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第119話 お屋敷での怪異②
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「ったく、ちょっと目を話した隙に……!」
そう焦りの言葉を口にしながら、リーシャは小走りで広い廊下を進んでいた。
その隣にはマイアが、その後ろには面白そうについてくるカレンと、頭の後ろで手を組んだスゥが続いている。
「にゃはは。まぁ、シロはウチでも好き勝手に部屋を抜けてたのだ。よーあることなのだ。」
「あら、恥ずかしがり屋さんかと思ったら、案外やんちゃさんなのですわね。」
もう、気軽に言ってくれちゃってぇ……
スゥたちの会話を背後に聞きながら、リーシャはどんよりと顔をしかめた。
会話の通り、いつの間にかシロが部屋から居なくなってしまったので、その捜索をしているのだ。
スゥのいう通り、ギルドハウスでは日常茶飯事だったわけだけど、そこはこの豪邸。
こうやって廊下を歩いている間にも、高そうな壺やら彫刻やらが次々目に入ってくるわけで……ここでうっかり、何かをガシャーン!――なんて考えたら、正直、気が気ではない。
「……見つけました。」
「!」
ふいに、マイアが目を細めた。その瞳は琥珀色に輝いている。
「この先を、右に曲がった突き当りの……部屋の中です。エトも、一緒みたいですね。」
「でかしたわ、マイア!」
リーシャはぱぁっと表情を明るくして、ぐっと親指を立てた。
ちなみにマイアの『目』は魔力の流れを見ることができるので、多少の壁を無視して中の様子を探ることができるらしい。
直接見えるわけじゃないけど、魔力の流れには個人差があって、良く見知った相手なら探せるのだと、マイアは言っていた。
まあ、ロルフが「そんな簡単なことではないはずなんだが……」と唸っていたので、きっとこれも凄いことなんだろうけど……ともかく、こういう時に頼りになるのは、間違いない。
「でも、ま、エトが一緒なら、とりあえず安心ね。」
「ええ。きっと、エトを探しに行ったのですね。」
エトが付いていれば、困ったことにはならないだろう――二人はほっと胸をなでおろしたが、それも長くは続かなかった。
「右の突き当り……というと、宝物庫のあたりですわね。」
ぴきっ、と、リーシャとマイアの動きが固まる。
「おお。なんか、アッと驚くお宝があったりするのだ?」
「ああ、いえ、宝物庫といっても倉庫みたいなもので、古いものがあるだけなのですけど。」
なんで……なんでエト、そんなとこにいるのよ……っ!
あと、お金持ちの「古いものがあるだけ」は、まったくアテにならないわよぉ……!
『うう、リーシャちゃん、シロちゃんがこれを、なんやかんやで木っ端みじんに……』
『まあ、それは家宝の、なんかとってもすごい、はちゃめちゃに高い像ですわ!』
『そ、そんなべらぼうな金額、払えないよーっ!』
『仕方ないので、お金の代わりにこの子は貰っていきますわ~!!』
『し、シロちゃーん!!』
『キュ~イ~』
リーシャは頭を振って、脳内の謎劇場を振り払った。
ともかく、何か起こったとは限らない。一刻も早く、エトに確認を――
「あれ? エトがこっちに走ってくるのだ。」
その間にひょいひょいっと角まで進んだスゥが、通路の奥を見ながら言う。
「なんか、めっちゃ焦ってる感じだけど――」
「……」
思わず、角まで飛び出すリーシャ。
通路の向こうに見えたのは、真っ青な顔でこちらに駆けてくるエトの姿と、その腕に抱えられたシロ。
どう考えても、何もなかった感じではない。
「ど、どうしたの、エト、まさかシロが何か壊し――」
「……に、にに……」
……に?
リーシャが首を傾げた、次の瞬間。
「逃げて――っ!!」
そのエトの悲鳴にも似た叫びに続いて、廊下の奥の扉がはじけ飛んだ。
そして、そこから見事なランニングフォームで飛び出してきたのは――
人の四倍はあるであろう、巨大な石像だった。
「ワォ……」
スゥがそう呟いた以外には、この時点で、他に声を出せたものはいなかった。
そう焦りの言葉を口にしながら、リーシャは小走りで広い廊下を進んでいた。
その隣にはマイアが、その後ろには面白そうについてくるカレンと、頭の後ろで手を組んだスゥが続いている。
「にゃはは。まぁ、シロはウチでも好き勝手に部屋を抜けてたのだ。よーあることなのだ。」
「あら、恥ずかしがり屋さんかと思ったら、案外やんちゃさんなのですわね。」
もう、気軽に言ってくれちゃってぇ……
スゥたちの会話を背後に聞きながら、リーシャはどんよりと顔をしかめた。
会話の通り、いつの間にかシロが部屋から居なくなってしまったので、その捜索をしているのだ。
スゥのいう通り、ギルドハウスでは日常茶飯事だったわけだけど、そこはこの豪邸。
こうやって廊下を歩いている間にも、高そうな壺やら彫刻やらが次々目に入ってくるわけで……ここでうっかり、何かをガシャーン!――なんて考えたら、正直、気が気ではない。
「……見つけました。」
「!」
ふいに、マイアが目を細めた。その瞳は琥珀色に輝いている。
「この先を、右に曲がった突き当りの……部屋の中です。エトも、一緒みたいですね。」
「でかしたわ、マイア!」
リーシャはぱぁっと表情を明るくして、ぐっと親指を立てた。
ちなみにマイアの『目』は魔力の流れを見ることができるので、多少の壁を無視して中の様子を探ることができるらしい。
直接見えるわけじゃないけど、魔力の流れには個人差があって、良く見知った相手なら探せるのだと、マイアは言っていた。
まあ、ロルフが「そんな簡単なことではないはずなんだが……」と唸っていたので、きっとこれも凄いことなんだろうけど……ともかく、こういう時に頼りになるのは、間違いない。
「でも、ま、エトが一緒なら、とりあえず安心ね。」
「ええ。きっと、エトを探しに行ったのですね。」
エトが付いていれば、困ったことにはならないだろう――二人はほっと胸をなでおろしたが、それも長くは続かなかった。
「右の突き当り……というと、宝物庫のあたりですわね。」
ぴきっ、と、リーシャとマイアの動きが固まる。
「おお。なんか、アッと驚くお宝があったりするのだ?」
「ああ、いえ、宝物庫といっても倉庫みたいなもので、古いものがあるだけなのですけど。」
なんで……なんでエト、そんなとこにいるのよ……っ!
あと、お金持ちの「古いものがあるだけ」は、まったくアテにならないわよぉ……!
『うう、リーシャちゃん、シロちゃんがこれを、なんやかんやで木っ端みじんに……』
『まあ、それは家宝の、なんかとってもすごい、はちゃめちゃに高い像ですわ!』
『そ、そんなべらぼうな金額、払えないよーっ!』
『仕方ないので、お金の代わりにこの子は貰っていきますわ~!!』
『し、シロちゃーん!!』
『キュ~イ~』
リーシャは頭を振って、脳内の謎劇場を振り払った。
ともかく、何か起こったとは限らない。一刻も早く、エトに確認を――
「あれ? エトがこっちに走ってくるのだ。」
その間にひょいひょいっと角まで進んだスゥが、通路の奥を見ながら言う。
「なんか、めっちゃ焦ってる感じだけど――」
「……」
思わず、角まで飛び出すリーシャ。
通路の向こうに見えたのは、真っ青な顔でこちらに駆けてくるエトの姿と、その腕に抱えられたシロ。
どう考えても、何もなかった感じではない。
「ど、どうしたの、エト、まさかシロが何か壊し――」
「……に、にに……」
……に?
リーシャが首を傾げた、次の瞬間。
「逃げて――っ!!」
そのエトの悲鳴にも似た叫びに続いて、廊下の奥の扉がはじけ飛んだ。
そして、そこから見事なランニングフォームで飛び出してきたのは――
人の四倍はあるであろう、巨大な石像だった。
「ワォ……」
スゥがそう呟いた以外には、この時点で、他に声を出せたものはいなかった。
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