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間違いなく地球
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『しくじった…。まさかここまで早く影響が出るとは…』
真っ白な空間に無数に浮かぶ、数多の次元世界の映像を映し出す窓。
それを前にした白い存在が、ぽつりと呟く。
『もう少し時間稼ぎをしたかったが…。まさかここまで新世界創造の影響が大きいとは…』
白い存在が、す~っと音もなく移動した先は、トールヴァルドが住む星の現在を映し出す窓。
『もう彼の覚醒を待っている場合じゃ無いな…。だけど、僕の力でもう少しだけ邪魔させてもらうかな…新世界創造を…』
そう言うと、白い存在はブルリと小さく震えた。
次の瞬間、その存在を取りまいていた仄かに輝く白い靄の様な物が一瞬だけ薄くなり、その中身が透けて見えた。
その姿は…………………によく似た横顔だった。
トール達の住む星の上空に、突如として現れた青い星。
それはトールが前世でよく画像を見た地球そのものだった。
上空にその姿を見せていたのは、一体どれぐらいの時間だっただろうか。
先程まで視界いっぱいに広がっていた、その巨大な青い星は、徐々に小さく遠ざかって行った。
少しずつ少しずつ、音もなくゆっくりとゆっくりと、まるで遠ざかってゆくかのように、その姿は小さくなっていった。
あの星が実際に上空に浮かんでいたとはとても考えられない。
そんな物が突如として星の上空に表れでもしたら、その影響はきっと途轍もなく大きいはずだ。
ぼへっと立ったままその姿を見ている事など、きっと誰も出来なかっただろう。
巨大な体積を持つ星が急接近したとしたら、この星の大気は急激に押し退けられたという事になる。
そうなれば当然だが、この地表にある全ての物を拭き飛ばす程の暴風が吹き荒れ、誰も彼も空に浮かぶ星を悠長に観察する事など出来るはずないだろう。
しかし、そうはなってい無い。
つまりは、あれには質量も実体も無かったという事になる。
そこに気付く事が出来たのは、この大陸ではそう多くは無い。
トール、ユズキ、ユズカ。そして、例のひよこ達ぐらいなものだろう。
この星の裏側にあるパンゲア大陸でも、ほんの数人だけがその事実に気付いた。
それは、ボーディ、モフリーナ、モフレンダ、もふりん、カジマギーといったダンジョンマスターとその分け身達と、そのダンジョンマスター達が生み出した、ディー・アーナ、ヘーリ・オース、テーラ・マテールのパンゲア大陸の3人の教王。
そして、現在は所属不明となってしまった、元管理局員のサラとリリア。
この星に住む人々の中で、正しくこの現象を認識できたものは、たったこれだけである。
「トールさま! あの大きな青い星が!」
大きくなったお腹を庇いつつも窓から空を見上げていたメリルが叫ぶ。
「き…消えて…いく?」
そんなメリルを支える様に横に立つミレーラも、珍しく大きな声でそう言った。
「トールさま…あの星は一体…?」
「私達は、幻でも見ているんだろうか…?」
ミルシェとイネスが空を見上げながら呟く。
「トールさま、お伺いしたい事がございますので、どうか応接室までお願いします」
厳しい顔をしたマチルダが、階下のトールへと努めて冷静に声を掛けた。
その嫁ーずの声は当然だがトールの耳にも入って来てはいたのだが、それらに上手く声を出して返事をする事は出来なかった。
「伯爵様…」
そんなトールのすぐ後ろまで歩み寄っていたユズキが、そっと声を掛ける。
「ユズキか? ああ、ユズカも居たのか…」
「伯爵様…あそこに日本がありました…よね?」
振り返ったトールにそう問いかけるのは、不安そうにしながらも、しっかりと愛娘であるユズノちゃんを抱いたユズカ。
「ああ、あれは間違いなく地球だった。ただ…俺が元住んでいた地球なのか、はたまた別の地球なのかは分からないが…」
そう応えたトールが見上げた空は、いつもの静かな青空だった。
真っ白な空間に無数に浮かぶ、数多の次元世界の映像を映し出す窓。
それを前にした白い存在が、ぽつりと呟く。
『もう少し時間稼ぎをしたかったが…。まさかここまで新世界創造の影響が大きいとは…』
白い存在が、す~っと音もなく移動した先は、トールヴァルドが住む星の現在を映し出す窓。
『もう彼の覚醒を待っている場合じゃ無いな…。だけど、僕の力でもう少しだけ邪魔させてもらうかな…新世界創造を…』
そう言うと、白い存在はブルリと小さく震えた。
次の瞬間、その存在を取りまいていた仄かに輝く白い靄の様な物が一瞬だけ薄くなり、その中身が透けて見えた。
その姿は…………………によく似た横顔だった。
トール達の住む星の上空に、突如として現れた青い星。
それはトールが前世でよく画像を見た地球そのものだった。
上空にその姿を見せていたのは、一体どれぐらいの時間だっただろうか。
先程まで視界いっぱいに広がっていた、その巨大な青い星は、徐々に小さく遠ざかって行った。
少しずつ少しずつ、音もなくゆっくりとゆっくりと、まるで遠ざかってゆくかのように、その姿は小さくなっていった。
あの星が実際に上空に浮かんでいたとはとても考えられない。
そんな物が突如として星の上空に表れでもしたら、その影響はきっと途轍もなく大きいはずだ。
ぼへっと立ったままその姿を見ている事など、きっと誰も出来なかっただろう。
巨大な体積を持つ星が急接近したとしたら、この星の大気は急激に押し退けられたという事になる。
そうなれば当然だが、この地表にある全ての物を拭き飛ばす程の暴風が吹き荒れ、誰も彼も空に浮かぶ星を悠長に観察する事など出来るはずないだろう。
しかし、そうはなってい無い。
つまりは、あれには質量も実体も無かったという事になる。
そこに気付く事が出来たのは、この大陸ではそう多くは無い。
トール、ユズキ、ユズカ。そして、例のひよこ達ぐらいなものだろう。
この星の裏側にあるパンゲア大陸でも、ほんの数人だけがその事実に気付いた。
それは、ボーディ、モフリーナ、モフレンダ、もふりん、カジマギーといったダンジョンマスターとその分け身達と、そのダンジョンマスター達が生み出した、ディー・アーナ、ヘーリ・オース、テーラ・マテールのパンゲア大陸の3人の教王。
そして、現在は所属不明となってしまった、元管理局員のサラとリリア。
この星に住む人々の中で、正しくこの現象を認識できたものは、たったこれだけである。
「トールさま! あの大きな青い星が!」
大きくなったお腹を庇いつつも窓から空を見上げていたメリルが叫ぶ。
「き…消えて…いく?」
そんなメリルを支える様に横に立つミレーラも、珍しく大きな声でそう言った。
「トールさま…あの星は一体…?」
「私達は、幻でも見ているんだろうか…?」
ミルシェとイネスが空を見上げながら呟く。
「トールさま、お伺いしたい事がございますので、どうか応接室までお願いします」
厳しい顔をしたマチルダが、階下のトールへと努めて冷静に声を掛けた。
その嫁ーずの声は当然だがトールの耳にも入って来てはいたのだが、それらに上手く声を出して返事をする事は出来なかった。
「伯爵様…」
そんなトールのすぐ後ろまで歩み寄っていたユズキが、そっと声を掛ける。
「ユズキか? ああ、ユズカも居たのか…」
「伯爵様…あそこに日本がありました…よね?」
振り返ったトールにそう問いかけるのは、不安そうにしながらも、しっかりと愛娘であるユズノちゃんを抱いたユズカ。
「ああ、あれは間違いなく地球だった。ただ…俺が元住んでいた地球なのか、はたまた別の地球なのかは分からないが…」
そう応えたトールが見上げた空は、いつもの静かな青空だった。
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