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しおりを挟むちゃぽん。
ここはヌシのいる異世界御用達のイベント池でもなんでもない近くの釣り堀。週末は家族連れやカップル、単体のおじさんで賑わう。いつもなら。
俺は釣るだけでリリースしている。ゲームのようにレアが食い付いて左右に引きながら格闘して引きあげた喜びを感じる事なくすぐに釣れる。
エサなくてもいいんじゃなかろうか…
そんな事を思いながら灼熱の中、日陰もない人もいるわけもない釣り堀でひたすら我慢しながら竿を水溜まりへ投げる。
ちゃぽん。
魚も煮魚になってないか心配になる。
セミは大合唱。限界だ。
こんなクソ暑い中なぜ我慢大会みたいな釣りをしているかと言うと。
「フィグ、何で家出したんだよ」
「はぁ…」
大きなため息をするデカイ男と一緒に釣りにきていた。数日前に俺のアパートのドア前に体育座りをしていた。
座るフィグは岩のように見えて初めは俺だけに見える岩男かと思って超ビビった。恐怖で感動的な再会は何処へやら。よく、通報されなかったなと思いながら部屋に入れた。今回はどうやら故意に来たらしく、初めは頼ってくれてめちゃくちゃ嬉しかった。そう、初めは。
フィグは部屋に入るなり俺の後ろから挨拶のハグをしたのだが元気はなかった。そういや、いつも会うとき元気あった事ないじゃん。
一言「城を出てきたから泊めて欲しい」と言われた時は「いやん、付き合ってるみたい」って思ったがここから理由を一言も話さない。全く。そして、口から出るのはため息ばかり!ずっとこの調子!
見かねた俺はおそらくフィグの世界にも池ぐらいあるだろうと気分転換に釣り堀に来たのだが。ここは失敗だった。灼熱の修行。素直に涼しい量販店の18禁コーナーにすりゃ良かった。
で、冒頭に戻り俺のセリフ。
こう言う時できる男女は何も言わず話してくれるまで待つのだろうが俺は聞いちゃう。
「話したら解決法あるかもよ。てかもう話してくれ…灼熱で死ぬ」
「…わかった」
重たい口を開いて話し出した。ナグマ国はどうやら1つの国を三人の王が守ってるらしい。フィグの他に王が後二人いてそれぞれが持ち場を管理しあって魔物退治やら国やらを守っているとか。
「最近、魔物が減ってきて」
「へー良かったじゃん。平和になって」
「それで…妃を迎えろと言われた」
「へー良かったじゃん…(そうだ許嫁いたんだ)」
やっと話してくれたのがそれって事は結婚したくないとか!?はい、フラグが立ちました。釣りイベントは絶対何かあるんですよ!幻の破談とか!伝説の破談とか!金と銀の魚を集めると缶がもらえたり!
「妃は迎えるんだが…」
「は?」
「え?」
妃むかえるんかーい!
そのキョトン顔は俺がしたい。
「あ、どーぞ」
「この間、初めて会って…口づけが…下手な人は嫌だって…」
フフン、一瞬鼻で笑いかけた。
「で?」
「…。」
「傷ついて家出したのか…」
「…。」
「帰れ」
どんだけナイーブなんだよ。いや、どんだけ下手と言うべきか?フィグとしたことないからわからないけど…童の貞なのか?
「話したら解決法あると言った」
「はぁ…フィグん所はどうかわからないけど、こっちの世界では愛があれば大丈夫なんだよ。んで、フィグが上手くなるようにセンス磨いて努力するしかない」
「…。」
「腹筋3万と腕立て5万やるなら、キス3万回とあの行為5万回練習でもしたら解決するんじゃないか?」
俺も暑さでなに言ってるかわかんないけど。
はぁ~そんな事で家出かよ。まぁ、言いにくかったか。面と向かって下手はいやなんて言われたらプレッシャーだしプライドも傷つくよな。王だし。
「…。」
あれ、言いすぎた?
フィグの顔を見て立ち上がろうとした。
「やまと…」
「ん?」
「愛とはなんだ」
俺は真剣な顔でそれをいうデカイ男の横で暑さにやられ、フラつきその場で倒れかかった所を支えられた。
「み…みず…」
「わかった!すぐ汲む!」
やめて下さい。釣り堀の水は…お腹壊す。てか、これは何フラグですか…
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