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本編
合同演習にご招待されました
しおりを挟む執務室に駆け込んできたレオンさんは僕を抱きしめながらフェリクスさんを睨みつける。
「なぜお前がアサヒを抱きしめている」
レオンさんの怒気を含んだ声色に僕はビビりあがってしまい思わず僕を抱きしめているレオンさんの腕にひしっとしがみついてしまう。
「まさかこんな所で兄上の婚約者に会えると思っていなかったからね…嬉しさのあまり勢い余って抱きしめてしまったんだ」
申し訳なさそうな表情でフェリクスさんは「突然抱きしめて申し訳ない」と僕に謝罪をする
「突然でビックリしましたけど大丈夫ですよ。それにレオンさんのご兄弟ならいずれ家族になる方です…こちらこそきちんと対応できずにすみません」
ぺこりと頭を下げるとレオンさんとフェリクスさんは目を見開きながら僕を見下ろす。
「兄上…とても素敵な人を見つけたね」
「アサヒが素晴らしいのは当たり前だ」
レオンさんはいつもの様に僕を抱きしめ愛おしそうに見下ろす。
そんなレオンさんを見てフェリクスさんは再び驚いた顔をして楽しそうに笑い出す。
「…っ…嘘だろ…あの兄上が…笑った…はははっ…兄上の笑顔なんて初めて見たよ!アサヒ君、君すごいな!」
え…レオンさんの笑顔を初めて見た?…嘘でしょ?僕の知ってるレオンさんは表情豊かな人だよ?
うーんと唸りながレオンさんの事を考えていたらヒョイっと抱えられそのままソファへ移動し座るレオンさんの膝の上へ座らされた。
レオンさんの膝の上に座るなんていつもの事すぎてなんの違和感もなく座ったままでいたがフェリクスさんの存在を思い出して慌てて下ろして欲しいと懇願する。
「お、下ろしてください!フェリクスさんの前で恥ずかしいです!」
じたばたと手足を動かすがレオンさんの身体はビクともしない。むしろ離すものかと言うようにガッチリと抱え直されてしまった。
「アサヒの席は俺の上だ」
「ぁう…」
頑張って抵抗してみたものの無駄に体力を消耗させるだけだと学習し僕は抵抗を止めレオンさんの胸板にこてんと身体を預けた。
抵抗をやめた僕を満足そうな笑顔で見下ろし優しくほっぺたを撫でられる。
そんな光景もフェリクスさんにバッチリ見られてしまうがもうどうしようも無い。
「こんなデレデレな兄上を見られるなんて…はははっアサヒ君のおかげだよ!ありがとう!」
何故か僕はフェリクスさんからお礼を言われてしまった
そしてしばらく執務室はフェリクスさんの笑い声が響き渡った。
「それより、何の用でここに来た」
フェリクスさんがひとしきり笑い終わった後、レオンさんが話を切り出す。
「あぁ、今度行われる合同演習の日程についての相談に来たんだった」
「…もうそんな時期か…仕事が増える」
面倒くさそうにため息をこぼすレオンさんの頭を僕はよしよしと撫でながらフェリクスさんに問いかける。
「合同演習ってなんですか?」
「第1から第3までの聖騎士たちが集まって合同で鍛錬するんだよ。いつもと違う相手と手合わせする事でお互いに刺激になり騎士団全体のレベル上げにもなるんだ。」
「へぇー!なるほど」
技術向上の為の訓練か…凄いなぁ…僕の細腕じゃ剣すら重すぎて持てないからなぁ…剣を振るうレオンさんは絶対かっこいい!
目をキラキラ輝かせながら話を聞いていたらフェリクスさんは思いついたように「そうだ!」と言いながら満面の笑みで僕を見る。
なんだぁ?と僕首を傾げていると
「アサヒ君、合同演習見に来ないかい?」
「え!僕が見に行ってもいいんですか!?」
「もちろんさ!合同演習を見に来るご令嬢たちもいるからね。でも見学は少し離れた場所でという形になるけど」
フェリクスさんの提案にぱぁああっと僕は満面の笑みで振り返りレオンさんを見上げる。
「レオンさんいいですか!?」
「うっ…分かった…だがセバスを護衛に付ける」
「わぁあ!ありがとうございます!嬉しいっ」
感極まってレオンさんに抱きつきほっぺたにちゅっと軽いキスをする。
するとレオンさんは嬉しそうに僕のほっぺたにもキスを返してくれる。
「合同演習の護衛にあのセバスを付けるとか…兄上は過保護だね」
フェリクスさんは呆れたよう顔をしながら肩をすくめやれやれと顔を横に振り立ち上がる。
「それじゃ俺はこれで。都合いい日を後で教えてくれ。じゃよろしく」
手をヒラヒラと揺らしながらフェリクスさんは颯爽と帰って行った。
そして執務室には僕とレオンさんの2人だけになるとレオンさんが僕の身体の向きをかえ対面座位にする。
レオンさんの顔は笑っているのに何となく目が笑っていない…そんな笑顔で僕を見つめる。
「レ、レオンさん?」
さっきまで楽しく会話していたのに…なんか怒ってる?
オドオドしながらレオンさんの名前を呼ぶと
「アサヒ、何故フェリクスと抱き合っていたんだ?」
「えっと…」
「ん?」
声色は優しいのにどこか冷たさを感じるレオンさんの声。
「と、突然…抱きしめられて…反応…出来なくて…それで、えっと…あのぉ…」
「…」
「…ご、ごめんなさぃ…」
数秒の沈黙がとても長く感じ背中に冷や汗をびっしょりとかいているとレオンさんがその沈黙を破った。
「お仕置きだ」
「ふぇ?」
「俺以外の男に抱きしめられたんだ。そんな悪い子はお仕置きするに決まっているだろう」
そういってレオンさんは僕を抱き抱えたまま執務室を出て邸へ帰路に着く。
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