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2学期までの1週間
夏休み番外編 姫川の恋愛相談編②
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さっきまで顔を真っ赤にして、正木との関係を否定していた姫川が、急に何かを考え込み始めた。
そして希一の方を向くと、真剣にこう切り出した。
「あの、これは俺の友達の話なんだけどー」
そう話す姫川だが今の話の流れで、急に友達の話になるのはおかしいと直ぐに希一は気づいた。
絶対にお前の話だろ。
と希一は思うものの、それは友達としての優しさで黙っておく。
「恋愛感情がないのに体が反応することってあるのか?」
「はっ?」
真剣に聞いてくる姫川の質問が余りに突拍子がなくて、希一は間抜けな声を出す。
「いやだから、今までは手を出されても嫌悪感があったのに、この前触られた時には何故か反応してしまって。」
って友達が言ってたんだ。と慌てて付け足す姫川に若干呆れながら、希一は正木という人物に迫られている姫川を想像してしまった。
希一には男にときめく趣味は無いので、友のそんな姿を想像するのはなんとなく気まずかった。
「いやー、前までは嫌悪感があったのに、それがなくなったってことはその友達も相手のことが好きになったんじゃないの?」
自分の想像を打ち消すように軽く首を振って、希一がそう答えると、姫川の動きが一瞬止まった。そして、
「ない!いや、それはない!」
と激しく否定し始めた。
「じゃあ、触られたら誰でも反応するってこと?」
「そ、そんな訳ないだろ!」
他の男に触られる想像でもしたのか途端に姫川の顔が青くなった。
「その人には反応して、他の人に触られるのは気持ち悪いって感じるなら、やっぱり好きだからって事じゃないの?」
希一の言葉を聞いて、姫川は黙り込んでしまった。姫川の返しを待っていた希一だったが、頭を抱えて本格的に悩み始めた姿を見て、軽くため息を吐いた。
「なんでお前がそんなに悩んでんだよ。友達の話だろ?」
そう言った希一を弾かれた様に顔を上げた姫川が見ている。
「あ、あぁそうだ。」
友達の話と言ったことも忘れて話をしてしまったことに気づいたのか気まずそうに姫川が希一から目線を外しながら答えた。
本当に不器用なやつ。
希一はそう思いながら小さく溜息を吐いた。
「まぁ、その友達ももしかしたら溜まってただけかもしれないし。そこまで深く悩む必要はないんじゃないかな。」
姫川が今欲しいであろう言葉を希一が敢えて言ってやると、あからさまにホッとした顔をする。
やれやれと頭を掻きながら希一は軽く笑うと、
「でもその友達って自分の気持ちもわからないなんて、かなり恋愛に奥手なんだな。」
と言った。それを聞いた姫川がキッと希一を睨む。
「そんな事はないと思うぞ。友達だって人を好きになったことくらいあると思う。」
「はぁ、どうだか?」
呆れた様な希一の言葉に姫川の目が心外だとばかりに鋭さを増す。そんな姫川を見ながら、希一は一度真剣な顔をすると、口を開いた。
「歩、俺が恋愛の先輩として良いことを教えといてやるよ。もし歩がふとした仕草に見惚れたり、可愛いと思ったり、顔を見るとホッとできる人ができたとしたらそれはその人を好きになりかけている証拠だ。そして、その人を見ただけで胸が高鳴ったり、違う人といるのを見ただけで嫌な気持ちになったり、自分だけを見てほしい、信じてほしいと思ったりしたら、それは完全に恋に落ちてる。」
希一の言葉を姫川も真剣に聞いていたが、納得いかないのか直ぐに反論する。
「それはそうかもしれないけど、違う人といたくらいで嫌な気持ちになることはないだろ。」
「わかってないな。歩は。人を好きになるってことは綺麗な事ばかりじゃないよ。もっとドロドロとしてて、自分の嫌な部分とかも見えてそれに落ち込んだりもするもんだ。それに好きな人から信じてもらえないのとか本当にしんどいんだからな。経験した俺が言うんだから間違いないよ。」
希一の言っている事が分からなくて姫川が困惑したように首を傾げる。
「はぁ、まぁお子様みたいな恋愛しかしたことのない歩には分からないだろうけどさ。」
「おい、馬鹿にしてんのか。俺だって恋愛の一つや二つ・・・」
「お前はハンカチ拾ってくれたからとか、バレンタインでチョコくれたからとか、好きになる理由がしょうもないじゃん。あれを恋愛って呼ぶのはお前だけだよ。」
「うるさい!黙れ。」
「しかも、好きになったて言う割には恥ずかしがって、全然声を掛けないし。」
「いいんだよ!俺の話は!」
ケラケラと笑いながら、中学時代の姫川の恋愛歴を語る希一に姫川が声を荒げる。そしてプイッと拗ねたように外方を向いた。
ひとしきり笑った希一は目元の涙を拭きながら、
「確かにいい事ばかりじゃないけどな、それでも人を好きになるっていうのはいいもんだぞ。お前にも早く経験してもらいたいよ。」
と優しい顔で希一が言った。
「なんだよそれ・・・」
希一の言葉に姫川が呟く。この時には2人とも友達の話という前提も忘れ、自分の事として話をしてしまっていた。しかし、その事に2人とも気づかないままなのであった。
そして希一の方を向くと、真剣にこう切り出した。
「あの、これは俺の友達の話なんだけどー」
そう話す姫川だが今の話の流れで、急に友達の話になるのはおかしいと直ぐに希一は気づいた。
絶対にお前の話だろ。
と希一は思うものの、それは友達としての優しさで黙っておく。
「恋愛感情がないのに体が反応することってあるのか?」
「はっ?」
真剣に聞いてくる姫川の質問が余りに突拍子がなくて、希一は間抜けな声を出す。
「いやだから、今までは手を出されても嫌悪感があったのに、この前触られた時には何故か反応してしまって。」
って友達が言ってたんだ。と慌てて付け足す姫川に若干呆れながら、希一は正木という人物に迫られている姫川を想像してしまった。
希一には男にときめく趣味は無いので、友のそんな姿を想像するのはなんとなく気まずかった。
「いやー、前までは嫌悪感があったのに、それがなくなったってことはその友達も相手のことが好きになったんじゃないの?」
自分の想像を打ち消すように軽く首を振って、希一がそう答えると、姫川の動きが一瞬止まった。そして、
「ない!いや、それはない!」
と激しく否定し始めた。
「じゃあ、触られたら誰でも反応するってこと?」
「そ、そんな訳ないだろ!」
他の男に触られる想像でもしたのか途端に姫川の顔が青くなった。
「その人には反応して、他の人に触られるのは気持ち悪いって感じるなら、やっぱり好きだからって事じゃないの?」
希一の言葉を聞いて、姫川は黙り込んでしまった。姫川の返しを待っていた希一だったが、頭を抱えて本格的に悩み始めた姿を見て、軽くため息を吐いた。
「なんでお前がそんなに悩んでんだよ。友達の話だろ?」
そう言った希一を弾かれた様に顔を上げた姫川が見ている。
「あ、あぁそうだ。」
友達の話と言ったことも忘れて話をしてしまったことに気づいたのか気まずそうに姫川が希一から目線を外しながら答えた。
本当に不器用なやつ。
希一はそう思いながら小さく溜息を吐いた。
「まぁ、その友達ももしかしたら溜まってただけかもしれないし。そこまで深く悩む必要はないんじゃないかな。」
姫川が今欲しいであろう言葉を希一が敢えて言ってやると、あからさまにホッとした顔をする。
やれやれと頭を掻きながら希一は軽く笑うと、
「でもその友達って自分の気持ちもわからないなんて、かなり恋愛に奥手なんだな。」
と言った。それを聞いた姫川がキッと希一を睨む。
「そんな事はないと思うぞ。友達だって人を好きになったことくらいあると思う。」
「はぁ、どうだか?」
呆れた様な希一の言葉に姫川の目が心外だとばかりに鋭さを増す。そんな姫川を見ながら、希一は一度真剣な顔をすると、口を開いた。
「歩、俺が恋愛の先輩として良いことを教えといてやるよ。もし歩がふとした仕草に見惚れたり、可愛いと思ったり、顔を見るとホッとできる人ができたとしたらそれはその人を好きになりかけている証拠だ。そして、その人を見ただけで胸が高鳴ったり、違う人といるのを見ただけで嫌な気持ちになったり、自分だけを見てほしい、信じてほしいと思ったりしたら、それは完全に恋に落ちてる。」
希一の言葉を姫川も真剣に聞いていたが、納得いかないのか直ぐに反論する。
「それはそうかもしれないけど、違う人といたくらいで嫌な気持ちになることはないだろ。」
「わかってないな。歩は。人を好きになるってことは綺麗な事ばかりじゃないよ。もっとドロドロとしてて、自分の嫌な部分とかも見えてそれに落ち込んだりもするもんだ。それに好きな人から信じてもらえないのとか本当にしんどいんだからな。経験した俺が言うんだから間違いないよ。」
希一の言っている事が分からなくて姫川が困惑したように首を傾げる。
「はぁ、まぁお子様みたいな恋愛しかしたことのない歩には分からないだろうけどさ。」
「おい、馬鹿にしてんのか。俺だって恋愛の一つや二つ・・・」
「お前はハンカチ拾ってくれたからとか、バレンタインでチョコくれたからとか、好きになる理由がしょうもないじゃん。あれを恋愛って呼ぶのはお前だけだよ。」
「うるさい!黙れ。」
「しかも、好きになったて言う割には恥ずかしがって、全然声を掛けないし。」
「いいんだよ!俺の話は!」
ケラケラと笑いながら、中学時代の姫川の恋愛歴を語る希一に姫川が声を荒げる。そしてプイッと拗ねたように外方を向いた。
ひとしきり笑った希一は目元の涙を拭きながら、
「確かにいい事ばかりじゃないけどな、それでも人を好きになるっていうのはいいもんだぞ。お前にも早く経験してもらいたいよ。」
と優しい顔で希一が言った。
「なんだよそれ・・・」
希一の言葉に姫川が呟く。この時には2人とも友達の話という前提も忘れ、自分の事として話をしてしまっていた。しかし、その事に2人とも気づかないままなのであった。
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