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インセット編
21 コール回想 ③
しおりを挟むその間もアヤに情報を調べさると噂元を突き止めたと聞き探し当てるも時は遅かった。既に口止めされ挙げ句、もう一人の指名手配の側近も死んでいた。
これは後から伝術士仲間から聞いた話だが二名ともにアイズが手を掛けたとわかった。罪に罪を重ね追い詰められていったアイズを俺はいつ止める事ができたのだろうと思ったが自分を過大評価し過ぎだと考え直した。
俺は初めからあいつを止めれるような仲になっていなかったんだと。これまで一つも胸の内を聞いたことが無かった。仲間などと言うのは図々しいな…
……………………………
張り込んだ甲斐があった。
アイズとインセットが一緒に現れた。
「アヤ、捕らえろ!」
以前インセットは関係ないと言っていたが、そういう訳にはいかない。事情を聞くまでは逃すことはできい。目眩ましをされたが俺達は何とか二人の後を追うことができた。
着いた場所はハースの森。
「何かあるか?」
「何もない、消えたにしては不自然だ」
周りを探すも何もない、消えた場所をもう一度歩いた。軽い音がした。
石を触ると魔術の解かれた後があった。地下へ続く石畳の扉がずれた。狭い階段を下りると扉があり開けるが誰もいない。
「広いな」
迷路に近いそこは牢屋が並んでいた。ここは使われていないハースの地下牢だった。
明かりは殆どない、ふたてに別れ探しているとアヤが見つけたと言った。微かにだが話し声がする、耳を済ませ近づき明かりが遠くに漏れている場所を見つけたと思ったらけたたましい叫び声が聞こえた。
「アヤ!」
急いで走るとそこには石のベッドに横たわるアーサー王とインセットの手を握っていたアイズだっだ。
見ればわかる、どちらが「悪」か
俺が魔術を放つ前にアイズに出され倒れる。かなりの興奮状態だった。アヤが斬り込みインセットを救いだすもアイズは天井を崩し俺達を閉じ込めた。
「アヤ、インセットを頼む」
俺は出口を探した。
アイズはアーサー王を生き返らせようとしていた。蘇生の禁じ手をするとは…それにあの顔はもはや俺の知るアイズではなかった。あいつはアーサーを連れここに逃げたのか。
生き返させて逃げるつもりだったがインセットにばれたのか詳しい事情までは把握できないが間違いなくアイズは黒だ。インセットを使ってまで蘇生など…また罪を増やす気か。
実際、時間が経ちすぎていて蘇生される可能性は低い。しかし、万が一目覚めたなら王は果たしてそれを望んでいるかなんて事は聞かなくてもわかるな。
戦争まで仕掛けて逃げる事を選んだアイズは裏側近以上の感情があったに違いない。こんなにも多くの犠牲を出してしまった。
気がつかなかった俺も同罪かもしれない。
壁に穴が空いている。ここを崩せばいけるかもしれない。もろい場所だがやるしかない。
案の定振動で周りが崩れ始めた。あいつらも気がつくはず、逃げ道を確保し救いだして裁く。だが駆けて来たのはアヤだけだった。
「アヤ、アイズとインセットは!」
「後から来る」
「お前の言う通りインセットは白だった。もっと早く俺が気が付くべきだった。インセットに尻拭いまでさせ傷までつけさせた。詫びなどでは済まないな。あいつはアーサーといたかったんだな…伝術士など辞めたかったんだ。アヤ、報告会議でお前とインセットを上げる。変えなければならない、もう時代錯誤のやり方では誰も伝術士は育たない。お前ら若い奴が仕切れ」
「他が黙っていない」
「何とかする。俺がヒューズ担当から降りてあいつを指名すれば文句はでないさ。これは俺の責任でもある」
「コール…」
「暫くは噛みついてくるが大した事じゃない。それに俺は決めた。お前とインセットは何があっても見放さないでやる。それが先に行く者の姿だろ、良かったな俺で」
「ああ」
「お、珍しく笑ったな」
「……。」
俺達は一足先に天井に穴を開け崩れた瓦礫を登り上まで上がった。少し後にインセットだけがひょいっと瓦礫を登り地上に着いた。
自分の師範に裏切られたインセットだったが淡々としていた。聞きたいことはいろいろあったが報告が終わってからにした。インセットは白と認められ俺はインセット無しでは事実が判明しなかったことを伝えた。
そしてアイズの刑はその場で執行したと説明すると何故捕まえなかったのかと言う奴がいた。アヤの負傷に崩落のおそれがあり俺が許可したと話したが何人かは納得していなかった。
たまらず俺は傷を追った奴を責めるのは間違っていると話したら皆が押し黙った。なぜならインセットの髪の色が物語っていたからだ。
後の報告はアヤに任せる事にした。他の伝術士に聞いたがアヤはインセットへの謝罪要求を提案したが棄却されたそうだ。
その後の伝術士会議
「インセットをヒューズの代表にしたい」
「多数決5対0決まりだ」
この騒動はインセットだけでなく伝術士全体の問題になった。アイズの挙動にインセットはいち早く気が付き探り当て真実を突き止めた。
俺達に何も報告しなかったのはアイズを最後まで自分で助けようとしていたに違いない。
師よりも優秀な弟子により執行された刑はやりきれなかったが何故か師弟愛を感じたのは俺だけだろうか。
あいつは真実を知って何を思ったか。
「アヤ、インセットはどうだ」
「滞りなく」
「そうか、カウロックはお前に任せたぞ。アイズの事は何かいってたか?」
「特には」
「そうか、お前はたまに嘘が下手だな」
アヤの目線は上を向いていた。
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