17 / 338
17 トラブル回避と初パーティー狩り
しおりを挟む†紅の牙†はミルキー相手に喧嘩腰で絡んでいる。
大きな声を上げて、明らかに脅かしている様子だ。
放ってはおけない。
「なぁおい、文句あんのか!?」
「う……」
「生意気そうな眼しやがって……なんだよ?」
助けると決めたものの、俺は走れない。
だからとりあえず歩いて二人に近寄った。
†紅の牙†に突撃していきそうなタマは抱えて抑え込んでいる。
頼むから少し大人しくしててくれ。
「まぁまぁまぁ、ちょっと落ち着きましょうよ」
怪訝そうな顔をしている†紅の牙†を無視して、二人の間に割って入る。
ミルキーを背中に隠すように男と対面する。
そんなに若くなさそうだけど一体何歳なんだろうか。
「さっきのやつか。オレはただモンスターを狩ってただけだぞ。その女が妙な言いがかりつけてきただけだ」
「言いがかりってそれはあなたが」
咄嗟に言い返そうとするミルキーに振り返って、静かにするようジェスチャーをする。
気持ちは分かるけど、今それを言っても火に油だ。
分かってくれたみたいで口を噤んでくれた。
この世界に来て……前の世界も合わせて、女の子の顔をこんなに近くで見たのは家族以外では初めてだ。
つい眺めてしまう。
ミルキーは肩よりも更に長い黒髪が似合う、真面目そうな女の子だ。
少しツリ目がちだけど、怖い印象はない。
あっと、見つめてる場合じゃない。
あいつをなんとかしないと。
「まぁこのくらいで許してあげましょうよ。そんな強そうな武器を見せられたら恐がっちゃいますって」
「ふん、オレの相棒は最強だからな。今日はこのくらいで許してやるよ。これに懲りたら妙な言いがかりつけてくるんじゃないぞ!」
それだけ言い残して、男は別の獲物を探して走り去っていった。
このゲームにスタミナとかはないらしく、一応走りたいだけ走れるらしい。
脳が疲れるから、限りがないわけではないとは思うんだけど。
「助けてもらってありがとうございました。でもあれはあの人が……」
ミルキーはお礼を言ってくれるくらいには冷静だった。
それでもやっぱり納得がいかなかったらしい。
気持ちは分かる。
「俺もさっきやられました。ミルキーさんは間違ってないですよ」
「ほんと有り得ないですよね」
「マナーなんて言ってられない部分があるのは分かるんですけどね」
そう、ここはもはやゲームの世界ではない。
理由は色々だろうが、肉体を捨てた俺達にとっては第二の人生。
生きるってことは必死にならないといけないことも多い。
それこそマナーやルールなんてものは、余裕があるからこそ成立するものだ。
この世界で『他の人が狙ってるモンスターを狩る』ことが禁止されてなければ、文句を言ったってどうしようもない。
それは事実だ。
だからといって、自分がそうするかはまた別の話なんだけど。
「私もついカッとなってしまって……本当にありがとうございました」
「いえいえ。ああいうのは関わらないのが一番ですからね。相棒も強そうでしたし」
「すごく怖かったです……」
恐怖がまだ残ってるのか顔色が悪い。
このまま放り出すのもなんかあれだな。
手元が狂って死んだりしたら大変だし。ちょっと様子を見たい。
「見えてるだろうけど、俺はナガマサっていいます。昨日始めたばかりの初心者なんですが、良かったら一緒に狩りをしませんか?」
「良いんですか?」
「正直一人だと心細いので」
本音だ。
だけどきっと目の前の彼女も一緒だろう。
さっきみたいな絡まれ方をすれば尚更だ。
「私も、一人で心細かったんです。宜しくお願いします」
こうして第二の人生で初のパーティーを組むことになった。
パーティーを組んでいると経験値が平等に分配されるらしい。
だから昨日はモグラとはパーティーを組んでいなかった。
スキルの補正がかかるのは分配された後の経験値のみで、パーティーメンバーに俺のスキルの倍率はかからないらしい。
残念だ。
「ナガマサさんの相棒ってその子なんですか?」
「そうですよ。何かよく分かってないんですけど。名前はタマです」
ミルキーの視線はタマに釘付けだ。
紹介すると、ゆっくり明滅しながらミルキーの方へふわふわ飛んでいく。
「よろしくね。うわぁ、ボールみたい」
「ミルキーさんの相棒ってなんなんですか?」
「私のはこれです」
ミルキーが差し出したのは、手鏡だった。
その大きさは30cmあるかないか?
素材も鏡部分以外はプラスチックっぽいし武器にはなりそうにない。
さっきの†紅の牙†みたいに武器そのものが相棒の人ってどのくらいいるんだろうね。
「じゃあ狩りに行きましょうか」
「はい!」
相変わらず誰も狙っていないモンスターの姿はほとんどない。
仕方ないから誰も狙わないオオカナヘビを中心に狩ることになる。
探すのに苦労するものの、狩り自体は順調だ。
マッスル☆タケダにもらった武器は中々の使い心地で、攻撃力も昨日使ってた『初心者用短剣』より強い。
ステータスもかなりがっつり上がってるおかげでさくさく倒せる。
「そのトカゲって結構強くないですか?」
「武器も新しいのにしたし、レベルもそこそこあるからだと思います」
「なるほどー」
ミルキーを驚かせるくらいにはさくさくだったようだ。
そんなミルキー自身も一人の時にオオカナヘビに攻撃してみたら案外強く、攻撃も当たらないし反撃は痛いしで、近くのプレイヤーに手伝ってもらってなんとか倒したことがあるそうだ。
今は隙を見て攻撃している。
パーティーを組んでるから攻撃しなくても経験値はきっちり半分もらえるが、何もしないのは嫌なんだそうだ。
さっきので分かってたけどミルキーさんは真面目な感じだ。
好感が持てる。
そしてレベルアップ。基本と職業レベル、両方だ。
女神のエフェクトが同時に発射された花火を握りつぶしていた。
怖いんだけど。
「おめです」
「ありがとう。ミルキーさんもおめでとう」
「ありです!」
ミルキーさんも同時にレベルアップした。
彼女はこれで2回目かな。
ちなみに、レベルアップ時のエフェクトは他のプレイヤーにも見えるようだ。
「じゃあ一旦休憩しましょう」
「はい」
その場に腰を下す。
レベルアップ時の操作は座ってのんびりやるのがいい。
特に急いでないしね。
「ん?」
思わず疑問の声を口に出してしまった。
これはなんだろう。
46
あなたにおすすめの小説
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~
黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜
音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった!
スキルスキル〜何かな何かな〜
ネットスーパー……?
これチートでしょ!?
当たりだよね!?
なになに……
注文できるのは、食材と調味料だけ?
完成品は?
カップ麺は?
え、私料理できないんだけど。
──詰みじゃん。
と思ったら、追放された料理人に拾われました。
素材しか買えない転移JK
追放された料理人
完成品ゼロ
便利アイテムなし
あるのは、調味料。
焼くだけなのに泣く。
塩で革命。
ソースで敗北。
そしてなぜかペンギンもいる。
今日も異世界で、
調味料無双しちゃいます!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる