お狐様の恩返し

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お狐様の行進

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 人が来たのを察知して毎回ベットの下に入り込む。耳が良いらしいけど本当なんだね。驚いたよ。

「はぁー、せめて世話係くらいまともな人なら良かったのになぁ」

 子狐が顔を上げて首を傾げ、こちらを見た。うん、安定の可愛さだね。

「いや、僕がこうも弱いと身の回りのことが上手くできないんだよ。今度父上が来たときにでもまた頼もうかな?あーでも、頼んでも最初だけだし、サボってるのチクッたってまた言われるし………死ぬまでこれでいっかなぁー」

 そんな独り言を呟いていたら子狐は眠そうに欠伸をした。狐さんに言っても仕方ないことだよね……。僕って医者にも言われたけどさぁ、このままだと死んじゃうらしいし、回復したこと殆ど無いし……。

「発見!!……その方から離れろ!」

 え…窓から狐面をつけた女の子が入ってきたんだけど………。何だろ?ばっと近づいてきて子狐を手で抱えて、僕の喉元にナイフをあてた。

「何が目的?財産?力?なんで傷つけるの?」

 女の子は一気に言ったね。いや、話が見えないんだけど。この状況、人生で初めてかも?

「………?この子狐の飼い主さん?」

 はっ!分かった。この子がきっと飼い主で心配して探し回ってたんだ。うーん、でも王宮に入り込むぐらいだから違うのかな…?

「キュ~!キュ」

 あ、初めて子狐が喋った。良かった。喋れるようになったんだね。女の子がナイフをしまい、床に降りていきなり土下座した。

「ごめんなさい!!傷つけたのは人間って聞いてたからついあなたが傷つけて誘拐したのかと思っちゃって。よく見たらちゃんと手当もされてるのに本当にごめんなさい」

 あれ?僕まだ経緯とか話してないのに理解した?

「あの…申し訳ないんだけどお礼また今度させて下さい。今は忙しくてごめんね」

 そう言って子狐を抱え来たときのように窓から出ていってしまった。えー、狐さん…もうお別れかぁ。ペットって癒やしって言うけど本当だったね。

「おい、聞いたか?お狐様の行進始まったらしいぞ」

「まじか!年に数回狐面の人たちがふらっと来て街とかの悪事や危険な魔獣を狩ってくれるんだろ?」

「そうそう。しかも全員が全員強いらしいし、1度は合ってみたいよなぁ」

「基本あの人たち話しかけても無視するし、言いたいことだけ言うからなぁ。気まぐれだし」

 窓の外から聞こえた会話に耳を澄まし聞いてたんだけど、お狐様の行進かぁ。確か僕が産まれる前からあったらしいね。狐の面を被った謎の人たちがその日一斉に貢献することからお狐様の行進と言われるようになったって。ただ、なんのために誰が率いているのか全くの謎で不可思議な集団とも言われている。……今の子ももしかしたらお狐様の1人なのかもしれないなぁ。僕は薬を飲み忘れてベットに倒れるように眠った。
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