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第115話 眠りから覚めて
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「……ここは……」
「あ、マイアさん。目が覚めた?」
「レン……?」
マイアが目を覚ました時、そこはクインシールドのベッドの上だった。
外はすでに明るくなっていて、傍にある机に、レンが座っている。
その机の上には、例のクロスボウが置かれていた。
「……! 魔物は……?! 街は?!」
その武器を見て、直前のことを思い出し、跳ねるように体を起こす。
しかしすぐによろめき、ベッドに手をついた。
「ああ! 無理しちゃだめだよ、魔力切れで気を失ってたんだから。ちょっとまってて、皆を……」
レンがそういい終わる前に、どたばた言う音が聞こえたかと思うと、ドアが騒々しく開け放たれた。
「マイア!」
「マイアちゃん!」
「マイアーっ! 大丈夫なのだー?!」
「みんな……!」
三人の顔を見て、マイアはほっと胸をなでおろした。
あの後、レンはマスターと魔物の落下地点まで見に行き、死亡を確認したという。マスターの見立て通り、魔法を除けば防御力は低い魔物だったのだろう。
眠っていた人たちはすぐに目を覚まし、クインシールドもすっかり平常運行に戻っているそうだ。
「ちなみにちなみに、ロルフさんは魔物の事後処理と報告のためとかで、ギルド協会の方に行かれてますよ! 忙しい方ですね!」
いつの間にかいたリリィが、にこっと笑って、お茶を差し出してくれた。
「ほんと、危なかったわね。マイアがいなかったらどうなってたか、想像したくもないわ。」
「ごめんね、マイアちゃん。そんな大変な時に……」
「いえ、しょうがないのですよ。私だって、一度は眠ってしまいましたし。」
「まったく、スゥとしたことが魔法で寝ちゃうなんて、一生の不覚なのだ……!」
「……いや、あんたはもっと手前で寝てなかった?」
いつも通りのやり取りに、心がじんわりと緩むのを感じる。
マイアは手にしたカップを見ながら、自然と微笑んでいた。
「それにしても、上空の敵なんて、よく倒せたわね。」
「そうだよね。私なんて、起きてても役に立たなかったかも……」
「ああ、それは……レンの武器のおかげなのですよ。『ワイバーン』というのです。」
そういって、机の上のクロスボウを手で示す。
三人は興味深そうに、その武器を覗き込んだ。
「はは、マイアさんが使わなきゃ、ああはならなかったよ。だから……」
レンはその武器を机から取り上げると、マイアの方へ歩み寄った。
「これからも、使ってもらえない……かな。」
「え? でも、これは……」
「いいんだ。もっと凄いのを、作るから。」
レンはそういって、気恥ずかしそうに笑った。
「……ふふ。それなら。」
マイアはそれを受け取って、慣れた手つきで背中に装着すると、くるりと一回転して、またレンの方を向いた。
「ありがたく使わせていただきます。レン。」
「……うん!」
レンはしばらくは照れくさそうに笑っていたが、すぐに何かを思い出したように、ドアに向かって駆け出した。
「あ、そうだ。整備のために、機能とか設計を書面にまとめておくね。あとでロルフさんに渡しておくから!」
「あっ、レン……」
そう言うや否や、レンはすぐに部屋を飛び出していった。
しばしぽかんとしていると、その様子を見ていたリリィが、すすっと耳元に寄ってきた。
「……なんだか、レン君、雰囲気変わりました?」
「ああ……。そう、ですね。」
マイアは背の武器を見た。
「夢が……見つかったのかも、しれませんね。」
そして、武器越しに見えるトワイライトの皆を見て、くすっと笑った。
「キュイイ!!」
「うわ、シロちゃん?」
ふいに、エトの服の中からシロが飛び出し、マイアの肩にとまった。
首をかしげていたリリィも、わおっと驚いて両手を上げた。
「あ……っ、ふふ。貴方も、心配してくれた……の……」
マイアは、肩にとまったシロを見て、目を見開いた。
『賢者の目』が無意識に発動することなんて、今まではなかった。
魔法で眠らせられるという窮地を経て、能力が成長したのではないか……と、マスターは言っていた。
そして今回、魔物に矢を届かせるために、限界を超えてこの力を使った。それが、更なる成長を促したのだとしたら。
「? どうしたの、マイアちゃん。」
「……見えるのです。シロの、中に。」
「見えるって、何が……?」
シロの胸部の、奥深く。
そこを起点にして、押し固められた球のように不規則にぐるぐる回る、奇妙な流れ。
いつも見ていたものとは明らかに違う、強力な力。
「黒い……魔力……?」
動揺するマイアに、シロは静かに頬ずりをした。
「あ、マイアさん。目が覚めた?」
「レン……?」
マイアが目を覚ました時、そこはクインシールドのベッドの上だった。
外はすでに明るくなっていて、傍にある机に、レンが座っている。
その机の上には、例のクロスボウが置かれていた。
「……! 魔物は……?! 街は?!」
その武器を見て、直前のことを思い出し、跳ねるように体を起こす。
しかしすぐによろめき、ベッドに手をついた。
「ああ! 無理しちゃだめだよ、魔力切れで気を失ってたんだから。ちょっとまってて、皆を……」
レンがそういい終わる前に、どたばた言う音が聞こえたかと思うと、ドアが騒々しく開け放たれた。
「マイア!」
「マイアちゃん!」
「マイアーっ! 大丈夫なのだー?!」
「みんな……!」
三人の顔を見て、マイアはほっと胸をなでおろした。
あの後、レンはマスターと魔物の落下地点まで見に行き、死亡を確認したという。マスターの見立て通り、魔法を除けば防御力は低い魔物だったのだろう。
眠っていた人たちはすぐに目を覚まし、クインシールドもすっかり平常運行に戻っているそうだ。
「ちなみにちなみに、ロルフさんは魔物の事後処理と報告のためとかで、ギルド協会の方に行かれてますよ! 忙しい方ですね!」
いつの間にかいたリリィが、にこっと笑って、お茶を差し出してくれた。
「ほんと、危なかったわね。マイアがいなかったらどうなってたか、想像したくもないわ。」
「ごめんね、マイアちゃん。そんな大変な時に……」
「いえ、しょうがないのですよ。私だって、一度は眠ってしまいましたし。」
「まったく、スゥとしたことが魔法で寝ちゃうなんて、一生の不覚なのだ……!」
「……いや、あんたはもっと手前で寝てなかった?」
いつも通りのやり取りに、心がじんわりと緩むのを感じる。
マイアは手にしたカップを見ながら、自然と微笑んでいた。
「それにしても、上空の敵なんて、よく倒せたわね。」
「そうだよね。私なんて、起きてても役に立たなかったかも……」
「ああ、それは……レンの武器のおかげなのですよ。『ワイバーン』というのです。」
そういって、机の上のクロスボウを手で示す。
三人は興味深そうに、その武器を覗き込んだ。
「はは、マイアさんが使わなきゃ、ああはならなかったよ。だから……」
レンはその武器を机から取り上げると、マイアの方へ歩み寄った。
「これからも、使ってもらえない……かな。」
「え? でも、これは……」
「いいんだ。もっと凄いのを、作るから。」
レンはそういって、気恥ずかしそうに笑った。
「……ふふ。それなら。」
マイアはそれを受け取って、慣れた手つきで背中に装着すると、くるりと一回転して、またレンの方を向いた。
「ありがたく使わせていただきます。レン。」
「……うん!」
レンはしばらくは照れくさそうに笑っていたが、すぐに何かを思い出したように、ドアに向かって駆け出した。
「あ、そうだ。整備のために、機能とか設計を書面にまとめておくね。あとでロルフさんに渡しておくから!」
「あっ、レン……」
そう言うや否や、レンはすぐに部屋を飛び出していった。
しばしぽかんとしていると、その様子を見ていたリリィが、すすっと耳元に寄ってきた。
「……なんだか、レン君、雰囲気変わりました?」
「ああ……。そう、ですね。」
マイアは背の武器を見た。
「夢が……見つかったのかも、しれませんね。」
そして、武器越しに見えるトワイライトの皆を見て、くすっと笑った。
「キュイイ!!」
「うわ、シロちゃん?」
ふいに、エトの服の中からシロが飛び出し、マイアの肩にとまった。
首をかしげていたリリィも、わおっと驚いて両手を上げた。
「あ……っ、ふふ。貴方も、心配してくれた……の……」
マイアは、肩にとまったシロを見て、目を見開いた。
『賢者の目』が無意識に発動することなんて、今まではなかった。
魔法で眠らせられるという窮地を経て、能力が成長したのではないか……と、マスターは言っていた。
そして今回、魔物に矢を届かせるために、限界を超えてこの力を使った。それが、更なる成長を促したのだとしたら。
「? どうしたの、マイアちゃん。」
「……見えるのです。シロの、中に。」
「見えるって、何が……?」
シロの胸部の、奥深く。
そこを起点にして、押し固められた球のように不規則にぐるぐる回る、奇妙な流れ。
いつも見ていたものとは明らかに違う、強力な力。
「黒い……魔力……?」
動揺するマイアに、シロは静かに頬ずりをした。
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