掛けようとした反逆者だ!!生死は問わん、即刻ひっ捕らえるのじゃ!!!」
そう口にした執事の言葉に、エミールは嗤った。
何故ならそれは、正しかったからだ。
狂ったように喚きたてる執事の声に兵士がぞろぞろと現れる、彼らはやがてその腰から剣を抜き放つと、エミールに対してそれを構えていた。
「止めろ!!貴様ら、誰に手を出そうとしている!!その方は僕の兄上なのだぞ!!」
そんな彼らの背後から、まだ幼くいささか甲高過ぎるがそれでも威厳の溢れる声が響く。
「坊ちゃま!?で、ですが・・・」
その声の主、ケヴィンを振り返りながら執事は困ったような表情を浮かべている。
彼と同じように、集められた兵士達も剣を構えたままどうしたらいいのかと戸惑った様子を見せていた。
「誰に口答えしているつもりだ?僕が命令したのだぞ?二度も言わせる気か!!即刻、兵を引かせろ!!」
「は、ははっ!!」
困ったように苦笑いを浮かべる執事や兵士に、ケヴィンが向ける視線は冷たい。
そして彼が再び放った言葉に彼らはひれ伏すと、慌ててその場から立ち去っていく。
「さぁ、兄様こちらにおいでください。外は冷えますから」
こちらに手を差し出しながらニッコリと微笑むケヴィン、その手を握りながらエミールは知ったのだ、これが本物の貴族なのだと。
これこそが、本当に青き血の流れている生き物なのだと。
「・・・お前には、黒葬騎士団への潜入任務を頼みたい。あれはオブライエン家の子飼い、どうにかしてその力を削いでおきたいのだ」
後日、エミールを自室へと呼びだしたコーディーは長い沈黙の後にようやく切り出すと、そう口にした。
「畏まりました、父上」
明らかに厄介払いのためのその任務、しかしそれをエミールはあっさりと引き受ける。
「お、おぉ!そうかそうか、やってくれるか!!そうなるとそうだな、偽名も考えねばならぬな。ふぅむ、そうだなキスリング・・・は少し貴族的過ぎるか。ではユリウス・・・これも違うな。うむむ・・・シーマス、そうだシーマス・チットウッドというのはどうだ?」
「いいと思います。では父上、私はこれからシーマス・チットウッドと名乗り、黒葬騎士団の一員として働いて参ります」
エミールがそれをあっさり引き受けたのはコーディーからしても意外だったのだろう、彼は椅子から軽く飛び跳ねると驚いたように目を丸くしている。
そうしてエミールの気が変わらないうちにと急ぐ彼は、早速とばかりに任務に使う偽名を考えだして彼に授けていた。
そのシーマス・チットウッドという名を。
「・・・最後に一つ、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、何だ?」
別れの挨拶を終え、退室しようと扉へと手を伸ばしたエミールは、最後に振り返るとコーディーに尋ねる。
「この任務は、我がレンフィールド家のためになるのでしょうか?」
「何だそんな事か。当然だろう、オブライエン家を追い落とす事こそ我が家の使命!これはそのための一手なのだ!!」
エミールは尋ねる、この任務はレンフィールド家のためになるのかと。
それにコーディーはこぶしを机へと叩きつけると、力強く答えていた。
「・・・それを聞いて安心しました」
コーディーの答えに満足したエミールはにっこりと微笑むと、扉を潜り退室していく。
「この任務は、レンフィールド家のため・・・つまり、ケヴィン様のため」
コーディーの部屋から退室したエミールは、そう呟きながら足を進める。
「ケヴィン様、この身は全て貴方にお捧げ致します。正当な跡取りである貴方に、青き血の流れる本物の貴族である貴方様のために!!」
あの日、彼は誓ったのだ。
この命は彼のために、ケヴィンのために使うのだと。
例えそのために何を踏みにじる事になろうとも、と。
◆◇◆◇◆◇
「おい聞いたか?王が死んだってよ」
「はぁ、またかよ!?こりゃ、忙しくなるな」
「あぁ、そうだな」
地下牢にいれられている彼に、外の天気は分からない。
しかしそれでもあの日とは違い、外に雪は降っていない事だけ分かった。
何故ならこの街に雪が降るのは、世界が変わる時だけなのだから。
「おい、旦那様がお呼びだぞ!!」
「来た来た!分かった、今行く!」
地下牢の外、恐らく見張りに立っていたであろう兵士達が慌ただしく去っていく物音がする。
気付けばそこには静寂が訪れ彼、シーマス・チットウッドの細い呼吸の音だけが響くようになっていた。
「王が死んだ?あぁ、そうか・・・」
外の兵士達は今、何と話していたか。
王が死んだと、話していたのではないか。
そう、また王が死んだと。
「行か、なきゃ・・・あの方の、あの方の下に・・・」
そう掠れたように呟きながら、シーマスは前へと進む。
何日も何日も繰り返し糞尿を掛け続けた手枷は腐食し、ボロボロと崩れ落ちる。
その日、一人の男がジーク・オブライエンの邸宅から姿を消した。
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