鬼精王

希彗まゆ

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だって、年下2

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​怒鳴るわたしの後ろから、架鞍くんの涼しげな声がした。


「その前に身体ちゃんと隠したら? 後ろ丸見えだよ」

「!」


慌てて前を向くと、架鞍くんは既にちゃんと腰にタオルを巻いていた。


こ、こんなとき何を話せばいいんだろう。親睦深めるためって……こんな場所でどう深めろっていうの!


とりあえずぎこちない笑みを浮かべてみる。


「【鬼精王】とかって、お風呂とか入んないと思ってた……食事も摂る必要ないみたいだし」

「入るよお風呂くらい。汚れたままは嫌だから」

「そ、そう」

「禾牙魅がいいの?」


突然の質問に、わたしは戸惑う。


「唯一まともで優しそうだし云々言ってたでしょ」


さっきのつぶやき、聞かれてたんだ。


「あはは……そういう意味じゃないよ。でも、この状況は相手が架鞍くんで良かった~」

「……どうして?」

「え、だって……」


架鞍くんが一歩、近寄ってくる。


「もしかして年下だからって子供扱いしてる?」

「だって4つも年下だよ? いくら18歳でも」


思わず、本音を言ってしまった。


「ふうん……」


また、一歩。


「な、なに?」

「俺、子供なんでしょ? 逃げるなよ」

「、」


慌てて何か言おうとしたわたしの両肩をつかみ、架鞍くんはキスをしてきた。


「……、ぅ、……」


一瞬のキスでもない。軽い口づけというわけでもない。

柔らかく唇を押し当て、わたしのその隙間に舌を侵入させてくる。


「……!」


舌に痺れが走った。

抗おうとしても、手でがっちりと顎を固定されて……架鞍くんはまだやめない。離れかけては何度もわたしの唇と舌を味わってくる。


数分経った頃、やっと唇が離れた。わたしはへたり込んでしまう。

反して、架鞍くんはなんにもなかったかのような表情で見下ろしてくる。


「ホントにセックスしたの? てんで処女の味だよ」

「わっ……悪かったわね……!」


涙目のわたしに、架鞍くんはふと眉根を寄せた。


「あんたが誰を気に入ろうが勝手だけど」


お風呂場の扉に手を当て、何か念じているようだ。


「俺は【鬼精鬼】を必ず封印しなくちゃならない。誰の手でもない、この俺の手で」


ガキリと音がして、お風呂場の扉が開いた。架鞍くんはそのまま出て行く。


……いきなり、なんなの……。

いきなりキスって……

架鞍くん、とことんわたしに意地悪したいのかな……。


そう思ったら、無性に哀しくなった。
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