暗闇の安息

爺誤

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 王の血を引くものとしての私の存在を知っていたのは、王と父だけだった。
 確かに私を産んだのは母だったはずだが、伏せられたまま私の母親は死んだことになっていた。父は、王の落胤を実子として育て上げた忠義の臣として賞賛を浴びた。テダグ侯爵家の後継者として私の評価が高かったことが、いい方向へ転んだのだろう。

「テダグ侯爵、これまでの厚遇に感謝します」

 最後に、家族としての言葉が貰えるのではないかと期待したけれど、手本のような一礼ですべてが終わった。去っていく父の後姿をじっと見ていると、背後からぽんと肩を叩かれる。

「髪を染めていたのか。うまく隠したものだ」
「国王陛下」
「水臭い。父上と呼びなさい」
「すぐには、難しく……申し訳ございません」

 賢王と呼び声の高い国王だが、私をもうけた経緯がおそらく母を無理矢理、というところが恐ろしい。ねっとりと頭の上から下まで舐めまわすように見つめられて、前王太子の放蕩を止めなかったのは私を引っ張り出すためだったのではないかと穿った考えと、恐怖がこみ上げる。

 その恐怖は間違いではなかった。

 立太子式を執り行ったのち、私は国王の寝所に呼ばれた。
 人払いをされ、全裸になるように告げられる。

「テダグ侯爵に酷い目に合わされていなかったか、この父に確認させておくれ」

 そう言われてしまえば、抵抗することもできない。座っている国王に、見上げるのは嫌だから寝台に横になれと言われて、逆らえなかった。

「ふ、母親にも多少似ているところがあるようだ」
「私の……母は、どのような方だったのでしょうか」

 公式には亡くなったことになっている架空の母について尋ねてみると、国王は目を細めて呟いた。

「わたしの欲しいものを持っている女だったよ。だから奪ってみた。孕んでくれて良かった。あの男は、永遠にわたしを憎むだろう」
「父を……侯爵を」
「黙れ」

 話しながら立ち上がり、寝台の端からじゃらりと鎖のついた手枷を取り出して、さっと私の腕にはめてしまった。

「なにをっ」
「お前はわたしのものだ」
「ひっ……陛下、おやめくださ……っ」
「わたしは優しいからね、良くしてあげるよ」
「誰か……っん」
「あまり騒ぐのは困るから、これだけは仕方ないね」

 口に何かを入れられ、頭の後ろでカチリと音がする。うめき声しか出せなくなり、慌てて抵抗しようとするが、鎖の端はベッドの支柱に繋がっていて、仰向けに両手を広げた状態で固定された。

 笑う国王が、私の腹の上で小瓶を傾けて液体を垂らす。

「これは催淫効果のある香油だ。男の身体は濡れないから不便だが、女よりも悦楽を得られるそうだよ」

 どこか他人事の国王が、腹に落ちた香油を私の性器まで伸ばした。陰茎が熱に包まれたように熱くなって、芯を持ち始める。こんなこと、狂っている。

「う~~っ!」
「名はラヴィか。初めての男はわたしだと、よく覚えておくがいい」

 国王は芯を持った性器を通りすぎ、その奥にある孔に指を伸ばした。外側に香油を揉みこまれ、じんじんと熱くなっていく。どうしてそんな場所に触れるのか、意図が読めなくて恐ろしい。逃げようがないのに、必死で身体を捩ったが、指が……中に入れられた。

 痛みはなかった。
 だけど、そこを暴くのは何故か。
 見たくはなかったけれど、国王の姿をじっと見ると、おぞましいモノが頭をもたげているのに気付く。
 まさか。実の親だ。そんなことが許されるはずがない。

「ずいぶん綺麗に生きてきたのだな」

 首を振りながら、意図せず、涙がぼたぼたと落ちていくのを、国王が舐めて笑う。知らない香り、これが父親だなんて嘘だ。

「怖くない、ただの行為だ」
「うぅううう……!」

 言葉と同時に、ソレが、私のナカに入ってきた。圧迫感はあったけれど、痛みはない。それどころ、内側がぞわぞわとざわめくように何かがせりあがってくる。

「ずいぶん悦さそうじゃないか」
「ふぐっ……っん!」

 私の勃ち上がった陰茎を楽しそうに指先で弾く国王。
 後ろ姿の父を思い出す。助けて、助けて。

 たっぷりと垂らされた香油の効果は絶大だったのか、私はすぐに射精した。絶望感に浸る間も与えられず、国王の動きは止まらない。

「ああ、いい泣き顔だ。母親によく似ている」
「ぅ……う゛うっ……」
「孕まないのは残念だが、たっぷり注いでやるからな」
「~~っ!」

 ぬちゅ、くちっ、と抽挿のたびに卑猥な音と、王の満足げな吐息が聞こえてくる。

「ほら、よく味わえ。息子よ」
「っ……っ……!」

 国王の陰毛が擦りつけられて、深い場所が濡らされる感覚がする。こんなことが許されるのか。
 逃げたいのに、腰は痺れたように動かない。

「この、香油の困ったところは、わたしにも効果があることだ。ラヴィ……よく鍛えているおまえなら、耐えられるだろう」

 腹筋をなぞるように撫でられて、身体がふるえる。すると、抜かれていなかった国王のモノが、中で圧迫感を増した。そんな、終わらないなんて。

 国王がまた抽挿をはじめると、出されたものがぐちゅりと嫌な音を立て、嫌でも何が起きているかを意識させられる。
 陰茎を掴むと締まると笑われ、乳首を抓るとうねって気持ちがいいと褒められる。

 いつのまにか、口を塞いでいた器具が外されていたが、こんな姿を誰かに見られるわけにはいかないと、声を殺してただ懇願することしかできなかった。

「っ、お許し……ぅあ……く、ださ……ぁあ……ん」
「許すことはない。お前はなにも悪くないのだから」
「ぅ……ぅう……っふ……ゆるし……ぅ」
「いい身体だ。わたしなしでは、もう生きていけまい」
「あ、ぁあっ……っ!」

 もう何も出ない、と思っていたのに、尿道を抉られて精液ではない何かが噴き出した。

「ひ、いや……あ……」
「はは、これは、良い時に出るものだ。ラヴィ、お前は覚えがいい」
「ああ……っ」

 もうだめだ。絶望の先があるとは思わなかった。
 助けてくれ、いや、助けなくていい。誰か終わらせてほしい。
 ああ、リュード、あの子に知られる前に。
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