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シルフ族の療法司ショーア
二つ目を持ってきたのは歌姫
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「ショーアさんは自分で診療所を開いたって言ってたよね?」
「えぇ。ですので、国営とか大層なものじゃないんですよね」
「するってぇと、国とか世界公認の活動じゃないわけか」
「……そんなのが欲しいと思ってるわけじゃないんですけどね」
無欲、というなら、ある意味俺もそうだよな。
しかしその志の高さはまるで違う。
と言うか、俺はあくまでも惰性だしなぁ。
こいつは、困ってる人を救うってスタンスだろ?
けどやってることはほとんど同じってのは……。
こいつの方が報われなさすぎじゃねぇの?
まぁ俺が言うことじゃないけどな。
「同じ世界の人達を救う、と言うことは、その方々に関係した方から巡り巡って私の生活を助けてもらってるんです。それだけでも私、十分有り難いんです」
「そーゆー姿勢は見習わなきゃだなー」
「俺らはバックアップがいなきゃ、ホントに力を十分に発揮できねぇんだよ。だからここに来るってことは、そう言うことを忘れることもあるんだよな」
「でも……コウジさんは違いますよね」
だからいきなり振るなってんだ。
「あ? 聞いてなかった」
当然だろ?
俺が話題の中心になってるわけじゃないんだから。
なのにこいつらの反応は……。
「「これだよ……」」
何がこれだよだ。
「ほんとに変わってないですねぇ、コウジさん」
おいこら。
変わってない……ん?
ショーアの声じゃねぇな?
「お邪魔します。お久しぶりです、コウジさんっ」
「お?」
「おぉ! う、嘘だろ……? 何というタイミング……」
二人の冒険者の声が震えてる。
何なんだか。
で、だ。
……分かってるよ。
こう言ってもらいたいんだろう?
「お前、誰だよ」
「「ちょっ!」」
「ひっどーいっ。コルトですよ、忘れたんですか?」
……分かってる。
こう答えてもらいたいんだろう?
「覚える気もねぇよ」
「ひどっ!」
つーか……。
そうか。
結構みすぼらしい恰好だったもんな、あの頃のあいつ。
それが……。
白衣の天使みたいな格好してるな。
似合ってはいる。
だがな。
「コ……コウジ……。分かってんだろう……?」
何恐れおののいてるような声出してんだこいつら。
「何がだよ。何も聞いてねぇよ。こっちの仕事すんじゃねぇよ」
「そんなに邪険にすんなよ。あっちこっち遠出できるような立場じゃなくなったんだよ」
主語が抜けてんぞ。
誰の事言ってんだよ。
……で、こいつはと言うと……。
「何しに来やがった」
「来やがった、はないでしょう? ある物をお持ちしました」
二人の冒険者は俺の言葉でさらに顔を青くしてる。
ほんとに何なんだよ。
で、こいつはと言えば、だ。
物言いが堂々としてやがる。
俺の知ってるあいつは、もっとおどおどしていた。
間違いない。
こいつは名状しがたきコルトのような存在だ。
「いあいあこ」
「何言ってるんですか。これ、見てください」
呪文を途中で止められたら、それがこっちに跳ね返されるとかなかったっけか?
って言うか、何だこりゃ?
顔写真がついてる……文字は……当然俺には読めない。
賞状?
いや、違うな。
「法王ウルヴェス様のお顔ですよ。私、天流教の生活支援部歌舞局副長に就任しまして」
やたらと漢字が続いた言葉が出てきたような気がしたが。
覚えるつもりは、当然ない。
聞こえる言葉も、右の耳から左の耳に、当然華麗に受け流す。
「聞く気はないのは見てて分かりますけど、噂で聞きましたよ?」
「何を?」
「ここには争いごとを絶対に持ち込まない、と言う宣誓書がどこかの世界から届いたとか」
それは真似をすべきである、との検討から、こんな額縁に入った物を持ってこさせたのだそうだ。
にしても、コルトも普通の格好で出入りするようになったもんだな。
「えへ。それはちょっといろいろと細工を施しまして」
俺に見えない扉に仕掛けをしたってんなら、俺とは無関係ってことだよな?
それなら別に構わねぇけどさ。
それにしてもこの部屋の噂、全部でいくつあるんだ?
それは、ちょっとだけ興味ある。
「それと、噂聞きましたよ?」
「救世主の話はもういいよ。つーかするんじゃねぇ」
何か、こいつ随分馴れ馴れしくなったな。
ショーケースの上に上半身乗せて、俺を覗き込むような仕草、なんかムカつく。
俺にとってちょうどいい高さと距離だ。
思いっきり握り拳でフックをぶちかましてぇ。
「そうじゃないですよ。……聖女、と呼ばれる方を助手にされたそうで。私ちょっとだけ、鼻が高いです」
「よし、その高くなった鼻、ちょうどいい高さになるように殴って折ってあげようか」
「……やめてください物の例えですごめんなさい」
その聖女の先輩にあたるから鼻が高いんだとよ。
くだらねぇ。
「は、初めまして。ショーア、と申します……」
異世界間の交流が始まった。
ミスしなきゃ別に何してもいいけどよ。
握り飯タイムに遅れたら、俺らの晩飯の時間も遅れるんだからな?
「えぇ。ですので、国営とか大層なものじゃないんですよね」
「するってぇと、国とか世界公認の活動じゃないわけか」
「……そんなのが欲しいと思ってるわけじゃないんですけどね」
無欲、というなら、ある意味俺もそうだよな。
しかしその志の高さはまるで違う。
と言うか、俺はあくまでも惰性だしなぁ。
こいつは、困ってる人を救うってスタンスだろ?
けどやってることはほとんど同じってのは……。
こいつの方が報われなさすぎじゃねぇの?
まぁ俺が言うことじゃないけどな。
「同じ世界の人達を救う、と言うことは、その方々に関係した方から巡り巡って私の生活を助けてもらってるんです。それだけでも私、十分有り難いんです」
「そーゆー姿勢は見習わなきゃだなー」
「俺らはバックアップがいなきゃ、ホントに力を十分に発揮できねぇんだよ。だからここに来るってことは、そう言うことを忘れることもあるんだよな」
「でも……コウジさんは違いますよね」
だからいきなり振るなってんだ。
「あ? 聞いてなかった」
当然だろ?
俺が話題の中心になってるわけじゃないんだから。
なのにこいつらの反応は……。
「「これだよ……」」
何がこれだよだ。
「ほんとに変わってないですねぇ、コウジさん」
おいこら。
変わってない……ん?
ショーアの声じゃねぇな?
「お邪魔します。お久しぶりです、コウジさんっ」
「お?」
「おぉ! う、嘘だろ……? 何というタイミング……」
二人の冒険者の声が震えてる。
何なんだか。
で、だ。
……分かってるよ。
こう言ってもらいたいんだろう?
「お前、誰だよ」
「「ちょっ!」」
「ひっどーいっ。コルトですよ、忘れたんですか?」
……分かってる。
こう答えてもらいたいんだろう?
「覚える気もねぇよ」
「ひどっ!」
つーか……。
そうか。
結構みすぼらしい恰好だったもんな、あの頃のあいつ。
それが……。
白衣の天使みたいな格好してるな。
似合ってはいる。
だがな。
「コ……コウジ……。分かってんだろう……?」
何恐れおののいてるような声出してんだこいつら。
「何がだよ。何も聞いてねぇよ。こっちの仕事すんじゃねぇよ」
「そんなに邪険にすんなよ。あっちこっち遠出できるような立場じゃなくなったんだよ」
主語が抜けてんぞ。
誰の事言ってんだよ。
……で、こいつはと言うと……。
「何しに来やがった」
「来やがった、はないでしょう? ある物をお持ちしました」
二人の冒険者は俺の言葉でさらに顔を青くしてる。
ほんとに何なんだよ。
で、こいつはと言えば、だ。
物言いが堂々としてやがる。
俺の知ってるあいつは、もっとおどおどしていた。
間違いない。
こいつは名状しがたきコルトのような存在だ。
「いあいあこ」
「何言ってるんですか。これ、見てください」
呪文を途中で止められたら、それがこっちに跳ね返されるとかなかったっけか?
って言うか、何だこりゃ?
顔写真がついてる……文字は……当然俺には読めない。
賞状?
いや、違うな。
「法王ウルヴェス様のお顔ですよ。私、天流教の生活支援部歌舞局副長に就任しまして」
やたらと漢字が続いた言葉が出てきたような気がしたが。
覚えるつもりは、当然ない。
聞こえる言葉も、右の耳から左の耳に、当然華麗に受け流す。
「聞く気はないのは見てて分かりますけど、噂で聞きましたよ?」
「何を?」
「ここには争いごとを絶対に持ち込まない、と言う宣誓書がどこかの世界から届いたとか」
それは真似をすべきである、との検討から、こんな額縁に入った物を持ってこさせたのだそうだ。
にしても、コルトも普通の格好で出入りするようになったもんだな。
「えへ。それはちょっといろいろと細工を施しまして」
俺に見えない扉に仕掛けをしたってんなら、俺とは無関係ってことだよな?
それなら別に構わねぇけどさ。
それにしてもこの部屋の噂、全部でいくつあるんだ?
それは、ちょっとだけ興味ある。
「それと、噂聞きましたよ?」
「救世主の話はもういいよ。つーかするんじゃねぇ」
何か、こいつ随分馴れ馴れしくなったな。
ショーケースの上に上半身乗せて、俺を覗き込むような仕草、なんかムカつく。
俺にとってちょうどいい高さと距離だ。
思いっきり握り拳でフックをぶちかましてぇ。
「そうじゃないですよ。……聖女、と呼ばれる方を助手にされたそうで。私ちょっとだけ、鼻が高いです」
「よし、その高くなった鼻、ちょうどいい高さになるように殴って折ってあげようか」
「……やめてください物の例えですごめんなさい」
その聖女の先輩にあたるから鼻が高いんだとよ。
くだらねぇ。
「は、初めまして。ショーア、と申します……」
異世界間の交流が始まった。
ミスしなきゃ別に何してもいいけどよ。
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