141 / 196
シルフ族の療法司ショーア
ショーアはここでの仕事に随分馴染んできました
しおりを挟む
「へぇ。まさかコウジと同じことしてる人がいるとはねぇ」
「コウジさんには敵いません。ここに来て改めて実感しましたが、ほんとにいろんな世界があったんですね……。私は、私の世界の人達しか治せませんから」
ショーアは俺の隣で、一緒に米研ぎをしている。
流しを挟んで会話している相手は、久しぶりに見た男戦士。
コルトを助ける前から何度も顔を出してたが、今日ここに来たのを見て、そのこと自体すっかり忘れてた。
「でも魔物がうじゃうじゃいるダンジョンの中で診療所開くって……冒険者達にゃ有り難い話だろうけどな」
傍で会話されてるもんだから、聞くともなしに耳に入ってくる話。
うっとおしいと言えばうっとおしい。
ショーアにも作業に集中してもらいたいもんだがな。
洗米する手に力が入りすぎて、米が割れたりしたら勿体ないだろ。
「しかもあちこちのダンジョンにそんな場所を作ったって……。一人じゃ切り盛りできねぇだろ」
「賛同して協力してくれる方々がいるので……。ただ、名声目当てに来られる方は迷惑ですけどね」
会話してるから作業している手元が疎かになる。
と思ってたんだが。
汚れた水を切る。
米粒は一つもこぼさない。
まぁ……まぁ、やるじゃないか。
だが監視の目は緩める気はないな。
「志を同じにしてくれる仲間達もだんだん増えて。でもその度合いにも差があったりするので、まずは診療所の活動維持を第一にして」
「戦場の前線に立つ者の大変さは知り尽くしたつもりだが、バックアップの大変さはあんたから話を聞いて初めて知ったような気がするな」
「いえいえ、私なんかまだまだです」
……飲み屋のママと客の会話じゃねぇの? これ。
そのうち、マスターなんて呼ばれるようになったりしてな。
もっともそう呼ぶほどここに何度も来る奴はいねぇだろ。
「なんかここ、俺の行きつけの酒場みてぇになってんな。なぁ、マス」
「何も食わずに今すぐ帰れ!」
「コ、コウジさん……」
まったくこいつらは。
「あははは。コウジは変わんねぇなぁ。コルトちゃんは随分変わったってのにな」
「コルト……さん……ですか」
「おぅ。歌姫コルト。そんな渾名が定着したな。けどあの娘も出世したよなー」
「「出世?」」
一々覚えてなかったが、法王とか何とかの宗教つったか? その生活支援補助とやらの長の補佐だかになってるとか。
俺にはよく分からん。
「未熟な冒険者の方が、そんな役目に……。すごいじゃないですか、そのコルトさんって方は」
「自分の能力と成長力の自覚だね。それと献身度ってとこかな。そうだ、コウジ。あの娘の元仲間達、肩身が狭い思いしてるってよ」
「肩身が狭い? 何かあったんですか?」
ショーアよ。
マジでお前、飲み屋のママさんみたいな口調だぞ。
男戦士の話を頷きながら聞いてる。
顔を曇らせたり晴れやかになったり。
まぁ人の話を聞くことで、相手の気持ちを和らげるってこともあるんだろうが。
にしても、炊飯器クラッシュ以降、本当にミスしないよな。
時々そいつの話を止めて、こっちの作業を優先する時もあるし。
……力仕事はシェイラに負けるのがちと惜しいが。
カートで米袋を運んでくる間も、時々会話に混ざる他の冒険者とも普通に相手をしてる。
「王女? あ、あぁ、ちらっと見かけたましたね。私と入れ違いになった、あの……あれ?」
「何?」
「王女、というにはちょっとイメージが……。運動着っぽい服着てましたよね……」
「身分を隠してってことじゃないのかな?」
「そうなんですか。すごい方が来られるんですねぇ……。やはりコウジさんの人徳なんでしょうね。ね? コウジさん」
って力作業してるときにいきなり振るなよ。
話は俺は聞いてねぇんだが?
「何の話だよ」
「コウジさんのお手伝いされる方が高尚な方ばかりなのは、コウジさんのお陰かもしれませんって話ですよ」
「自画自賛おつ。その論法ならお前も将来高い地位に就くって予言になるよな」
ショーアがぽかんとしている。
話の展開が予想外の方向に行くとそうなるよな。
「そう言えば……そういうことになるよな」
「けどお近づきになっても、別世界の人じゃちょっと残念かな」
「同じ世界から来た奴を助手にすればいいんじゃねぇの?」
こいつらはこいつらで、変な皮算用してないか?
つーか、駄弁る元気があるならとっとと帰れ!
「コウジさんには敵いません。ここに来て改めて実感しましたが、ほんとにいろんな世界があったんですね……。私は、私の世界の人達しか治せませんから」
ショーアは俺の隣で、一緒に米研ぎをしている。
流しを挟んで会話している相手は、久しぶりに見た男戦士。
コルトを助ける前から何度も顔を出してたが、今日ここに来たのを見て、そのこと自体すっかり忘れてた。
「でも魔物がうじゃうじゃいるダンジョンの中で診療所開くって……冒険者達にゃ有り難い話だろうけどな」
傍で会話されてるもんだから、聞くともなしに耳に入ってくる話。
うっとおしいと言えばうっとおしい。
ショーアにも作業に集中してもらいたいもんだがな。
洗米する手に力が入りすぎて、米が割れたりしたら勿体ないだろ。
「しかもあちこちのダンジョンにそんな場所を作ったって……。一人じゃ切り盛りできねぇだろ」
「賛同して協力してくれる方々がいるので……。ただ、名声目当てに来られる方は迷惑ですけどね」
会話してるから作業している手元が疎かになる。
と思ってたんだが。
汚れた水を切る。
米粒は一つもこぼさない。
まぁ……まぁ、やるじゃないか。
だが監視の目は緩める気はないな。
「志を同じにしてくれる仲間達もだんだん増えて。でもその度合いにも差があったりするので、まずは診療所の活動維持を第一にして」
「戦場の前線に立つ者の大変さは知り尽くしたつもりだが、バックアップの大変さはあんたから話を聞いて初めて知ったような気がするな」
「いえいえ、私なんかまだまだです」
……飲み屋のママと客の会話じゃねぇの? これ。
そのうち、マスターなんて呼ばれるようになったりしてな。
もっともそう呼ぶほどここに何度も来る奴はいねぇだろ。
「なんかここ、俺の行きつけの酒場みてぇになってんな。なぁ、マス」
「何も食わずに今すぐ帰れ!」
「コ、コウジさん……」
まったくこいつらは。
「あははは。コウジは変わんねぇなぁ。コルトちゃんは随分変わったってのにな」
「コルト……さん……ですか」
「おぅ。歌姫コルト。そんな渾名が定着したな。けどあの娘も出世したよなー」
「「出世?」」
一々覚えてなかったが、法王とか何とかの宗教つったか? その生活支援補助とやらの長の補佐だかになってるとか。
俺にはよく分からん。
「未熟な冒険者の方が、そんな役目に……。すごいじゃないですか、そのコルトさんって方は」
「自分の能力と成長力の自覚だね。それと献身度ってとこかな。そうだ、コウジ。あの娘の元仲間達、肩身が狭い思いしてるってよ」
「肩身が狭い? 何かあったんですか?」
ショーアよ。
マジでお前、飲み屋のママさんみたいな口調だぞ。
男戦士の話を頷きながら聞いてる。
顔を曇らせたり晴れやかになったり。
まぁ人の話を聞くことで、相手の気持ちを和らげるってこともあるんだろうが。
にしても、炊飯器クラッシュ以降、本当にミスしないよな。
時々そいつの話を止めて、こっちの作業を優先する時もあるし。
……力仕事はシェイラに負けるのがちと惜しいが。
カートで米袋を運んでくる間も、時々会話に混ざる他の冒険者とも普通に相手をしてる。
「王女? あ、あぁ、ちらっと見かけたましたね。私と入れ違いになった、あの……あれ?」
「何?」
「王女、というにはちょっとイメージが……。運動着っぽい服着てましたよね……」
「身分を隠してってことじゃないのかな?」
「そうなんですか。すごい方が来られるんですねぇ……。やはりコウジさんの人徳なんでしょうね。ね? コウジさん」
って力作業してるときにいきなり振るなよ。
話は俺は聞いてねぇんだが?
「何の話だよ」
「コウジさんのお手伝いされる方が高尚な方ばかりなのは、コウジさんのお陰かもしれませんって話ですよ」
「自画自賛おつ。その論法ならお前も将来高い地位に就くって予言になるよな」
ショーアがぽかんとしている。
話の展開が予想外の方向に行くとそうなるよな。
「そう言えば……そういうことになるよな」
「けどお近づきになっても、別世界の人じゃちょっと残念かな」
「同じ世界から来た奴を助手にすればいいんじゃねぇの?」
こいつらはこいつらで、変な皮算用してないか?
つーか、駄弁る元気があるならとっとと帰れ!
1
あなたにおすすめの小説
ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした
むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
SE転職。~妹よ。兄さん、しばらく、出張先(異世界)から帰れそうにない~
しばたろう
ファンタジー
ブラック企業で倒れたSEが、
目を覚ますと――そこは異世界だった。
賑やかなギルド、個性豊かな仲間たち、
そして「魔法」という名のシステム。
元エンジニアの知識と根性で、男は再び“仕事”を始める。
一方、現実世界では、
兄の意識が戻らぬまま、妹が孤独と絶望の中で抗っていた。
それでも彼女は、心ある人々に支えられながら、
科学と祈りを武器に、兄を救う道を探し続ける。
二つの世界を隔てる“システム”の謎が、やがて兄妹を結びつける。
異世界と現実が交錯するとき、物語は再起動する――。
《「小説家になろう」にも投稿しています》
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
スーパー忍者・タカシの大冒険
Selfish
ファンタジー
時は現代。ある日、タカシはいつものように学校から帰る途中、目に見えない奇妙な光に包まれた。そして、彼の手の中に一通の封筒が現れる。それは、赤い文字で「スーパー忍者・タカシ様へ」と書かれたものだった。タカシはその手紙を開けると、そこに書かれた内容はこうだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる