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第4章 「木星」
最後の晩餐
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「単純計算やけど、曲線航路で木星をかすめるまで34時間。
あとは……減速の程度が読めひんからわからんけど…………」
ガキが口ごもった理由も、想像がつく。
そのあとは間が空いたとして8時間、ヘタをしたら1時間の余裕もないかもしれない。
それも、他の船が全くいないと仮定して。
現実には、木星の重力圏内には無数と言っていいほどのシップやボートがいる。
それを躱しつつとなると、一瞬も目が離せなくなる。
……ラストチャンスか。
俺は口を開いた。
「メシを食う! 食料備蓄庫を空にしていいから、できる最高の素材で最高に美味いメシを作れ!
あと、引き出しの中身は、空いた食料庫に全部入れろ。
引き出しには、エネルギーチューブとカプセル、水を限界まで詰めろ!
シートから離れることも、たぶん当分出来ない!」
「……ホンマ、最後の晩餐てあるんやな……」
寂しそうに呟くガキに、俺はからかうように言った。
「あと、オムツは忘れるな!
ムリしてでも最低8時間寝たら、トイレすませてオムツに履き替えろ。
管制室以外の与圧を全部抜く!」
事故予防のために。もちろん火災リスクもあるが、空気には質量もある。
それを全部抜くことで、不確定要素を限界まで絞る。
それを察したガキが、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「なにシケた顔してやがる。
この船で一世一代の豪華ディナーだぞ!」
「しょぼー」
ようやくガキが笑った。
もっとも……たぶん俺もだが、ガキの目は笑っていない。
アイコンタクトで覚悟を確認した。
残念ながら、メシの味は覚えていない。
リサイクル&リユースの合成食料ではなく、レトルトやフリーズドライの「とっておき」だが、甘いのか辛いのかもわからない。
口を動かしながらも、頭の中を別の数字や数式が占め、スプーンを持つ手も油断するとレバー操作をイメージして動いてやがる。
ただ、食後のコーヒーがバカみたいに苦かったことだけは、なぜかハッキリわかった。
バカヤロウ!
◇ ◇ ◇ ◇
「0時スラスター用意! 15分後に思いっきり踏んで! 時間はこっちでカウントする」
ガキの言葉に、俺はペダルに足をおいた。
二人とも、ライトスーツに着替えて、シートの横にはヘルメットもセットしている。
もちろん6点式シートベルトも怠りない。
「次……と、その次もわかるんなら教えてくれ。
スラスターを回す必要があるかもしれない」
そう。4器あるスラスターの1つは中身が空で、その方向のスラスターが必要になるときは、あらかじめ生きているスラスターを回しておかなければならない。
ガキが言い直した。
「0時方向に15分後噴射。35分後に6時方向噴射。時間は読めない。そのあと3時!」
「上出来だ」
自分でも理由がわからないが、なぜか口角が上がる。
アドレナリンが出ているのかもしれない。
ふっと落下するような感覚を覚えた。
木星に落ちているのか。
が、ガキのカウントはまだ始まらない。
まだカミさんがいた頃、地球にバカンスに行ったときに体験したスカイダイビングを思い出した。
たぶん少し視線をあげるだけで、デジタルメーターの数値が読めないほどのスピードで動いているのが見えるのだろうが、今はペダルとレバーに集中だ。
「噴射10秒前からカウントします。今はまだ60!」
クソ。気が利いてやがる……。
グリップを握り直し、爪先を浮かして緊張をほぐせるか試みた。
「……噴射10秒前、9、8、7……」
ブーツの踵を床につけ、足を安定させる。
「……3、2、1、噴射!」
言われたとおり、思いっきり0時方向のスラスターを噴かした。
無言の時間が流れる。
緊張したまま35分は長すぎる。
少しでも気を紛らせないか?
俺は軽口を装いつつ、航路を確認した。
「間違っても初手でガリレオ衛星には近づくなよ」
「わかっとう! 35分……あと30分後に噴射したら木星から脱出する。
そのあと、衛星エララを目指す!」
なるほど。妥当なコースだ。
確かに木星には69の衛星があるが、ほとんどは直径数kmの「大型デブリ」とも言えるシロモノで、当然重力も弱く、スイングバイ効果は期待できない。
その点エララなら直径86kmあって、それなりのチャンスはある。
その理屈で言えば衛星ヒマリアならエララの2倍近い170kmというサイズがあるが、衛星位置が合わないのだろう。
衛星とはいえ、それらは金星の公転周期に近い220日以上もかけて木星を回っている。
「と。イオの軌道を越えるタイミングでカーゴをパージする。
同時に『メーデー』連射。オートでいい」
「メーデー」というのは船に緊急事態が起きたときに出す救難信号で、乱用は厳禁されている。
乱用と見なされれば厳罰は確実だし、救難手段は救援者に一任でかなり荒っぽい手段も甘受すると、つまりこちらの船が壊されても文句は言わないという宣言だ。
だが、今が緊急時じゃなかったら、いつが緊急時だと言うんだ!
カーゴをパージするタイミングは、俺が温めてきた腹案だ。
イオの軌道でパージすれば、傍目にはこの船が切羽詰まって可能な限りの危機回避手段をとっているように見えるはず。
カーゴの後端にある発信器、つまり今まで俺たちがここまでメジャー代わりに使ってきた物だが、それはパージと同時にアラート信号をオープン回線でMAXで流すようにしている。
出力が大きくなればバッテリーの減りは早くなるだろうが、俺たちがエララにつくまでもてばいい。
そのあとは知ったことではないが、ガキが「エララを目指す」と言った以上、その軌道上にはおそらく他の衛星はない。
つまりこの船は、「トレイン」が維持できないほどの危機的状況で、緊急避難のために可能な限りの努力をしていると、周知するのが目的だ。
さもないと、テロリストと見なされたら撃墜されるリスクがある。
「6時スラスター用意! 10秒前からカウントします! あと20分。あ、0時スラスター止めて!」
「次の次も言えって言っただろう!
エララにはどちらから入ってどちらに出る!」
「エララには公転の前から入って自転を逆走するイメージでスイングバイ! そのあと衛星ガニメデ!」
っち。俺は我に返って、大きくかぶりを振った。
俺もガキもかなり殺気立っている。
ついつい口調がきつくなる。
もちろん、こんな時に冷静でいられるはずはないが、過度の緊張はろくな結果にならない。
どうする…………?
一か八かの賭けになるが、俺は関係ない話題を振った。
「それでオマエ、木星は大丈夫なのか?」
「え?」という返事に、質問を重ねた。
「オマエ、木星から逃げたんだろう? 戻っても大丈夫なのかって聞いてるんだ」
「……エララを回ったら時間があるから、その時に話すわ。
っと。スラスター6時用意! 10秒前。
9、8、7…………3、2、1、噴射!」
通常のスイングバイではあり得ない、猛烈なGに身体がシートに沈む。
地球の318倍の質量を持つ木星の巨大重力を受けて、遠心力と推進力を対価とばかりに押しつけ、それで火星の6倍を超える重力の鎖を引きちぎってエララを目指そうというのだ。
なんでも、200年前の連中は地球大気の底から宇宙に出るのに、あえて軌道エレベータを使わず、この数倍のGを楽しんでいたとか。
妙なブームがあったもんだ。
…………ふっ。
よし! バカな想像ができる程度には余裕がある。
「0時、カウンタースラスター! カーゴの反動があるけど、それはおっちゃんに任す!」
「任せとけ!」
ガキにも余裕が戻ってきたようだ。
切羽詰まったときに限って、人は限界以上の物を抱え込もうとする。
「任せる」とは「相手を信じる」と同義語で、心にゆとりがなければできない。
レバーを握った手を、少し緩める。
また握る。
次の瞬間、ふっと身体が浮くような感覚を覚えた。
まだ……まだ……まだ……今!
レバーを引き起こし、スラスターのペダルを踏む。
地球のテーマパークに行ったときに乗ったジェットコースターとかいう大型遊具を思い出した。
ちょうど、同じような体感だ。
その時はカミさんと一緒に悲鳴をあげたが、今回はペダルとレバーは俺が操作している。
ガキはどうだか知らないが、自分の意思が反映できるというのは、何よりも安心だ。
あとは……減速の程度が読めひんからわからんけど…………」
ガキが口ごもった理由も、想像がつく。
そのあとは間が空いたとして8時間、ヘタをしたら1時間の余裕もないかもしれない。
それも、他の船が全くいないと仮定して。
現実には、木星の重力圏内には無数と言っていいほどのシップやボートがいる。
それを躱しつつとなると、一瞬も目が離せなくなる。
……ラストチャンスか。
俺は口を開いた。
「メシを食う! 食料備蓄庫を空にしていいから、できる最高の素材で最高に美味いメシを作れ!
あと、引き出しの中身は、空いた食料庫に全部入れろ。
引き出しには、エネルギーチューブとカプセル、水を限界まで詰めろ!
シートから離れることも、たぶん当分出来ない!」
「……ホンマ、最後の晩餐てあるんやな……」
寂しそうに呟くガキに、俺はからかうように言った。
「あと、オムツは忘れるな!
ムリしてでも最低8時間寝たら、トイレすませてオムツに履き替えろ。
管制室以外の与圧を全部抜く!」
事故予防のために。もちろん火災リスクもあるが、空気には質量もある。
それを全部抜くことで、不確定要素を限界まで絞る。
それを察したガキが、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「なにシケた顔してやがる。
この船で一世一代の豪華ディナーだぞ!」
「しょぼー」
ようやくガキが笑った。
もっとも……たぶん俺もだが、ガキの目は笑っていない。
アイコンタクトで覚悟を確認した。
残念ながら、メシの味は覚えていない。
リサイクル&リユースの合成食料ではなく、レトルトやフリーズドライの「とっておき」だが、甘いのか辛いのかもわからない。
口を動かしながらも、頭の中を別の数字や数式が占め、スプーンを持つ手も油断するとレバー操作をイメージして動いてやがる。
ただ、食後のコーヒーがバカみたいに苦かったことだけは、なぜかハッキリわかった。
バカヤロウ!
◇ ◇ ◇ ◇
「0時スラスター用意! 15分後に思いっきり踏んで! 時間はこっちでカウントする」
ガキの言葉に、俺はペダルに足をおいた。
二人とも、ライトスーツに着替えて、シートの横にはヘルメットもセットしている。
もちろん6点式シートベルトも怠りない。
「次……と、その次もわかるんなら教えてくれ。
スラスターを回す必要があるかもしれない」
そう。4器あるスラスターの1つは中身が空で、その方向のスラスターが必要になるときは、あらかじめ生きているスラスターを回しておかなければならない。
ガキが言い直した。
「0時方向に15分後噴射。35分後に6時方向噴射。時間は読めない。そのあと3時!」
「上出来だ」
自分でも理由がわからないが、なぜか口角が上がる。
アドレナリンが出ているのかもしれない。
ふっと落下するような感覚を覚えた。
木星に落ちているのか。
が、ガキのカウントはまだ始まらない。
まだカミさんがいた頃、地球にバカンスに行ったときに体験したスカイダイビングを思い出した。
たぶん少し視線をあげるだけで、デジタルメーターの数値が読めないほどのスピードで動いているのが見えるのだろうが、今はペダルとレバーに集中だ。
「噴射10秒前からカウントします。今はまだ60!」
クソ。気が利いてやがる……。
グリップを握り直し、爪先を浮かして緊張をほぐせるか試みた。
「……噴射10秒前、9、8、7……」
ブーツの踵を床につけ、足を安定させる。
「……3、2、1、噴射!」
言われたとおり、思いっきり0時方向のスラスターを噴かした。
無言の時間が流れる。
緊張したまま35分は長すぎる。
少しでも気を紛らせないか?
俺は軽口を装いつつ、航路を確認した。
「間違っても初手でガリレオ衛星には近づくなよ」
「わかっとう! 35分……あと30分後に噴射したら木星から脱出する。
そのあと、衛星エララを目指す!」
なるほど。妥当なコースだ。
確かに木星には69の衛星があるが、ほとんどは直径数kmの「大型デブリ」とも言えるシロモノで、当然重力も弱く、スイングバイ効果は期待できない。
その点エララなら直径86kmあって、それなりのチャンスはある。
その理屈で言えば衛星ヒマリアならエララの2倍近い170kmというサイズがあるが、衛星位置が合わないのだろう。
衛星とはいえ、それらは金星の公転周期に近い220日以上もかけて木星を回っている。
「と。イオの軌道を越えるタイミングでカーゴをパージする。
同時に『メーデー』連射。オートでいい」
「メーデー」というのは船に緊急事態が起きたときに出す救難信号で、乱用は厳禁されている。
乱用と見なされれば厳罰は確実だし、救難手段は救援者に一任でかなり荒っぽい手段も甘受すると、つまりこちらの船が壊されても文句は言わないという宣言だ。
だが、今が緊急時じゃなかったら、いつが緊急時だと言うんだ!
カーゴをパージするタイミングは、俺が温めてきた腹案だ。
イオの軌道でパージすれば、傍目にはこの船が切羽詰まって可能な限りの危機回避手段をとっているように見えるはず。
カーゴの後端にある発信器、つまり今まで俺たちがここまでメジャー代わりに使ってきた物だが、それはパージと同時にアラート信号をオープン回線でMAXで流すようにしている。
出力が大きくなればバッテリーの減りは早くなるだろうが、俺たちがエララにつくまでもてばいい。
そのあとは知ったことではないが、ガキが「エララを目指す」と言った以上、その軌道上にはおそらく他の衛星はない。
つまりこの船は、「トレイン」が維持できないほどの危機的状況で、緊急避難のために可能な限りの努力をしていると、周知するのが目的だ。
さもないと、テロリストと見なされたら撃墜されるリスクがある。
「6時スラスター用意! 10秒前からカウントします! あと20分。あ、0時スラスター止めて!」
「次の次も言えって言っただろう!
エララにはどちらから入ってどちらに出る!」
「エララには公転の前から入って自転を逆走するイメージでスイングバイ! そのあと衛星ガニメデ!」
っち。俺は我に返って、大きくかぶりを振った。
俺もガキもかなり殺気立っている。
ついつい口調がきつくなる。
もちろん、こんな時に冷静でいられるはずはないが、過度の緊張はろくな結果にならない。
どうする…………?
一か八かの賭けになるが、俺は関係ない話題を振った。
「それでオマエ、木星は大丈夫なのか?」
「え?」という返事に、質問を重ねた。
「オマエ、木星から逃げたんだろう? 戻っても大丈夫なのかって聞いてるんだ」
「……エララを回ったら時間があるから、その時に話すわ。
っと。スラスター6時用意! 10秒前。
9、8、7…………3、2、1、噴射!」
通常のスイングバイではあり得ない、猛烈なGに身体がシートに沈む。
地球の318倍の質量を持つ木星の巨大重力を受けて、遠心力と推進力を対価とばかりに押しつけ、それで火星の6倍を超える重力の鎖を引きちぎってエララを目指そうというのだ。
なんでも、200年前の連中は地球大気の底から宇宙に出るのに、あえて軌道エレベータを使わず、この数倍のGを楽しんでいたとか。
妙なブームがあったもんだ。
…………ふっ。
よし! バカな想像ができる程度には余裕がある。
「0時、カウンタースラスター! カーゴの反動があるけど、それはおっちゃんに任す!」
「任せとけ!」
ガキにも余裕が戻ってきたようだ。
切羽詰まったときに限って、人は限界以上の物を抱え込もうとする。
「任せる」とは「相手を信じる」と同義語で、心にゆとりがなければできない。
レバーを握った手を、少し緩める。
また握る。
次の瞬間、ふっと身体が浮くような感覚を覚えた。
まだ……まだ……まだ……今!
レバーを引き起こし、スラスターのペダルを踏む。
地球のテーマパークに行ったときに乗ったジェットコースターとかいう大型遊具を思い出した。
ちょうど、同じような体感だ。
その時はカミさんと一緒に悲鳴をあげたが、今回はペダルとレバーは俺が操作している。
ガキはどうだか知らないが、自分の意思が反映できるというのは、何よりも安心だ。
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