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第五章 王太子の愛情 メイヴィス×シャーロット❷
11・ザカリー邸の夜明け
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真夜中を過ぎた未明になって、メイヴィスはようやく目が覚めた。盛られた睡眠薬は即効性は高いが持続性は弱いものだった様だ。
目覚めたメイヴィスは状況を把握しようと身動きはせずに眼だけを部屋の中に走らせた、そして寝台に上半身を伏せて眠っているシャーロットの姿に気付く。
・・・シャーロット?、何故この部屋に・・・確かグリードに此処へ連れて来られて寝台へ押し込まれて、そうか此処はシャーロットの部屋だったのか・・・
部屋の中を一通り見回して危険が無い事を確認したメイヴィスは身体を起こしてシャーロットを見る、どうやら彼女は私の側に付いて様子を見守ってくれていたらしい。
頭痛や倦怠感など睡眠薬の後症状は何もなく体調も良い、恐らくシャーロットが睡眠薬の分解をして体の回復を早める回復魔法を掛けてくれたのだろう。メイヴィスは眠る彼女の白金の髪をそっと撫でる。
・・・・有難う、シャーロット・・・
触れた彼女の体は冷えていた。メイヴィスは眠る彼女を起こさない様に慎重に抱き上げて寝台へ寝かせた、そして暖めようと彼女の体に可能な限り自分の体を密着させて腕の中に閉じ込める。
抱き締めた彼女の柔らかい体からは、少しのアルコールといつもの花の様な甘い香りがして、その香りにクラクラと酩酊した私は彼女の側頭部に頭を擦り付ける。
これは彼女の魔力の香りで私以外の者は匂わないらしい、私だけを酔わせる香り。
香りに酔った私は眠る彼女の両頬に接吻をして、額と額を合わせると、彼女の背中に回した両手を滑らせて小さな円を描き始める。
まるでまたたびに狂う猫の様だと自分でも思う、彼女に甘える自分も大きな猫なのかも知れない(金獅子だけに)、くすぐったいのか彼女がモゾモゾし始めた。
「ん、・・・あっ、殿下?」
モゾモゾしていたシャーロットの目が覚めた、まだちょっとボンヤリしている。
「目が覚めた?、シャーロット」
私は彼女を抱き締めたまま、寝惚け眼の目尻や頬、耳元から首筋へ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ と連続して口付ける、そして寝起きに色々されて戸惑っているシャーロットの唇を最後に奪う。
「シャーロット男の前で眠っては駄目だよ、色んな事をされるからね」
「な、な、な、あ、あ、あ」
起きて直ぐの色々に真っ赤な顔になってまともな言葉も出ないシャーロットに対して、私は注意する言葉を告げてはいるが、言葉とは裏腹に両手は彼女の身体の あちらこちら を彷徨っている。
「で、で、で、殿下!」
「うん?」
照れたシャーロットが体を離そうとしてきたので、抱き締める力を強くして、もっと身体を密着させる意地悪をしてみた、そして恥ずかしがる彼女の首筋から喉元に、ちゅっ ちゅっ と再び唇を落としていく。
「んっ、ふっ、ふぇ‥ふぇ‥ふぇぇん…」
彼女の反応が可愛くて意地悪をしていた私は、シャーロットが泣き出して慌てて、身体を離して彼女の顔を覗き込む。
「シャーロット、泣くほど嫌だったのか?」
「ちがっ、違います、殿下の目が覚めて良かったって、昨日のお昼と同じ位元気になって良かったって、安心したら、ふぇ、ふぇん、ふぇぇぇぇん、殿下が死んだ様に眠っていて、ふぇっ、ぇっ、怖くて」
彼女が泣きじゃくりながらも紡いだ言葉を聞いた私は胸が熱くなる。シャーロットは泣くほど私を心配してくれていた、私に対する愛情が嬉しくて華奢な彼女の体をかき抱く。
また彼女の魔力の香りが私を包み込む、出会った時は香水かと思っていたが、最近の魔法省の研究で魔力の相性が良い者達の間で起こる現象だと判明している、私の様に魔力酔いまで起こすのは相当稀らしい。
シャーロットと過ごす時間が増える程に、彼女はこんな風に私に知らしめる。
私は貴方の特別な存在、唯一の運命なのだと。
世の中には自分の運命の人と出会える人が何人居るのだろうか、それ程いない事は想像に難くない、そんな中で予想外の出来事が幾つも重なって婚約者になった私達の絆は相当深いのだろう。
この人の手を離してはいけない、と強く思う。
私は泣いている彼女の涙を指で拭い、サラサラの白金髪を手で漉く、すると泣き止んだ彼女が頬を染めて俯く。夜明け前のひとときを彼女と二人で甘やかに過ごしていると、急に扉の向こうの廊下が騒がしくなった。
◆◇◆◇◆◇
ザカリーはプリシラの悲鳴が聞こえるのを夜通し待っていた、邸内は静寂に包まれており悲鳴が聞こえたら直ぐに分かる筈だ。機会は今夜しか無いのにプリシラの声は一向に聞こえて来ない、ザカリーは焦っていた。
計画が上手く行っているのか軟禁中の身では確認も出来ない。このままでは夜が明ける、扉の前にいる見張りの注意を反らす為にも悲鳴が聞こえないと動けない。もう合図が無くても朝になる前に強引に部屋へ行くしか無い。
ザカリーは部屋の扉をノックして、廊下側にいる見張りへ体調不良を訴えた。見張りが扉を開けると体当たりをして飛び出し、特別貴賓室へ向かって走り出す。
「待て!、逃げるな、ザカリー何処へ行く」
特別貴賓室の前に着くと、見張りの男に追い付かれて押し問答になる。
「離せ、この中に用があるんだ!」
「静かにしろ!、部屋に戻るんだ!」
隣室の扉が開いて、騎士団長のグリードが出て来て騒ぐ二人を咎める。
「お静かに願います、ここは殿下の部屋の前です」
「うるさい!、ここにプリシラが連れ込まれたから助けに来たのだ!」
ザカリーは見張りの男とグリードの静止を振り切り、部屋の扉を開けて怒鳴り込んだ。
ばーーん!!
「プリシラ!、大丈夫か、殿下これはどう言う事ですか!!」
ザカリーは部屋を一瞥して寝台に腰を掛けている騎士を見た、メイヴィス王太子の姿は見えない。
「あれ、殿下は?、君は誰だ!、何故この部屋にいる」
ザカリーは混乱していたが、殿下を籠絡する筈のプリシラが一介の騎士に食い散らかされたと気付いた。そして、まだプリシラが部屋にいる事と脱ぎ捨てられた露出の多い夜着から、合意の上と主張されたら否定が難しい事も。
混乱した状況を理解しようと、誰もが言葉を発せず沈黙した時に、二つ隣の部屋からメイヴィス殿下が顔を覗かせた。
「何かあったのか?」
「殿下!、何故そちらの部屋に居られるのですか?、殿下にはこちらの特別貴賓室で過ごして頂く様に手配をしていた筈です」
別の部屋にいたメイヴィスに驚いたザカリーが強い口調で咎めると、メイヴィスは皮肉な笑顔で当て擦るような返答をした。
「愛しい婚約者と一緒に過ごしたくて部屋を移動した。昨夜は彼女にかなり無理をさせたから、もう少し寝かせてやりたい、静かにしてくれるかな」
昨夜は婚約者を抱いていたから他の女には触れていないと暗に言われたのだ。
ザカリーはメイヴィスの言葉で悟った、彼の弱みを握って脅し自分に対する罪の追求を逃れようと画策した事がバレていて、失敗に終わったことを。
メイヴィスを罠に嵌めようとして逆に返り討ちにあったのだ、やはりこの王太子は侮ってはいけない男だった。
空は白み始めて夜は完全に明けていた、グリードが見張りの男にザカリーを部屋へ連れ戻すように指示をする、完全なる敗北で茫然自失のザカリーは素直にそれに従った。
目覚めたメイヴィスは状況を把握しようと身動きはせずに眼だけを部屋の中に走らせた、そして寝台に上半身を伏せて眠っているシャーロットの姿に気付く。
・・・シャーロット?、何故この部屋に・・・確かグリードに此処へ連れて来られて寝台へ押し込まれて、そうか此処はシャーロットの部屋だったのか・・・
部屋の中を一通り見回して危険が無い事を確認したメイヴィスは身体を起こしてシャーロットを見る、どうやら彼女は私の側に付いて様子を見守ってくれていたらしい。
頭痛や倦怠感など睡眠薬の後症状は何もなく体調も良い、恐らくシャーロットが睡眠薬の分解をして体の回復を早める回復魔法を掛けてくれたのだろう。メイヴィスは眠る彼女の白金の髪をそっと撫でる。
・・・・有難う、シャーロット・・・
触れた彼女の体は冷えていた。メイヴィスは眠る彼女を起こさない様に慎重に抱き上げて寝台へ寝かせた、そして暖めようと彼女の体に可能な限り自分の体を密着させて腕の中に閉じ込める。
抱き締めた彼女の柔らかい体からは、少しのアルコールといつもの花の様な甘い香りがして、その香りにクラクラと酩酊した私は彼女の側頭部に頭を擦り付ける。
これは彼女の魔力の香りで私以外の者は匂わないらしい、私だけを酔わせる香り。
香りに酔った私は眠る彼女の両頬に接吻をして、額と額を合わせると、彼女の背中に回した両手を滑らせて小さな円を描き始める。
まるでまたたびに狂う猫の様だと自分でも思う、彼女に甘える自分も大きな猫なのかも知れない(金獅子だけに)、くすぐったいのか彼女がモゾモゾし始めた。
「ん、・・・あっ、殿下?」
モゾモゾしていたシャーロットの目が覚めた、まだちょっとボンヤリしている。
「目が覚めた?、シャーロット」
私は彼女を抱き締めたまま、寝惚け眼の目尻や頬、耳元から首筋へ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ と連続して口付ける、そして寝起きに色々されて戸惑っているシャーロットの唇を最後に奪う。
「シャーロット男の前で眠っては駄目だよ、色んな事をされるからね」
「な、な、な、あ、あ、あ」
起きて直ぐの色々に真っ赤な顔になってまともな言葉も出ないシャーロットに対して、私は注意する言葉を告げてはいるが、言葉とは裏腹に両手は彼女の身体の あちらこちら を彷徨っている。
「で、で、で、殿下!」
「うん?」
照れたシャーロットが体を離そうとしてきたので、抱き締める力を強くして、もっと身体を密着させる意地悪をしてみた、そして恥ずかしがる彼女の首筋から喉元に、ちゅっ ちゅっ と再び唇を落としていく。
「んっ、ふっ、ふぇ‥ふぇ‥ふぇぇん…」
彼女の反応が可愛くて意地悪をしていた私は、シャーロットが泣き出して慌てて、身体を離して彼女の顔を覗き込む。
「シャーロット、泣くほど嫌だったのか?」
「ちがっ、違います、殿下の目が覚めて良かったって、昨日のお昼と同じ位元気になって良かったって、安心したら、ふぇ、ふぇん、ふぇぇぇぇん、殿下が死んだ様に眠っていて、ふぇっ、ぇっ、怖くて」
彼女が泣きじゃくりながらも紡いだ言葉を聞いた私は胸が熱くなる。シャーロットは泣くほど私を心配してくれていた、私に対する愛情が嬉しくて華奢な彼女の体をかき抱く。
また彼女の魔力の香りが私を包み込む、出会った時は香水かと思っていたが、最近の魔法省の研究で魔力の相性が良い者達の間で起こる現象だと判明している、私の様に魔力酔いまで起こすのは相当稀らしい。
シャーロットと過ごす時間が増える程に、彼女はこんな風に私に知らしめる。
私は貴方の特別な存在、唯一の運命なのだと。
世の中には自分の運命の人と出会える人が何人居るのだろうか、それ程いない事は想像に難くない、そんな中で予想外の出来事が幾つも重なって婚約者になった私達の絆は相当深いのだろう。
この人の手を離してはいけない、と強く思う。
私は泣いている彼女の涙を指で拭い、サラサラの白金髪を手で漉く、すると泣き止んだ彼女が頬を染めて俯く。夜明け前のひとときを彼女と二人で甘やかに過ごしていると、急に扉の向こうの廊下が騒がしくなった。
◆◇◆◇◆◇
ザカリーはプリシラの悲鳴が聞こえるのを夜通し待っていた、邸内は静寂に包まれており悲鳴が聞こえたら直ぐに分かる筈だ。機会は今夜しか無いのにプリシラの声は一向に聞こえて来ない、ザカリーは焦っていた。
計画が上手く行っているのか軟禁中の身では確認も出来ない。このままでは夜が明ける、扉の前にいる見張りの注意を反らす為にも悲鳴が聞こえないと動けない。もう合図が無くても朝になる前に強引に部屋へ行くしか無い。
ザカリーは部屋の扉をノックして、廊下側にいる見張りへ体調不良を訴えた。見張りが扉を開けると体当たりをして飛び出し、特別貴賓室へ向かって走り出す。
「待て!、逃げるな、ザカリー何処へ行く」
特別貴賓室の前に着くと、見張りの男に追い付かれて押し問答になる。
「離せ、この中に用があるんだ!」
「静かにしろ!、部屋に戻るんだ!」
隣室の扉が開いて、騎士団長のグリードが出て来て騒ぐ二人を咎める。
「お静かに願います、ここは殿下の部屋の前です」
「うるさい!、ここにプリシラが連れ込まれたから助けに来たのだ!」
ザカリーは見張りの男とグリードの静止を振り切り、部屋の扉を開けて怒鳴り込んだ。
ばーーん!!
「プリシラ!、大丈夫か、殿下これはどう言う事ですか!!」
ザカリーは部屋を一瞥して寝台に腰を掛けている騎士を見た、メイヴィス王太子の姿は見えない。
「あれ、殿下は?、君は誰だ!、何故この部屋にいる」
ザカリーは混乱していたが、殿下を籠絡する筈のプリシラが一介の騎士に食い散らかされたと気付いた。そして、まだプリシラが部屋にいる事と脱ぎ捨てられた露出の多い夜着から、合意の上と主張されたら否定が難しい事も。
混乱した状況を理解しようと、誰もが言葉を発せず沈黙した時に、二つ隣の部屋からメイヴィス殿下が顔を覗かせた。
「何かあったのか?」
「殿下!、何故そちらの部屋に居られるのですか?、殿下にはこちらの特別貴賓室で過ごして頂く様に手配をしていた筈です」
別の部屋にいたメイヴィスに驚いたザカリーが強い口調で咎めると、メイヴィスは皮肉な笑顔で当て擦るような返答をした。
「愛しい婚約者と一緒に過ごしたくて部屋を移動した。昨夜は彼女にかなり無理をさせたから、もう少し寝かせてやりたい、静かにしてくれるかな」
昨夜は婚約者を抱いていたから他の女には触れていないと暗に言われたのだ。
ザカリーはメイヴィスの言葉で悟った、彼の弱みを握って脅し自分に対する罪の追求を逃れようと画策した事がバレていて、失敗に終わったことを。
メイヴィスを罠に嵌めようとして逆に返り討ちにあったのだ、やはりこの王太子は侮ってはいけない男だった。
空は白み始めて夜は完全に明けていた、グリードが見張りの男にザカリーを部屋へ連れ戻すように指示をする、完全なる敗北で茫然自失のザカリーは素直にそれに従った。
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