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番外編 この世界で唯一前世の記憶を持つダークエルフ編
宿とこの街にて その3
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食事の注文がてらに、依頼の仕事の受注について聞いてみた。
依頼受け付けに、どの依頼を引き受けるかを伝えるだけでいいんだそうだ。
仕事の受付期間は、依頼達成の報告を受けるまで。
そして、魔物討伐なら、その魔物特有のアイテムとかを持ち帰ることで、依頼達成の証明になるとのこと。
引き受けて達成できても、アイテムを持ち帰れない場合は未達成。
他の誰かがアイテムを持ち帰ったらそこで達成。そして依頼は終了。
捜索や探索もそうらしい。
つまり、冒険者に免許とか資格とかはなく、誰でも依頼は受けられるらしい。
ただし、身の危険に対しては自己責任。
それをどうにかできる者が冒険者、ということみたい。
光の弓矢には気絶がつきもの。
けどあたしの弓矢の技はそれだけじゃない。
魔力を込めて、軌道を自由にできる射的もあるし、普通の弓矢でも人間よりは優れている。はず。
「あれ? でも、飛竜落としたの、今日の未明だよね? で、あの人達処理してる間にあそこ出発したはずなのに、あたしがここに来る前にもう依頼完了の報告が届いたの?」
うーん……。
人間の社会は不思議でいっぽいだ。
まぁいいや。
晩ご飯、食べるか。
※※※※※ ※※※※※
ご飯を食べ終わってから、掲示板に貼られている依頼内容に改めて目を通す。
報酬が一番高額なのは、依頼達成済みの例の飛竜退治で二百五十万円。
けど飛びぬけて高額な依頼。
他の依頼では、どんなに高くても五十万円前後。
凶悪な魔物退治と魔獣の死体確保、珍しい植物や鉱石入手。
内容を分類するとこんな感じ。
その目的はまちまちだ。
実験材料、食材収集、製造の材料集め、地域の治安など。
「……一人でこなせて、宿泊費支払いと所持金増加になるような依頼、か……うーん……」
「えっと、そこのダークエルフさん、ちょっといいかな?」
「え?」
親しみが込められたような声で、後ろから呼びかけられてちょっとびっくりした。
振り向くと、若者そうな五人組がそこにいた。
「ひょっとしてお嬢さん一人?」
エルフ、とかじゃなくて、お嬢さん……。
そんな呼ばれ方、初めてされた。
いやいや、待て待て。
あたしじゃない誰かを指しているのかもしれない。
「えっと……あたしの……こと……ですか?」
「あはは、面白いことを言うね。あなたのほかに誰もいないじゃないですか」
あたしを呼んだ爽やかそうな青年は、明るい笑顔で応えるけれど。
「ちょっとウォードル。呼び方っ」
隣に並んでいる、似たような装備の女性に窘められた。
確かに……口説きに来たのかとも思える呼ばれ方だったしなぁ。
「仲間がすまん。実は……そこの掲示板の依頼を見に来たんだ。そしたらあなたがその前に立ちはだかっていて……」
二人の後ろにいる、頭二つほど背が高く、前の二人よりも重装備な大男が話しかけてきた。
でも、ということは、あたしがこの五人の邪魔をしてたってことよね。
「あぁ、ごめんなさい。あたし、ここの席で食事してたから、つい。あ、ゆっくり見られるのならどうぞ。あたしその後で……」
「そうじゃないのよ。見たところ、あなた一人だけのようだから、もしよかったら、あたし達がこれから選ぶ依頼に、一緒にどうかなって」
あたしをお嬢さんと呼んだ男を窘めた女性の話は、まぁ口説くというのは強ち間違いじゃなかった。
パーティ加入の勧誘だもんね。
「五人よりも六人の方がやりやすいし、見たところ、あんた、弓使いだろ? うちにはない技術持ってそうだから、戦術が広がりそうだなってことでな」
大男の隣の、前二人よりもちょっと背が小さめの軽装備の男がそんなことを言ってきた。
てことは、弓使いはいないのか。
「遠距離攻撃担当、うちのパーティにいないから、入ってもらえるとうれしいですね。あたしの魔法もできるけど、補助と攻撃の掛け持ちはちょっと辛いから」
その軽装備の男の斜め後ろにいる女の人が心細そうに言う。
それだけ彼らに必要な要素が、あたしにはあるってことよね。
あたしの旅の目的は、何もせずに達成できるものじゃない。
警戒ばかりしてたって、お金は減る一方だし交流なしに絆を結ぼうにも結べない。
まぁ初対面で何も知らない相手だから、無条件で仲間になるっていうのはないかもだけど。
「……じゃあ……そうね……。皆さんが今受けるつもりでいる依頼一回限り、ということにして、もし互いに気に入ることがあったら一件こなすごとに継続っていうのはどうかしら?」
五人は顔を見合わせ、明るい表情をあたしに向けた。
「あぁ、よろしく頼む!」
いきなり話はまとまった。
でも、まずはこの一回きりと言うことなら、話は簡単だろう。
何か問題が起きても、その一件が終わるまでの我慢で済むし。
「じゃあまず、互いを理解するための親睦会といきますか。マスター、お酒もらえる―?」
え?
えっと、ちょっと待って。
「えっと、あたし……」
「何? ひょっとしてお酒、苦手なの? えっと……」
「あ、あたしはマッキー。よろしく」
「あたしはウィザー。よろしくね。で、お酒だめなの?」
魔術師の彼女はそう名乗った。
それよりも。
「えっと、お酒は飲んだことはないんだけど……」
「え? 飲んだことないの? んじゃお茶にしようか?」
「親睦を深める場にお茶かよ……」
「仕方ないでしょ? お酒が体に合わなかったら、一緒に仕事どころじゃないわよ? で、マッキー、何のお茶がいい? ハーブティ?」
「そ、そうじゃなくて……。あたし、今晩ご飯食べ終わったばかりなの」
「そっちかよ……」
この五人、晩ご飯は済ませたのかなぁ……。
よく入るなぁ……。
女性二人のスタイルはかなりいいのに……。
ちょっと、羨ましいかな……。
依頼受け付けに、どの依頼を引き受けるかを伝えるだけでいいんだそうだ。
仕事の受付期間は、依頼達成の報告を受けるまで。
そして、魔物討伐なら、その魔物特有のアイテムとかを持ち帰ることで、依頼達成の証明になるとのこと。
引き受けて達成できても、アイテムを持ち帰れない場合は未達成。
他の誰かがアイテムを持ち帰ったらそこで達成。そして依頼は終了。
捜索や探索もそうらしい。
つまり、冒険者に免許とか資格とかはなく、誰でも依頼は受けられるらしい。
ただし、身の危険に対しては自己責任。
それをどうにかできる者が冒険者、ということみたい。
光の弓矢には気絶がつきもの。
けどあたしの弓矢の技はそれだけじゃない。
魔力を込めて、軌道を自由にできる射的もあるし、普通の弓矢でも人間よりは優れている。はず。
「あれ? でも、飛竜落としたの、今日の未明だよね? で、あの人達処理してる間にあそこ出発したはずなのに、あたしがここに来る前にもう依頼完了の報告が届いたの?」
うーん……。
人間の社会は不思議でいっぽいだ。
まぁいいや。
晩ご飯、食べるか。
※※※※※ ※※※※※
ご飯を食べ終わってから、掲示板に貼られている依頼内容に改めて目を通す。
報酬が一番高額なのは、依頼達成済みの例の飛竜退治で二百五十万円。
けど飛びぬけて高額な依頼。
他の依頼では、どんなに高くても五十万円前後。
凶悪な魔物退治と魔獣の死体確保、珍しい植物や鉱石入手。
内容を分類するとこんな感じ。
その目的はまちまちだ。
実験材料、食材収集、製造の材料集め、地域の治安など。
「……一人でこなせて、宿泊費支払いと所持金増加になるような依頼、か……うーん……」
「えっと、そこのダークエルフさん、ちょっといいかな?」
「え?」
親しみが込められたような声で、後ろから呼びかけられてちょっとびっくりした。
振り向くと、若者そうな五人組がそこにいた。
「ひょっとしてお嬢さん一人?」
エルフ、とかじゃなくて、お嬢さん……。
そんな呼ばれ方、初めてされた。
いやいや、待て待て。
あたしじゃない誰かを指しているのかもしれない。
「えっと……あたしの……こと……ですか?」
「あはは、面白いことを言うね。あなたのほかに誰もいないじゃないですか」
あたしを呼んだ爽やかそうな青年は、明るい笑顔で応えるけれど。
「ちょっとウォードル。呼び方っ」
隣に並んでいる、似たような装備の女性に窘められた。
確かに……口説きに来たのかとも思える呼ばれ方だったしなぁ。
「仲間がすまん。実は……そこの掲示板の依頼を見に来たんだ。そしたらあなたがその前に立ちはだかっていて……」
二人の後ろにいる、頭二つほど背が高く、前の二人よりも重装備な大男が話しかけてきた。
でも、ということは、あたしがこの五人の邪魔をしてたってことよね。
「あぁ、ごめんなさい。あたし、ここの席で食事してたから、つい。あ、ゆっくり見られるのならどうぞ。あたしその後で……」
「そうじゃないのよ。見たところ、あなた一人だけのようだから、もしよかったら、あたし達がこれから選ぶ依頼に、一緒にどうかなって」
あたしをお嬢さんと呼んだ男を窘めた女性の話は、まぁ口説くというのは強ち間違いじゃなかった。
パーティ加入の勧誘だもんね。
「五人よりも六人の方がやりやすいし、見たところ、あんた、弓使いだろ? うちにはない技術持ってそうだから、戦術が広がりそうだなってことでな」
大男の隣の、前二人よりもちょっと背が小さめの軽装備の男がそんなことを言ってきた。
てことは、弓使いはいないのか。
「遠距離攻撃担当、うちのパーティにいないから、入ってもらえるとうれしいですね。あたしの魔法もできるけど、補助と攻撃の掛け持ちはちょっと辛いから」
その軽装備の男の斜め後ろにいる女の人が心細そうに言う。
それだけ彼らに必要な要素が、あたしにはあるってことよね。
あたしの旅の目的は、何もせずに達成できるものじゃない。
警戒ばかりしてたって、お金は減る一方だし交流なしに絆を結ぼうにも結べない。
まぁ初対面で何も知らない相手だから、無条件で仲間になるっていうのはないかもだけど。
「……じゃあ……そうね……。皆さんが今受けるつもりでいる依頼一回限り、ということにして、もし互いに気に入ることがあったら一件こなすごとに継続っていうのはどうかしら?」
五人は顔を見合わせ、明るい表情をあたしに向けた。
「あぁ、よろしく頼む!」
いきなり話はまとまった。
でも、まずはこの一回きりと言うことなら、話は簡単だろう。
何か問題が起きても、その一件が終わるまでの我慢で済むし。
「じゃあまず、互いを理解するための親睦会といきますか。マスター、お酒もらえる―?」
え?
えっと、ちょっと待って。
「えっと、あたし……」
「何? ひょっとしてお酒、苦手なの? えっと……」
「あ、あたしはマッキー。よろしく」
「あたしはウィザー。よろしくね。で、お酒だめなの?」
魔術師の彼女はそう名乗った。
それよりも。
「えっと、お酒は飲んだことはないんだけど……」
「え? 飲んだことないの? んじゃお茶にしようか?」
「親睦を深める場にお茶かよ……」
「仕方ないでしょ? お酒が体に合わなかったら、一緒に仕事どころじゃないわよ? で、マッキー、何のお茶がいい? ハーブティ?」
「そ、そうじゃなくて……。あたし、今晩ご飯食べ終わったばかりなの」
「そっちかよ……」
この五人、晩ご飯は済ませたのかなぁ……。
よく入るなぁ……。
女性二人のスタイルはかなりいいのに……。
ちょっと、羨ましいかな……。
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