192 / 493
店の日常編
外の世界に少しずつ その10
しおりを挟む
サーマルからの依頼の話はこんな風な流れで、俺がその依頼の引き受けの責任者だからそれは分かっている。
が、当人はまだこのことは知り得ず。
「え? あたしがバイト?」
テンちゃんには寝耳に水な話。
まぁそりゃそうだ。
人型のように、器用に動かせる指はない。
常に自由に動かせる腕もない。
できる仕事と言えば、重い物体を引っ張る、押す。
そして飛ぶくらい。
「え? 牧場にいるだけでいいの?」
「牧場の目玉にしたいらしい。こっちの手が……つーか、テンちゃんの体が空いてたら来てほしいんだと」
テンちゃんはうれしがる、とてっきり思ってたが……。
「魔物退治でもないし、冒険者相手の稽古とかでもないんだぁ……」
体を動かすのが好きらしいのは意外だな。
残念がるとは思いもしなかった。
「バイトした日のお昼は干し草腹いっぱい食えるぞ」
「行く!」
……まぁいいけどさ。
「でも、牧場にはどんなのがいるの?」
「そりゃ……牛とか馬とか……。詳しいこと聞いてないな」
「アラタ……。そういうとこは全く聞いてないのね……」
ヨウミの指摘はごもっとも。
だが、ビジネス上で大事な話っつったら取引の内容だろ?
環境については、いくら話を聞いても実際に目にしないと分かんないことが多いし、見てから改めて交渉し直すってことだってあるだろうよ。
「サミーは、あの双子からそんな話聞いてない?」
「マッキーってば馬鹿じゃないの?! 子供の方からそんな話するわけないじゃないっ。サミーがあの子達に何かを聞くってこともできないんだしっ。それくらい考えなくても分かるでしょっ」
コーティ、間違っちゃいない指摘だが、物言い考えろよ。
まぁ相手がマッキーでなくてもそんな物言いだけどさ。
……両手でおにぎり抱えてむしゃむしゃ食ってるその姿は可愛いけどな。
「……そうだったらいくらか情報が増えるかもって話よ。一々突っかからないでよ。今では、何かあったら一応フィールド担当だしさ」
マッキーもテンちゃんも、屋外で活動する冒険者達の補助を仕事としている。
テンちゃんが一人抜ける、というわけだが、体が空いたらという条件付き。
だから、テンちゃんがよそに出かけることは必ずしも不安材料になるとは限らないんだが……。
「でもよお、マッキーの姉ちゃん、俺らもいるんだからそんなに深刻になるこたぁねぇぺ?」
「ソノトオリダナ」
ミアーノとンーゴも相当頼りになる。
主に地下からの補助だから、その動きが把握できない者には相当不安だろうけどな。
「サミーもバイトできたことですしね」
「ホントホント」
「ウソダロ?!」
「ほんとかよ、クリマーのねぇちゃん!」
副業ができるということは、あって助かったと思ってくれる客が増える、とも言える。
が、同業者には気が引ける。
言い争いどころか、他愛のない諍い一つすら起きなけりゃ、副業に力を入れてもいいんだろうけどなぁ。
と、思ってたら……。
※※※※※ ※※※※※
テンちゃんが牧場でバイトを始めた。
干し草をたくさん食べられて喜んでた。
が、多分バイトの回数が五を超えたあたりのときだったか、戻ってくるなりドヤ顔を向けてきた。
白い歯に赤い歯茎がもろ見えのその顔、ホント殴りてぇ。
「へへん、褒められちゃったーい」
褒められた?
何のことだ?
つか、ただ寝転がってるだけで褒められるってどういうことよ?
「失礼します、アラタさん」
サーマルがテンちゃんの後ろについてきていた。
一緒に来たってことなんだが……。
何か悪いことをして、身元引受人としてここに連れて来たとしか思えんが。
「実は、年に数度、農作物泥棒がくるんですよ」
いきなり突拍子のない話が出てきたな。
「……テンちゃんを防犯に使ったってこと?」
もしそうなら、ある種の契約違反だろ。
最初からその項目も盛ってたら、こっちだってそのつもりでいられたんだから。
「いえ、たまたま、というか……。まさかテンちゃんにそんなことをしてもらえるとは、と」
イレギュラーの出来事ってことらしいな。
一体何があったんだ。
が、当人はまだこのことは知り得ず。
「え? あたしがバイト?」
テンちゃんには寝耳に水な話。
まぁそりゃそうだ。
人型のように、器用に動かせる指はない。
常に自由に動かせる腕もない。
できる仕事と言えば、重い物体を引っ張る、押す。
そして飛ぶくらい。
「え? 牧場にいるだけでいいの?」
「牧場の目玉にしたいらしい。こっちの手が……つーか、テンちゃんの体が空いてたら来てほしいんだと」
テンちゃんはうれしがる、とてっきり思ってたが……。
「魔物退治でもないし、冒険者相手の稽古とかでもないんだぁ……」
体を動かすのが好きらしいのは意外だな。
残念がるとは思いもしなかった。
「バイトした日のお昼は干し草腹いっぱい食えるぞ」
「行く!」
……まぁいいけどさ。
「でも、牧場にはどんなのがいるの?」
「そりゃ……牛とか馬とか……。詳しいこと聞いてないな」
「アラタ……。そういうとこは全く聞いてないのね……」
ヨウミの指摘はごもっとも。
だが、ビジネス上で大事な話っつったら取引の内容だろ?
環境については、いくら話を聞いても実際に目にしないと分かんないことが多いし、見てから改めて交渉し直すってことだってあるだろうよ。
「サミーは、あの双子からそんな話聞いてない?」
「マッキーってば馬鹿じゃないの?! 子供の方からそんな話するわけないじゃないっ。サミーがあの子達に何かを聞くってこともできないんだしっ。それくらい考えなくても分かるでしょっ」
コーティ、間違っちゃいない指摘だが、物言い考えろよ。
まぁ相手がマッキーでなくてもそんな物言いだけどさ。
……両手でおにぎり抱えてむしゃむしゃ食ってるその姿は可愛いけどな。
「……そうだったらいくらか情報が増えるかもって話よ。一々突っかからないでよ。今では、何かあったら一応フィールド担当だしさ」
マッキーもテンちゃんも、屋外で活動する冒険者達の補助を仕事としている。
テンちゃんが一人抜ける、というわけだが、体が空いたらという条件付き。
だから、テンちゃんがよそに出かけることは必ずしも不安材料になるとは限らないんだが……。
「でもよお、マッキーの姉ちゃん、俺らもいるんだからそんなに深刻になるこたぁねぇぺ?」
「ソノトオリダナ」
ミアーノとンーゴも相当頼りになる。
主に地下からの補助だから、その動きが把握できない者には相当不安だろうけどな。
「サミーもバイトできたことですしね」
「ホントホント」
「ウソダロ?!」
「ほんとかよ、クリマーのねぇちゃん!」
副業ができるということは、あって助かったと思ってくれる客が増える、とも言える。
が、同業者には気が引ける。
言い争いどころか、他愛のない諍い一つすら起きなけりゃ、副業に力を入れてもいいんだろうけどなぁ。
と、思ってたら……。
※※※※※ ※※※※※
テンちゃんが牧場でバイトを始めた。
干し草をたくさん食べられて喜んでた。
が、多分バイトの回数が五を超えたあたりのときだったか、戻ってくるなりドヤ顔を向けてきた。
白い歯に赤い歯茎がもろ見えのその顔、ホント殴りてぇ。
「へへん、褒められちゃったーい」
褒められた?
何のことだ?
つか、ただ寝転がってるだけで褒められるってどういうことよ?
「失礼します、アラタさん」
サーマルがテンちゃんの後ろについてきていた。
一緒に来たってことなんだが……。
何か悪いことをして、身元引受人としてここに連れて来たとしか思えんが。
「実は、年に数度、農作物泥棒がくるんですよ」
いきなり突拍子のない話が出てきたな。
「……テンちゃんを防犯に使ったってこと?」
もしそうなら、ある種の契約違反だろ。
最初からその項目も盛ってたら、こっちだってそのつもりでいられたんだから。
「いえ、たまたま、というか……。まさかテンちゃんにそんなことをしてもらえるとは、と」
イレギュラーの出来事ってことらしいな。
一体何があったんだ。
0
お気に入りに追加
1,585
あなたにおすすめの小説
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜
西園寺わかば
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ どこーーーー
ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど
安全が確保されてたらの話だよそれは
犬のお散歩してたはずなのに
何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。
何だか10歳になったっぽいし
あらら
初めて書くので拙いですがよろしくお願いします
あと、こうだったら良いなー
だらけなので、ご都合主義でしかありません。。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
黙示録戦争後に残された世界でたった一人冷凍睡眠から蘇ったオレが超科学のチート人工知能の超美女とともに文芸復興を目指す物語。
あっちゅまん
ファンタジー
黙示録の最終戦争は実際に起きてしまった……そして、人類は一度滅亡した。
だが、もう一度世界は創生され、新しい魔法文明が栄えた世界となっていた。
ところが、そんな中、冷凍睡眠されていたオレはなんと蘇生されてしまったのだ。
オレを目覚めさせた超絶ボディの超科学の人工頭脳の超美女と、オレの飼っていた粘菌が超進化したメイドと、同じく飼っていたペットの超進化したフクロウの紳士と、コレクションのフィギュアが生命を宿した双子の女子高生アンドロイドとともに、魔力がないのに元の世界の科学力を使って、マンガ・アニメを蘇らせ、この世界でも流行させるために頑張る話。
そして、そのついでに、街をどんどん発展させて建国して、いつのまにか世界にめちゃくちゃ影響力のある存在になっていく物語です。
【黙示録戦争後に残された世界観及び設定集】も別にアップしています。
よければ参考にしてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる