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二人だけ…

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これと言って特に何も無いまま終業時間となる。
定時刻には帰り支度をし、車に乗り込んで彼女を待つ。
程なくして運転席側に影が現れた。
俺はサイドウインドウを半分程下げる。
「乗って」
助手席シートを左手でポンポンと叩き合図する。
小走りで助手席側へと移動する彼女。
助手席のドアを開くと少し身を屈める。
「失礼します…」
遠慮がちにシートへ腰を降ろす。
「取り敢えず、あれだし…車出すよ」
慌ててシートベルトを装着する姿は、白衣を着て仕事をこなしている時の印象とは異なる。
ゆっくりと車を発進させ、病院から離れると自然と彼女が口を開く。

「誘ってくれてありがとうございます」
他に気になる事があるのか、落ち着かない様子で頭を下げている。
「俺からの誘いで申し訳ないんだけどね」
話題を作る為、話しやすい雰囲気を心掛ける。
「髙城先生に誘われるなんて思わなくて、嬉しいです」
迷惑では無かった事を確認でき、俺自身も少し緊張が解れる。
「藍川さんと食事でもしたいなって思って」
「私も髙城先生とゆっくりお話ししたかったんです」
そう答えると、少し頬が火照っているように感じる。
不意に、ちょっと虐めてみたらどうなるのか気になってしまった。
「プライベートだし奨瑚って名前で呼んでよ。俺も鈴音って呼ばせて貰うから」
無茶振りかとも思ったが、提案してみる。
「奨瑚さん…でお願いします…」
さん付けが限界だった様だ。
先程より頬の朱みが増している。


これなら、楽しい時間を過ごせそうだと安堵する形となった。




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