風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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2学期までの1週間

夏休み番外編2 戸田と佐々木

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これは夏休みのある1日の出来事である。

友達との旅行から帰ってきた佐々木は、寮で退屈な毎日を過ごしていた。
夏祭りまで後何日かあるし、やる事もなく学校や寮の周辺を買い物も兼ねて歩いたりするのが、ここ何日かの日課になっていた。
この日も佐々木は、朝のまだ涼しい時間に散歩に出ていた。
朝の日差しは穏やかで、辺りは新鮮な空気に満ちていた。蝉の声がどこからともなく聞こえ、夏を感じさせた。
佐々木は行くあてもなく、フラフラと気の向くまま歩いていた。
すると、学校の中庭で珍しい人物を見つけた。
中庭のベンチに腰掛け、何故か物思いに耽っている様だった。
佐々木は近くの自販機でジュースを2本買うと中庭に戻った。そしてその人物・・・生徒会書記の戸田に向かって話しかけた。
「珍しいな。お前が1人でいるなんて。」
そう言って買ったジュースの1つを戸田に差し出した。
「甘いものが好きなのは津田だよ。勘違いしないでくれる?」
佐々木の好意を鋭い睨みで返す戸田を佐々木は軽く躱すと、
「甘いものは苦手でもこのイチゴ牛乳だけはいつも飲んでるじゃん。」
と何事もないように言った。
図星だったのか、戸田は一瞬驚いた顔を見せると、黙ってジュースを受け取った。
「意外に俺たちの事をよく見てるんだね。みんな俺たちのことどっちがどっちかなんて分かってないと思うのに。」
戸田がイチゴ牛乳を開けながら佐々木にそう返す。
「そうかな?よく見ると、顔つきも仕草も話し方も違って見えるけどね。」
それを聞いた戸田が佐々木をじーっと見つめていた。
「それで?今日は津田はどうしたの?いつも2人で一緒にいるじゃん。」
佐々木が戸田に質問しながら、さり気なく横に腰掛ける。
「別に、一緒にいることが多いってだけで、いつも一緒にいるわけじゃないし。」
暫し、佐々木を見ていた戸田は目線を下にさげながら答える。その表情が少し寂しそう見えた。
「何かあったの?俺でよければ話聞くけど?」
佐々木の申し出に戸田が目を細める。
「何で風紀の人間に・・・」
そう言いかけて戸田が一旦口を噤む。そして、はぁと一つ溜息を吐くとゆっくり話し始めた。
「俺って、家柄がいいじゃん。」
戸田の突然の自慢に佐々木は若干話を聞くと言ったことを後悔した。それでも何とか黙っていると、
「でもうちって兄弟が多くて、俺は6番目の子だからあんまり期待されてないっていうか、寧ろ放任されてる感じなんだよね。」
淡々と語る言葉の中に戸田の心の闇が見え隠れする。
「それで特に何の目的もなく他の兄弟も卒業したこの学園に入った。そこで津田と出会ったんだよね。」
こうして佐々木は戸田と津田との出会いの話を聞く事になった。
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