鬼人の姉と弓使いの俺

うめまつ

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61,二日酔いの朝

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両手に酒と食べ物抱えて帰ってる。

家が無傷で残ってるか心配だったけど無事。

ホッとしたわ。

室内に敷いたラグの上に料理を並べてクッションを置いてある。

「おかえりぃ、ラオくーん」

「ただいま!オルカさん!ブルクスです!俺のことも覚えてくださいね!」

「あんたじゃないってば。どいて。ラオ君の前に出てこないでよ」

「えー?俺にもおかえり、ブルクス君って言ってくださいよぉ。オルカさーん」

「図々しいのは嫌いなのよ、やめてよね」

「……奇遇ですね。俺も図々しいタイプは嫌いです」

つんっとそっぽを向くオルカさんを見ながら呟くと心当たりにしゅんと項垂れた。

「図々しい、ってのは言葉がよくないよ、ラオ。物怖じしないとか怖いもの知らずって言うんだよ」

ポジティブモンスターのブルクス。

「マミヤとブルクスも印象はそうでしたよ。勝手に相席してきたからびっくりしました」

「えー?そうだっけ?楽しかったじゃん?」

「あの時は舞い上がってた。反省してる」

マミヤは苦笑い。

ブルクスの方がポジティブモンスターだ。

「おかげで担がれるし、」

「もうラオの定位置、チサキさんの肩でよくね?そっから弓打てば?バンバンって。高さを稼げていいじゃない?」

弓のポーズでからかうブルクスが腹立つ。

弓を打ち返すほどではないけど。

「チビって言いたいだけでしょ」

「あはは、分かるー?」

腰を屈めて俺を覗きこんできた

どうせオルカさんより低い。

このメンバーで下から二番目の身長だ。

「私よりは高いですよ」

「ギリギリですね。グラナラさんよりありますけど。もう少しあればよかった」

グラナラさんはちょっとくらいかな。

お互いに手をかざして身長を比べてみる。

「ラオ君はこの身長だからいいのよ!顔もすっごく可愛いし、言うことなし!」

誉められてる気がしないし、掲示板のせいで女顔のチビとまた有名になったの思い出してうんざりした。

「おおい、もう早く飯にしようぜ。腹へった」

皆でラグの上で円に座るけどオルカさんが隣に来るのを避けてドリアドスさんとマミヤの間に割り込む。

「姉離れか?」

「オルカさん避けです」

でも前を見たらオルカさんはチイネェとグラナラさんにがっしり捕まってた。

ついでに笑顔のブルクスも混ざってる。

あいつ、すげえわ。

「お前、飲まねぇの?」

「下戸です」

「へー、でもちょっとくらい飲めよ」

ジュースにどぼどぼ注がれた。

せっかく店で絞りたての良いのを買ったのに!

「ちょっとじゃない!多い!」

「あはは!飲む機会増えるから慣れとけ。飲めば強くなるから」

「昼間の酒で酔いつぶれたくせに」

「俺は回復早いから」

にやーっと爬虫類が笑う。

ちくしょう。

でも皆で騒ぐ飯は楽しかった。

前半はね。

後半は記憶がない。

朝、起きたら部屋のベッド。

チイネェとグラナラさんとオルカさんと混ざって雑魚寝ってどうよ。

マジかよ。

そんなことよりひどい頭痛と吐き気。

三人を起こさないように気持ち悪さをこらえながら這いつくばってベッドから抜けようとしたんだけど誰か起こした。

「ラオシン?」

起きたのはチイネェだ。

ベッドの端でズルズル這う俺を覗いてる。

「二日酔い?」

「……吐く」

小声で答えた。

チイネェに抱えられて外に。

通り過ぎたラグにはドリアドスさん達三人が雑魚寝してた。

「うお、お、え」

どぼぼ、って胃が引っくり返る。

チイネェの大きな手が背中をさすって顔に垂れてくる髪の束を支えてくれてる。

「おーい、大丈夫かぁ?」

「ドリアドス、起こした?」

「あのくらいの物音ならねぇ」

「まあ、そうだね。私より耳がいいから」

「うえっ」

二人の会話を聞きながら俺は嘔吐。

酒、強いなぁ。

俺が混ぜ物の酒を二、三杯。

二人は強い酒を何本飲んでたっけ。

ドリアドスさんの手も背中をさすってる。

「お前、昨日の記憶ある?」

横に顔振った。

うお、気持ち悪っ。

「こりゃぁ、飲まさない方がよかったか。ラオ、悪かったな。思ったより酒がに合わないわけね」

「面白かったけどね」

「お前はそうだろうけどな。俺らはドン引きよ」

は?

何した、俺は。

「な、に?おれ、昨日の、うおえ、」

「チサキの膝から降りねぇの。ここが良いっつって」

「ま、じ、うっぷ、」

「そのまま寝てた」

「うおうっ、マジか、う、げぇえっ、げほっ!うえっほっ!」

「おおっと。おい、シスコン。吐いた上に倒れるなよ」

前のめりに倒れそうだったのをドリアドスさんとチイネェに支えられた。

それよりその話はマジかよぉ。

「抱き付き癖もひどいんだなぁ。俺らに抱きついてた。親父さんくらいだとかこのくらいの体格になりたいとか喚いて、ぶはっ」

「さい、あく」

俺らってマミヤとブルクスにもか。

「オルカにも」

「え?!」

「あいつがズルいっていじけたら、おいでーってめっちゃ上機嫌で呼んで。オルカが飛び付くし怒ったチサキが暴れるし」

「してない」

チイネェがすかさず口を挟んだ。

「コップを握り潰したじゃねぇか」

あの硬いコップを?

金物だったのに。

「柔すぎただけ」

「んな訳あるか。こわーい顔で握り潰してすぐにラオを取り返してたじゃねぇか」

食器類はこの家の借り物なのに。

あーあ、弁償だな。

「グラナラとオルカを挟んでチサキの胡座に乗ってお前は王様だったよ」

「マジで、なんで、そんなことに」

胃が空になれば多少落ち着いた。

「ボケてたのはお前だ。チサキは力持ちだから三人乗って大丈夫とか言って揉めてる三人を引きずってそうさせた。喧嘩を仲裁したいのか何なのか訳わからんが」

「俺はアホか」

「かなりアホの子だった」

「マジかよぉ」

「お前は普段、つんけんしてても所詮末っ子だな。甘え全開だったぞぉ?ぶはっ、だはは!」

「うおおおっ」

顔見なくてもドリアドスさんが大喜びなのが分かるわい。
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