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決戦の日①
しおりを挟む「セルジュ様、お忙しい中お時間を割いていただきありがとうございます。先日の使用人の件で王妃様方が賠償をしてくれるということでしたので、その話にセルジュ様を交えないのはあまりにもおかしな話でしたから」
「構わない。それにしても、国が賠償するなど……どんなトリックを使ったんだ?」
「トリックだなんてそんな。ただ、公の場で少し、王妃様の行いを非難しただけですよ。そしたら快く賠償や補填する旨は同意していただけました」
お茶会から帰ってきて事の顛末を伝えるとセルジュ様は驚きつつも、財産や没収された宝石が戻ってくる可能性があることに喜んでくれた。親友をコケにしたので、怒られると思ったが怒られなくて一先ず安心した。
そこからは時間をかけると反論の余地を与えてしまう可能性があるので、急いでニコラエヴナが懇意にしている弁護士に依頼し、特急で書類と賠償請求書などの作成をしてもらった。
うちのお抱えの弁護士ということもあり、特急料金に加え、追加報酬も馬鹿にならなかったけれど。推しが幸せならこの程度の出費屁でもないわ。……散財したせいでしばらくは新作の演劇の鑑賞を控えるけれど。
「だが、金貨4億枚はかなり額が高すぎないか?ビスチェや国王の私財で賄える金額じゃないぞ」
「その全てを現金で補填しろ、だなんて言いませんわ。例えば、セルジュ様のお祖母様が所持していた宝石たちも没収されたのでしょう?それを不足分の補填に、と考えております」
「――!」
そう、ここまで法外な賠償と補填金を請求したのは、なにも現金で払ってもらうためではない。減額されても痛くない値段の金額を提示し、引き下げられてもそれなりの金額を提示するための金額の値が必要だっただけ。
セルジュ様は幼い頃はお祖母様ッ子で、お祖母様に大切に育てられた。だからこそ、身に着ける宝飾品はお祖母様の形見ばかりなのだ。そんなセルジュ様が大切な物を取り上げられて悲しい思いをしているのなら、その大切な物を取り戻して差し上げたいと思うのはファンとして当然のことだ。
「全額、全ての宝石を取り戻せないのは心苦しいばかりですわ」
「仕方がない、弁護士もそれが仕事だ。それにお祖母様の形見が少しでも戻ってくるのなら、それに越したことはない。俺のせいでお祖母様が大切にしていた物の大半を失ったのだからな」
「形あるものはいずれ何かで失うものですわ。それが早かったというだけ。セルジュ様の責任……はあるかもしれませんけれど、今回は絶対に少しでも手元に戻るのだから、その幸いを噛みしめましょう」
「そう……だな。そういう考えもあるのだな。王妃相手の交渉の場に引き受けてくれる弁護士がいただけでも喜ばしいことだよな。……弁護士費用は高くついたがな」
弁護士には追加報酬で30%を支払う予定になっているし、仮に4億取れたとしても1億2000万は弁護士に取られてしまうのだ。
その分、弁護士は金をむしり取る才能に関してはニコラエヴナとしても信用を置いている。
「裏工作」もしたし、準備は万端だ。
そしてお茶会から2日後の今日、ビスチェ様が弁護士を伴ってヴェルレー家を訪れた。
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