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第三十七話 その後

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 終わった。

 終わったが、生き残ったのは、俺と撤退したT-4中等練習機のパイロットだけだ。

 自らの罪を自覚し、少しでも罪滅ぼしと、戦った裏組織の構成員達は、皆死んだ。

 コージを含めて。

 夕日が、俺のことを照らしている。

 いや、戦場となった倉敷高校を照らしている。

 感傷に浸っていると、パトカーの音が聞こえて来た。

 ここにいては、やばいな。

 直ぐに、撤退しよう。

 俺は、乗って来た車を置いて、倉敷高校を脱出した。

 少し移動したところで、装備を脱いで、私服に着替えた。

 脱いだ装備は、リュックの中に入れた。

 俺は、2キロぐらいのところに、原チャリを置いてあったので、そこまで移動した。

 無事にそこまで、到着することが出来た。

 俺は、原チャリに乗って、港に向かった。

 港に着いたら、小型船に乗り換え、島に向かった。

 島に着いたら、小型船を止め、家に向かった。

 家の鍵を開けると同時に、茉里とソニアが、俺の胸に飛び込んできた。

 茉里が、「良かった。良かった。無事に、宗佑が帰ってきて」

 ソニアが、「本当に良かったです。何処も怪我をしてなくて」

 俺は、2人を抱きしめながら、本当に生きて帰ってこれたんだなと思った。

 茉里とソニアは、何故か俺から離れた。

 茉里とソニアは、顔を見合わせた後、俺の方を向いた。

 「「お帰りなさい、宗佑(さん)」」と言い、2人は、笑顔を浮かべた。

 「ああ。ただいま」と言い、俺も笑顔を浮かべた。

 その後、倉敷高校に調査が入った。

 だが、殆ど分からなかった。

 裏組織の者達は、全てが消え去り、唯一の生存者は、何処かに消えしまった。

 残されていた車は、盗難車のため、特定することも出来なかった。

 巨人の方を調べてみたが、何も分からなかった。

 この世界中の遺伝子とかけ離れていたからだ。

 世間に出回っている情報は、これぐらいだ。

 俺は、情報を残さないように、徹底していたので、特定されることは、無かった。

 後で、ソニアから聞いたことだが、異世界で、魔王が増援として、参加したみたいだ。

 世界が繋がるのは、困ると言いながら。

 それには、驚きを隠せなかった。

 それと、王女様の婚約が決まった。

 王女様の婚約の相手は、今回の戦いで、活躍した英雄らしい。

 とてもラブラブらしい。

 俺は、その時に、ソニアから、約束のことを聞いた。

 ソニアは、微笑みながら、答えてくれた。

 約束は、素敵な旦那さんを見つけて、お互いに幸せになること。

 俺は、思わず、赤くなってしまった。

 素敵な旦那さんか。

 なんか、恥ずかしいな。

 あの戦いから、1ヶ月が経った。

 俺は、花を持って、ある慰霊碑に向かった。

 向かっている慰霊碑は、コージ達を弔うためのものだ。

 あれだけのことをしておいてという話もあったが、最後に改心し、世界のために戦った者達のことを弔うことにしたのだ。

 コージ達は、英雄には、ならなかったが、満足そうな表情を浮かべながら、死んでいった。

 俺は、花を手向けた。

 俺は、空、いや、下を向いた。

 俺は、「コージ、いや、勇敢な者達よ。天国に居ないと思うから、地獄を向いて話させて貰うよ」

 俺は、続けて、「お前達は、本当に勇敢だった。もし、お前達が、いなかったら、世界は、繋がっていただろう。この世界を生きる1人として、感謝する。そして、どうか、早く安らかに眠ってくれ」

 俺は、慰霊碑に背を向け、歩き始めた。

 その時、雨が降ってきた。

 俺は、思わず、足を止めてしまった。

 その雨は、何故か、一雫だけだった。

 その一雫は、頬をつたり、地面に落ちた。

 俺は、右目が少しだけ痒かったので、擦ってから、再び歩き始めた。

 家、いや、未来に向かって。
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