俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

文字の大きさ
123 / 196
王女シェイラ=ミラージュ

飛んできた火の粉の後処理

しおりを挟む
 シェイラは母親のサーニャを連れてきた。
 どこぞの女王ってのは聞いたが、国名までは覚えてない。

 五人の兵士を見て、一瞬眉をひそめた。
 しかしすぐにまた俺に親しげな表情を見せ、軽く謝罪した後二人の兵士を連れて帰っていった。
 その間十秒経ったか経たないか。

 女王が姿を見せた時は、誰もが彼女から距離を置いた。
 当然この喧噪も一瞬で静まる。
 どんだけ威厳があるんだか。

 まぁ誰かが血祭りになる惨劇は回避されて何よりだ。
 俺としてもこんな展開を期待していたんだが、考えてみりゃ敵兵三人を瞬時に跡形もなく……なんてこともできたんじゃねぇか?
 そう考えると、俺の考えもかなり浅はかだったか。
 まぁ結果良ければすべて良しだ。

 と思ったら。
 また戻ってきた。
 今度は一人で。

 大勢の冒険者に遠巻きに囲まれながら、敵兵と思われる三人の兵士の前に立つ。
 どうするつもりだよお前。
 その後ろで実の娘が……怯えてる。

 殺気立ってるのはへたばってる三人の兵士だけ。
 俺だったら、いくら相手が怪我人でも一たまりもないだろうな。
 けど、俺じゃなくて女王サマだからな。
 穏やかな顔つきで余裕があるように見える。
 空威張りとは無縁な感じ。

「……ここは、安全区域ではない」

 いきなり何を言い出すんだこの女王は。
 またきな臭いことになりかねねぇぞ?
 人んちを何だと思ってやがる!

「ここは、身と心に休息を与えることができる区域。それに反する者故、退室させた。それだけよ」

 休息の場所という割には、緊張感に満ちた静けさって感じがするんだが?

「コウジよ、ちょっといいか?」

 人払いをしてほしいにも、そんな場所はどこにもない、ということなんだろうな。
 指輪の部屋に行きたがってる。

「……シェイラ、お前も付き合え」
「は……はい……」

 母子での会話を望んでるようだ。
 兵士三人はおそらくサーニャの顔を知っている。
 ひょっとしたらシェイラもすでに顔バレかもしれん。
 が、そうではない可能性もある、と踏んだんだろう。
 俺から声をかければ、娘とは別人と判断してもらえるかもしれんってことなんだろうな。

 だが二人っきりにしたら、それが明らかになる。
 聞きたくもない会話を耳に入れるのも煩わしいが、ここは三者面談の形にするしかないだろうな。
 別に感謝されたいわけじゃない。
 そうしないと、ひょっとしたら逆恨みされかねない。
 いくら一国の王……じゃないか。女王で公的な立場であったとしても、娘の母親としての情はあるだろう。
 全く面倒なことに巻き込まれたものだ。

 っていうか、よく今までこんな面倒事がなかったもんだな。

 ※※※※※ ※※※※※

「……きて。起きて……ばっ。コウジッ! おーきーろーっ!」
「痛ぇっ!」

 いつのまにか寝てた。
 脛、また蹴られた。

 寝てもいいって言うんだもん。いいじゃねぇか。

「コウジよ、余計なお世話をさせてほしいのだが」

 いきなり自分でそんなこと言うか。

「何だよ。面倒事はご免だぞ」
「妾の世界での主要国すべての言語で書き記した証書を贈ろうと思う。キッチンのようなところの壁にでもかけるといい」

 なんか、また訳の分かんないこと言いだしたよ、この御仁は。
 何の名誉もいらねぇよ。

「妾の顔写真もつけよう。それで充分役目を果たすはずだ」
「何のだよ」
「今回……ばかりではなかったな。コウジに迫った兵もいた。そのようなことをする場所ではないという宣言めいたような物よ」

 サーニャの住む世界の者が見たら、ここはどのような場所で、どのように振る舞うべきかを知らしめるものがあれば、俺の手が焼けることもないだろうという配慮らしい。

 サーニャの世界では随一の国力を持つとか何とか言ってたか?
 そんな国の女王からのお達しなら、その世界から来た連中は騒ぎを起こすことはないだろうとのこと。
 まぁ……そんな物なら有り難いとは思うかな。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

SE転職。~妹よ。兄さん、しばらく、出張先(異世界)から帰れそうにない~

しばたろう
ファンタジー
ブラック企業で倒れたSEが、 目を覚ますと――そこは異世界だった。 賑やかなギルド、個性豊かな仲間たち、 そして「魔法」という名のシステム。 元エンジニアの知識と根性で、男は再び“仕事”を始める。 一方、現実世界では、 兄の意識が戻らぬまま、妹が孤独と絶望の中で抗っていた。 それでも彼女は、心ある人々に支えられながら、 科学と祈りを武器に、兄を救う道を探し続ける。 二つの世界を隔てる“システム”の謎が、やがて兄妹を結びつける。 異世界と現実が交錯するとき、物語は再起動する――。 《「小説家になろう」にも投稿しています》

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

スーパー忍者・タカシの大冒険

Selfish
ファンタジー
時は現代。ある日、タカシはいつものように学校から帰る途中、目に見えない奇妙な光に包まれた。そして、彼の手の中に一通の封筒が現れる。それは、赤い文字で「スーパー忍者・タカシ様へ」と書かれたものだった。タカシはその手紙を開けると、そこに書かれた内容はこうだった。

処理中です...