大聖女様 世を謀る!

丁太郎。

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35話 大賢者である私の歓迎会1

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 「おはよーみんな」

 朝、ギルドの近くの飯店にてパーティーの皆と合流した。
 いつもここで合流することになっていると教わった。
 結構お客さんは多い。繁盛しているようだ
 お店の奥のテーブルに既に皆集まっていて、私が最後だった。
 乙女の朝は忙しいのだから致し方ないよね。
 今日は特にね。
 ちなみに朝のこのテーブルは、『ビフテの星』の指定席になってると後日聞いた。

「お早うミリー」

 リッキーを始め皆が挨拶してくれた。
 当然、セバっちゃんもいる。

 取り敢えず席に座ると、早速リッキーが皆に報告を開始する。

「みんな、ごめん今日は依頼が無いんだ」

 リッキーはいきなり謝った。

「まー、こんだけ商売敵が多いとなぁ」

「そうですね。しかしこの状況が続くと我々低ランクパーティーには厳しいですね」

 ムッツとレトリーは責めることも無く、状況を受け入れる。
 低ランクのパーティーの受けれる依頼は多くはない。
 今の冒険者過多の状況により、格上パーティーがその数少ない依頼も狙ってくる。
 今日リッキーはその早いもの勝ち競争に敗れたのだ。

「常設の依頼も無かったんだ?」

「うん。そうなんだよ」

 薬草もきっと集まり過ぎたんだろう。
 また、乱獲抑制の意味もあって、依頼が外されたと考えるべきか。
 セバっちゃんは何も言わない。
 ギルドの内情を話すことはないな。
 セバっちゃんだし。

「今はこの町に冒険者が集まってきちゃってるけど、そのうち居なくなるよ」

 私は確信を持って言っているけど、メンバー達には慰めに聞こえただろう。

「だといーな」

 ムッツが投げやりに答えた。

「それはそーとさ」

「ミリーどうしたの?」

「ビフテの星ってこれで全員?オーディションの時もっといなかった?」

「あー、そうだね」

「ふむ、確かビフテの星の構成員はオーディション時、6名でしたな」

「さすがセバっちゃん、全パーティの情報覚えてるの?」

「残念ながら、有名パーティーと、この町を拠点登録してるパーティーに限ります」

 全然残念そうではない。
 というか、いつもの様に無表情だ。

「うん、ミリーとセバさんを入れて8人になった所だね」

「後の3人は?」

 と私が質問した時、お店の人が私の席にジュースを置いた。

「!! …あの、すみません。頼んで無いです」

 店員さんは20歳くらいで、なかなか精悍な感じの女性だ。
 しかし何より私は内心の動揺を抑えるので必死だった。

「これは私のおごりさ。あんた、パーティーに入ったんだろ?私も一応『ビフテの星』の一員だからね」

「えっと、ありがとです。私はヒーラーのミリーです。宜しくです」

「噂のグレートマムを仲間にしたと聞いてたからどんな子かと思ったら、可愛らしい子じゃないか。私は元戦士のブレゼ、リッキルトの姉さ」

 えっ!、どういうこと?
 お店の店員さんで元戦士でリッキーのお姉さん。
 元ってなにさ。

「ミリー様はご存知ありませんでしたか。冒険者ギルドは昔から生産職や商人などの非戦闘職の加入を認めているのです。ギルドは依頼を集めやすくするため、生産者はギルドメンバー特典による依頼登録料割引のため。お互いにWinーWinなのです」

 私の頭上に浮かんだ?マークを感じたのか、セバっちゃんが説明してくれた。

「ま、そういうことさ。私は商人として登録してるけど、元は私も戦士で冒険者やってたからね。一応今でも戦えるよ」

「そういうことですか。でもどうして今はここに?」

「なに、大恋愛の末にここに嫁いだのさ。旦那は人見知りで厨房から出てこないが味は保証するよ。なんてったって料理の腕に惚れ込んだんだからね」

「大恋愛ねぇ。ほんとんど脅迫だったな。あれは」

「ムッツリ!余計なこと言うと、アンタの酒を激辛にしてやるよ?」

「ムッツリじゃねー!でも激辛は勘弁!」

 冗談でも料理を激辛にするとは言わないところに旦那さんの料理への愛情を感じる。
 ま、酒の方は購入品なんだろう。

「というわけで 今夜は歓迎会を開くからね。あと二人にも声かけとくから夕暮れ時に集まってくれ」

「リッキー」

「言いたいことはわかるけど、無駄だよ姉貴には逆らえないんだ」

 なるほどね、完全に牙を抜かれていますね。

「ところで私の分のジュースはないのですか?私も『ビフテの星』の新規加入者ですよ?」

「なんでいるのかなと思ってたけどさ、セバさんウチらのパーティーに入ったのかい。ま、それは済まなかった。お茶でもだすよ」

 そういってプレゼの姉御は厨房に入っていった。

「まぁ、そういうことだから今日は夕暮れ時まで解散で」

 こうして、暫し雑談をし今日は解散となった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「ミリー様は今日はどちらに?」

「特に用事も無いから、いつもどおりギルドの治療コーナーにでも行くよ」

「時に、先程プレゼ様を見た時に驚かれたようでしたが、なにかございましたか?」

「ん。まぁなんでも無いよ」

 びっくりなんてものじゃない。
 あれだけそっくりだなんて。
 別人だと頭では判っていても身構えてしまう。
 あな恐ろしや、恐ろしや。
 私はこの件に関しては思考を凍結させた。

 ギルドに着き、私は自分に与えられた席につく。
 暫くは紅茶を飲みながら今後の事を考える。

<この町の近くにダンジョンでも出来てくれるとポーションの件が生きてくるんだけどなあ。流石にそこまでご都合主義な展開はないかぁ>

 流石なる私であってもダンジョンは作れない。
 そもそもダンジョンについては、メカニズムが全然判ってはいないのだ。
 ダンジョンが発生させる宝物とか何処から持ってくるのやら。
 ダンジョンはまあいいや。

 何にせよ、これ以上、策を巡らせるのは悪手になるかも知れない。
 やはり流れに身を任せよう。
 第一メンドイ。

 今回ポリシーに反して、ひと仕事している。
 次はリリー先輩のターンだろう。
 相手の動きを待つことにしよ。

 しばらく ボーーーーーーーーーーーーー としていると、今日は私がいることに気づいたのかお客さんが並びだした。
 そしてあっという間に行列になった。
 その中に覚えのある顔があった。
 名前は知らないけどね。

<あ!、いつものヤツがいる。アイツはいつも怪我もしてないのに並ぶ。そんなに蹴られたいなら今日もきっちり蹴ってやろう!>

 ミリーはその男、ブレイドを見てニヤリと笑った。


===============


「あんた! ひょっとして『ソードマスター』のブレイドさんか?」

 行列に並んでいる男に、同じく並んでいる三角巾で左腕を吊っている男が話しかけた。

「ああ。そうだ」

 話しかけられた男、ブレイドが答えた。

「そりゃ光栄だ!でもあんた見たところ怪我してなくないか?」

「まあな」

 面倒くさそうに、しかし律儀に答えるブレイド。

「あ!ひょっとしてあれか?G様のハイキック狙いかい?」

「あ、あぁそうだ!そうだとも」

 思い出したのか一瞬恍惚の表情を浮かべるブレイド。

「悪い。そりゃ邪魔したな。天国見れるといいな」

 以降、男がブレイドに話しかける事はなかった。

<『剣武』が解散したって聞いたけど、なるほど、G様の信者になっちまったのか>


ーーーーーーーーーーーーーーー


 数日前に話は遡る。
 ブレイド率いる『剣武』は先日のオーディションで姑息な手を使い、最後まで残ることすら出来なかった。

 そしてミリミリことミリーが、Sランクの爺さんたちや、『龍殺』のルキメデをいとも簡単に下した光景を目の当たりにし、自分では到底勝てない事を知った。
 因みにブレイドには爺さん二人の正体が判っていたがどうでもいいことだった。

 オーディション後、龍殺は直ぐに町を出ていったが剣武は残った。
 やはりヒーラー無しで活動は難しい。

 しかしそれ以上にブレイドはミリーに会いたかった。
 ミリーがギルドで診療コーナーを開いた初期は真当な患者ばかりだった。
 ふらっとギルドに立ち寄ったブレイドは診療コーナーの存在を知り、ミリーに会いたい一心で並んでしまった。
 怪我もしてないのに。

「怪我もしてないのに並ぶんじゃねー!」

 結果、有難いお言葉と共にハイキックを貰ったブレイド。
 ブレイドはもろに食らった。
 Aランクのブレイドが躱せなかったのだ。
 そして刹那の至福『パンチラ』と脳天に突き抜ける衝撃。
 その後にくる、えも言われぬ爽快感と快感を得てしまった。
 そう、ミリーのハイキックの餌食第1号はブレイドだった。
 お金を払いながらブレイドは気づいた。
 ほっぺたを腫らした今は怪我人であると。
 であれば正式に並ぶ事ができるじゃないか!
 ブレイドはお金を払い
 そそくさと行列の最後尾に並び直すのだった。

 その日の夜、ブレイドはメンバーを集めると、パーティーを抜ける事を宣言。
 リーダーとしての求心力を失ってしまったブレイドを引き止める者はなく、他のメンバーから解散を提案された。
 ここにAランクパーティー『剣武』は消滅した。

 こうして晴れてブレイドはG様の熱烈な信者に生まれ変わった。
 次の日以降、毎日怪我もしてないのに意気揚々と行列に並ぶブレイド。
 その表情は晴れ晴れとして幸せそうであった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


 そしてミリーが早朝の孤児院に寄った本日。
 今日はG様がギルドにいるとの情報を情報屋から仕入れ、急ぎギルドに向かったブレイド。
 すでに行列が出来ている。

 ブレイドは行列に並んだ。
 この待っている間のワクワク感が好きだった。
 そしてブレイドはそこで同じく怪我もしてないのに行列に並ぶかつての仲間がいることに気づいた。

 ブレイドの行為はしっかり他の信者に見られており、真似をする信者が続出したのだ。
 G様はそんな信者の期待に必ず応え、痛快なハイキックを下さるのだった。

「お前らもか!」

「元リーダー!あんたもか!」

 一度は別れたパーティーメンバー達。
 しかしG様という強力な求心力を持った人物の登場で再び団結したのだった。

 この日、新たなるAランクパーティー『G様親衛隊』が結成された。
『G様親衛隊』のパーティー登録申請の登録処理をしながらセバは思う。

<『剣武』が無くなった損失は大きい。ミリー様には、この損失分をきっちり払って貰わねばなりませんな>
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