白昼夢の中で

丹葉 菟ニ

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通り雨

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腐敗が進んでたが 歯の治療痕で佐藤 一 だと断定。死因は鈍器で側頭部を殴なれた上、首を締められての窒息死 。
部屋には複数の指紋が検出された。その中で青葉組の構成員2名と一致。
檻の中に入れたれてた痕跡は 皮脂や髪の痕跡から人であると断定。

「お帰りなさいませ。どうでしたか?」

「上は 御手洗の境遇を省みて、無差殺人を企てた凶悪犯。その最初の殺人は佐藤を。と、マスコミ発表をするつもりだ。 だが、どちらも決定的な証拠が無いとして、待ってもらった」

「猶予は」

「ハッキリした回答は無かったが、1週間と言いたい所だが相手も目処を付けたいだろう 2・3日が限界だ」

「この2名に 話を聞くしかありませんね」

パソコンに映し出されてる2名の情報をプリントアウトし捜査員に手渡した。

「何としてでも聞き出してこい」
「了解しました」

時計を確認すれば21時だ、気づくのが遅すぎて舌打ちを自然としてしまった。
帰りたいが 帰ってる暇は無さそうだ。

「すまない。少し電話をして来る」





突然なり始めた電話。
相手を確認すると晃さんだ。

『もしもし、鈴』
「晃さん。どうしたの?」
『すまない、今日は帰れそうにない。何か困ったことは無いか?』
「そうなんだ。お仕事大変だね・・・」
困ったことはある。貴重品袋が無くなってるのだ。でも仕事で忙しい晃さんに言って困らせる事は無い。

『どうした?何かあった?』
「なにも」
『嘘を言うんじゃない。ちゃんと言え』

電話越しなのに逆らえない何かがある。
「あの、俺の貴重品袋が無くなってて」
『ああ、あれか。あれはちゃんと金庫の中に入れたんだ。何か必要な事でも出来たか?』
えぇー、そんな事一言も聞いてないよ、いつの間に金庫の中に入れられたんだろう。

「その、あの中に現金も入ってて、家賃や光熱費の支払いの通知が届く頃だから、何時もコンビニとかで払ってたから」
『なるほど。困った、一緒に行ってやりたいが 俺も身動きが取れない。そうだ、俺の机の1番上の引き出し 開けて見て』
「ちょっと待ってください」

晃さんの部屋は寝室の右隣りだ。因みに俺は左だ。
言われた通り 引き出しを開けた。文房具や便箋や未開封の封筒が綺麗に整頓されて入ってる。

「開けました」
『そう、確か 奥に封筒が入ってると思うけど見て』
「えっとー、あっ、あった」
『良かった。その中に現金が入ってるからソレを使って支払えばいい。余れば好きなものなんでも買って。明日は家の者を手配するから一緒に行動しろ。じゃ、困ったことがあればいつでも連絡をくれ』

返事を聞く前に切れてしまった電話を見つめ、手にしてる封筒が重たく感じ始めた。

「現金がって、いったよね?なんか 分厚くない?」

そーっと机の上に置いた。
怖いもの見たさって、こんな感じなのか?

糊付けされてない封筒を開けて 親指と人差し指をそっとツッコミ 掴んで少し出してみた 1万円札の束だ。

「晃さん、コレこそ金庫にしまうものだと思いますよ」

そっと戻し 誰も聞いてないと知りつつもボヤいてしまったのは仕方ないと思う。







鈴の足枷に少しでもなればと 貴重品を持出す様に仕向けた自分を褒めてやりたい。

鈴が寝入ったと確認した後 貴重品袋を持ち出して中身を改めて確認した。
保険証書は園が掛けてた物をそのまま継続しただけのもの。通帳も四年前で止まってるが 中身はそのまま、コツコツとお小遣い等を貯めてたのだろう40万程ある。それと一緒に現金が入ってた 。数えてみれば92万だ。無駄使いせずに頑張って貯めてきたのだろう。自分の番は何とも健気で頑張り屋だ。より一層愛おしく思える。それらを袋の中に戻し 本棚の後ろにある、指紋認証式の金庫の中に置き金庫を閉めた。

前もって調べて知っていた。節約倹約の鈴、主だった支払いは10万もあれば事足りる。財布から50万を取り出して封筒に突っ込み引き出しの奥に入れた日の事を思い出し、役に立ったとニンマリしてしまった。
月末と言われたらその通りだが後10日もあるのだ。あきらかに可笑しい。1人での外出なんてさせない。

久しぶりに実家に電話を掛けた。珍しく兄が電話に出た事に驚き ザックリと可愛い番が出来たことを報告して 鈴の外出の旨と人の手配を頼んだ。







朝からチャイムの連打が家の中に響き渡る。

何かあったのかと走り玄関を開ければ どなたですか?

「貴方が鈴ちゃん?初めまして ふみか です」

ほへぇ~綺麗な人 美人さんだ。こんな美人さんなかなかお目にかかれない。

「・・田中鈴です・・・・・」

ふみかさんは微動だにせずニコニコして立ってるだけだ。もしかして、昨日 晃さんが言っていた人かな?

「えっと」

「・・・・・・」

コテンと首を傾げるて微笑んでるだけだ。

「・・・・どうぞ ?」

ニッコリと笑いかけてくれるふみかさん。って 誰?!

「ありがとう」

リビングに通すとソファーに腰掛けたふみかさん。
とりあえず お茶とお菓子を準備をするが、じーーーと見られてる、遠慮がないガン見だ。

「あの よかったらどうぞ」

「ありがとう」

入れた紅茶を1口飲んで、また じーーーーーーーと見られてる。

「あの、
「なに?」

えーーーーー!!!!!
なに?って コッチがなに!!だよ。

「お菓子もどうぞ」
「ありがとう」

ニコッと笑い じーーーーー、悪意など全く感じさせない ニコニコ顔のふみかさん ちょっと待って。このニコニコ 顔 似てる。

「ふみかさんって 晃さんのご兄妹ですか?」
「違うわ」

あれ、似てるから そうだと思ったんだけど違ったんだ。昨日の電話で家の者をって 言ってたから。そうかなって思ったけど違うなら、この人 だれ?

インターホンが鳴り 玄関に出ると、かなり 驚いてるイケメンさんが立ってた。

「!!おい、来客が来たからといきなり玄関を開けるなどバカのする事だ。相手が私だったから良いものの、相手が悪者だったらどうするつもりだ!」

怒られた。確かに 晃さんにもいきなり開けるな、相手を確かめて玄関を開けろ。と注意されたっけ。

「はぁ~、すみません」

知りもしない人に本気で 怒られる俺って なんだろう。あなたは 誰ですか?この一言が言い出せない。

「本当に分かってるのか?」

「はい、ごめんなさい」

「はぁ~、心配だ」

「あの、
「なんだ!」

なんだ!は、俺が言いたい。

「貴方は どちら様ですか?」

「インターホン越しに何も聞かれずに玄関が開いたから驚き過ぎてまだ名乗って無かったな」

直球でディスられた?!そして、俺は知らない人に怒られてるって分かってるんだ。確認せずに玄関を開けたのは悪いかもしれないけど、名乗らない方も悪いと思う、理不尽を感じて玄関を閉めて鍵も掛けた。

「おい!」
ドンドンドンドンドン

なんか この感じ晃さんに似てるけど晃さんじゃない。
俺の知らない人だから放っておく。

「鈴ちゃん、どちら様だったの?」

おっとり紅茶を飲みながら聞いてくるふみかさん

「知らない人でした」

この人も知らないけど名乗ってくれただけ、あの人よりかはマシなのか?

「そう、なら放っておきなさい」

「そうします」

「うふふ、いい子ね」

コテンと細い首を傾げる仕草は可愛い。

玄関前に残して来た人はインターホンの連打に切り替えたのか、部屋の中にピンポン ピンポンピンポン と鳴り続ける。

「放って置けば諦めるわ」

ニコッと笑ってるけどかなり煩い。

「鈴ちゃんも座りなさい。少しお話しましょう」

はい?この状況下でお話って 大丈夫なのかよ。
でも、俺もこの人のこと全く何も知らずに家に上げてしまったしな。

ピンポン連打の中 ふみかさんと話をしていいものかと悩んでるとピンポン連打が止んだ。
諦めた様だ、良かった。

「諦めたようですね」

うふふふ と笑うだけのふみかさん。
なんか、マイペースな人だよな。
自分の分のお茶を入れてふみかさんの前に座った。

「鈴ちゃんは好きな食べ物は何?」

「好きな食べ物?」

「今食べたい物でもいいわ」

昨日 見た旅番組で紹介されてた すき焼き美味しそうだったな。

「すき焼き」

「あら、お肉好きなの?私もお肉は大好きなのよ。お昼はすき焼きにしましょうね」

食べたい物を聞かれただけで お昼の約束になった?いつからお昼を一緒にする程仲良くなった?

そんな疑問を抱いてると電話が掛かってきた。

「すみません、ちょっとした 失礼します」

「もし
『鈴、今 母さんが来てるだろ?』

少し硬い声を出す晃さん。

「お ・か・あ・さ・ん?」

一言一言 噛み締めながらブリキノオモチャの様に首を動かしふみかさんを見た。
どう見ても30代中頃の女性だ。だから晃さんの兄妹なのかもと思ったんだ。
目が合い 会釈をして背を向け 声を潜めた。

「えっと、名前は?」
『ふみか だ』

お母さん・・・見えない。

「後妻さん?」
『実母だ!とにかく 母さんだけだったら色々と心配だから兄貴が玄関に居るから、兄貴に頼ってくれ』

「兄さん・・・」
『兎に角 母さんだけだったら 心配だから、兄貴に頼ってくれ。名前は湊だ 玄関前に居るから直ぐに玄関に行け』


言われた通りに玄関を開けるとさっきの男性が怒って立ってた。そのまま 男性に電話を押し付けたら素直に受け取り晃さんと言葉を数回交わして電話を切った。

「上がらせてもらうぞ」

「どうぞ」

家に上がるなり リビングに飛込み「母さん」と 怒鳴り始めた。

「湊ちゃんも来ちゃったの?ママ早く 鈴ちゃんと仲良くなりたかったのよ」

「はぁ~、今回は鈴の用事もあるから 日を改めてと言ったでしょ!」

「お昼の約束したのよ。ね、鈴ちゃん」

「えっ~と」

「したのよね」

なんか 必死に 約束したよねっ、て 言ってくる小さな子供に見えて 違うとは言い出せない雰囲気だ。

「はい」

「はぁ~!私も 御一緒しますよ。母さん1人だと 色々と心配なんですから」

「んーもぉ~、私一人でも 大丈夫よ。ね、鈴ちゃん」

「鈴!母さんをよく知らないのに頷くのだけは辞めてくれ」

なんか逆らえない何かが湊さんにはあるのが頷くのはこらえた。

「えっと、皆で 仲良くすき焼き 食べましょう」

「すき焼き、楽しみね」

「はい!」

確かに すき焼きは贅沢過ぎて 何年も食べてなかったので、素直に楽しみだ。

あきらめたように 晃さんのお兄さんがため息を吐いた姿は確かに 晃さんそっくりだった。


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