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第三十一話 兄弟の痕跡
しおりを挟む今、私は森に来ている。
私が人生の半分くらいを過ごしていた森だ。
私は迷わず森の中を進んだ。
そして、一直線にある場所に向かった。
何時間経ったか分からないが、到着した。
到着したのは私が長くを過ごした洞窟だ。
洞窟の中に入ると、殆ど変わってなかった。
少し古ぼけているぐらいだった。
石の壁に触れた。
冷たい感触が伝わってくる。
全てが懐かしい。
ここでは様々なことがあったな。
ベーアとの思い出も詰まっている。
折角ここまで来たんだ。
過ごしてきた場所を見て回るか。
私は近くの川に向かった。
川は何も変わって無かった。
川の水を触ってみると、冷たさを感じる。
懐かしい。
ここでは、ベーアと一緒に木で作った食器を水洗いをしたり、ベーアと一緒に水を汲んだり、ベーアと体を洗いあったり。
懐かしい思い出が溢れてくる。
次に行こう。
次に到着したのは、狩った魔物や獣を解体していた場所だ。
何も残ってないが、懐かしい感覚をする。
ベーアと協力して魔物の解体とかをした。
そう言えばベーアが小さい時、解体した獣の肉を我慢出来ずに食べてしまったこともあったな。
最後だ。
最後に到着したのは修行場だ。
この修行場はベーアと一緒に修行するために木を切り開いて作った広場だ。
よくベーアと一緒に修行したな。
偶にベーアと手合わせすることもあった。
懐かしい思い出を感じながら、修行場を歩き回っていると1つのことに気がついた。
うん?
おかしいな。
確か、この広場の端っこには大きな石があったはずだ。
昔はその石に向かってベーアと一緒に攻撃していたはずだ。
でも、殆ど傷つくことは無かった。
少し傷をつけた時、凄く喜んだことをよく覚えている。
大きな石があった場所に向かうと、粉々に砕かれていたのだ。
砕かれている。
しかも相当強い力で。
私は砕かれた岩を集めて、並べてみると爪で砕かれていると分かった。
この爪。
何処かで。
ああ。
これは。
私は砕かれた岩の1つを握りしめ、上を向いた。
「ここに来ていたのか、兄弟」
胸の奥から熱いものを感じる。
こんなにも強くなっているとは。
あの時の約束を守り続けていることが。
この岩を爪で砕いたのは私に対して痕跡を残すのと自身の力を示す為だろう。
私達が壊しきれなかった岩を壊して。
私も負けてられないな。
やるか。
私は腰に携えていた剣を抜いた。
剣を腰辺りに構え、姿勢を低くした。
息を整え、心を落ち着かせた。
極限に集中し、剣を一周回した。
一瞬静寂が訪れたが、直ぐに轟音が鳴り響いた。
修行場の周りの木々が真っ二つになり、地面に倒れたのだ。
その数、30本以上。
30本以上の木々を切り倒したが、満足しなかった。
まだまだだな。
技名も決まってないし、未完成だ。
とても実戦レベルとは言えないな。
完成させないとな。
そんなことを思いながら、剣を収めた。
さて、帰るか。
兄弟、私も残した。
今の自分の実力と痕跡を。
本当に鍛え終わったら、ここで、いや、別のところでもいいから、また会おう。
森の外で出来た私の大切な人に会わせたいからな。
兄弟。
私は森を後にし、自分の屋敷に帰った。
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