ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~

都鳥

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二度目の帰還

49 幽霊屋敷/デニス(2)

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◆登場人物紹介(既出のみ)
・デニス…王都シルディスの西の冒険者ギルドに所属する、Aランクの先輩冒険者
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。友人の家に仮居候中。

====================

 そのレイスは美しい女性の姿だとも凛々しい男性の姿だとも言われており、1体なのか複数いるのかもわからないそうだ。
 確かに何度か、討伐しようと試みてはいるらしい。しかしこの担当者が言うように、戦士ならば手が出せない、家を壊さぬ程度の魔法は通らない。ならば家を外から壊そうともしたらしいが、それも幽霊によってことごとく阻まれてしまったらしい。

 ところが家に害をなそうとしなければ、全くと言っていい程何もない。管理の為に家周りを見て回る分には何も起こらない。壊れた箇所を補修する為になら手をかけても何も障害は無い。
 ご近所にも何も害も問題もないので、むしろこの家をどうにかしようとして騒ぎ立てるギルドの方が煙たがられているようだ。

「決してお勧めはしませんよ? まあ、その分かなりお安くはしてありますが」
 そう言われて出された資料には間取りと値段が書かれていた。
 小さくはないリビングにダイニングとキッチン。勿論風呂まで付いている。2階に居室が3部屋もあるところを見ると、やはり家族向けの家なんだろう。少なくとも単身の冒険者が住むような家ではない。

 書かれた値段は…… ひと月分の家賃にしては数字の桁が多い。ならば1年分の家賃だろうか? だとしたら、この広さでは妥当な金額だろうが、別に安いって程でもない。しかも単身の稼ぎには全く優しくはないだろう。
「これは1年分の家賃か? Cランクの冒険者にはちょっと負担が過ぎるんじゃないか?」
 隣で一緒に資料を見ているリリアンにそう告げると、担当者が横から訂正を入れた。
「いえ、これ売家ですから。家賃ではなくこれが価格です」
「……おかしくねーか?」
「もう10年以上も、人も入れないしほとんど手入れもされていないんです。おそらく中はボロボロ。家自体の保全も怪しいです。本当は更地にして売れればいいんですけど、家を壊す事もできない。この価格は土地代から家の解体費用とレイスの討伐費用を差し引いたものでしょう」
「冒険者ギルドとしてはそれでいいのか? 儲けも無いだろう?」
「あそこは元は冒険者の遺留財産です。つまりただで手にいれた物なので、それでも良いんですよ」

 冒険者の中には身寄りの居ない者も少なくはない。
 そういった者たちが冒険者ギルドに財産登録をすると、冒険者が『死んだ』と判定された時には、その財産の管理がギルドに委託される。
 遺志により誰かに渡される物もあれば、ギルドに寄付される物も。自分の身に何かあった場合に、跡を濁さない為の一つの方法である。
「ここの元の持ち主はオスカルという名の冒険者ですね。半年以上、本人もしくは代理人が登録更新をしなかったら、死亡判定とする契約になっていました」

 そんな俺と担当者のやりとりを、しばらく静かに横で聞いていたリリアンが、待ちくたびれたように声を上げた。
「見に行ってみましょうよー」
 それを聞き、担当者はあからさまに嫌そうな顔をした。
「実際に見ていただくのは構いませんが…… 私はちょっとご遠慮させてほしいです……」
「だそうだ、リリアン。流石にこの家は危険だろう」
 リリアンを止めようとすると、担当者に意外な事を言われた。
「いや、ところが魔力を吸われても大きな怪我をした者は誰も居ないんですよね」
「なら大丈夫ですねー」
 リリアンが呑気のんきそうな声を上げた。
「でもギルドの人間が来ないんじゃ、ダメだろう」
「デニスさんが一緒なら良いですよ。貴方なら冒険者ギルドの関係者みたいなものじゃないですか」
 担当者はニコニコと無責任な笑顔を見せて、鍵を差し出した。

 * * *

 慎重に扉を…… と思いきや、リリアンは特に警戒もせず、普通に扉を開けた。
「お、おい! もっと注意して……」
「えー、デニスさんが居るから大丈夫じゃないですかー」
 少しふざけた様に言ってみせる。まるでここには危険はないと思っている様だ。

『……デテイケ……』
 家に入り、5歩も進まないうちに声が聞こえた。
 玄関から続く廊下の薄暗がりの、何も居なかったはずの空間にもやの様なものが集まり、人の姿をとっていく。話に聞いていた女性のレイスのようだ。
 乱れた長い白髪、赤く燃えるような瞳。衣服もボロボロになっていて、半分透けるその身を隠しきれて居ない。しかし確かにその容姿は美しい。

『デ……デテイケ……』
 ぎこちない言葉で、まるで呪詛を吐くように呟いて襲い掛かって来た。
 咄嗟とっさにリリアンが横に避けると、そのまま後ろに居た俺に向かってくる。
「!!」
 強い力で俺を壁に押し付ける。触れられた所から、わずかに魔力が抜けていくのが分かった。ドレインだ。

 抑えられた両腕を振り払おうとした時、はっとそのレイスが何かに気付いたように振り向いた。振り向いた先にはリリアンが立っていて、レイスは彼女に狙いを変えたようだ。まずい!
「リリアン!」
「大丈夫なので、しばらく手を出さないで下さい」
 俺の声を遮るように、リリアンが静かに言った。
 ……なんだ? リリアンがまとう気配がいつもの彼女と違う……
「おいで」
 その声に誘われるようにレイスはリリアンに飛び掛かった。

 レイスの強い力で小さなリリアンの体は床に押し倒され、彼女に馬乗りになったレイスは……

 覆いかぶさるようにリリアンにキスをした。

「……へ?」
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