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店の日常編
外の世界に少しずつ その9
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今、俺はドーセンの宿の物置にいる。
俺に依頼を頼みに来た、最初はサミーは怖がっていたが今ではすっかり仲良しの双子の父親、サーマルと一緒に。
「ホントに一粒ずつ選別してるんですね」
「そりゃそうだ。でなきゃ、俺の信頼に関わる」
ドーセンは、米の選別にはそこまで高く評価はしてないが、これくらい言っといても問題ないだろう。
この能力は俺にしか理解できないし伝えられない。
伝えることができるのは、俺の能力じゃなく、能力によって判明した現象だしな。
なら、期待されなかろうがどうだろうが、能力に殉じてベストを尽くす以外に、この力の有り難さを理解してもらえないはずだ。
傍から見てれば退屈な作業に見えるだろうな。
けど、できれば一粒でも見落としはしたくないから、選別作業は慎重。
でも大胆に振り分けられるのは、手のひらに乗せた米粒を少なめに乗せるから。
爪先にひっかけて、力のあるモノとないものを一緒にしてしまうことがないようにする工夫だ。
「……よく付き添えるもんだな。見てても分からんだろ」
「いやまったく。どこがどう違うのか……」
だろうな。
「……うちの農場で獲れた米も……」
おいちょっと待て。
気まぐれでも言っていいことと悪いことがあるぞ?
「それは無理。冗談でも勘弁」
村中ほぼ全部が農場で、半分くらいが田んぼじゃねぇか!
それに田んぼの稲だと、込められている力はほぼ均等だ。
選別してもあまり効果はねぇんじゃねぇの?
ススキモドキとかドーセンとこの田んぼから獲れた米なら力具合がまばらだから、より質の高いご飯を出すなら選別は必要だが。
けど俵一俵分くらいあるならやってみてもいいかもしれんが、報酬がどんなに高くても、やはり労力が結果に見合わない。
「まぁ……受けてくれるとは思ってなかったからいいんですがね」
あのなぁ……。
「けど、あの灰色の天馬の方はどうしても受けていただきたいものですが……」
「その話の検討は、この仕事終わってからにしてくんねぇ? 気が散るととんでもないミスになっちまうから」
「あ、それは失礼しました」
サーマルはそう言うと、ずっと俺の手元を見ている。
すぐに集中できるから、じっと見られても気にはしないが……。
俺は物置小屋には出入り自由にしてもらっているが、この人勝手に連れ込んじゃっていいんだろうか。
まぁ……いっか。
※※※※※ ※※※※※
「おやっさーん、米選別終わったぜー」
裏口からドーセンに声をかけた。
すぐに炊けるように良質の米は別の袋に入れ、中に運び込む。
非力な俺でも運べるように、袋はいくつかに分けている。
だから、これくらいの力仕事は問題ない。
「今回もご苦労さ……あれ? サーマルさん?」
「やあ、お邪魔してますよ」
ドーセンの気持ちは、能力を使わずとも分かる。
何でこの人、ここにいるの? だろ?
「何で……この人、ここにいるの? うち、農場と関係ないよな?」
む、ちょっとニュアンスが違ったか。
「あ、いやいや。私はこの人の仕事ぶりを見学させてもらってるだけでしてね。無断で店の裏側に来たのは申し訳ありませんでした」
「あ、いや、別に……。まぁ、アラタにはいろいろと世話になってて……」
なんか無駄なグダグダな会話になりそうな気がする。
「んじゃそろそろ戻るんで……」
「あ、すまん。今回分の手当て今持ってくるわ」
俺が自分の世界にいた頃、噂で聞いた話だが、日雇い労働者の一日の収入は一万円弱と聞いた。
半日もかからない作業だから、それに照らし合わせた額を要求したら、流石にそれは安すぎる、とドーセンから言われた。
一万円を提示されたが、三時間程度で終わらせられる仕事だから逆にこっちの気が引けた。
ということで、一回につき五千円にしてもらっている。
「まぁアラタさんの仕事ぶりを見て、灰色の天馬の……」
「テンちゃん?」
「あぁ、そうでした。テンちゃんさんの給与を決めるってのも変な話ですが」
テンちゃんにさん付けも十分変だが。
「雇われた側が何もせずに、それでもそちらの利益が上がったとしても、出来高払いだとしても逆にこっちが恐縮するな。ドーセンの手間も省けるから、あいつが満腹になるまで干し草を食わせてもらった方がよほどこっちは気が楽だし」
それに、何かやらかしてトラブルを起こすこともあるかもしれない。
まぁそこまで馬鹿じゃないだろうから、巻き込まれる恐れはあるかもな。
こっちに火の粉が飛んでこないように配慮してもらう。
それだけでも十分有り難いんだが。
って……。
「じゃあアラタさんのおっしゃるように、テンちゃんさんへは、十分な食事の量の干し草を用意する、ということで」
なし崩しに引き受けることになっちまってる。
まぁ……いいよな、多分。
俺に依頼を頼みに来た、最初はサミーは怖がっていたが今ではすっかり仲良しの双子の父親、サーマルと一緒に。
「ホントに一粒ずつ選別してるんですね」
「そりゃそうだ。でなきゃ、俺の信頼に関わる」
ドーセンは、米の選別にはそこまで高く評価はしてないが、これくらい言っといても問題ないだろう。
この能力は俺にしか理解できないし伝えられない。
伝えることができるのは、俺の能力じゃなく、能力によって判明した現象だしな。
なら、期待されなかろうがどうだろうが、能力に殉じてベストを尽くす以外に、この力の有り難さを理解してもらえないはずだ。
傍から見てれば退屈な作業に見えるだろうな。
けど、できれば一粒でも見落としはしたくないから、選別作業は慎重。
でも大胆に振り分けられるのは、手のひらに乗せた米粒を少なめに乗せるから。
爪先にひっかけて、力のあるモノとないものを一緒にしてしまうことがないようにする工夫だ。
「……よく付き添えるもんだな。見てても分からんだろ」
「いやまったく。どこがどう違うのか……」
だろうな。
「……うちの農場で獲れた米も……」
おいちょっと待て。
気まぐれでも言っていいことと悪いことがあるぞ?
「それは無理。冗談でも勘弁」
村中ほぼ全部が農場で、半分くらいが田んぼじゃねぇか!
それに田んぼの稲だと、込められている力はほぼ均等だ。
選別してもあまり効果はねぇんじゃねぇの?
ススキモドキとかドーセンとこの田んぼから獲れた米なら力具合がまばらだから、より質の高いご飯を出すなら選別は必要だが。
けど俵一俵分くらいあるならやってみてもいいかもしれんが、報酬がどんなに高くても、やはり労力が結果に見合わない。
「まぁ……受けてくれるとは思ってなかったからいいんですがね」
あのなぁ……。
「けど、あの灰色の天馬の方はどうしても受けていただきたいものですが……」
「その話の検討は、この仕事終わってからにしてくんねぇ? 気が散るととんでもないミスになっちまうから」
「あ、それは失礼しました」
サーマルはそう言うと、ずっと俺の手元を見ている。
すぐに集中できるから、じっと見られても気にはしないが……。
俺は物置小屋には出入り自由にしてもらっているが、この人勝手に連れ込んじゃっていいんだろうか。
まぁ……いっか。
※※※※※ ※※※※※
「おやっさーん、米選別終わったぜー」
裏口からドーセンに声をかけた。
すぐに炊けるように良質の米は別の袋に入れ、中に運び込む。
非力な俺でも運べるように、袋はいくつかに分けている。
だから、これくらいの力仕事は問題ない。
「今回もご苦労さ……あれ? サーマルさん?」
「やあ、お邪魔してますよ」
ドーセンの気持ちは、能力を使わずとも分かる。
何でこの人、ここにいるの? だろ?
「何で……この人、ここにいるの? うち、農場と関係ないよな?」
む、ちょっとニュアンスが違ったか。
「あ、いやいや。私はこの人の仕事ぶりを見学させてもらってるだけでしてね。無断で店の裏側に来たのは申し訳ありませんでした」
「あ、いや、別に……。まぁ、アラタにはいろいろと世話になってて……」
なんか無駄なグダグダな会話になりそうな気がする。
「んじゃそろそろ戻るんで……」
「あ、すまん。今回分の手当て今持ってくるわ」
俺が自分の世界にいた頃、噂で聞いた話だが、日雇い労働者の一日の収入は一万円弱と聞いた。
半日もかからない作業だから、それに照らし合わせた額を要求したら、流石にそれは安すぎる、とドーセンから言われた。
一万円を提示されたが、三時間程度で終わらせられる仕事だから逆にこっちの気が引けた。
ということで、一回につき五千円にしてもらっている。
「まぁアラタさんの仕事ぶりを見て、灰色の天馬の……」
「テンちゃん?」
「あぁ、そうでした。テンちゃんさんの給与を決めるってのも変な話ですが」
テンちゃんにさん付けも十分変だが。
「雇われた側が何もせずに、それでもそちらの利益が上がったとしても、出来高払いだとしても逆にこっちが恐縮するな。ドーセンの手間も省けるから、あいつが満腹になるまで干し草を食わせてもらった方がよほどこっちは気が楽だし」
それに、何かやらかしてトラブルを起こすこともあるかもしれない。
まぁそこまで馬鹿じゃないだろうから、巻き込まれる恐れはあるかもな。
こっちに火の粉が飛んでこないように配慮してもらう。
それだけでも十分有り難いんだが。
って……。
「じゃあアラタさんのおっしゃるように、テンちゃんさんへは、十分な食事の量の干し草を用意する、ということで」
なし崩しに引き受けることになっちまってる。
まぁ……いいよな、多分。
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