創造した物はこの世に無い物だった

ゴシック

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第2章 紡がれる希望

第16話 災禍に近し者

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 アメリカ中央拠点クレイドル 北部 謎の障壁付近

 ケフィの前に立った女性は金色こんじきのツインテールを揺らし薄浅葱うすあさぎの瞳でアンリエッタを睨みつけていた。

「……ファイス」

「ケフィ……よく耐えてくれた」

 その場にしゃがみ込み光線を避ける事を諦めていたケフィは、流していた涙を拭いゆっくりと立ち上がった。

「導き手のお陰だ……です」

 アンリエッタとの会話に影響されて素に戻りかけたケフィは、直ぐに言い直した。

「……フィアの?」

 ユカリの名前を聞いたファイスは、アンリエッタに向けていた視線を逸らしてケフィに身体を向けた。

「事前に私の傀儡を、意識下で創り出すリングを支給して貰っていた事が幸いでした」

 ケフィがポケットから取り出した物は、二つに割れてしまった結晶のリングだった。

「今は効果が無くなってしまいましたが、そんな時にファイスが来てくれました……本当に、ありがとうございます」

 (そう、あの時と同じ様に)

 ケフィは過去の記憶を思い起こし、一筋の涙を流した。

「私にとってはケフィ達の命が一番だから……」

 そう言ってケフィの涙を優しく拭ったファイスは、背後に立つアンリエッタに目を向けた。

「貴方もその一人だった……アンリエッタ」

 背中を向けたファイスに攻撃する事なく、アンリエッタはファイスの事を無言で見つめていた。

命逆めいぎゃく炎姫えんき……なんて、冗談だよファイス?」

 右眼は天色あまいろの瞳、左眼は白藍しらあいの瞳に変化していたアンリエッタはそう言うと、ファイスに優しく微笑みかけた。

「ケフィが私の冗談を鵜呑みにしたの……私が闇の人間な筈ないのに——」

 話をしているアンリエッタの言葉を遮り、ファイスの右手から蒼い火球が放たれた。

 アンリエッタはその火球を、左右に浮遊する銃身の右側を前に出して防いだ。

「私にも冗談は通用しない……お前の言葉は、私にはもう全て虚言にしか聞こえないから」

 放たれた火球を防いだアンリエッタは、優しく微笑み続けていた。

「さっき言ったでしょ?私に情けは期待しないでと……闇の人間が内部に潜伏している可能性を考えていなかった私の失態が招いた事。だからもう、仲間であろうと躊躇はしない。ケフィを傷付けた報いは命で償って貰う」

 そんなアンリエッタに向けてファイスは、再び火球を放つ構えをとった。

「……はぁ」

 アンリエッタは小さく溜息を吐くと、笑顔から無表情へと一変させた。

「下らない三文芝居をした所で、時間の無駄だな」

 先程とはまるで異なる口調で話し始めたアンリエッタは、二色の瞳でファイスを睨み付けた。

命逆めいぎゃく炎姫えんき……貴様がどれ程の存在であろうが、我には勝てん」

 そう宣言したアンリエッタは、不敵な笑みを浮かべながら右手をファイスに向け、中指のみを上に立てると指を上下に揺らし始めた。

「どれ……少しの間だけ遊びに付き合ってやろう不屍人しにぞこない……ようやく死ねるかもしれんぞ?」

「その言葉、そのままお返しする。遊びで死なない様に気を付けることね」

 アンリエッタの挑発を気にも留めないファイスは、背後に立っていたケフィに視線を向けた。

「ケフィはクレイドルに避難して……私は、身代わりになる事が出来てもケフィを守る事は出来ないから」

「ですが——」

「喰らえ」

 ケフィの言葉を遮る様に、アンリエッタの左右に浮遊していた一対の銃身から眩い光が放たれた。

忘却オブリヴィオン

 向けられた二つの銃口から二種類の属性を帯びた雷光が輝くと同時に、ファイス目掛けて巨大な光線が放たれた。

「うっ!」

 咄嗟にケフィを突き飛ばしたファイスの背中に、二本の光線が直撃した。

 突き飛ばされたケフィは、ファイスの身体に隠れる様に尻もちを付いた。

 身体を突き抜ける寸前でファイスは、身体内の属性を強めて光線の軌道を逸らした。

 軌道の逸れた光線は左右に広がり、両側のビル群を貫通していった。

「そんな光線が効くと、本当に思っているの?」

 崩れゆくビルを他所に、アンリエッタは再生していくファイスの身体を凝視していた。

「チッ!まだだ!!」

 何度も放たれる光線に対して同様の手段で軌道を逸らしたファイスは、身体の半分程を失いながらもその場に平然と立ち尽くしていた。

「よくそんなに属性が使えるね」

「生憎だが、〝闇の神〟に仕える〝物〟の中でこの程度の属性放出で根を上げる弱者は存在しない」

「……そ——」

 ファイスの返答を聞き終える前に、アンリエッタの放った光線によってファイスの頭部は消し飛ばされた。

 しかしファイスは、そんな損傷でさえ身動き一つせずに再生させていた。

「言ったであろう『遊びに付き合ってやる』と。不愉快だが、不屍人アンデットの貴様を殺せるとは我も思っていないからな」

 (だからアンリエッタの光線が、俺の時よりも細かったのか)

 尻もちを付いていたケフィは、眼前で起こっているファイスの驚異的な再生能力を横目に、アンリエッタの声を聞いていた。

「手加減と言いたいの?」

「無論だ。お前達と同じ様に〝最強〟と称される我がこの程度である筈がない。安心しろ、力は二割以下に抑えてある」

「……そう」

 身体に緑色の炎を帯びていたファイスは、少し脱げてしまった黒いグローブを正した。

「フッ、そんなグローブが気になるのか?」

「このグローブは私にとっては歴とした武装なの。この国に殆ど滞在していない私の事を一年しか在席していなかった貴方が知らないのも当然ね」

 両手のグローブを正したファイスは、アンリエッタを睨み返した。

 (俺も知らなかったんだけど……イテテ)

 突き飛ばされたケフィは、強い力で押された胸部と尻もちを付いた時に痛めたお尻を摩りながらファイスの背中を見つめていた。

「我には戯言にしか聞こえんな……敵を軽視する者程、終わりは呆気ない物だ!」

永遠の忘却エーテルム・オブリヴィオン

「うぎゃー!!」

 先程と同じ動作に気が付いたケフィは、恐怖のあまり泣き叫びながら両手を前に突き出しながら、その場から飛び退き軌道上から逃れた。

「ふべぇー!」

 (イタタっ!む、胸が削れるぅ!!)

 思い切り飛び退いたケフィは、両手を前に伸ばしたまま土煙を舞い上げながらファイスの左側に滑っていた。

「くふっ!」

 ケフィの無様な姿を見ていたアンリエッタは、以前のアンリエッタと同じ様に笑みを溢していた。

 ケフィの行動に意識を向けていたファイスは、少しだけ笑みを浮かべると先程とは別格の巨大な光線に呑み込まれていった。

 ファイスを呑み込んだ光線は、後方に聳え立つビル群を最も容易く貫通していった。

「——言葉も——返しする」

 消えゆく光線の中で、緑の炎に包まれたファイスはアンリエッタに視線を向けたまま、その場に立ち尽くしていた。

「軽視しているのは貴方。終わりが呆気ないのも貴方。一年掛けて潜入して呆気なくバレて〝遊び〟で終わる……世界最強の一人すら殺さずに終わるつもり?」

「ああ、〝問題ない〟……立ち尽くすだけの案山子かかし風情の貴様こそ、その拳で我に歯向かって来い!これ以上くだらぬ時間稼ぎをするつもりなら……そこにいる女から殺めてやっても良いが」

 そう告げるとアンリエッタは、冷たい眼差しをケフィに向けた。

「ひっ!」

 その瞬間、ケフィを覆い隠す様に緑色の炎が身体全体を包み込んだ。

「そんな事が出来るなら……やってみて」

「……貴様」

 不敵な笑みを浮かべるファイスに対して、憤りを感じたアンリエッタは俯きながら身体を震わせ始めた。

「これ程までコケにされたのは初めてだ。良いだろう……我の力で貴様を塵に変えてやろうっ!」

 その瞬間、アンリエッタの周囲に黒い渦が出現すると、中から二対の白い銃身現れた。

 アンリエッタはゆっくりと右腕を上げファイスへ向けると、周囲で浮遊したまま停止していた三対の銃身がファイスに銃口を向けたまま、アンリエッタの周囲を回る様に回転し始めた。

「全て滅せよ……『記録の滅却ネクスィム・レコーズ』!」

 アンリエッタが叫んだ瞬間、向けられた銃口から六本の光線が同時に放たれた。

 回転している状態から放たれた光線は渦巻ながら距離を詰め、一本の巨大な光線へと融合した状態でファイスに接近した。

 ファイスを軽々と飲み込む程、広範囲に巨大化した光線は一瞬でファイスを呑み込み背後のビル群は徐々に倒壊していき、光線内に消滅していった。

「……〝奴〟の言う通り、貴様と我は相性最悪の様だな」

 光線内にファイスの存在を確認したアンリエッタは、再び銃身を回転させ始めた。

「最悪なのは……貴方だけ」

 光線に呑み込まれていたファイスは、履いていた靴を脱ぎ捨てると同時に、蒼炎を身体に纏わせ始めた。

蒼球ブルーボール

 ファイスの纏っていた炎が胸元に集まり球体化すると、光線を飲み込む程に巨大化した蒼い球がアンリエッタに向けて放たれた。

「くっ!」

 アンリエッタは回転を中断させると、三対の銃身自身の前に移動させ盾を作り出して蒼い球を防いだ。

「〝あれ〟を使うか……いや、まだ早い」

 視線を逸らして小言を漏らしたアンリエッタは、再び黒い渦を出現させると二対の銃身を黒い渦に呑み込ませた。

「チッ!……興が醒めた……我は帰る」

 突然身を翻したアンリエッタは、ファイスとは反対側へと歩み始めた。

「アンリエッタ……考える知力まで失ったの?相性最悪と言った敵を、見す見す逃すと思う?」

 背後から睨み付けるファイスに向けて、アンリエッタは不敵な笑みを向けた。

「我の言葉が全てだ……貴様に我の邪魔は出来ん」

 そしてアンリエッタは、ファイスの背後で燃え続けていた緑色の炎を指差した。

「もっとも……貴様が奴を見捨てるのであれば、我を殺す事も出来るかもしれんがな」

 その言葉を発すると同時に緑色の炎が〝突然〟消滅し、ケフィの周囲に黒い渦が現れ中からアンリエッタの姿をした女性が無数に出現し始めた。

「っ!」

 それに気が付いたファイスは、一目散にケフィの元へと駆け出した。

「……じゃあね、ケフィ」

 アンリエッタは寂しげな瞳をケフィに向けると、自身の背後に出現した黒い渦の中へと姿を消した。

「あ……アンリが一杯」

 ケフィは目の前に現れた女性の数に圧倒されながら、指を差して女性を数え始めた。

 (アンリ一号、アンリ二号……)

 無防備のまましゃがみ込んでいたケフィに向けて一斉に向けられた銃口からは、数え切れない程の光線が放たれた。

「何惚けてるの?……ケフィ」

 間一髪で光線の軌道上に滑り込んだファイスは、緑の炎でケフィを覆い包んだ。

「ファイス……でも、アンリが」

「あれはアンリエッタじゃない……そして、私達の国が誇る攻の月アンリエッタはもう存在しない」

 首を横に振っていたファイス目掛けて、再度放たれた光線によってファイスの頭部は一瞬で消滅した。

「ファイス!」

「…………私なら問題ない……ケフィ、早く避難して……玩具の相手は私一人で十分だから」

 緑色の炎によって再生した顔をケフィに向けて、ファイスは優しく微笑んだ。



 (この人はやっぱりあの時のままだ……私の全てを変えた……あの頃と)

 視線の先に立つファイスの背中を見たケフィは、自身の〝忌まわしい過去〟を呼び起こさせた。
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