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暴れる鬼精虫2
しおりを挟むなぜか──なぜか。
この窮地に脳裏をかすめたのが、架鞍くんだった。
あんなキスなんかされて、感情がおかしくなったのかもしれない。でも今のわたしには、そんなことを分析する余裕はなかった。
「優しい禾牙魅のほうがよかったんじゃないの」
振り仰ぐと、相変わらず冷静な架鞍くんの姿がそこにある。
すがるような気持ちで、わたしは涙ぐんだ。
「架鞍、く……」
「泣いてる暇はないよ。【鬼精鬼】は逃げたみたいだけど、あんたの【鬼精虫】が暴れてるからどうにかしないとね」
やっぱりあの男は、【鬼精鬼】だったんだ。
「どうすればいいの……? 苦しいよ」
「手と口、どっちがいい?
「どっちでも、いい……」
質問のわけも分からず、そう答える。
架鞍くんは迷いのない動作でわたしのワンピースの背中のファスナーを半分まで開き、下着ごと引きずり下ろして胸を空気にさらした。
痛みに汗をにじませるわたしは、抵抗する力もない。
「架鞍くんっ、なに……ここみんな見て……」
架鞍くんが能力でも使ったのだろうか、道行く人々は皆わたし達に気づいていない。
架鞍くんはわたしの左胸の下、心臓の上辺りに唇を強く押しつけた。
「あ……!」
僅かな快感と再び襲う引っ掻くような痛みに、思わず声を上げる。
架鞍くんは唇をつけたまま、まるで愛撫のように舌を動かしてわたしの肌に快楽を与えていく。
「ん、んっんぅ……」
「それなりに色気のある声は出せるんだね」
恥ずかしいことを言われて、顔が火照る。
架鞍くんのやわらかな舌が肌を這い、唇を当てて何度も吸い上げる。
腰の力が抜けてきたあたりで、架鞍くんは顔を上げた。
見下ろすと、左胸の下に赤い跡がついている。
身体が楽になったと気づき、わたしは慌てて服を正した。
「帰るよ。ああそれから、今度から外に出たいときは俺達三人の中から誰か一人と行動を一緒にして」
相変わらず、架鞍くんはなんでもない表情をしている。
……この子のこの態度って、悪気はないのかもしれない……。
何か別の深い理由があるのかも……。
架鞍くんの後に続いて歩きながら、わたしはそんなことを思った。
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