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第七話、暗転と亀裂
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しおりを挟む「その友人の名前は聞いた事がなかった。今思えばそれは九尾の狐、お前の事だったのだろうな。村の子どもたちにそんな奴はいない嘘をつくなと言われて、初めて朝陽が泣きながら食って掛かって大喧嘩になってのう。あいつは帰ってからも押し入れの中に入ってずっと泣いておったわ。二度目は高校生の頃だが、三日も持たずに暗い顔をするようになったから、きっとまた爪弾きにされたんじゃろう」
「とりあえずそいつらは全員殺してきたらいいのか?」
将門が真剣な表情で問いかける。
「違います。お願いします。そういう話ではありません。それだけはご勘弁を」
見惚れるくらいの土下座だった。
「アイツはずっと嘘つきと言われ続けて爪弾きにされておったから、嘘をつく事やつかれる事、爪弾きにされる事に人一番敏感なんじゃよ。だから、今回の件も嘘をつかれて自分だけ爪弾きにされたと思っておるのかもしれん。幼稚な事だと自分でも分かっておるのだろう。分かっておっても中々自分を曲げられずに葛藤しておる。変なとこで頑固でな。お主らには些細な事でも朝陽にとってはそうじゃないんじゃ。朝陽がした事、どうか許してやって欲しい」
博嗣はまた深々と頭を下げる。
「許すも何も、朝陽は悪くない。頑なに己の意思を尊重してしまったこっちに非がある」
ニギハヤヒが静かに口を開いた。
「それで何があったんじゃ?」
「そうだな。隠す事で裏目に出てしまったから、もう隠すのはやめよう。じいさん、あんたにも関係のある話だからな」
ニギハヤヒはそう言って、一度言葉を切ってから続きを話した。
「朝陽は後二週間もせんうちに死ぬ。朝陽と番契約を結んだ時にそれが分かって、儂は朝陽を失うのが嫌で、朝陽の中に十種神宝を移した。死返玉があれば朝陽は甦れる。あれは死を司る玉だ。死返玉を安定させる為に他の神宝も同時に移した。儂は故意的に朝陽にもコイツらにもそれを説明しなかった。死期など知らない方が良いものとばかり思っておったんだ。だが、それが逆に朝陽を傷つける事になってしまった」
「なんと……っ。それは決定しておる未来なのか?」
博嗣の言葉にニギハヤヒが頷く。
「今回、朝陽を階段から突き落としたのは物部氏……苗字からして儂の子孫だ。朝陽から証言も取れている。今日の事は九尾の狐も白昼夢で視ていた。恐らく、この後に待ち受けている朝陽の死に関わってくるのも儂の子孫だろう。だが、奴らの目的は朝陽本人ではない。儂を祟り神として復活させる事だろうと睨んでいる。今の儂は表面部分に過ぎん。朝陽の胎内にある十種神宝を用いて、祟り神と言われていた裏面のアヤツを復活させる気なんだろうな。大昔に実際三分の一は海に沈めている。後、朝陽を殺す事でここにいるメンバー全員を祟り神として堕とす事が出来れば万々歳て所か。番とのつながりはそれだけ深い。ここ最近頻繁に神社や結界が壊されているのも関係しているのだろう。護る力が低下し、儂らの霊力の安定化を担う華守人である朝陽もおらん状態で、此処におる連中らが暴走すれば間違いなくこの国は海に沈む。だからこそ朝陽は儂らを堕とす起爆剤《いけにえ》にされる」
博嗣は絶句していた。
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