65 / 108
本編
合同演習にご招待されました
しおりを挟む執務室に駆け込んできたレオンさんは僕を抱きしめながらフェリクスさんを睨みつける。
「なぜお前がアサヒを抱きしめている」
レオンさんの怒気を含んだ声色に僕はビビりあがってしまい思わず僕を抱きしめているレオンさんの腕にひしっとしがみついてしまう。
「まさかこんな所で兄上の婚約者に会えると思っていなかったからね…嬉しさのあまり勢い余って抱きしめてしまったんだ」
申し訳なさそうな表情でフェリクスさんは「突然抱きしめて申し訳ない」と僕に謝罪をする
「突然でビックリしましたけど大丈夫ですよ。それにレオンさんのご兄弟ならいずれ家族になる方です…こちらこそきちんと対応できずにすみません」
ぺこりと頭を下げるとレオンさんとフェリクスさんは目を見開きながら僕を見下ろす。
「兄上…とても素敵な人を見つけたね」
「アサヒが素晴らしいのは当たり前だ」
レオンさんはいつもの様に僕を抱きしめ愛おしそうに見下ろす。
そんなレオンさんを見てフェリクスさんは再び驚いた顔をして楽しそうに笑い出す。
「…っ…嘘だろ…あの兄上が…笑った…はははっ…兄上の笑顔なんて初めて見たよ!アサヒ君、君すごいな!」
え…レオンさんの笑顔を初めて見た?…嘘でしょ?僕の知ってるレオンさんは表情豊かな人だよ?
うーんと唸りながレオンさんの事を考えていたらヒョイっと抱えられそのままソファへ移動し座るレオンさんの膝の上へ座らされた。
レオンさんの膝の上に座るなんていつもの事すぎてなんの違和感もなく座ったままでいたがフェリクスさんの存在を思い出して慌てて下ろして欲しいと懇願する。
「お、下ろしてください!フェリクスさんの前で恥ずかしいです!」
じたばたと手足を動かすがレオンさんの身体はビクともしない。むしろ離すものかと言うようにガッチリと抱え直されてしまった。
「アサヒの席は俺の上だ」
「ぁう…」
頑張って抵抗してみたものの無駄に体力を消耗させるだけだと学習し僕は抵抗を止めレオンさんの胸板にこてんと身体を預けた。
抵抗をやめた僕を満足そうな笑顔で見下ろし優しくほっぺたを撫でられる。
そんな光景もフェリクスさんにバッチリ見られてしまうがもうどうしようも無い。
「こんなデレデレな兄上を見られるなんて…はははっアサヒ君のおかげだよ!ありがとう!」
何故か僕はフェリクスさんからお礼を言われてしまった
そしてしばらく執務室はフェリクスさんの笑い声が響き渡った。
「それより、何の用でここに来た」
フェリクスさんがひとしきり笑い終わった後、レオンさんが話を切り出す。
「あぁ、今度行われる合同演習の日程についての相談に来たんだった」
「…もうそんな時期か…仕事が増える」
面倒くさそうにため息をこぼすレオンさんの頭を僕はよしよしと撫でながらフェリクスさんに問いかける。
「合同演習ってなんですか?」
「第1から第3までの聖騎士たちが集まって合同で鍛錬するんだよ。いつもと違う相手と手合わせする事でお互いに刺激になり騎士団全体のレベル上げにもなるんだ。」
「へぇー!なるほど」
技術向上の為の訓練か…凄いなぁ…僕の細腕じゃ剣すら重すぎて持てないからなぁ…剣を振るうレオンさんは絶対かっこいい!
目をキラキラ輝かせながら話を聞いていたらフェリクスさんは思いついたように「そうだ!」と言いながら満面の笑みで僕を見る。
なんだぁ?と僕首を傾げていると
「アサヒ君、合同演習見に来ないかい?」
「え!僕が見に行ってもいいんですか!?」
「もちろんさ!合同演習を見に来るご令嬢たちもいるからね。でも見学は少し離れた場所でという形になるけど」
フェリクスさんの提案にぱぁああっと僕は満面の笑みで振り返りレオンさんを見上げる。
「レオンさんいいですか!?」
「うっ…分かった…だがセバスを護衛に付ける」
「わぁあ!ありがとうございます!嬉しいっ」
感極まってレオンさんに抱きつきほっぺたにちゅっと軽いキスをする。
するとレオンさんは嬉しそうに僕のほっぺたにもキスを返してくれる。
「合同演習の護衛にあのセバスを付けるとか…兄上は過保護だね」
フェリクスさんは呆れたよう顔をしながら肩をすくめやれやれと顔を横に振り立ち上がる。
「それじゃ俺はこれで。都合いい日を後で教えてくれ。じゃよろしく」
手をヒラヒラと揺らしながらフェリクスさんは颯爽と帰って行った。
そして執務室には僕とレオンさんの2人だけになるとレオンさんが僕の身体の向きをかえ対面座位にする。
レオンさんの顔は笑っているのに何となく目が笑っていない…そんな笑顔で僕を見つめる。
「レ、レオンさん?」
さっきまで楽しく会話していたのに…なんか怒ってる?
オドオドしながらレオンさんの名前を呼ぶと
「アサヒ、何故フェリクスと抱き合っていたんだ?」
「えっと…」
「ん?」
声色は優しいのにどこか冷たさを感じるレオンさんの声。
「と、突然…抱きしめられて…反応…出来なくて…それで、えっと…あのぉ…」
「…」
「…ご、ごめんなさぃ…」
数秒の沈黙がとても長く感じ背中に冷や汗をびっしょりとかいているとレオンさんがその沈黙を破った。
「お仕置きだ」
「ふぇ?」
「俺以外の男に抱きしめられたんだ。そんな悪い子はお仕置きするに決まっているだろう」
そういってレオンさんは僕を抱き抱えたまま執務室を出て邸へ帰路に着く。
3
お気に入りに追加
3,573
あなたにおすすめの小説
異世界転生してハーレム作れる能力を手に入れたのに男しかいない世界だった
藤いろ
BL
好きなキャラが男の娘でショック死した主人公。転生の時に貰った能力は皆が自分を愛し何でも言う事を喜んで聞く「ハーレム」。しかし転生した異世界は男しかいない世界だった。
毎週水曜に更新予定です。
宜しければご感想など頂けたら参考にも励みにもなりますのでよろしくお願いいたします。
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
転生したら断罪イベ最中で王子側だったオレの話
ひやむつおぼろ
BL
「お前は愛しいアンジュを虐げた!お前との、婚約は……」
くらり、と目の前が歪む。あ、あれ?なんだこのフリフリ衣装?!なんだこの左腕にしなだれかかる化粧の濃い勘違いドレス女!オレはスーツ着て電車に揺られてたはず……。
「ジュリアス様、どうかなさいました?さぁ、早くルミナスとの婚約を解消して私と王家を継ぎましょう?」
女が胸を押し付けて上目遣いでこちらを見つめる。うっわぁ。わざとらしい。香水臭い!誰か助けて、と周りを見渡すと人!人!人!会食か何かなのか、グラスを持ち、扇を持ったドレス姿の女や、タキシード姿の男たちがヒソヒソと話し合っている。
ージュリアス様って第三王子だろう?
ーああ、それに第一王子が来月皇太子になるはずだが…。
ールミナス様、婚約破棄されてしまうのかしら。あることないこと吹き込んで、男爵の位のくせにあんなに馴れ馴れしく…許せないわ…。
外野の言葉を察するに、これは断罪イベとかいうやつか?しかも、このケバ女は王妃になりたくてオレに嘘を吹き込んでたと…。そんな曲がったこと許されねぇな!
「ルミナス、ルミナスすまない。アンジュはこう言っていたが、君がそういうことをした証拠を教えてもらってないんだ。アンジュとルミナスとオ…私で、別室で話をしないか?」
日本人の頃の記憶ではなく、ジュリアスだった頃の記憶を呼び戻しながら、ルミナスを探す。
「はい、ジュリアス殿下の仰せのままに…」
ルミナスと呼ばれたその人は、銀髪碧眼の男だった。
……?なんで?
ーー
ランキングに婚約破棄多いから、短編で書いてみることにしました。楽しみです。
追記……皆様!見ていただきありがとうございます!こんなはずじゃなかった!もっとちゃんとねって書けばよかった!深夜の寝れない時間に書きたいところを書いて出して書いて出してとしてるのでたっくさんボロがある…味のある作品になっています!
なんでやねんてツッコミながら見てください。
追記……順番変わりましたしおり挟んでた皆様すみません!
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
地味で冴えない俺の最高なポディション。
どらやき
BL
前髪は目までかかり、身長は160cm台。
オマケに丸い伊達メガネ。
高校2年生になった今でも俺は立派な陰キャとしてクラスの片隅にいる。
そして、今日も相変わらずクラスのイケメン男子達は尊い。
あぁ。やばい。イケメン×イケメンって最高。
俺のポディションは片隅に限るな。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる