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60 パーティー参加の準備
しおりを挟むパーティー当日の朝がやってきた。
というかもうお昼前だ。
いつの間にか寝てしまっていたらしい。
「起きたかモジャマサー!」
「ん、おお、おはようタマ」
メッセージの返信は……来ている。
『パーティーですか。私で良ければご一緒させてください』
おお。
OKもらえた。
良かった。
しかし寝てしまうとは思わなかった。
早く返事をしないと。
『すみません、寝てしまっていました。ありがとうございます。パーティーは夜からみたいなんですが、衣装を借りるなら14時には来いと招待状に書かれてます。
俺は借りようと思いますが、ドレス持ってますか?』
よし、これでいいか。
お昼を食べながらミルキーからの返事を待とう。
食べ終わる頃に返事が来た。
ミルキーもドレスは持っていないらしい。
それもそうか。
俺より後にこの世界に来たのにドレスを持ってたらすごい。
二人で14時から城へ向かうことになった。
遅れたらパシオンに何を言われるか分からないし、ミルキーとは13時くらいに街の南側で待ち合わせをした。
無事に合流し、露店なんかを見ながら北の端にある城へ向けて歩いていく。
「見てくださいナガマサさん、変わったアイテムがありますよ」
「ほんとですね。これは……なんだろう」
立ち並ぶ露店の一つで、ミルキーが何かに反応した。
パッと見は短い杖みたいだ。
木で出来ていて、長さは四十cmくらいか?
先端には輪っかが付いている。
中には何も無い。
本当にただの輪っかだ。
「おっ、気になるかい?」
「これって何に使うんですか?」
店主が話しかけてきた。
プレイヤーだ。
名前はミカゲというらしい。
「ああ、それな。何となく作ってみたら出来たアイテムだよ。SPを込めると……」
「込めると?」
「ザラザラする」
「ザラザラする」
「ほんとだ、ザラザラします……」
「ザラザラー!」
言われた言葉を繰り返してみるが、意味が分からない。
思った以上に使い道のなさそうなアイテムだった。
一体何に使うんだ。
ミルキーも実際に試しているようだ。
触りながら呟いているけどその表情は困惑している。
使い道を聞いてみた。
「ははっ、何に使うんだろうな」
ミカゲにも分からないらしい。
どうしてそんなものが出来るんだ。
自由だな。
そうこうしてる内に城についた。
門には当然門番がいる。
「止まれ。許可の無い者の立ち入りは禁じられている」
「さいきょーのタマの前に立つとはおもしろもがもが」
そして当然止められた。
タマが謎の強者感を出して前に出ようとするのを口を塞いで止める。
敵じゃないから大丈夫。
とりあえず招待状を差し出した。
「失礼しました。どうぞお通りください」
招待状の効果はあったようで、丁寧な態度で通らせてくれた。
脳味噌腐ってても王子だな。
「よく来たなナガマサ」
「あ、どうも。招待していただいてありがとうございます」
中へ入るとそこにはパシオンがいた。
タイミング良く通りかかったのかな。
とりあえずお礼を言っておく。
ミルキーも会釈をした。
「来たぞバカおーじ!」
「こら、本当の事でも言っていい事と悪い事があるんだぞタマ」
「それは私にバカ王子と言っているということだな?」
「すみません、つい本音が」
「ふむ、貴様の衣装は金の糸で織ったタキシードにしてやろう」
「すみません、以後気を付けます」
「ナガマサよ、そこは訂正するところじゃないのか」
そんな心温まる会話の後、俺とミルキーは分かれて衣装室へと向かった。
ミルキーはどこからか現れたメイドさんへ連れられて。
タマもミルキーの誘いでそっちへついて行った。
俺の方はパシオンが案内してくれている。
暇なのか?
「客の相手が面倒なのだ。私はミゼルの相手だけをして生きてゆきたいのだがな」
とのことだ。
相変わらず発想が怖い。
そのミゼルも今日の主役ということで気合いを入れた準備をしてるらしく、相手をしてくれないそうだ。
むしろいつも相手をしてくれることに感謝した方が良いと思う。
……ミゼルの全てに対して常に感謝してそうでなんか嫌だ。口には出さずにいよう。
「さて、貴様の衣装は金のタキシードだったな」
「えっ、本気だったんですか?」
「私もあれを着る度胸は無く、ずっと仕舞い込んでいたのだがな。流石、冒険者殿は勇気がおありだ」
「すみません勘弁してください」
「ちっ、冗談だったということにしてやろう」
必死に謝るとパシオンは許してくれた。
渋々って感じだったし、何か出そうとしたものを仕舞い込まなかったか?
しかもキラキラ光ってるように見えたけど、うん、きっと気のせいだ。
「まあこの辺りでいいだろう。着て見ろ」
「はい」
パシオンがいくつか選んでくれたのを試しに着てみる。
でも構造がよく分からない。
仕方ないのでストレージ経由で装備した。
この辺りゲームなのが便利だ。
試しに着た中でパシオンが決めてくれた。
正直どれが似合うとか分からないから助かった。
どれも似合ってないとしか思えないからな。
「着替えるのはもう少し後でいいだろう。その時にはメイド達にきちんと着つけてもらえ」
「はい、ありがとうございます」
衣装選びが終わった俺は客間に通された。
広い。
俺の過ごした部屋よりずっと広い。
「では私はミゼルの鎧の仕上がりを確認してくる。貴様はここでパートナー達を待っていろ。まさか二人も連れてくるとはな、意外とやるようだ」
「二人?」
「ではまた後でな」
「あ……」
二人ってどういうことだ?
誘ったのはミルキーだけだしそもそも女性の知り合いがミルキーしかいない。
疑問に思ってる間にパシオンはさっさと立ち去ってしまった。
こいつはいつもこうだな。
もしかしてタマのことなんだろうか。
ということは最初からタマのことを言ってた?
……まぁ、せっかくミルキーさんも来てくれたんだし楽しもう。
深いことは考えたらダメだ。
高そうなソファでくつろいで待とう。
コンコン、とノックの音が響く。
誰か来たみたいだ。
どうしよう。
俺が返事してしまってもいいんだろうか。
「ど、どうぞ」
「失礼します」
少しもどりながらも返事をすると、メイドさんが入ってきた。
何かカートみたいなものを押している。
「お茶のご用意を致しております。どうぞ」
「あ、どうも」
メイドさんがテキパキと紅茶を入れてくれた。
お礼を言ってカップに口を付ける。
美味しい。
紅茶の味の違いはよく分からないが美味しい。
メイドさんはテーブルの側に立ったまま動かない。
……気まずい。
ミルキー達の着替えってどのくらいかかるんだろう。
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