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ソード オブ ソード
2 放出される思い出
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抱く回数は減り、気がつけばキスやハグも避けられるようになり始めた。心配になった二人は少しでも今の状況が変わってくれる事を願いシルバとレオの元を訪れた。
「よう!久しぶり、元気だったか?」
「おーお前は?」
「忙しくしてる。まだまだやることが多いからな」
「それは何より、義手の形がまた変わったか?」
「ああ、試作を重ねてるからな。大分いい」
いつものようにレオと会話をするソードを見て二人は安心した。そんな二人を横目で見たシルバが声をかける。
「どうしたんですか?」
「ああ、ちょっとソードの様子がおかしくて。ここ最近ずっとボーッとしてると言うか、何か変なんだ」
「はい、俺達が話しかけても上の空だし、何か考えていると言うよりは…考えてないというか」
ロキは買ってきたお菓子をシルバに渡しながら最近のソードの行動を話した。
話を聞きながらシルバは顎に手を置き心当たりを探すも浮かばなかった。現状、レオと普通に話してるように見え変わった様子は伺えず。
「見た感じは何も変わってないようにみえますが…でも、二人がそんな風に思うなら本人に聞いてみては?」
「「……。」」
答えない二人に不安がよぎり咄嗟に言った。
「浮気!?」
「「違う!」」
二人は勿論ソードに理由を聞いたが本人は至って普通だと言うし何度も尋ねたが答えは同じで今に至ったと話した。
「お二人が忙しいからではなくてですか?」
「「うーん」」
確かに最近の二人はずっと忙しかった。ロキは教師となり、レイはカウロックの研究所をいったり来たりしていた。どちらかがなるべく居るようにはしていたが前よりはソードを一人にする時間が増えたのは確かだった。
「そうなのかな…」
「うーん、だとしたら時間は取るが…」
「新しい環境が合わないとか?」
「言っても新しく建てて結構経つ気がしますし、アビサルや魔の森にはソードが住みたいって言ったからそれも違う気が…」
「もし、レオと会って何か糸口が見えたらなと思って連れてきたが…」
「そうですか…何かレオが気がつけば良いですが…鈍感ですから…かなりの…本当に」
「「……。」」
三人はお茶をしながら会話が終わるのを待った。帰りにロキの教える孤児学校へ顔を出しに行ったがそこでも変わった様子は無かった。
しかし、その日の帰り道。
歩いていたら突然ソードが立ち止まった。
何でもないただの道。
はぁはぁと息が荒くなり、頭がぐらぐらと回る。
「ソード?」
「どうした?」
「いや、何でもない」
道ですれ違うは3人組の冒険者で楽しそうに話をしながら歩いている。思わず涙がでそうになりバレないようすぐに目を押さえ何事もないようにした。
これが引き金となってしまった。
その後のある日、ロキもレイも深夜までいない日ができた。ロキは泊まりで頼まれた討伐依頼を受けに。レイは研究で深夜の帰宅となる。
時間をもて余したソードは誰にも告げず一人魔の森に行った。
研究所から戻ったレイが帰宅したのは深夜。部屋は真っ暗で寝室を覗くもソードの姿はなかった。書斎や2階など一通り探したが人の気配すら感じられなかった。一人で討伐にでも行ったのかと思いシャワーを浴びる。
前日にロキは頼まれた討伐に一緒にいかないかとソードを誘ったが断っていた。だから討伐へは行かないと思っていたが気まぐれで行きたくなったかなと思っていた。一瞬、シルバの「浮気!?」と言う言葉が過った。
まさかな、考えすぎか……
一人で本を読むがソードは帰ってこない。うとうとしつつソードを待った。いつの間にか寝てしまい辺りは明るくなり始めていた。すると窓にコツンと何かが当たる音がした。
レイは音がした窓へ近づき外を覗くとそこにはデッキに横たわるソードがいた。すぐに窓を開け抱き寄せる。息を確かめ怪我をしてないか確認をしたが寝ているだけだったので胸を撫で下ろした。顔は冷たかったが誰かに抱かれていたのか微かに誰かの温もりが残っていた。
「誰だ…」
警戒するも誰の気配すら感じ取れなかった。家の周りには結界魔術がしてあり誰かが入ればレイにはわかるようになっていたが全くわからなかった。
ソードの姿は討伐へ行く服装のままだった事から家から拐われた訳ではなく少なからず自ら外に出掛けたのだとわかった。とりあえずベッドに運び防具や服を脱がせ楽にさせ寝かせた。
他にも薬で眠らされた事も考えたがソードはそんな物に手を出さないし無理矢理飲まされた跡もない。
なら、誰かといて途中で身を預けれるほど信用できる相手に出会ったとしか考えられなかった。また、自分の結界に糸も簡単に入ってこれるそんな奴に心当たりがあるのは一人だけだった。
「あいつか」
服はしっかりと着ていたが念のため脱がせる。途中寒そうにしたので下着と上のシャツだけは着させたままにし確認したがこれと言って何かされた訳では無さそうだった。
安心したようなしてないような感覚を覚えた。
「はぁ……」
どうしたら良いのかわからずソードを抱き締めながら一緒に眠りにつく。
ロキが討伐から帰るとレイがソードに抱きついてベッドで寝ていた。部屋には脱ぎ捨てられた服が置いてあった。いつもの事かと思ったが中途半端な脱ぎ捨てに疑問を持ちながらロキもシャワーを浴びに行った。シャワーから出ると気がついたレイがゆっくり動く。
「すみません、起こしちゃいました?」
「ん…いい。今は昼過ぎか?」
「はい、レイさんも昨日遅かったんですよね?」
「ああ、深夜に帰宅した」
まだ寝ているソードの頭にキスをしてレイは上半身だけ起こしロキに話しかけた。
「昨日、討伐でソード見なかったよな?」
「ソード討伐に行ったんですか?」
「おそらくな、服が討伐用だったからそうだと思って。まぁ広いから会うわけないか」
「行くなら一緒に連れてったのに」
「一人で行きたかったのかも。俺が帰ってきた時にはまだ帰ってなかった」
「そうですか」
「……ああ」
レイの歯切れの悪い返事にロキは不思議に思った。
「何かあったんですか?」
「はっきりとはわからないがインセットに会ったかもしれない」
「え、インセットですか!?じゃあ!?」
「念のため調べたが何もなかった。とりあえずはな」
ほっとするロキだがレイの顔は優れないままだった。
「レイさん、どうしたんですか?」
「ああ、実はインセットとは完全にはわからなかったんだ。俺も討伐に一人で行ったと思って待ってたんだがついうたた寝して。明け方、窓から音がして見たらソードが外のデッキで寝てた」
「ありえないです」
ロキもソードがわざわざ外で寝るなんて事は無いのはわかっていた。それなら何故それが他の誰かではなくインセットだったのか理由を聞きたかった。
「俺の勝手な推測だが一人で討伐に行った先でインセットに会っていつの間にか寝たんじゃないかと思う。で、あいつがここまで運んで来て俺に知らせた。でなきゃ外で無防備に寝るなんて事ないだろ?ましてや俺達の家を知ってる奴は殆んどいない。結界も簡単に侵入できた。そんな奴俺が知る限り一人しかいない。姿は見てないがソードが信頼できる相手がインセットしか思い浮かばなかった」
「うーん。だとしたら約束でもしたんですかね?」
「さぁな、そこ迄はわからないが約束してたなら多分だけど寝る迄一緒にいないだろ。でもってまた次、会える約束をしてたとしたらソードなら確実に自分で帰って来てた」
「なら、たまたま会って夢中になってですかね?なら、そんなに気にする事でも…」
「かもな…」
尚も浮かない顔にロキは理解するのに時間がかかったが気がついた。やっとレイの暗い表情が理解できた。
「レイさん…」
「そうだ…」
「ソードがそんなに夢中になる相手なんだよ。時間を忘れるぐらい。寝るのを我慢してまで一緒に居たって事に俺はショックを受けている。特に今のソードの状況でだ。言いたくないが…」
「惹かれてる…ですか」
コクリと頷くレイ。
同時にため息がでた。
「「はぁ……」」
「嫌です…」
「俺もだよ、まだ推測だし全然決まってはないが。まぁ、少なからず寝顔を見られてもいいぐらい信用してる相手って事だな」
「ぐぅ……嫌だ。ソードとられたくない」
「まだ決まってねぇよ」
ロキはソードの元へ行き寝顔をじっと見た。気持ち良さそうに寝ている姿から目が離せなかった。レイがソードを抱き締めながら寝ていた理由が痛いほどわかって心臓が締め付けられる。
二人はソードが起きるまで離れなかった。
「よう!久しぶり、元気だったか?」
「おーお前は?」
「忙しくしてる。まだまだやることが多いからな」
「それは何より、義手の形がまた変わったか?」
「ああ、試作を重ねてるからな。大分いい」
いつものようにレオと会話をするソードを見て二人は安心した。そんな二人を横目で見たシルバが声をかける。
「どうしたんですか?」
「ああ、ちょっとソードの様子がおかしくて。ここ最近ずっとボーッとしてると言うか、何か変なんだ」
「はい、俺達が話しかけても上の空だし、何か考えていると言うよりは…考えてないというか」
ロキは買ってきたお菓子をシルバに渡しながら最近のソードの行動を話した。
話を聞きながらシルバは顎に手を置き心当たりを探すも浮かばなかった。現状、レオと普通に話してるように見え変わった様子は伺えず。
「見た感じは何も変わってないようにみえますが…でも、二人がそんな風に思うなら本人に聞いてみては?」
「「……。」」
答えない二人に不安がよぎり咄嗟に言った。
「浮気!?」
「「違う!」」
二人は勿論ソードに理由を聞いたが本人は至って普通だと言うし何度も尋ねたが答えは同じで今に至ったと話した。
「お二人が忙しいからではなくてですか?」
「「うーん」」
確かに最近の二人はずっと忙しかった。ロキは教師となり、レイはカウロックの研究所をいったり来たりしていた。どちらかがなるべく居るようにはしていたが前よりはソードを一人にする時間が増えたのは確かだった。
「そうなのかな…」
「うーん、だとしたら時間は取るが…」
「新しい環境が合わないとか?」
「言っても新しく建てて結構経つ気がしますし、アビサルや魔の森にはソードが住みたいって言ったからそれも違う気が…」
「もし、レオと会って何か糸口が見えたらなと思って連れてきたが…」
「そうですか…何かレオが気がつけば良いですが…鈍感ですから…かなりの…本当に」
「「……。」」
三人はお茶をしながら会話が終わるのを待った。帰りにロキの教える孤児学校へ顔を出しに行ったがそこでも変わった様子は無かった。
しかし、その日の帰り道。
歩いていたら突然ソードが立ち止まった。
何でもないただの道。
はぁはぁと息が荒くなり、頭がぐらぐらと回る。
「ソード?」
「どうした?」
「いや、何でもない」
道ですれ違うは3人組の冒険者で楽しそうに話をしながら歩いている。思わず涙がでそうになりバレないようすぐに目を押さえ何事もないようにした。
これが引き金となってしまった。
その後のある日、ロキもレイも深夜までいない日ができた。ロキは泊まりで頼まれた討伐依頼を受けに。レイは研究で深夜の帰宅となる。
時間をもて余したソードは誰にも告げず一人魔の森に行った。
研究所から戻ったレイが帰宅したのは深夜。部屋は真っ暗で寝室を覗くもソードの姿はなかった。書斎や2階など一通り探したが人の気配すら感じられなかった。一人で討伐にでも行ったのかと思いシャワーを浴びる。
前日にロキは頼まれた討伐に一緒にいかないかとソードを誘ったが断っていた。だから討伐へは行かないと思っていたが気まぐれで行きたくなったかなと思っていた。一瞬、シルバの「浮気!?」と言う言葉が過った。
まさかな、考えすぎか……
一人で本を読むがソードは帰ってこない。うとうとしつつソードを待った。いつの間にか寝てしまい辺りは明るくなり始めていた。すると窓にコツンと何かが当たる音がした。
レイは音がした窓へ近づき外を覗くとそこにはデッキに横たわるソードがいた。すぐに窓を開け抱き寄せる。息を確かめ怪我をしてないか確認をしたが寝ているだけだったので胸を撫で下ろした。顔は冷たかったが誰かに抱かれていたのか微かに誰かの温もりが残っていた。
「誰だ…」
警戒するも誰の気配すら感じ取れなかった。家の周りには結界魔術がしてあり誰かが入ればレイにはわかるようになっていたが全くわからなかった。
ソードの姿は討伐へ行く服装のままだった事から家から拐われた訳ではなく少なからず自ら外に出掛けたのだとわかった。とりあえずベッドに運び防具や服を脱がせ楽にさせ寝かせた。
他にも薬で眠らされた事も考えたがソードはそんな物に手を出さないし無理矢理飲まされた跡もない。
なら、誰かといて途中で身を預けれるほど信用できる相手に出会ったとしか考えられなかった。また、自分の結界に糸も簡単に入ってこれるそんな奴に心当たりがあるのは一人だけだった。
「あいつか」
服はしっかりと着ていたが念のため脱がせる。途中寒そうにしたので下着と上のシャツだけは着させたままにし確認したがこれと言って何かされた訳では無さそうだった。
安心したようなしてないような感覚を覚えた。
「はぁ……」
どうしたら良いのかわからずソードを抱き締めながら一緒に眠りにつく。
ロキが討伐から帰るとレイがソードに抱きついてベッドで寝ていた。部屋には脱ぎ捨てられた服が置いてあった。いつもの事かと思ったが中途半端な脱ぎ捨てに疑問を持ちながらロキもシャワーを浴びに行った。シャワーから出ると気がついたレイがゆっくり動く。
「すみません、起こしちゃいました?」
「ん…いい。今は昼過ぎか?」
「はい、レイさんも昨日遅かったんですよね?」
「ああ、深夜に帰宅した」
まだ寝ているソードの頭にキスをしてレイは上半身だけ起こしロキに話しかけた。
「昨日、討伐でソード見なかったよな?」
「ソード討伐に行ったんですか?」
「おそらくな、服が討伐用だったからそうだと思って。まぁ広いから会うわけないか」
「行くなら一緒に連れてったのに」
「一人で行きたかったのかも。俺が帰ってきた時にはまだ帰ってなかった」
「そうですか」
「……ああ」
レイの歯切れの悪い返事にロキは不思議に思った。
「何かあったんですか?」
「はっきりとはわからないがインセットに会ったかもしれない」
「え、インセットですか!?じゃあ!?」
「念のため調べたが何もなかった。とりあえずはな」
ほっとするロキだがレイの顔は優れないままだった。
「レイさん、どうしたんですか?」
「ああ、実はインセットとは完全にはわからなかったんだ。俺も討伐に一人で行ったと思って待ってたんだがついうたた寝して。明け方、窓から音がして見たらソードが外のデッキで寝てた」
「ありえないです」
ロキもソードがわざわざ外で寝るなんて事は無いのはわかっていた。それなら何故それが他の誰かではなくインセットだったのか理由を聞きたかった。
「俺の勝手な推測だが一人で討伐に行った先でインセットに会っていつの間にか寝たんじゃないかと思う。で、あいつがここまで運んで来て俺に知らせた。でなきゃ外で無防備に寝るなんて事ないだろ?ましてや俺達の家を知ってる奴は殆んどいない。結界も簡単に侵入できた。そんな奴俺が知る限り一人しかいない。姿は見てないがソードが信頼できる相手がインセットしか思い浮かばなかった」
「うーん。だとしたら約束でもしたんですかね?」
「さぁな、そこ迄はわからないが約束してたなら多分だけど寝る迄一緒にいないだろ。でもってまた次、会える約束をしてたとしたらソードなら確実に自分で帰って来てた」
「なら、たまたま会って夢中になってですかね?なら、そんなに気にする事でも…」
「かもな…」
尚も浮かない顔にロキは理解するのに時間がかかったが気がついた。やっとレイの暗い表情が理解できた。
「レイさん…」
「そうだ…」
「ソードがそんなに夢中になる相手なんだよ。時間を忘れるぐらい。寝るのを我慢してまで一緒に居たって事に俺はショックを受けている。特に今のソードの状況でだ。言いたくないが…」
「惹かれてる…ですか」
コクリと頷くレイ。
同時にため息がでた。
「「はぁ……」」
「嫌です…」
「俺もだよ、まだ推測だし全然決まってはないが。まぁ、少なからず寝顔を見られてもいいぐらい信用してる相手って事だな」
「ぐぅ……嫌だ。ソードとられたくない」
「まだ決まってねぇよ」
ロキはソードの元へ行き寝顔をじっと見た。気持ち良さそうに寝ている姿から目が離せなかった。レイがソードを抱き締めながら寝ていた理由が痛いほどわかって心臓が締め付けられる。
二人はソードが起きるまで離れなかった。
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