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未熟な冒険者のコルト

畑中幸司、極悪非道から昇格

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 俺は今、二人の兵士と思しき者達から槍で壁際に押さえつけられてる。
 もちろんこの二人も異世界からやってきた奴らだ。
 ここに来るほとんどの連中と同じく、初めて見る二人。

 覚えてないだけだろう? 
 記憶にないだけだろう?

 そう言われれば、返す言葉もない。
 なんせ覚える気もないんだから。

 ※※※※※ ※※※※※

 カレーうどんの件は、今から約一か月前の出来事になってしまった。

 あの時は、間違いなく、純粋なお詫びの気持ちで海老天たまうどんをコルトに作ってあげた。
 作ってやったんじゃなくて、作ってあげたんだからな?

 でも、その思いを全て込められなかった。
 だから、夜は鍋焼きうどんを作ってあげた。
 野菜とかもたっぷり入ってるから栄養もあるし。
 ただ、準備に手間取ったから、コルトの晩ご飯の時間は少し遅れたけど。
 握り飯のこともあるしな。

 もちろん俺も一緒に晩飯を食べた。
 辛味がある、ソースたっぷりの焼きそば。

 辛いの食べさせるわけにはいかないよな。
 けど、コルトが珍しそうに見てたような気がしたから、麺一本を短く切って、ソースに浸して食べさせてみた。

「辛いだろ。辛いよな? ま、これも経験ということで」

 コルトのやつ、何か涙目になってる。
 何か言おうとしてたけど、辛くて声が出なかったのかな。
 水も汲んでたからそんなに深刻なことにはならないと思うけど。

 次の日からは、何か避難しに来た冒険者達の動きがせわしなくなった。

「元気になったから早く街に戻って、俺もうまいもんを食うんだー!」

 なんていうような声があちこちから聞こえてたんだが。
 みんな今まで、そうなるように休養に努めてただろうけどな。
 何をいまさらって感じで聞いてた。

 二週間くらいしてからかな。
 ここに来る連中の目つきが変わったように感じた。

 今までは、ここにきて安心したような顔をする奴らが多かった。
 それが、その安心した顔が俺を見た時に、希望を失ったような表情をする奴が増えてきてたな。
 ちょっと気味が悪かったけど、「救世主」などと呼ばれるよりはマシな気がした。

 ところがそれからしばらくしたら、俺のことを陰で「外道」とか呼んでるのを聞くようになった。
 心当たりはないし、面と向かって言われたこともないから別に気にすることもなかったな。

 でもそのうち、「悪魔」とか呼ぶ奴も出てきたんだよな。
 そう言えばこの部屋には、こいつらのいう「魔物」は入って来たことはない。
 なのに「悪魔」ってどういうことだと。

 本当に俺のことをそう呼んでいるのか。
 そう呼ぶ理由とかも聞きたかったが、向こうの世界のことだろうから、これまで通り無関心を特に通してた。
 物騒な気がしたが、実害は全くないんだ。
 ならこっちから探ろうにも何をどう探っていいのか分からんかったし。
 何かトラブルが起きたら、この場所の責任者として行動を起こさにゃならんかったろうが、特に不審なことはなかった。

 ※※※※※ ※※※※※

 しかしこの二人の兵士、装備には破損などはなく、健康状態も問題なさそう。
 だったら何でここに来てんの?

「魔王、ハタナカ・コウジ! 観念しろ!」

 ……はい?

 その二人の迫力に押され、コルトも、そして他の冒険者の連中も遠巻きに見てるだけだった。
 誰もが近寄りたくても近寄れずにいた。

 一体俺が何したって言うんだっ。
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