【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく

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第一章 最果ての街キッパゲルラ

ついでの大成果

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「ユーリさん、その二人はどうしちゃったんですか?いつもは帰ってくるなり遊びまわってるのに・・・」

 冒険者ギルド、その受付の前で緊張した面持ちで依頼の清算を待っているユーリに、トリニアはそう問いかける。

「え?」

 怪訝そうな表情でユーリの背後へと視線を向けるトリニアに、彼が振り返る。

「ねーねー、ボロボロな剣を綺麗にする方法って知らない?」
「ネロ!錆だよ、錆を取る方法を聞かないと!」
「あ、そうだった!錆だった錆!」

 するとそこには、周囲に何やら熱心に聞いて回っているネロとプティの姿があった。

「あぁ、あれはまぁ何と言うか・・・遊びみたいなものなので、お気になさらず」
「はぁ・・・」

 普段は帰ってくるなりギルド内を遊びまわり、周りからチヤホヤされていた二人のそんな姿にトリニアは戸惑っていた。
 しかしユーリはそれもいつも遊びの範疇だと笑うと、どこか真剣な表情でトリニアへと向き直っていた。

「そ、それよりもですね。トリニアさん、これで機嫌を直してくれませんかね?」
「へ?機嫌って、別にそんなの私・・・」

 受付のカウンターに差し出された山盛りの万霊草は、ユーリがトリニアの機嫌を取るために採ってきた捧げものだ。
 それを前に窺うような視線を向けるユーリに、トリニアは何を言っているのか分からないと首を傾げる。

「あぁ、そっかあの時の・・・ふーんそうなんだ、気にしてくれてるんだ。そっかそっか・・・ふふふっ、だったらちょっとからかっちゃおうかな?」

 しかしそれも、僅かな間だけだ。
 すぐにユーリが何の事を言っているのか思い出したトリニアは、僅かに顔を横に背けると唇に指を添える。
 その唇には、悪戯な笑みが浮かんでいた。

「そうですね・・・だったら少し頼み事しちゃおうかな?前にお願いしようとしていた依頼なんですけど、それをこなしてきてくれるなら許してあげても―――」

 こちらの機嫌を取りたいユーリに、トリニアは悪戯に微笑むと難しい依頼を彼へと吹っ掛ける。

「あ、おっさんおっさん!錆を取るのにいい方法って知らなーい?」
「駄目だよネロ、そんな風に呼んじゃ!え、えっと・・・オーソンさん、教えてくれませんか?」
「あぁ、錆取りだぁ?こっちはそれどころじゃねぇんだよ!てめぇらにやられた傷が癒えて、ようやく前から頼まれてた仕事に取り掛かろうとしてんだ。邪魔すんじゃねぇよ!!」
「ぶー!!どうせ大した仕事じゃないんだし、別にいいじゃーん!」
「あん?大した仕事じゃないだぁ!ふっふっふ・・・聞いて驚くなよ、俺様はこれからイエローグラスドラゴンの討伐に―――」

 そのユーリの背後では、ネロとプティの二人が仕事に向かおうとしているオーソンに絡んでいた。

「あ、それならもう討伐しときましたよ」

 それにあっさりと討伐したと告げるユーリ。

「「はぁ!!?」」

 面食らう二人。

「お、おい!?吹かしてんじゃねぇぞ!!イエローグラスドラゴンって言ったら、このギルドの冒険者が総出で掛かってもいけるかどうかって魔物なんだぞ!?」
「そ、そうですよ!いくらユーリさん達が最近調子いいからって、それは流石に・・・」

 聞き捨てならない台詞に、オーソンは慌てて背後からユーリの下へと割り込んでくる。
 トリニアもまたその台詞が信じられないと、オーソンの言葉に賛同を示していた。

「え、でも本当に討伐したので・・・あ、そうだこれが証拠です。これがその、イエローグラスドラゴン?であってますよね?」

 二人の言葉にユーリが差し出したのは、その名前の由来ともなった草状のヒレの部分だった。

「「は?」」

 あっさりと証拠の品を出してきたユーリに、二人は再び硬直する。

「う、嘘だろ!?そ、そうだよなトリニア!?何か別の魔物と勘違いしてるだけだよな!?」
「・・・あってます。これはイエローグラスドラゴンのヒレで間違いありません」

 そして僅かな間の後、再び動き出したオーソンはそんな訳がないと叫ぶ。
 しかしユーリからそれを受け取り手元の台帳とじっくりと見比べたトリニアは、ゆっくりと首を振るとその慄然とした事実を告げていた。

「う、嘘だろー!!?イエローグラスドラゴンだぞ!?それをお前とあのガキんちょ二人だけで倒すなんて・・・そんなの、そんなの出来る訳ねーだろぉぉぉ!!?」

 その信じられない事実に、オーソンは両手で頭を掻き毟りながら叫ぶ。
 彼が口にした言葉に、周りの冒険者達にもその事実が伝わり、ざわざわとざわめきが広がっていく。

「あれ、もしかして不味かったですかね?何か襲い掛かってきたんで、倒しちゃっただけなんですけど・・・」

 そんな中で一人、ユーリだけが状況がよく分かっていない様子で申し訳なさそうに頭を掻いていた。
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