上 下
257 / 338

245 盾とゴーレム

しおりを挟む

 今日は純白猫へのお礼の素材集めと、ついでに≪太古結晶暗黒盾ゴーレム≫の取り回しの練習が目的だ。
 だからペースは緩い。
 前回が全力疾走だったから、余計にそう感じる。

 瞬間移動を繰り返しながら、ノンストップ一時間だったからな。
 あの時は流石に疲れた。
 タマはすごく楽しそうだった。
 が、俺にはあの高速戦闘は辛い。

 何がって、全力で突き進んで行くタマに合わせるのが、だ。
 タマは全速力で移動しつつ、敵を粉砕していく。
 そんなタマに付いて行きながらタマが敢えて残した敵を砕き、アイテムを拾って追いかける。

 ≪強欲≫のスキルを念じるだけで発動すれば、半径20mの範囲のドロップアイテムは全て拾える。
 そうでなければとても追いつけない。
 持ってて良かった≪強欲≫。

 ミルキーの≪思念詠唱≫も便利だ。
 本来必要な、スキル名の発声がいらなくなる。
 スキルを連打するのに凄く便利だし、前回みたいな超高速アイテム拾いにも有用だ。
 一々叫んでたら舌を噛んでしまう。

 今日は普通に歩いて、出会った敵を俺が盾で粉砕する。
 タマは退屈がっていたから、別行動を許可した。
 このエリアで脅威になるモンスターはいないからな。
 そもそも、タマの脅威になるモンスターがこのゲーム内に存在してるか謎だ。

 さて、しばらく試してみたが、この盾はやっぱり使い勝手がいい。
 受け取った直後くらいしかろくに使ってなかったのが勿体ない。
 攻撃手段が豊富だったり、攻撃を防ぐ場面が少なかったのもあるが、勿体ない。

 まず普通に殴ってもよし。
 相手は死ぬ。
 
 次は投げても良し。
 相手は死ぬ。
 ≪シールドブーメラン≫を使うと瞬間的に自動で帰って来るから楽。

 スキルの弾速がかなりのもので、すごい勢いで飛んで帰ってくる。
 無属性攻撃だから超連打できる。
 スキルを使わなくてもゴーレムなので、帰ってこいと言うと自動で帰っては来る。

 射出しても良し。
 盾自体が≪自律行動≫≪遠隔操作≫≪浮遊≫≪飛翔≫のスキルを所持しているから思考で操作出来る。

 だから自由自在に操れる。
 そのままぶつければ、空飛ぶ鈍器だ。
 ≪五体解放≫に空中を蹴る能力が無ければ縦横無尽に飛ばして、足場にして駆け回るかっこいい戦法が使えたかもしれない。

 飛行速度は≪Int≫と≪Dex≫に依存するとかで、俺のステータスだと滅茶苦茶速い。
 瞬間移動が無ければ俺の全力疾走と同じくらいの速さで飛ぶことが判明した。
 こんなのぶつけられたら間違いなく痛い。
 ≪ダイヤモンドナイト≫だって木端微塵だ。

 さて、次は自律行動も試してみるか。
 どのくらいの命令が聞けるか、という実験だ。

「俺を守れ」

 盾ゴーレムが空中に浮かぶ。
 俺の周囲をふよふよと漂っている。
 歩くと、邪魔にならないようについてくる。

 これで敵に遭遇してみるか。

 少し探すと、≪エメラルドナイト≫と≪ブラックダイヤモンドナイト≫がいた。
 二体ともこちらに気付いて向かってくる。
 よし、盾の性能を試すチャンスだ。

 移動速度は≪エメラルドナイト≫の方が早い。
 走ってきた勢いそのままに、右手の短剣で切り付けてくる。

 ギィン!

 盾が俺を庇うように攻撃を受けた。
 甲高い音が響くが、頼もしいくらいにびくともしていない。

 ブラックダイヤが向かってきながら、攻撃魔法を連続で放ってくる。
 微妙に散らされたそれらも、盾が受け止めた。
 確かMdefの方が高かったし、なんともない。
 流石、イカ産の素材で強化しただけはある。

 何もせず、しばらく様子を見てみた。
 近接攻撃も魔法攻撃も、盾は全て防いで見せた。
 二体の前後からの連続攻撃ですら、完全ガードだ。

 なんかものすごいアクロバティックな動きだった。
 おお、防ぐだけじゃなく、押し返したり弾いたりも出来るのか。
 高性能だ。

「攻撃しろ」

 試しに命令してみると、盾の動きが変わった。
 それまで俺を守るのが優先だったからか、一切攻撃はしていなかった。
 それが、命令した途端に高速回転しながらエメラルドナイトの胴部に接触した。

 大量のダメージを垂れ流したと思ったら、一瞬にしてエメラルドナイトは切断されてしまった。
 えぐい。
 盾はそのまま向こう側へ飛んでいく。

 ブラックダイヤモンドの剣が俺の背中を通り抜けた。
 どうやら≪Miss≫のようだ。
 振り向くと同時に、弧を描くようにして高速で戻ってきた盾の先端が、ブラックダイヤモンドナイトの横腹に突き刺さった。

 衝撃でブラックダイモンドナイトは爆散した。
 強い。

 それからしばらく、いくつもの命令をして試した。
 ≪あいつを狙え≫くらいまではいけた。
 ただ、≪あいつに体当たりをしてから次はそいつ、一旦俺を守ってから突撃≫みたいなのは駄目だった。
 動きが止まったりはしなかったが、従ってはくれなかった。

 短い命令じゃないと難しいらしい。
 新しい命令をすると、それまでの命令は破棄される。
 攻撃しつつ防御等、系統の違う命令を二つ同時には行えない。

 逆に、系統が同じなら二つで一つの命令として扱える。
 これがポイントだ。
 俺の頭と左手に持ったフルーツを守れという命令は受け付けた。
 俺の頭と左手に持ったフルーツと、右手に持ったフルーツを守れという命令は受け付けなかった。

 多分、二人までなら同時に守れるんじゃないだろうか。
 二人の間の距離と相手の数にも寄るんだろうけどな。
 それでも心強いことには変わりない。

 この盾、もう一つ欲しいな。
 ミルキーの職業が盾の名が付くものだったし、今の小盾じゃ心許ない気がしてきた。
 ゴーレム結晶だったっけ。

 あれをもう一個手に入れて、マッスル☆タケダに依頼するか。
 俺の盾の強化のアイデアもあるしな。
 よし、そうしよう。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

バイクごと異世界に転移したので美人店主と宅配弁当屋はじめました

福山陽士
ファンタジー
弁当屋でバイトをしていた大鳳正義《おおほうまさよし》は、突然宅配バイクごと異世界に転移してしまった。 現代日本とは何もかも違う世界に途方に暮れていた、その時。 「君、どうしたの?」 親切な女性、カルディナに助けてもらう。 カルディナは立地が悪すぎて今にも潰れそうになっている、定食屋の店主だった。 正義は助けてもらったお礼に「宅配をすればどう?」と提案。 カルディナの親友、魔法使いのララーベリントと共に店の再建に励むこととなったのだった。 『温かい料理を運ぶ』という概念がない世界で、みんなに美味しい料理を届けていく話。 ※のんびり進行です

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

異世界転移したので、のんびり楽しみます。

ゆーふー
ファンタジー
信号無視した車に轢かれ、命を落としたことをきっかけに異世界に転移することに。異世界で長生きするために主人公が望んだのは、「のんびり過ごせる力」 主人公は神様に貰った力でのんびり平和に長生きできるのか。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

処理中です...