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恐るべしアルテアン一家の戦力

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「敵の首魁を…アルテアン卿の一家で…だと?」
 陛下の驚く顔を横目に、俺は説明を続ける。
「そうです、私の家族…いえ、ネス様に指名された者によって、です」
 一家だけと言っちゃうと、血族だけと思われるかもしれないから、ここは一応言い直しておこう。
「ネス様の…と言う事は、メンバーは?」
 うむ、メンバーですか。
「私と父は当然として、メリル、ミルシェ、ミレーラ、マチルダ、イネスの妻達5人。そして執事のユズキ、使用人のユズカ、そして妹であるコルネリアとユリアーネ。ネス様の眷属である、ナディアとアーデ、アーム、アーフェンと妖精族。そして私の僕たる、ブレンダーとクイーン、及び配下の蜂達の事です」
 母さんは除外です。
 いや、本当はもの凄い戦闘力を持ってるかもしれないけど…
「な、なるほど。しかし、メリルもなのか? その…言っては何だが、元は王女だぞ?」
 おっと、娘さんが心配ですか?
 まあ、その気持ちは分からんでもないが、
「ええ、勿論です。ネス様より神具を賜った私の妻達のリーダーですから」
 ゴレ〇ジャーに例えるなら、アカレン〇ャーのポジションだな。
 キ〇ンジャーは…イネスかなあ…
「何と!? メリルも神具を賜ったというのか!? 恐怖の大王と戦ったという報告は受けておったが…」
 あれ? 陛下知らなかったっけ? そう言えば直接は見てなかった気がする。
 一緒に訓練した騎士さんとかは見てたけど、公には見せて無いな。
「それに、執事と使用人もなのか? ユリアーネとは、あの幼子であろう? 本当に戦えるというのか?」
 戦力の殆どが女子供なんだから、まあそう思うよね。

「お父様。私も含め、トールヴァルド様の妻である5人も神具を頂き、戦う力を得ましたわ。もちろん、恐怖の大王とも戦いました。トールヴァルド様の足手まといになる様な事は決してありません」
 今まで無言を貫いていたメリルが、陛下に向かって口を開いた。
「それにユズカとユズキも強力な力を有しています」
 背後に控えるユズキが優雅に一礼し、ユズカが小さくVサインをした。
「それに、コルネリアさんが巫女として強大な力を持っている事は、お父様もご存知でしょう? ユリアーネさんも、このほど神子としてコルネリアさんをサポートするために、神具を賜ったんですのよ。それも、多分…誰よりも強力な神具を」
 メリルが、コルネちゃんとユリアちゃんを見ながらそう言うと、2人ははにかみ乍ら、コクンと頷いた。
「な…それは真か!? あの幼子がそれほどの力を持っているとは…」
 いえ、ユリアちゃんは、まだ練習中です。全力全開は、まだちょっと危ないです。
「ええ。ですから、何の心配もいりません。もちろん、ネス様の眷属の皆様も私達に力を貸してくださります」
 ナディア達は、ただ静かに微笑んでいた。
「そうか、妖精の皆様が…うんうん…なるほど…」
 陛下は、何か納得したらしい。
「こう言っては失礼ですが、アルテアン一家が本気になり、その力を解放したれば、この国の…いえ、神国との連合軍とも、十分に渡り合えると言えるでしょう。これは歴然たる事実であり、一切の誇張を含みません」
 メリルは、言い過ぎじゃないよ、本気の本当だよって言ってるんだけど、
「そこまでなのか…メリル?」
 王子様も驚天動地って顔してるよ。
「ええ、お兄さま。それほどまでなのです。ですので、この作戦を良くお聞きになって、黙って私の旦那様の言葉に従ってください」
 旦那様とか、照れるなあ~。
「そうか、あの大人しかったメリルがなあ…うんうん。よし! 私は信じよう! 父上…いえ、陛下! アルテアン一家に、今回の件、全て委ねましょう!」
 おっと、王子様はこっち側の味方…に、なったのかな? 味方って言い方も変だけど。
「う、うむ…それは、まあ良いのだが…トールヴァルド卿よ、1つだけ聞いても良いか?」
 陛下も納得してくれた感じだけど、何か作戦に疑問でもあるのかな?
「はい、陛下。疑問に思う事があるならば、何なりとお訊きください」
 
 暫し、陛下は俺の目を見つめていた。
 あのぉ…おっさんに見つめられても、嬉しくないんだけど…
「トールヴァルド卿…いや、アルテアン侯爵、アルテアン伯爵」
「「はい」」
 返事が、父さんとハモった。
「それほどの力を持つ其の方らに問いたい。国王の座の簒奪を…いや、この国を其の方らは手に入れようとは考えんのか?」
 ぶっ! 思わず噴き出したわ!
「滅相もございません。昔も今も、私は陛下の臣にございます!」
 父さん、なかなか優等生なお返事、ありがとう。
 では、俺の答えは、
「畏れながら陛下。私は陛下の臣であると共に、ネス様の使徒であり、敬虔なる信者です。なれば、ネス様の居られる聖地を護り、ネス様の神託に粛々と従うのみ。多くの民を率い国を治め安寧を与えるは、陛下のお役目にございますれば、それに異を唱える事は御座いませぬ。ネス様も、私にそれを望んでは居られません。故に、私はこの国を求めませぬし、望みませぬ。未来永劫」
 ざけんな! トール君は、好き勝手にのんびり生きたいだけだ! 
 その為に障害は全力で取り除くが、何で国のトップとか七面倒くさい事をせにゃならんのだ!
 俺はせいぜい田舎の領地で、好き勝手な事しながら金もうけしてるのが一番似合ってるんだよ。
 今でも領地の経営とか面倒くさいのに、国単位とか忙しすぎてストレスで死ねるわ!
 って事で、将来は宰相とかご遠慮いたす! って布石もついでに打っておいた。
「そ、そうか…いや、変な事を言ってすまぬな、アルテアン侯爵、アルテアン伯爵。2人が我が国の臣で本当に良かったと、心から思う」
 うむうむ。分かってくれれば良いのだよ。

「では、国王らしく命ずる。2人の案を我が名において全面的に採用する。グーダイド王国第三王子ウェスリー・ラ・グーダイド、いや軍務大臣を補佐し、此度の戦において、連合国を勝利へと導け!」
「「はっ! 大任、承りました!」」
 俺と父さんは、陛下に深く頭を下げるのであった。
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