俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

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後日談:屋根裏部屋は異空間! おにぎりが結ぶ、俺を知らない父さんとの縁

父さんかもしれないし違うかもしれない、そんな人との共同作業

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 目覚まし時計がなくても早起きできるもんだな。
 まだ部屋が薄暗い中目が覚めた。
 フォールスはまだ寝てる。
 別に彼女に付き添ってもらう必要はない。
 俺に、今の俺に必要なのは、父さんと同じ名前を持つあの人だ。
 あの人がいつもおにぎりを作っているキッチン。
 そのそばでひたすら待つことにした。

「うわっ……おはようございます……」

 壁しかない所から突然現れた。
 魔物の中にはそんな現れ方をする奴はいる。
 けどなかなか慣れない。
 この人もそんな風に現れて、思わず叫びそうになったけど何とか堪えた。

「……おう」

 ぶっきらぼうな挨拶。
 そして昨日とあまり変わらない不機嫌な顔。
 でも、あいつらみたいな嫌味とかは言わない。
 自分のことをいくらかは認めてもらえてるんだろうか。

「あの、見学させてもらいます」
「勝手にしな」

 誰かから許可をもらわなければならないほど危険な作業じゃない。
 そう考えると、邪魔しなければ自由にして構わないってことなんだな。
 それにこの人からすれば、視界に入るだけでも見学になるなら一々断りを入れられるのも面倒なんだろうな。

「あの」
「なんだ。作業の邪魔すんな」
「俺もおにぎり作ったことあります」
「だから何だ」
「……米研ぎも、父さんから習いました。手伝……わせてください」

 結構力いるんだよな。
 研ぎ汁も捨てるなら、米粒を流さないように気をつけなきゃならないし。

「……ふん。じゃあ頼む。俺には他の仕事もあるからな」

 そう言うと、隣の屋根裏部屋に手押し車を押していって、重そうな袋をそれに乗せて戻ってきた。

「米袋、ですか」
「ふん」

 その袋から米を適量ボウルに移して隣で研ぎ始めた。
 俺が知ってる父さんと比べて、比べるべくもないけど、無愛想、つっけんどん、無関心。
 そもそももう死んじゃってるから同一人物じゃないのは分かってる。
 けど……なぜか分からないけど、同じ人って感じがする。

「……研ぎ終わりました。確認お願いします」
「おう」

 自分ちで研ぐなら自分で判断して炊飯すればいい。
 でも、ここの責任者はこの人だからな。

「ふん。やれるじゃねぇか。そこの炊飯器の釜だ。早炊きでやれ」
「……師匠」
「うるせぇ。名前で呼べ」

 ……父さんのことを名前で呼ぶって、何か抵抗がある。
 呼びづらい……。

「コ……コウジさん。コウジさんの国の言葉、分かりません」
「チッ」

 小さい画面表示の文字がおそらくコウジさんの世界の言葉なんだろう。
 俺には分からなかった。

「電源あるだろ? 入れたらそのまま炊飯のスイッチ入れろ。電源スイッチのすぐ下だ」
「は、はい」

 中でゴトゴト音が鳴りだした。

「……よし。炊飯器もう一つ分米研ぎしろ」
「はい」
「あ、おはよー……あ、あれ?」

 エルフの女の子が部屋から出てきた。
 この人、コウジさんの助手、だよね……。

「……見学者の方が心がけがいいってどういうことだよ?」
「あ……あぅ……。ごめんなさい……」
「こいつを助手にしてもいいな。米研ぎ、上手いしよ」
「そ、そんなああぁぁ!」

 この子のその声が目覚ましになった。
 俺がせっかく気を遣って、他の人の睡眠を邪魔しないようにしたけど……無駄だった。
 まぁ……いいけど。

 って、俺、ここの助手になるって……無理なんですけど?!

「ほら、お前も手を休めるな。野郎どもが起き始めてきたぞ!」
「は、はいっ!」

 それにしてもコウジさん、ずっと表情が変わらない不機嫌そうな顔。
 でも、仕事が嫌って訳でもなさそうだし……。

「炊飯器は三つある。がこれ一回ずつじゃ当然足りない。空いてるボウルでさらに米研ぎ。炊飯終わって握り飯作って空になるまで水に漬けとくように」
「は、はいっ」
「あと……お前は握り飯は作るな」
「は……、え? えぇ?」
「作るな。邪魔だ」
「は、はい……」

 なんでだろ?
 まぁ、言われたことはしっかりやっとかないと。

「あ……おはよう……お、おはようございますっ」

 フォールスも起きてきた。
 先に俺が起きてるなんて思ってなかったらしい。
 けどコウジさんは無反応。

「ちょっとエッジ! 私を起こしなさいよっ! 何で一人で動いてるのよ!」

 文句はいいけど、なんで小声だよ。

「フォールス」
「何よ!」
「仕事の邪魔」

 フォールスも朝から機嫌が悪くなった。
 こいつのせいでコウジさんから「どっか行け!」なんて邪険にされたら、何かを学び取ろうとする努力が水の泡になっちまう。
 不機嫌になっとけ、お前はっ。

「……何だよ」
「い、いえ……何でもないです……」

 横目でコウジさんを見てたけど、目が合った。
 睨まれてるかもしれないと思ってたんだけど、何か……笑ってたような気がした。
 そしたらまたすぐにいつもの顔になってた。

 でもずっとそんな顔してるってことは、この仕事、嫌いなのかな。
 でもみんな喜んでる。
 みんなに喜んでもらってるのに、なんで不機嫌なんだろ。

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