302 / 493
王宮動乱編
アラタの、新たな事業? その5
しおりを挟む
「ここんとこ、みんな、ほんといろんな事件に巻き込まれてさぁ」
「少しくらいゆっくりしたって罰は当たらんと思ってんだよ? 俺達も」
「事情は知ったことでもあるし、対応がしっかりできてりゃ、集団戦の中止の話を聞いても腹は立たないし、むしろもう少し休んだら? って思えるんだけど」
「つか、訓練終わってすぐに温泉って……至れり尽くせりで……」
「しかもほとんどタダ同然じゃない。逆に、利用する方が悪い気がするんだけど?」
集団戦の休止はまだ続いてる。
だからといって、冒険者達はまったく来ないわけじゃない。
アイテム探し、魔物討伐などの仕事で来る連中は毎日いる。
文句の一つでも来るかと思ったら、俺らに同情する声ばかり。
で、ちらっと温泉のことを言ってみたら、これまた歓迎の声があがる。
けど問題点が一つあってな。
「脱衣所がない?」
「アラタ……まさかあんた、混浴にしようとか考えてるんじゃないでしょうねっ!」
どこかの馬鹿王じゃあるまいし。
「アラタはあたし達とおんなじ、男女別にしたい派だよ」
「あたし達? テンちゃん、あんたも温泉に入るの?」
「うん。そのつもりだよ? どうして?」
「えーと……いや、何でもない。アハハ……」
別に気にするこっちゃねぇだろ。
露天風呂に入りに来る野生の猿とか、テレビでよく見るじゃねぇか。
って、それは俺がいた世界での話だもんな。
こっちではどうなのやら。
「まさかノミとか体にへばりついてねぇだろうな」
「こ、こら、アールっ!」
ぷっ。
やべ。思わず吹いちまった。
つか、この世界にもそんな虫いるんだな。
……テンちゃん、ほっぺ膨らましてる。
怒ってるよな、これ。
「いないいない。いたら今頃、私たちみんなその被害受けてるよ」
「ヨウミちゃん、どういうこと?」
「時々テンちゃんのお腹を枕にして、羽を掛布団にして、みんなで一緒に寝ることがあるんだ。あったかくて気持ちいいんだよねー」
「あー……そりゃ羨ましいわ……あたしも混ぜてほしいなー」
話がずれてるぞ。
まぁ、おかげでテンちゃんの膨れっ面もおさまってはいるが。
「まぁ誰が入るとかはともかく、流石に脱衣所は必要だろ。混浴だろうがそうではなかろうが、脱衣所は男女別にせにゃならん」
「そりゃあそうだ。……俺らが作っちまってもいいぞ? どうせそこに住む奴はいねぇだろ? なら雨風を防いで、雪の被害もないような建物だったら事足りるだろ。あとは一度にどれだけ利用者がいるかによって、その大きさも変わってくるが……」
マジかよ。
業者に頼まにゃならんかなぁと思ってたとこだったんだが。
「でも材料は森の中から調達したらダメだ。乱獲みたいになってしまうからな」
ダークとは言え、流石エルフ。
森への気遣いは欠かすことはない。
「けど、間引きみたいに伐採したらどうだ? 伐採された一本の周りに生えてる木が、より丈夫に育つんじゃないか?」
「切り倒すまではいいとしても、フィールドまで運ぶ道順はあるのか?」
「……それもそうか。となりゃ、材料費どんくらいかかるかだな」
「水道は作りたいよね」
「トイレも欲しいぞ」
またも俺はほったらかしにされて、今度は冒険者達で建設談義始めやがった。
「おいちょっと待てお前ら。取り掛かるとしたら、その件の手当てを出さにゃならんだろ? 材料費なら出せたとしても、手当まで手が回るかどうか」
「あー……生涯無料入場権ってのはどうだ?」
「無料?」
「ただで浴場を利用させてもらえたら、それでいいさ。こっちは専門家じゃねぇんだ。壊れてもすぐ修復できるような仕組みにすれば、素人だって直せるだろ」
……そんなんでいいのか?
お気軽すぎるだろ。
「だってお前らの普段の仕事は……」
「脱衣所建てる仕事のどこに、命の危険があるってんだ? それ考えりゃ、趣味で野営作りするようなもんだぜ? おまけに仕事が終わりゃ、すぐに風呂に入れるしよ」
「そうそう、それだけでも十分有り難い。それにあそこにあるんだろ? あまり……と言うか、ほとんど魔物が来ることがない安全地帯だからな」
まぁ重宝がられるってのは、まぁうれしくもあり有り難くもあり。
けどな。
「誰が建ててくれたかってのは記録には残せるが、もれなく無料扱いにするってのは難しいと思うぞ? 誰かに受付を頼むなら、申し渡しだって必要だしな」
「まぁ……そりゃそうか。はは、変な事言って悪かったな」
「……手伝った奴、無関係な奴、全員まとめて無料ってことにすりゃ、問題ないだろうが……」
「いや、いくらなんでも」
「維持費はかかるでしょ? 入浴料梨にするなら、それをどうやって捻出するのよ?」
だよな。
「それに、受付係には手当ては必要だろ?」
その問題は、問題にならない。
「その手当てには、必ず金銭は必要ないとは思うんだ。ただ、あんな風に溜池を作ってくれたこいつらには何か報酬はやらんとなー、とかは思うが」
ミアーノやンーゴ、そしてこいつらは、冷や汗かきながらの力作業の連続。しかも長時間。
労いの一つもないと割に合わねぇだろ。
「あたし達に? あたしは特にいらないかな」
「俺もお、特にほしいとは思わないなあ」
「ミアーノとンーゴもそう言ってたわよね。下手すりゃ災害を引き起こすとこだったから、だって」
「何? そんなに水量があったわけ? 水源地、とんでもないわね……」
地理についてはよく分からん。
そんなこんなで特に揉め事もなく、手が空いている冒険者達の好意で設計、建設が行われて、三日ほどで温泉施設ができあがってしまった。
「少しくらいゆっくりしたって罰は当たらんと思ってんだよ? 俺達も」
「事情は知ったことでもあるし、対応がしっかりできてりゃ、集団戦の中止の話を聞いても腹は立たないし、むしろもう少し休んだら? って思えるんだけど」
「つか、訓練終わってすぐに温泉って……至れり尽くせりで……」
「しかもほとんどタダ同然じゃない。逆に、利用する方が悪い気がするんだけど?」
集団戦の休止はまだ続いてる。
だからといって、冒険者達はまったく来ないわけじゃない。
アイテム探し、魔物討伐などの仕事で来る連中は毎日いる。
文句の一つでも来るかと思ったら、俺らに同情する声ばかり。
で、ちらっと温泉のことを言ってみたら、これまた歓迎の声があがる。
けど問題点が一つあってな。
「脱衣所がない?」
「アラタ……まさかあんた、混浴にしようとか考えてるんじゃないでしょうねっ!」
どこかの馬鹿王じゃあるまいし。
「アラタはあたし達とおんなじ、男女別にしたい派だよ」
「あたし達? テンちゃん、あんたも温泉に入るの?」
「うん。そのつもりだよ? どうして?」
「えーと……いや、何でもない。アハハ……」
別に気にするこっちゃねぇだろ。
露天風呂に入りに来る野生の猿とか、テレビでよく見るじゃねぇか。
って、それは俺がいた世界での話だもんな。
こっちではどうなのやら。
「まさかノミとか体にへばりついてねぇだろうな」
「こ、こら、アールっ!」
ぷっ。
やべ。思わず吹いちまった。
つか、この世界にもそんな虫いるんだな。
……テンちゃん、ほっぺ膨らましてる。
怒ってるよな、これ。
「いないいない。いたら今頃、私たちみんなその被害受けてるよ」
「ヨウミちゃん、どういうこと?」
「時々テンちゃんのお腹を枕にして、羽を掛布団にして、みんなで一緒に寝ることがあるんだ。あったかくて気持ちいいんだよねー」
「あー……そりゃ羨ましいわ……あたしも混ぜてほしいなー」
話がずれてるぞ。
まぁ、おかげでテンちゃんの膨れっ面もおさまってはいるが。
「まぁ誰が入るとかはともかく、流石に脱衣所は必要だろ。混浴だろうがそうではなかろうが、脱衣所は男女別にせにゃならん」
「そりゃあそうだ。……俺らが作っちまってもいいぞ? どうせそこに住む奴はいねぇだろ? なら雨風を防いで、雪の被害もないような建物だったら事足りるだろ。あとは一度にどれだけ利用者がいるかによって、その大きさも変わってくるが……」
マジかよ。
業者に頼まにゃならんかなぁと思ってたとこだったんだが。
「でも材料は森の中から調達したらダメだ。乱獲みたいになってしまうからな」
ダークとは言え、流石エルフ。
森への気遣いは欠かすことはない。
「けど、間引きみたいに伐採したらどうだ? 伐採された一本の周りに生えてる木が、より丈夫に育つんじゃないか?」
「切り倒すまではいいとしても、フィールドまで運ぶ道順はあるのか?」
「……それもそうか。となりゃ、材料費どんくらいかかるかだな」
「水道は作りたいよね」
「トイレも欲しいぞ」
またも俺はほったらかしにされて、今度は冒険者達で建設談義始めやがった。
「おいちょっと待てお前ら。取り掛かるとしたら、その件の手当てを出さにゃならんだろ? 材料費なら出せたとしても、手当まで手が回るかどうか」
「あー……生涯無料入場権ってのはどうだ?」
「無料?」
「ただで浴場を利用させてもらえたら、それでいいさ。こっちは専門家じゃねぇんだ。壊れてもすぐ修復できるような仕組みにすれば、素人だって直せるだろ」
……そんなんでいいのか?
お気軽すぎるだろ。
「だってお前らの普段の仕事は……」
「脱衣所建てる仕事のどこに、命の危険があるってんだ? それ考えりゃ、趣味で野営作りするようなもんだぜ? おまけに仕事が終わりゃ、すぐに風呂に入れるしよ」
「そうそう、それだけでも十分有り難い。それにあそこにあるんだろ? あまり……と言うか、ほとんど魔物が来ることがない安全地帯だからな」
まぁ重宝がられるってのは、まぁうれしくもあり有り難くもあり。
けどな。
「誰が建ててくれたかってのは記録には残せるが、もれなく無料扱いにするってのは難しいと思うぞ? 誰かに受付を頼むなら、申し渡しだって必要だしな」
「まぁ……そりゃそうか。はは、変な事言って悪かったな」
「……手伝った奴、無関係な奴、全員まとめて無料ってことにすりゃ、問題ないだろうが……」
「いや、いくらなんでも」
「維持費はかかるでしょ? 入浴料梨にするなら、それをどうやって捻出するのよ?」
だよな。
「それに、受付係には手当ては必要だろ?」
その問題は、問題にならない。
「その手当てには、必ず金銭は必要ないとは思うんだ。ただ、あんな風に溜池を作ってくれたこいつらには何か報酬はやらんとなー、とかは思うが」
ミアーノやンーゴ、そしてこいつらは、冷や汗かきながらの力作業の連続。しかも長時間。
労いの一つもないと割に合わねぇだろ。
「あたし達に? あたしは特にいらないかな」
「俺もお、特にほしいとは思わないなあ」
「ミアーノとンーゴもそう言ってたわよね。下手すりゃ災害を引き起こすとこだったから、だって」
「何? そんなに水量があったわけ? 水源地、とんでもないわね……」
地理についてはよく分からん。
そんなこんなで特に揉め事もなく、手が空いている冒険者達の好意で設計、建設が行われて、三日ほどで温泉施設ができあがってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる