【完結/BL】霊力チートのΩには5人の神格αがいる

架月ひなた

文字の大きさ
52 / 74
第七話、暗転と亀裂

6

しおりを挟む


「その友人の名前は聞いた事がなかった。今思えばそれは九尾の狐、お前の事だったのだろうな。村の子どもたちにそんな奴はいない嘘をつくなと言われて、初めて朝陽が泣きながら食って掛かって大喧嘩になってのう。あいつは帰ってからも押し入れの中に入ってずっと泣いておったわ。二度目は高校生の頃だが、三日も持たずに暗い顔をするようになったから、きっとまた爪弾きにされたんじゃろう」
「とりあえずそいつらは全員殺してきたらいいのか?」
 将門が真剣な表情で問いかける。
「違います。お願いします。そういう話ではありません。それだけはご勘弁を」
 見惚れるくらいの土下座だった。
「アイツはずっと嘘つきと言われ続けて爪弾きにされておったから、嘘をつく事やつかれる事、爪弾きにされる事に人一番敏感なんじゃよ。だから、今回の件も嘘をつかれて自分だけ爪弾きにされたと思っておるのかもしれん。幼稚な事だと自分でも分かっておるのだろう。分かっておっても中々自分を曲げられずに葛藤しておる。変なとこで頑固でな。お主らには些細な事でも朝陽にとってはそうじゃないんじゃ。朝陽がした事、どうか許してやって欲しい」
 博嗣はまた深々と頭を下げる。
「許すも何も、朝陽は悪くない。頑なに己の意思を尊重してしまったこっちに非がある」
 ニギハヤヒが静かに口を開いた。
「それで何があったんじゃ?」
「そうだな。隠す事で裏目に出てしまったから、もう隠すのはやめよう。じいさん、あんたにも関係のある話だからな」
 ニギハヤヒはそう言って、一度言葉を切ってから続きを話した。
「朝陽は後二週間もせんうちに死ぬ。朝陽と番契約を結んだ時にそれが分かって、儂は朝陽を失うのが嫌で、朝陽の中に十種神宝を移した。死返玉があれば朝陽は甦れる。あれは死を司る玉だ。死返玉を安定させる為に他の神宝も同時に移した。儂は故意的に朝陽にもコイツらにもそれを説明しなかった。死期など知らない方が良いものとばかり思っておったんだ。だが、それが逆に朝陽を傷つける事になってしまった」
「なんと……っ。それは決定しておる未来なのか?」
 博嗣の言葉にニギハヤヒが頷く。
「今回、朝陽を階段から突き落としたのは物部氏……苗字からして儂の子孫だ。朝陽から証言も取れている。今日の事は九尾の狐も白昼夢で視ていた。恐らく、この後に待ち受けている朝陽の死に関わってくるのも儂の子孫だろう。だが、奴らの目的は朝陽本人ではない。儂を祟り神として復活させる事だろうと睨んでいる。今の儂は表面部分に過ぎん。朝陽の胎内にある十種神宝を用いて、祟り神と言われていた裏面のアヤツを復活させる気なんだろうな。大昔に実際三分の一は海に沈めている。後、朝陽を殺す事でここにいるメンバー全員を祟り神として堕とす事が出来れば万々歳て所か。番とのつながりはそれだけ深い。ここ最近頻繁に神社や結界が壊されているのも関係しているのだろう。護る力が低下し、儂らの霊力の安定化を担う華守人である朝陽もおらん状態で、此処におる連中らが暴走すれば間違いなくこの国は海に沈む。だからこそ朝陽は儂らを堕とす起爆剤《いけにえ》にされる」
 博嗣は絶句していた。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

処理中です...