上 下
49 / 61

第四十九話 エンペラーベアー

しおりを挟む

 辺境伯は周りの兵士達に命令し、防衛準備を指示していた。

 私は魔法袋から軽鎧と剣を取り出し、装着した。

 装備を整えた私は壁の上から魔物達を観察した。

 観察して分かった。

 全ての種類の魔物がいると思っていたが、どうやら熊系の魔物がいないな。

 どこを探してもいない。

 どうようことだ?

 そのことを疑問に思っていると、何処からか遠吠えが聞こえた。

 それには防衛準備を進めている兵士達も驚いた表情を浮かべていた。

 遠吠えが聞こえた方を向くと、熊がいた。

 大きい大きい熊が。

 体長は15メートルを超えている。

 そしてその大きい熊はある山の頂上に立っていた。

 それに進攻してくる魔物達も魔物の皇帝も北壁の上にいる兵士達も山の頂上を見た。

 大きい熊を見て確信した。

 ああ、約束を果たしたのか。

 私の兄弟ベーアよ。

 ベーアは空に向かって遠吠えを上げた。

 その遠吠えに答えるように山頂に現れたのだ。

 様々な種類の熊の魔物だった。

 ベーア。

 私の兄弟よ。

 熊の皇帝になったのか。

 本当に最高だ。

 そんなことを思っていると、辺境伯が私に近づいてきた。

 「ベ、ベアード侯爵。あ、あれは、も、もしかして」

 「そうです、辺境伯。熊の皇帝、いや、エンペラーベアーは私の兄弟のベーアです」

 その言葉に辺境伯と周りにいた兵士達は驚いた表情を浮べた。

 「ですから、安心してください。熊の魔物達は味方だと思います」

 私は右手を空に向けた。

 「ドラゴンファイヤー」

 空に向かって火のドラゴンが浮かんで行ったのだ。

 それでベーアは私に気が付いた。

 ベーアが私の方を向くと、目が合った。

 私は嬉しそうに微笑むと、ベーアは嬉しそうに鳴いた。

 その鳴く音は聞こえなかったが、分かる。

 長く過ごしていたからな。

 メスリーよりもセーリよりもな。

 ベーアは私の方を向くのをやめ、上を向いた。

 そして遠吠えを上げた。

 先程よりも大きい遠吠えを。

 その大きな咆哮と共に熊の魔物達が山を駆け降り始めたのだ。

 「辺境伯。私はベーアと共にあの魔物の皇帝を倒します。周りの魔物達を頼みます」

 「了承した。ベアード侯爵、神の加護を」

 私は頷いてから、北壁から飛び降りた。

 地面に到着する前に魔法で落下速度を低下され、地面に降り立った。

 私は剣を抜いた。

 さて、魔物の皇帝のところまで行くか。

 私が北壁から飛び降りると同時に、ベーアも山を駆け降りてきた。

 私が剣を構えると同時に、放てと北壁の上から聞こえてきた。

 その声と同時に北壁の上から矢が放たれた。

 放たれた矢は進攻してくる魔物達に降り注いだ。

 降り注いだ矢で魔物が倒れる中熊の魔物達が突撃を開始した。

 熊の方が数は少ないが、優位に戦闘を進めている。

 それは辺境伯の兵士達が矢や魔法で援護していることもあるだろう。

 それもあると思うが、皇帝の違いだろう。

 熊だけの皇帝と魔物の皇帝の差。

 戦場は激しさを増していく。

 私とベーアはその中を駆け抜けて、魔物の皇帝ところまで向かう。

 私は剣と魔法で前を立ち塞がる魔物を倒し、ベーアは己の爪と魔法で立ち塞がる魔物を倒し、進んでいく。

 私はベーアは同時に魔物の皇帝の前に辿り着いた。
 

 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

世界神様、サービスしすぎじゃないですか?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7,351pt お気に入り:2,212

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:23,090pt お気に入り:3,265

汝は人間なりや?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:221pt お気に入り:0

私のおウチ様がチートすぎる!!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:482pt お気に入り:3,305

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,856pt お気に入り:4,652

不死王はスローライフを希望します

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:13,355pt お気に入り:17,514

処理中です...