34 / 53
第4章 「木星」
最後の晩餐
しおりを挟む
「単純計算やけど、曲線航路で木星をかすめるまで34時間。
あとは……減速の程度が読めひんからわからんけど…………」
ガキが口ごもった理由も、想像がつく。
そのあとは間が空いたとして8時間、ヘタをしたら1時間の余裕もないかもしれない。
それも、他の船が全くいないと仮定して。
現実には、木星の重力圏内には無数と言っていいほどのシップやボートがいる。
それを躱しつつとなると、一瞬も目が離せなくなる。
……ラストチャンスか。
俺は口を開いた。
「メシを食う! 食料備蓄庫を空にしていいから、できる最高の素材で最高に美味いメシを作れ!
あと、引き出しの中身は、空いた食料庫に全部入れろ。
引き出しには、エネルギーチューブとカプセル、水を限界まで詰めろ!
シートから離れることも、たぶん当分出来ない!」
「……ホンマ、最後の晩餐てあるんやな……」
寂しそうに呟くガキに、俺はからかうように言った。
「あと、オムツは忘れるな!
ムリしてでも最低8時間寝たら、トイレすませてオムツに履き替えろ。
管制室以外の与圧を全部抜く!」
事故予防のために。もちろん火災リスクもあるが、空気には質量もある。
それを全部抜くことで、不確定要素を限界まで絞る。
それを察したガキが、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「なにシケた顔してやがる。
この船で一世一代の豪華ディナーだぞ!」
「しょぼー」
ようやくガキが笑った。
もっとも……たぶん俺もだが、ガキの目は笑っていない。
アイコンタクトで覚悟を確認した。
残念ながら、メシの味は覚えていない。
リサイクル&リユースの合成食料ではなく、レトルトやフリーズドライの「とっておき」だが、甘いのか辛いのかもわからない。
口を動かしながらも、頭の中を別の数字や数式が占め、スプーンを持つ手も油断するとレバー操作をイメージして動いてやがる。
ただ、食後のコーヒーがバカみたいに苦かったことだけは、なぜかハッキリわかった。
バカヤロウ!
◇ ◇ ◇ ◇
「0時スラスター用意! 15分後に思いっきり踏んで! 時間はこっちでカウントする」
ガキの言葉に、俺はペダルに足をおいた。
二人とも、ライトスーツに着替えて、シートの横にはヘルメットもセットしている。
もちろん6点式シートベルトも怠りない。
「次……と、その次もわかるんなら教えてくれ。
スラスターを回す必要があるかもしれない」
そう。4器あるスラスターの1つは中身が空で、その方向のスラスターが必要になるときは、あらかじめ生きているスラスターを回しておかなければならない。
ガキが言い直した。
「0時方向に15分後噴射。35分後に6時方向噴射。時間は読めない。そのあと3時!」
「上出来だ」
自分でも理由がわからないが、なぜか口角が上がる。
アドレナリンが出ているのかもしれない。
ふっと落下するような感覚を覚えた。
木星に落ちているのか。
が、ガキのカウントはまだ始まらない。
まだカミさんがいた頃、地球にバカンスに行ったときに体験したスカイダイビングを思い出した。
たぶん少し視線をあげるだけで、デジタルメーターの数値が読めないほどのスピードで動いているのが見えるのだろうが、今はペダルとレバーに集中だ。
「噴射10秒前からカウントします。今はまだ60!」
クソ。気が利いてやがる……。
グリップを握り直し、爪先を浮かして緊張をほぐせるか試みた。
「……噴射10秒前、9、8、7……」
ブーツの踵を床につけ、足を安定させる。
「……3、2、1、噴射!」
言われたとおり、思いっきり0時方向のスラスターを噴かした。
無言の時間が流れる。
緊張したまま35分は長すぎる。
少しでも気を紛らせないか?
俺は軽口を装いつつ、航路を確認した。
「間違っても初手でガリレオ衛星には近づくなよ」
「わかっとう! 35分……あと30分後に噴射したら木星から脱出する。
そのあと、衛星エララを目指す!」
なるほど。妥当なコースだ。
確かに木星には69の衛星があるが、ほとんどは直径数kmの「大型デブリ」とも言えるシロモノで、当然重力も弱く、スイングバイ効果は期待できない。
その点エララなら直径86kmあって、それなりのチャンスはある。
その理屈で言えば衛星ヒマリアならエララの2倍近い170kmというサイズがあるが、衛星位置が合わないのだろう。
衛星とはいえ、それらは金星の公転周期に近い220日以上もかけて木星を回っている。
「と。イオの軌道を越えるタイミングでカーゴをパージする。
同時に『メーデー』連射。オートでいい」
「メーデー」というのは船に緊急事態が起きたときに出す救難信号で、乱用は厳禁されている。
乱用と見なされれば厳罰は確実だし、救難手段は救援者に一任でかなり荒っぽい手段も甘受すると、つまりこちらの船が壊されても文句は言わないという宣言だ。
だが、今が緊急時じゃなかったら、いつが緊急時だと言うんだ!
カーゴをパージするタイミングは、俺が温めてきた腹案だ。
イオの軌道でパージすれば、傍目にはこの船が切羽詰まって可能な限りの危機回避手段をとっているように見えるはず。
カーゴの後端にある発信器、つまり今まで俺たちがここまでメジャー代わりに使ってきた物だが、それはパージと同時にアラート信号をオープン回線でMAXで流すようにしている。
出力が大きくなればバッテリーの減りは早くなるだろうが、俺たちがエララにつくまでもてばいい。
そのあとは知ったことではないが、ガキが「エララを目指す」と言った以上、その軌道上にはおそらく他の衛星はない。
つまりこの船は、「トレイン」が維持できないほどの危機的状況で、緊急避難のために可能な限りの努力をしていると、周知するのが目的だ。
さもないと、テロリストと見なされたら撃墜されるリスクがある。
「6時スラスター用意! 10秒前からカウントします! あと20分。あ、0時スラスター止めて!」
「次の次も言えって言っただろう!
エララにはどちらから入ってどちらに出る!」
「エララには公転の前から入って自転を逆走するイメージでスイングバイ! そのあと衛星ガニメデ!」
っち。俺は我に返って、大きくかぶりを振った。
俺もガキもかなり殺気立っている。
ついつい口調がきつくなる。
もちろん、こんな時に冷静でいられるはずはないが、過度の緊張はろくな結果にならない。
どうする…………?
一か八かの賭けになるが、俺は関係ない話題を振った。
「それでオマエ、木星は大丈夫なのか?」
「え?」という返事に、質問を重ねた。
「オマエ、木星から逃げたんだろう? 戻っても大丈夫なのかって聞いてるんだ」
「……エララを回ったら時間があるから、その時に話すわ。
っと。スラスター6時用意! 10秒前。
9、8、7…………3、2、1、噴射!」
通常のスイングバイではあり得ない、猛烈なGに身体がシートに沈む。
地球の318倍の質量を持つ木星の巨大重力を受けて、遠心力と推進力を対価とばかりに押しつけ、それで火星の6倍を超える重力の鎖を引きちぎってエララを目指そうというのだ。
なんでも、200年前の連中は地球大気の底から宇宙に出るのに、あえて軌道エレベータを使わず、この数倍のGを楽しんでいたとか。
妙なブームがあったもんだ。
…………ふっ。
よし! バカな想像ができる程度には余裕がある。
「0時、カウンタースラスター! カーゴの反動があるけど、それはおっちゃんに任す!」
「任せとけ!」
ガキにも余裕が戻ってきたようだ。
切羽詰まったときに限って、人は限界以上の物を抱え込もうとする。
「任せる」とは「相手を信じる」と同義語で、心にゆとりがなければできない。
レバーを握った手を、少し緩める。
また握る。
次の瞬間、ふっと身体が浮くような感覚を覚えた。
まだ……まだ……まだ……今!
レバーを引き起こし、スラスターのペダルを踏む。
地球のテーマパークに行ったときに乗ったジェットコースターとかいう大型遊具を思い出した。
ちょうど、同じような体感だ。
その時はカミさんと一緒に悲鳴をあげたが、今回はペダルとレバーは俺が操作している。
ガキはどうだか知らないが、自分の意思が反映できるというのは、何よりも安心だ。
あとは……減速の程度が読めひんからわからんけど…………」
ガキが口ごもった理由も、想像がつく。
そのあとは間が空いたとして8時間、ヘタをしたら1時間の余裕もないかもしれない。
それも、他の船が全くいないと仮定して。
現実には、木星の重力圏内には無数と言っていいほどのシップやボートがいる。
それを躱しつつとなると、一瞬も目が離せなくなる。
……ラストチャンスか。
俺は口を開いた。
「メシを食う! 食料備蓄庫を空にしていいから、できる最高の素材で最高に美味いメシを作れ!
あと、引き出しの中身は、空いた食料庫に全部入れろ。
引き出しには、エネルギーチューブとカプセル、水を限界まで詰めろ!
シートから離れることも、たぶん当分出来ない!」
「……ホンマ、最後の晩餐てあるんやな……」
寂しそうに呟くガキに、俺はからかうように言った。
「あと、オムツは忘れるな!
ムリしてでも最低8時間寝たら、トイレすませてオムツに履き替えろ。
管制室以外の与圧を全部抜く!」
事故予防のために。もちろん火災リスクもあるが、空気には質量もある。
それを全部抜くことで、不確定要素を限界まで絞る。
それを察したガキが、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「なにシケた顔してやがる。
この船で一世一代の豪華ディナーだぞ!」
「しょぼー」
ようやくガキが笑った。
もっとも……たぶん俺もだが、ガキの目は笑っていない。
アイコンタクトで覚悟を確認した。
残念ながら、メシの味は覚えていない。
リサイクル&リユースの合成食料ではなく、レトルトやフリーズドライの「とっておき」だが、甘いのか辛いのかもわからない。
口を動かしながらも、頭の中を別の数字や数式が占め、スプーンを持つ手も油断するとレバー操作をイメージして動いてやがる。
ただ、食後のコーヒーがバカみたいに苦かったことだけは、なぜかハッキリわかった。
バカヤロウ!
◇ ◇ ◇ ◇
「0時スラスター用意! 15分後に思いっきり踏んで! 時間はこっちでカウントする」
ガキの言葉に、俺はペダルに足をおいた。
二人とも、ライトスーツに着替えて、シートの横にはヘルメットもセットしている。
もちろん6点式シートベルトも怠りない。
「次……と、その次もわかるんなら教えてくれ。
スラスターを回す必要があるかもしれない」
そう。4器あるスラスターの1つは中身が空で、その方向のスラスターが必要になるときは、あらかじめ生きているスラスターを回しておかなければならない。
ガキが言い直した。
「0時方向に15分後噴射。35分後に6時方向噴射。時間は読めない。そのあと3時!」
「上出来だ」
自分でも理由がわからないが、なぜか口角が上がる。
アドレナリンが出ているのかもしれない。
ふっと落下するような感覚を覚えた。
木星に落ちているのか。
が、ガキのカウントはまだ始まらない。
まだカミさんがいた頃、地球にバカンスに行ったときに体験したスカイダイビングを思い出した。
たぶん少し視線をあげるだけで、デジタルメーターの数値が読めないほどのスピードで動いているのが見えるのだろうが、今はペダルとレバーに集中だ。
「噴射10秒前からカウントします。今はまだ60!」
クソ。気が利いてやがる……。
グリップを握り直し、爪先を浮かして緊張をほぐせるか試みた。
「……噴射10秒前、9、8、7……」
ブーツの踵を床につけ、足を安定させる。
「……3、2、1、噴射!」
言われたとおり、思いっきり0時方向のスラスターを噴かした。
無言の時間が流れる。
緊張したまま35分は長すぎる。
少しでも気を紛らせないか?
俺は軽口を装いつつ、航路を確認した。
「間違っても初手でガリレオ衛星には近づくなよ」
「わかっとう! 35分……あと30分後に噴射したら木星から脱出する。
そのあと、衛星エララを目指す!」
なるほど。妥当なコースだ。
確かに木星には69の衛星があるが、ほとんどは直径数kmの「大型デブリ」とも言えるシロモノで、当然重力も弱く、スイングバイ効果は期待できない。
その点エララなら直径86kmあって、それなりのチャンスはある。
その理屈で言えば衛星ヒマリアならエララの2倍近い170kmというサイズがあるが、衛星位置が合わないのだろう。
衛星とはいえ、それらは金星の公転周期に近い220日以上もかけて木星を回っている。
「と。イオの軌道を越えるタイミングでカーゴをパージする。
同時に『メーデー』連射。オートでいい」
「メーデー」というのは船に緊急事態が起きたときに出す救難信号で、乱用は厳禁されている。
乱用と見なされれば厳罰は確実だし、救難手段は救援者に一任でかなり荒っぽい手段も甘受すると、つまりこちらの船が壊されても文句は言わないという宣言だ。
だが、今が緊急時じゃなかったら、いつが緊急時だと言うんだ!
カーゴをパージするタイミングは、俺が温めてきた腹案だ。
イオの軌道でパージすれば、傍目にはこの船が切羽詰まって可能な限りの危機回避手段をとっているように見えるはず。
カーゴの後端にある発信器、つまり今まで俺たちがここまでメジャー代わりに使ってきた物だが、それはパージと同時にアラート信号をオープン回線でMAXで流すようにしている。
出力が大きくなればバッテリーの減りは早くなるだろうが、俺たちがエララにつくまでもてばいい。
そのあとは知ったことではないが、ガキが「エララを目指す」と言った以上、その軌道上にはおそらく他の衛星はない。
つまりこの船は、「トレイン」が維持できないほどの危機的状況で、緊急避難のために可能な限りの努力をしていると、周知するのが目的だ。
さもないと、テロリストと見なされたら撃墜されるリスクがある。
「6時スラスター用意! 10秒前からカウントします! あと20分。あ、0時スラスター止めて!」
「次の次も言えって言っただろう!
エララにはどちらから入ってどちらに出る!」
「エララには公転の前から入って自転を逆走するイメージでスイングバイ! そのあと衛星ガニメデ!」
っち。俺は我に返って、大きくかぶりを振った。
俺もガキもかなり殺気立っている。
ついつい口調がきつくなる。
もちろん、こんな時に冷静でいられるはずはないが、過度の緊張はろくな結果にならない。
どうする…………?
一か八かの賭けになるが、俺は関係ない話題を振った。
「それでオマエ、木星は大丈夫なのか?」
「え?」という返事に、質問を重ねた。
「オマエ、木星から逃げたんだろう? 戻っても大丈夫なのかって聞いてるんだ」
「……エララを回ったら時間があるから、その時に話すわ。
っと。スラスター6時用意! 10秒前。
9、8、7…………3、2、1、噴射!」
通常のスイングバイではあり得ない、猛烈なGに身体がシートに沈む。
地球の318倍の質量を持つ木星の巨大重力を受けて、遠心力と推進力を対価とばかりに押しつけ、それで火星の6倍を超える重力の鎖を引きちぎってエララを目指そうというのだ。
なんでも、200年前の連中は地球大気の底から宇宙に出るのに、あえて軌道エレベータを使わず、この数倍のGを楽しんでいたとか。
妙なブームがあったもんだ。
…………ふっ。
よし! バカな想像ができる程度には余裕がある。
「0時、カウンタースラスター! カーゴの反動があるけど、それはおっちゃんに任す!」
「任せとけ!」
ガキにも余裕が戻ってきたようだ。
切羽詰まったときに限って、人は限界以上の物を抱え込もうとする。
「任せる」とは「相手を信じる」と同義語で、心にゆとりがなければできない。
レバーを握った手を、少し緩める。
また握る。
次の瞬間、ふっと身体が浮くような感覚を覚えた。
まだ……まだ……まだ……今!
レバーを引き起こし、スラスターのペダルを踏む。
地球のテーマパークに行ったときに乗ったジェットコースターとかいう大型遊具を思い出した。
ちょうど、同じような体感だ。
その時はカミさんと一緒に悲鳴をあげたが、今回はペダルとレバーは俺が操作している。
ガキはどうだか知らないが、自分の意思が反映できるというのは、何よりも安心だ。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる