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第十六話 婚約
しおりを挟む私は様々なことを処理している。
その中で1番面倒くさいのは、縁談の話だ。
私の利益を狙った貴族が、自身の娘を勧めて来るのだ。
これだから貴族は嫌なんだ。
ちなみに、ドラゴンの素材は殆ど王家に寄贈した。
これで、印象が良くなるからな。
ハァ、婚約者が出来れば変わってるが、決まる訳無いか。
そんなことを考えながら、書類を処理していると執事が来客が来たと知らしてきた。
また縁談の話かと思ったが、違った。
聞いた家名には聞き覚えがあった。
私は執事に応接室に案内するのと丁重に案内するように伝えた。
私は身支度を確認し、応接室に向かった。
応接室の前についたら、入室の許可を取り、応接室の中に入った。
応接室の中には、メスリーとメスリーに面影がある男性がソファーに座っていた。
私は軽く会釈した。
「初めまして、ナスーリ子爵」
ナスーリ子爵はソファーから立ち上がり、軽く会釈した。
「こちらこそ、初めまして。ベアード男爵」
挨拶を終えた私達はソファーに座った。
「久し振りだね、レーク」
メスリーは笑顔を浮べた。
その笑顔を見た時に何故か、心が晴れた気分がしたのだ。
「メ、メスリー。ベアード男爵、娘の無礼をお許し下さい」
ナスーリ子爵は慌てた様子で頭を下げた。
「気にしないで下さい。無礼なんて思ってませんから。それに、私から普段通りで良いといったので、大丈夫ですよ」
「そ、そうなのですか。だからメスリーは」
その後の言葉は私には聞こえなかった。
ナスーリ子爵は私の方を向き、頭を下げた。
「ベアード男爵。私の娘を助けて下さってありがとうございました」
「顔を上げて下さい、ナスーリ子爵。私は人として当然なことをしただけです。ですから、感謝されることではありません」
ナスーリ子爵は顔を上げた時に驚いた表情を浮べていた。
「このようなお方だったとは。これなら、任せられる」
「任せられる?それはどういうことですか?」
「声に出ていましたか」
ナスーリ子爵は真剣な表情を浮べ、私と目を合わせてきた。
「ベアード男爵。私の娘をベアード男爵の婚約者にして頂けませんか?」
私は驚いた。
驚いたまま、メスリーの方を見た。
メスリーは少し顔を赤くし、微笑んだ。
「ナ、ナスーリ子爵。何故、私となのですか?私は成り上がりの男爵ですよ?」
「簡単なことですよ。娘のメスリーが、ベアード男爵のことを好いているからですよ。父親として、娘の想いを叶えたいだけです」
メスリーが私のことを好いている?
つまり、私のことが好きだと?
私はメスリーの方を向いた。
メスリーは顔を真っ赤にしていたが、嬉しそうに微笑んでいた。
その微笑みを見て、気がついたのだ。
ああ、そうか。
あの時感じたのは間違って無かった。
ベーアの時もメスリーの時も信じて正解だった。
ここで証明されたのだ。
そして、今私は自身の気持ちを自覚した。
メスリーのことが好きだと。
あの時に私はメスリーに一目惚れしていたのか。
だったら、行動するべきだ。
私はメスリーの方を向き微笑んでから、ナスーリ子爵の方を向き、真剣な表情を浮べた。
「ナスーリ子爵。メスリー嬢との婚約を許して頂けますか?」
「勿論だ。どうか、娘のことをよろしく頼む。メスリーもそれでいいか?」
メスリーは両手で口を抑えながら、頷いていた。
私はソファーから立ち上がり、メスリーの前まで移動し、片膝をついた。
メスリーの方に右手を差し出し、左手を胸に置いた。
「メスリー。どうやら、私は初めてみたメスリーの微笑みを見たときに一目惚れをしていたみたいだ。だから、私の婚約者になって欲しい」
メスリーは私の右手を取ってくれた。
「うん、うん、これから宜しくね。レーク」
メスリーは本当に嬉しそうに微笑んだ。
私も嬉しくてメスリーにつられて微笑んだ。
そんな私達はナスーリ子爵に生暖かい目で見られた。
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