187 / 196
後日談:屋根裏部屋は異空間! おにぎりが結ぶ、俺を知らない父さんとの縁
やっぱりここは、例の噂の部屋だった じゃあこの部屋の持ち主は……
しおりを挟む
「エッジ」
ひょっとして、死んだ父さんが生きているのか?
それを確かめに行こうとする俺をフォールスが呼び止めた。
「ここ……って……、冒険者達の間で噂になってる部屋なんじゃないの?」
「おう、多分そうだろうよ。って、子供の耳にも届くほど有名になったか。がはははは」
返事をしたのは俺じゃなくて、俺達におにぎりを持ってきてくれた冒険者のおじさんだ。
「ハタナカ・コウジっつってな。ただの人間らしいんだが……ダンジョンの中にこんな部屋があるとは思わなかった。そんな部屋に我が物顔で、ここに来る連中をこうして握り飯を配ってくれてる。あまり美味くはないが、大概のケガはすぐ治る」
父さんの……名前だ!
……いや、生きているはずがない。
同姓同名だろう。
けど母さんは、噂の部屋でおにぎりを作ってる人と大祖母さんが血縁関係にあるってことが知り合ったきっかけだったって言ってた。
「ど、どこにいますか? その人」
「隣のプレハブの部屋だよ」
「……エッジ。顔、青いよ? どうしたの? あ、ちょっと!」
すぐそばにいる。
もう会うことはない人に会える。
けど……ひょっとしたら……。
一緒に……一緒に帰ることができるかもしれない!
「父さん!」
みんなが俺を見てるみたいだった。
その人も俺を凝視してる。
そして俺も、その人を見た。
……何か……なんか違う。
「んだよ、ガキ。『父さん』ってのは、俺のことか?」
言葉が出なかった。
俺のことを知らないみたいだった。
五年も会わなきゃすっかり忘れるんだろうな。
「ちょっと、エッジ! 何いきなり口走ってんのよっ。父さんって……この人?」
「嬢ちゃんよ、あんたらが何才か知らねぇが、そんな大きい子供を持ってる覚えはねぇよ。お前らがどんなに若く見積もっても十才より下ってことはねぇな。だったらお前らは、俺が十八くらいの時に出来た子供ってことになる。俺は二十八だし、そもそも結婚もしてねぇよ」
「え……」
父さんが死んだのは四十才の時だから、俺が生まれた時の父さんの年齢は三十才。
目の前の人をよーく見ると、父さんを若くするとこんな感じになる……。
「……そんな若い奴でもお前くらいの年齢の子供を作ることができる、とか言うんじゃねぇだろうな? 残念ながらそんな暇はねぇよ。自由時間はすべて握り飯作りに割いてるからな」
「あ……あの……」
「……まだ何かあんのか? おい、シェイラ!」
「は、はいっ」
「お前がこいつらの相手してやれ。作業中に声かけられたら、手元が疎かになっちまう」
「は、はい。……君たち、ごめんね? コウジさんからちょっと離れててくれない? 今仕事中だから」
若そうなエルフの女の人に押しとどめられて、部屋の隅に引っ張られた。
「何か訳あり? 良かったら話聞くわよ?」
「え、えっと……」
……って考えるまでもない。
本人と直接話をしないことには、進展なんかあるわけがない。
「あの人の空いてる時間に、あの人とお話ししたい……です」
「もうすぐ夜のご飯の時間が終わるから、それまで大人しく待ってればできるかもよ? いい?」
夜?
「夜のご飯……って……。私達があのダンジョンに入った時は……」
「うん。お昼時間が終わってすぐだった。そこまで時間が経ってるとは思えないけど……」
時間の感覚がおかしい。
それどころか、あの人が父さんなら、そのこと自体もおかしい。
「おいおい、どうしたんだ? あいつのこと父さんなんて呼んでよ」
「あ……さっきの……」
おにぎりを持ってきてくれた冒険者がやってきた。
心配されてしまった。
「そ、そうよっ。何であの人があんたのお父さんなわけ?」
「……誰にも言ってなかったけど、俺のミドルネーム、ハタナカって言うんだ。父さんの苗字なんだ」
「なっ……! ……あぁ、思い付きか」
「思いついたんじゃねぇよ!」
「騒ぐな。……あいつが言うには、五年前からここで握り飯作って、ここに来る連中に配ってるんだとよ。具合の悪い奴、怪我した奴はたちどころに治るんだ。本人は魔力とか持ってないって言ってたがな」
冒険者のおじさんが口を挟んだ。
確かに、興奮しすぎてた。
自分でもどうかしてると思う。
けど、感情を抑えられなかった。
「五年前から?!」
「どうしたのよ、エッジ。さっきから興奮しっぱなしで。落ち着きなさいよ」
「あ……あぁ……」
五年前に父さんは死んだ。
ということはここは……。
「ここ……って……、死後の世界……なの?」
「ちょっと! 言うに事欠いて死後の世界って!」
「ははは。そりゃ愉快だ。だが……ここに来る連中は俺も含めて、自分がいたダンジョンの中の一部なんだよな。けどここに来る連中を見ればわかるが……」
「え? そんなこと……ありえないでしょ? 考えられることと言えば……やっぱり別の世界の部屋、ってことかしら?」
「あぁ。嬢ちゃんは聡明だな。コウジの世界で、コウジの家の一部らしい」
俺達がいたダンジョンから別の世界に飛ばされた……ってことか。
でもそれだけじゃないよな?
時間の感覚がおかしいもん。
「異世界……異次元……異空間……」
「あぁ。俺らからすればそう見えるな。だがコウジから見れば現実世界ってわけだ。実に不思議な空間だよ、ここは」
ひょっとして、死んだ父さんが生きているのか?
それを確かめに行こうとする俺をフォールスが呼び止めた。
「ここ……って……、冒険者達の間で噂になってる部屋なんじゃないの?」
「おう、多分そうだろうよ。って、子供の耳にも届くほど有名になったか。がはははは」
返事をしたのは俺じゃなくて、俺達におにぎりを持ってきてくれた冒険者のおじさんだ。
「ハタナカ・コウジっつってな。ただの人間らしいんだが……ダンジョンの中にこんな部屋があるとは思わなかった。そんな部屋に我が物顔で、ここに来る連中をこうして握り飯を配ってくれてる。あまり美味くはないが、大概のケガはすぐ治る」
父さんの……名前だ!
……いや、生きているはずがない。
同姓同名だろう。
けど母さんは、噂の部屋でおにぎりを作ってる人と大祖母さんが血縁関係にあるってことが知り合ったきっかけだったって言ってた。
「ど、どこにいますか? その人」
「隣のプレハブの部屋だよ」
「……エッジ。顔、青いよ? どうしたの? あ、ちょっと!」
すぐそばにいる。
もう会うことはない人に会える。
けど……ひょっとしたら……。
一緒に……一緒に帰ることができるかもしれない!
「父さん!」
みんなが俺を見てるみたいだった。
その人も俺を凝視してる。
そして俺も、その人を見た。
……何か……なんか違う。
「んだよ、ガキ。『父さん』ってのは、俺のことか?」
言葉が出なかった。
俺のことを知らないみたいだった。
五年も会わなきゃすっかり忘れるんだろうな。
「ちょっと、エッジ! 何いきなり口走ってんのよっ。父さんって……この人?」
「嬢ちゃんよ、あんたらが何才か知らねぇが、そんな大きい子供を持ってる覚えはねぇよ。お前らがどんなに若く見積もっても十才より下ってことはねぇな。だったらお前らは、俺が十八くらいの時に出来た子供ってことになる。俺は二十八だし、そもそも結婚もしてねぇよ」
「え……」
父さんが死んだのは四十才の時だから、俺が生まれた時の父さんの年齢は三十才。
目の前の人をよーく見ると、父さんを若くするとこんな感じになる……。
「……そんな若い奴でもお前くらいの年齢の子供を作ることができる、とか言うんじゃねぇだろうな? 残念ながらそんな暇はねぇよ。自由時間はすべて握り飯作りに割いてるからな」
「あ……あの……」
「……まだ何かあんのか? おい、シェイラ!」
「は、はいっ」
「お前がこいつらの相手してやれ。作業中に声かけられたら、手元が疎かになっちまう」
「は、はい。……君たち、ごめんね? コウジさんからちょっと離れててくれない? 今仕事中だから」
若そうなエルフの女の人に押しとどめられて、部屋の隅に引っ張られた。
「何か訳あり? 良かったら話聞くわよ?」
「え、えっと……」
……って考えるまでもない。
本人と直接話をしないことには、進展なんかあるわけがない。
「あの人の空いてる時間に、あの人とお話ししたい……です」
「もうすぐ夜のご飯の時間が終わるから、それまで大人しく待ってればできるかもよ? いい?」
夜?
「夜のご飯……って……。私達があのダンジョンに入った時は……」
「うん。お昼時間が終わってすぐだった。そこまで時間が経ってるとは思えないけど……」
時間の感覚がおかしい。
それどころか、あの人が父さんなら、そのこと自体もおかしい。
「おいおい、どうしたんだ? あいつのこと父さんなんて呼んでよ」
「あ……さっきの……」
おにぎりを持ってきてくれた冒険者がやってきた。
心配されてしまった。
「そ、そうよっ。何であの人があんたのお父さんなわけ?」
「……誰にも言ってなかったけど、俺のミドルネーム、ハタナカって言うんだ。父さんの苗字なんだ」
「なっ……! ……あぁ、思い付きか」
「思いついたんじゃねぇよ!」
「騒ぐな。……あいつが言うには、五年前からここで握り飯作って、ここに来る連中に配ってるんだとよ。具合の悪い奴、怪我した奴はたちどころに治るんだ。本人は魔力とか持ってないって言ってたがな」
冒険者のおじさんが口を挟んだ。
確かに、興奮しすぎてた。
自分でもどうかしてると思う。
けど、感情を抑えられなかった。
「五年前から?!」
「どうしたのよ、エッジ。さっきから興奮しっぱなしで。落ち着きなさいよ」
「あ……あぁ……」
五年前に父さんは死んだ。
ということはここは……。
「ここ……って……、死後の世界……なの?」
「ちょっと! 言うに事欠いて死後の世界って!」
「ははは。そりゃ愉快だ。だが……ここに来る連中は俺も含めて、自分がいたダンジョンの中の一部なんだよな。けどここに来る連中を見ればわかるが……」
「え? そんなこと……ありえないでしょ? 考えられることと言えば……やっぱり別の世界の部屋、ってことかしら?」
「あぁ。嬢ちゃんは聡明だな。コウジの世界で、コウジの家の一部らしい」
俺達がいたダンジョンから別の世界に飛ばされた……ってことか。
でもそれだけじゃないよな?
時間の感覚がおかしいもん。
「異世界……異次元……異空間……」
「あぁ。俺らからすればそう見えるな。だがコウジから見れば現実世界ってわけだ。実に不思議な空間だよ、ここは」
0
あなたにおすすめの小説
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
スーパー忍者・タカシの大冒険
Selfish
ファンタジー
時は現代。ある日、タカシはいつものように学校から帰る途中、目に見えない奇妙な光に包まれた。そして、彼の手の中に一通の封筒が現れる。それは、赤い文字で「スーパー忍者・タカシ様へ」と書かれたものだった。タカシはその手紙を開けると、そこに書かれた内容はこうだった。
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした
むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
SE転職。~妹よ。兄さん、しばらく、出張先(異世界)から帰れそうにない~
しばたろう
ファンタジー
ブラック企業で倒れたSEが、
目を覚ますと――そこは異世界だった。
賑やかなギルド、個性豊かな仲間たち、
そして「魔法」という名のシステム。
元エンジニアの知識と根性で、男は再び“仕事”を始める。
一方、現実世界では、
兄の意識が戻らぬまま、妹が孤独と絶望の中で抗っていた。
それでも彼女は、心ある人々に支えられながら、
科学と祈りを武器に、兄を救う道を探し続ける。
二つの世界を隔てる“システム”の謎が、やがて兄妹を結びつける。
異世界と現実が交錯するとき、物語は再起動する――。
《「小説家になろう」にも投稿しています》
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる