幼女と執事が異世界で

天界

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第2章

22,お買い物 Part,1

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 屋外へ出るとそこには道を急ぐたくさんの人と呼び込みの喧騒でかなりの賑わいを見せていた。
 まだ日の出から2時間も経っていないはずなのに、すでにラッシュの街は活発に動き始めているらしい。
 昨日は閉まっていた店が開いていて、たくさんの野菜や肉や布やよくわからない道具なんかを所狭しと並べている。
 道行く人は割りと早足で急ぐ普通の服を着た人と、鎧を着込んだりローブを着たりしてゆっくり歩いている人で大別されているようだ。
 一般町民が前者で冒険者は後者といった具合だろうか。

 篝火で照らされた町並みとはまったく違っていて、2つの太陽に照らされた町並みは昨日みた街とはとても思えないくらいだ。


「夜見た時とは全然違うなぁ……」


 立ち止まって喧騒溢れる活気に満ちた街の様子を見ながら呟く。
 海鳥亭の扉を潜ってすぐに立ち止まったオレに合わせて手を繋いでいるアルも何も言わずに付き合ってくれている。
 活気に溢れた街を見ているのも悪くなかったが、今日は買い物をするつもりなのだしいつまでも見ているわけにはいかない。
 だが、冒険者ギルドの方に歩きだしてから気づいた。


「あ……店の場所とか知らない……」

「その点に関してましては女将に色々と確認してありますので、ご安心ください」

「おぉ……やるなー何時の間にーえらいえらい」


 さすがは万能執事君だ。事前に調べてくれていたようだ、実にありがたい。
 きっとお湯とかのときにでも聞いておいたのだろう。
 気が利くのは大変よろしい。いいぞもっとやれ!


「それで、どんなお店の情報を仕入れておいたの?」

「まずは洋服店の飛翼洋服店。
 日用品等が手に入る雑貨屋――リューネの雑貨屋。
 その他冒険用の小道具が手に入る道具屋――鳶。
 初心者用の武器防具が手に入る総合店――オーラシア武具店の4つにございます」

「おーとりあえず、必要そうなところは押さえてあるねー。
 情報関係が手に入る図書館とかは調べて置いた?」

「申し訳ございません。図書館の場所は聞いておりませんでした」


 道の隅の方に移動してから話していたが、深々と頭を下げるアル。結構人出があるのでそういうのはやめてほしい。
 道行く人が何事かと視線を向けている。


「アル、人が見てるから頭あげて。
 2人きりの時以外はそういうのはちょっとやめてね?」

「申し訳ありません、ワタリ様。不肖アル、肝に銘じておきます」

「うん、まぁお店に行ってから買い物ついでに図書館の場所は聞けばいいよ。
 別に急いでないしねぇー」

「寛大なご処置ありがとうございます」


 今度は軽く目を伏せて頭を少し下げるだけのアル。ちゃんと言えばわかってくれるのだ。
 なのでいちいち目くじらを立てる必要はない。
 最初のお店の場所に行くために、アルに向かって手を差し出す。
 それを恭しい態度でそっと優しく包み込むように握ると一緒に歩き出した。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 最初のお店は洋服店だ。
 冒険者ギルドから結構近いところにあったのですぐ着いた。
 お店から冒険者ギルドの大きな建物が見えるくらいに近い。
 店先にもたくさんの服が木のハンガーにかけられて並べてある。古着とかも扱っていそうな感じだ。
 別に新品に拘るつもりもないので問題ない。当面の着替えと下着が手に入れば問題ないわけだしな。

 さっそく軒先の服から見ていくが、どうみても子供服ではない。
 アルは着れそうだけど、オレにはぶかぶかだ。
 ちょうどいいので最初にアルのを選んでしまおう。


「アル、どんなのがいい?」

「ワタリ様に選んで頂ける物でしたら、どんな物でも唯一無二の宝にございます」

「……いやいやいや、そういうのが一番困るんだよ?
 自分が着たい服くらい自分で選ぼうや……」


 真面目な顔と口調でのたまうものだから、半眼で溜め息を吐きつつ返してしまった。
 所謂何食べたい? なんでもいいよ、である。
 これが一番困るのだ。相手に合わせるという譲歩の意もあるだろうが、選ぶこっちの身にもなってほしい。
 正直自分の物は自分で選んで欲しい。これ見よがしに溜め息をついたというのにアルは自分で選ぶ気はないようだ。
 仕方ないので適当に見繕っていく。

 とりあえず、貴族のお抱え執事に見えない普通の少年っぽい服で動きやすくて丈夫なのを念頭に置いて選んでいった。
 冒険者ギルドでいちいち、お貴族様が来るところじゃねぇと絡まれるよりは、ガキの遊び場じゃねぇんだよの方がマシなような気がしたからだ。まぁどっちも大して変わらないけど。
 それに結局着替えは必要なんだから、高い物は買えない。だったら一般市民っぽい服を選ぶのが普通だ。幸いにしてここに来るまでにアルくらいの少年達もそこそこいたので服の傾向はわかっている。

 念頭に置いた条件に見合う物を適当に見繕っていく。
 選んだ服をアルの体に合わせてみて大きさも確認する。試着はどうやらできないようだ。
 店内の方にも探しにいったが、試着ボックスのような物はなかったのだ。
 なのでとりあえず、体に当てて見て大体の大きさを確認するしかない。当然サイズタグのような物もついていない。
 小さくて着れないよりはと思って、少し大きめなのを選んでみた。アルはまだ少年っぽい体だから成長するだろう。

 気温も暖かく過ごしやすい感じなので、春物と思われる割と薄めの服を上下合わせて5着分選んで、アルに持たせてから男物の下着を適当に見繕っていく。
 店内の奥のほうにトランクスタイプの紐で縛るやつがいくつもあった。ブリーフタイプはないようだ。ゴムのような物で伸縮するものもなく、紐で縛るタイプしかない。
 仕方ないのでシャツを7着とトランクスを色違いで6着。靴下もたくさんあった方がいいかと思って10足分。

 店員のおばちゃんが微笑ましそうにこちらを見ていたが、特にお奨めしてきたりはしてこなかった。ああいう接客はこちらの世界ではないのだろうか? まぁうざったくなくていいが。
 最後に外套もあったので、アルの分も買っておくべきだろうとこっちも選ぶことにする。
 選んだ服が結構な量になり、邪魔なので一旦店員のおばちゃんに渡しておいた。

 外套はたくさんあったので片っ端から羽織らせてどれが似合うか見てみる。散々着せ替えた結果、薄茶色のフード付きの外套に決めた。なんか暗い色がよく似合うのだ。でも真っ黒だとなんか怖いので薄茶色で勘弁してもらった。念の為予備にもう1着同じ物を確保しておいた。

 真っ黒の烏の羽みたいなやつを物欲しそうに見ていたアルだったが、結局最後までオレの選択に口を挟まなかった。
 もちっと自己主張してもいいのに……。

 アルの分は大体揃ったので、自分の分を選ぶことにしたのだが……。


「ワタリ様、今度は私が選ばせていただきます」

「え、いや、もうおまえの分は終わったんじゃ……まだ足りなかった?」

「答えは否。私の分は十分にございます。
 ですので次はワタリ様の分となります。つきましては私は私の使命を果たすべく」

「あーわかったわかった……わかったから……はぁ」


 どうやらアル君の使命がまた始まってしまったらしい。こうなったらこいつは何を言っても無駄だ。そのせいで股の間すら綺麗に拭かれたのだからな!

 というわけで、今度はアルがオレの分の服を選んでいく。
 ものすごいスピードで店内を移動してどんどん服を抱えていく。
 何この子……超怖い。

 大量の服を抱えて戻ってきたアルが、1着ずつオレの体に当てては首を捻っていく。
 店員のおばちゃんも呆気に取られている。そりゃそうだ。持ってきた量が10着や20着では済まない量になっているからだ。ちゃんと戻しとけよ、アル……。

 どこから持ってきたのかと問いたくなるような服から普通の服まで片っ端から体に当てては首を捻っていく使命に燃えているお方。
 唯一首を捻らなかったのが、真っ白いワンピースで胸元になんかよくわからん花が咲き乱れているやつってのはどういうことだ。
 使用用途を考えてくれアル! まじで!
 オレ達は冒険者として依頼をこなしていくんだぞ!? 依頼をこなすのにひらひらのワンピースを着て行くのか!?
 依頼人が呆然とすること請合いすぎる!






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 その後、店にある女性物でオレが着れそうな服を片っ端から試した結果、ワンピースの他には大きなリボンがついたプリーツスカートとかピンクの花柄のチュニックとか、薄手のフロッキーブラウスとか……とにかく野外活動用とはとてもじゃないが思えない服ばかりだった。
 選ばれた服は呆気に取られていたおばちゃんも、うんうんと納得するほどの物だったらしくそっちの方を見たら、いい笑顔でサムズアップされてしまった。
 選んだアルも満足げないい表情をして、綺麗に折りたたんだ選ばれし一品達をカウンターの方に運んでいく。
 選ばれなかった敗北者達はすでに元の場所に戻されている。あの怖い動きでもって速攻で戻される服達の姿は表情が引きつるには十分なものだった。


「な、なぁアル……服……それ買うの……?」

「もちろんにございます。
 微力ではありますが、このアル。不退転の決意でもって選ばせていただきました」

「いや……でもだな……その……屋外活動用の服も必要じゃない?」


 やり遂げましたという顔と共に返ってくる言葉だったが、オレの言葉でぴたっと止まる。
 どうやら忘れていたらしい。
 ギギギと音がしそうな感じで動き始めたアルが首を徐々に傾げながら服をまた選び始める。
 なんかすごく動きが悪い。活動的な服だとこの店にある服ではどうしても男物になってしまうのだ。
 だからだろう。ものすっごく動きが悪い……悪すぎる……だめだこりゃ。


「はぁ……いいよ、あとは自分で選ぶから」

「申し訳ございません。このアル、ワタリ様に似合う活動的な服を選ぶことができません!」

「はいはい、わかったわかった」


 悔しそうに拳を握ってわなわな震えるアルに手をひらひら振って適当に選んでいく。
 まったくこの執事君は困った子だ。もうちょっと融通と妥協を覚えてくれないと困る。

 適当に選んだ上下とシャツとカボチャパンツを各種数枚と10足分のちっちゃい靴下を、山と化しているカウンターの上に置いてもらう。


「じゃぁこれ全部ください」

「あいよー毎度ありー!」


 すごいいい笑顔のおばちゃんの声が店内に大きく響き渡った。
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