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王都を離れて
99 獣人娘のわがまま(2)
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◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。転生前は前・魔王討伐隊、『英雄』のアシュリー
・シアン…前・魔王討伐隊の一人。アシュリーとは討伐隊になる前からの付き合いがあり、ずっと彼女に想いを寄せていた。
・デニス…Sランクの実力を持つAランクの先輩冒険者。リリアンに好意を抱いている。
・カイル…リリアンの兄で、灰狼族の若き族長。銀の髪と尾を持つ。ややシスコン
・シャーメ…現在リリアン達が世話になっている、仙狐(3本の尾を持つ白毛の狐)の兄妹の妹
・タングス…仙狐兄妹の兄。二人とも今は20歳程度の人狐の姿で過ごしている。
====================
メイドゴーレムのアニーの体は魔力を持った霧で出来てるので、姿を自由に変える事ができる。
基本的には男性形のアンドレか、女性形アニーに変わる程度だけど、細かく指示を与えれば他の姿にもなれるし、少しなら会話も可能だ。
「長期の留守番をさせる事になるから、何かの際には私の姿で対応してもらう事もあると思って、アニーに教えておいたんです。それで……」
「なるほど…… しっかり騙されたな……」
「ごめんなさい。恥ずかしくて…… でも…… シアさんも私がアシュリーだって知ってからは、リリアンとして見てくれなくなっちゃって。以前町で仔犬の姿で会った時には沢山撫でてくれたから、もしかしたらって……そう思っちゃったんです」
後ろめたい気持ちもあって、顔が上げられないし、自然に耳も尾も下がる。
でも何の返事も無い事に不安になって、ちらりと視線だけ上げた。
シアさんもデニスさんも、顔を手で覆いながらふるふると震えていた。
「え…… あの……? どうかしましたか??」
不安になってカイルの方を見ると、彼も頭を抱える様に手を当てている。でも二人とは違って苦い表情をしていた。
「頭を撫でてほしいとか…… ……過ぎるだろう……」
「ああー、もう…… 反則だろう、これは……」
デニスさんとシアさんは、何かブツブツと言っている。
「うちの妹が可愛いのは前からじゃあないか。二人とも、くれぐれも調子に乗るなよ!?」
その二人に向かって、何故かキツイ口調で説教をするカイル…… 何があったの? いったい??
「いくらでも撫でてやるから。嫌じゃねえし、むしろ嬉しいし」
デニスさんが片手で顔を隠す様にしながら手を伸ばしてきた。そして以前のように私の頭を撫でてくれる。
「うん、わかったよ。ごめんな。リリアンはリリアンだもんな…… たまに前の呼び名が出ちゃうかもしれないけど、それは許してくれよな」
シアさんも私たちの前へ来て、そっと私の頭に手を置いた。
ひとまず、ちゃんと伝える事は出来たようで、ほっとした。
「なあ、リリアン。俺もお前に言いたい事があるんだけど、いいか?」
「ふえ?」
「前にも言ったろう? 信頼してくれているのなら、一人で我慢したりしないでちゃんと俺らを頼ってくれ。流石にカイルみたいに、は無理だとは思うけどさ」
「そうだよ、俺もリリアンの先輩なんだから、ちゃんと先輩らしく居させてくれよ」
そっか…… そういえば、二人にはもっと頼れと言われていたのに。
私も言われた事を出来てなかった。私ばかり、二人に当たってしまった。
「……ごめんなさい」
「謝るんじゃねーよ。俺たちは頼ってほしいんだからさ。こういう時は『お願いします』とか「頼りにしてます』って言うんだ」
デニスさんの言葉に黙って頷くと、また頭に温かい手が乗せられた。
「おねーちゃん、今日は夕ご飯一緒に作ろう!」
すくっと立ち上がったシャーメが私の腕をとる。
「そうだね、そうしようか」
そう応えると、横で聞いていたタングスも立ち上がる。
「僕も一緒にやる!」
二人に両手をとられてキッチンに向かった。
* * *
楽しそうにキッチンに立つリリアンと仙狐たちの背中を眺める。リリアンの尻尾が揺れているのを見て、一安心した。
やれやれとまたソファーに腰掛けると、向かいのカイルが怖い顔をして俺らを見ていた。
シスコンのカイルにとっては、俺らはリリアンにつく悪い虫みたいに見えるのかもな……
「妹を泣かせたら許さないからな。それでも、リリアンにとってお前らが大事な仲間な事はわかっているし、今やってる事をやめろとは言わないけどな」
面白くなさそうにそう言いはするが、俺らに理不尽な事や無茶を言うわけじゃあない。カイルも良いヤツなんだなと、本当にそう思う。
「なあ、デニス。リリアンって、前からああして謝ってばかりだったか?」
思い起こせば俺と旅をしていた頃にも彼女はああして謝ってばかりだった。
「いや、リリアンは……もっと元気が取り柄って感じで。そういえば、このところちょっと様子が変わったかもな」
「前世はああだったんじゃないのか?」
カイルが向かいから言葉を挟んだ。
「僕らきょうだいと居た時に、リリアンが寝言でごめんなさいと謝るのを何度か聞いた。きっと前世の夢でもみているんだろうなと、その時にはそう思っていた。何に謝ってるのかはわからなかったけど」
「でも、俺は…… あんな風にアッシュが謝るところなんて見た事が無い……」
「じゃあ耐えていたんだろう。リリアンがそうしていた様に」
アッシュは…… 腕っぷしだけでなく、心も強かった。俺にはそう見えていた。
……でもカイルの言う事が当たっているとしたら、アッシュはずっとあんなつらい気持ちを抱いていたのだろうか。
俺に見せていたアッシュの姿と、今のリリアンの姿。どっちが本当の彼女なんだろうか……
何故か、胸が少し痛んだ。
====================
(メモ)
庭で会った(閑話8)
町で会った(#66)
頼ってほしい(#72、#42)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。転生前は前・魔王討伐隊、『英雄』のアシュリー
・シアン…前・魔王討伐隊の一人。アシュリーとは討伐隊になる前からの付き合いがあり、ずっと彼女に想いを寄せていた。
・デニス…Sランクの実力を持つAランクの先輩冒険者。リリアンに好意を抱いている。
・カイル…リリアンの兄で、灰狼族の若き族長。銀の髪と尾を持つ。ややシスコン
・シャーメ…現在リリアン達が世話になっている、仙狐(3本の尾を持つ白毛の狐)の兄妹の妹
・タングス…仙狐兄妹の兄。二人とも今は20歳程度の人狐の姿で過ごしている。
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メイドゴーレムのアニーの体は魔力を持った霧で出来てるので、姿を自由に変える事ができる。
基本的には男性形のアンドレか、女性形アニーに変わる程度だけど、細かく指示を与えれば他の姿にもなれるし、少しなら会話も可能だ。
「長期の留守番をさせる事になるから、何かの際には私の姿で対応してもらう事もあると思って、アニーに教えておいたんです。それで……」
「なるほど…… しっかり騙されたな……」
「ごめんなさい。恥ずかしくて…… でも…… シアさんも私がアシュリーだって知ってからは、リリアンとして見てくれなくなっちゃって。以前町で仔犬の姿で会った時には沢山撫でてくれたから、もしかしたらって……そう思っちゃったんです」
後ろめたい気持ちもあって、顔が上げられないし、自然に耳も尾も下がる。
でも何の返事も無い事に不安になって、ちらりと視線だけ上げた。
シアさんもデニスさんも、顔を手で覆いながらふるふると震えていた。
「え…… あの……? どうかしましたか??」
不安になってカイルの方を見ると、彼も頭を抱える様に手を当てている。でも二人とは違って苦い表情をしていた。
「頭を撫でてほしいとか…… ……過ぎるだろう……」
「ああー、もう…… 反則だろう、これは……」
デニスさんとシアさんは、何かブツブツと言っている。
「うちの妹が可愛いのは前からじゃあないか。二人とも、くれぐれも調子に乗るなよ!?」
その二人に向かって、何故かキツイ口調で説教をするカイル…… 何があったの? いったい??
「いくらでも撫でてやるから。嫌じゃねえし、むしろ嬉しいし」
デニスさんが片手で顔を隠す様にしながら手を伸ばしてきた。そして以前のように私の頭を撫でてくれる。
「うん、わかったよ。ごめんな。リリアンはリリアンだもんな…… たまに前の呼び名が出ちゃうかもしれないけど、それは許してくれよな」
シアさんも私たちの前へ来て、そっと私の頭に手を置いた。
ひとまず、ちゃんと伝える事は出来たようで、ほっとした。
「なあ、リリアン。俺もお前に言いたい事があるんだけど、いいか?」
「ふえ?」
「前にも言ったろう? 信頼してくれているのなら、一人で我慢したりしないでちゃんと俺らを頼ってくれ。流石にカイルみたいに、は無理だとは思うけどさ」
「そうだよ、俺もリリアンの先輩なんだから、ちゃんと先輩らしく居させてくれよ」
そっか…… そういえば、二人にはもっと頼れと言われていたのに。
私も言われた事を出来てなかった。私ばかり、二人に当たってしまった。
「……ごめんなさい」
「謝るんじゃねーよ。俺たちは頼ってほしいんだからさ。こういう時は『お願いします』とか「頼りにしてます』って言うんだ」
デニスさんの言葉に黙って頷くと、また頭に温かい手が乗せられた。
「おねーちゃん、今日は夕ご飯一緒に作ろう!」
すくっと立ち上がったシャーメが私の腕をとる。
「そうだね、そうしようか」
そう応えると、横で聞いていたタングスも立ち上がる。
「僕も一緒にやる!」
二人に両手をとられてキッチンに向かった。
* * *
楽しそうにキッチンに立つリリアンと仙狐たちの背中を眺める。リリアンの尻尾が揺れているのを見て、一安心した。
やれやれとまたソファーに腰掛けると、向かいのカイルが怖い顔をして俺らを見ていた。
シスコンのカイルにとっては、俺らはリリアンにつく悪い虫みたいに見えるのかもな……
「妹を泣かせたら許さないからな。それでも、リリアンにとってお前らが大事な仲間な事はわかっているし、今やってる事をやめろとは言わないけどな」
面白くなさそうにそう言いはするが、俺らに理不尽な事や無茶を言うわけじゃあない。カイルも良いヤツなんだなと、本当にそう思う。
「なあ、デニス。リリアンって、前からああして謝ってばかりだったか?」
思い起こせば俺と旅をしていた頃にも彼女はああして謝ってばかりだった。
「いや、リリアンは……もっと元気が取り柄って感じで。そういえば、このところちょっと様子が変わったかもな」
「前世はああだったんじゃないのか?」
カイルが向かいから言葉を挟んだ。
「僕らきょうだいと居た時に、リリアンが寝言でごめんなさいと謝るのを何度か聞いた。きっと前世の夢でもみているんだろうなと、その時にはそう思っていた。何に謝ってるのかはわからなかったけど」
「でも、俺は…… あんな風にアッシュが謝るところなんて見た事が無い……」
「じゃあ耐えていたんだろう。リリアンがそうしていた様に」
アッシュは…… 腕っぷしだけでなく、心も強かった。俺にはそう見えていた。
……でもカイルの言う事が当たっているとしたら、アッシュはずっとあんなつらい気持ちを抱いていたのだろうか。
俺に見せていたアッシュの姿と、今のリリアンの姿。どっちが本当の彼女なんだろうか……
何故か、胸が少し痛んだ。
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