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番外編 薔薇と海 ◆ 新シリーズとの幕間 ◆
二人の男とジェラルド
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公爵家のタウンハウスで、ジャスティンとロランはブランチを取りながら、話をしていた。
ジャスティンがパンを千切りながら、ロランに問いかける。
「マリンの話を聞いてどう思った?」
「一理ある、サイラスは皇子だが金銭的な事でいえばあれだけの施設を一人では賄え無いだろう。同じくキュリアスも同様だ。二人共身分はあっても自由になる金はそう多く無い」
ロランはナイフとフォーク使い、厚切りベーコンステーキを切っている。
ジャスティンがロランに香辛料を渡す。
「これをかけると美味くなる、二人共精神系の能力持ちで学生時代に仲が良かったし、その頃から計画していたかもな」
グレースが暫く不在の為、ジャスティンとロランの二人で大雑把な男料理を作って食べている。
「ああ、だが二人の後ろにまだ誰か黒幕がいそうだな。やはりキュリアスの身柄を確保して話を聞くのが近道かもな」
「今現在の居場所は不明だよな、ロランがサイラスに制圧を掛けて、自白させるのはどうだ?」
ジャスティンは二つ目のパンを食べている。ロランは付け合わせの野菜にフォークを刺した。
「いや明日の朝、帝国に送還されるからその時間は取れそうに無いな。それよりもう一度マリンと会ってみたい」
「そうだな彼は視点が鋭い人のようだ、他にも彼なりの気づきがあるかもな」
二人は食事を終えて、仲良く食器を片付け始めた、ジャスティンが食器を洗う、それを受け取り拭きながらロランが問う。
「それでグレースはいつまでナターシャ王女の所に居るんだ?、王妃に頼まれて王女を慰める為に療養先へついて行ったそうじゃないか」
「さあな、自死の心配もあるし気持ちが落ち着くまでは側にいると言っていた。ナターシャ王女はメイヴィス殿下に制圧を解かれた直後に大号泣したらしい。グレースは年も近いし程よい距離感の親族だし時間もあるから適任だよ」
「・・・・・・」
ロランは楽園に居た一人の女性を思い出した、サイラスと同じ能力を持つだけに色々と思う所はあるが、彼女の力になりたくても自分の無力さを思い知るだけだった。
◆◇◆◇◆◇
ジェラルドはいつものカフェにいた。
時々ジェシカと一緒に食事をしたり、待合せに使う馴染みの店だ。
目の前には、リーフとスカイがいる。
「今日は何の用かな?」
「何度も邪魔して悪いな、マリン。良かったらこの間の続きを聞かせてくれないか?」
「ジェラルドだ」
「えっ、何だって?」
「ジェラルド、もうマリンはいない」
かつてマリンと呼ばれていた男は確かに雰囲気が違っている、少年っぽかった彼は引き締まった男の顔になっていた。
リーフは頷き、質問を続けた。
「そうか、ジェラルド。楽園について君の見解を教えてくれないか?」
「またその話かまあいい。俺が思うに誰かが人間を操る為の実験を楽園でしてたんじゃないかって事さ」
リーフとスカイは目を見開き、同時に聞いてくる。
「何故そうなる?」
「何、実験だと?」
「集められた男達の能力値を測るとか、どの能力の奴がどの程度人を自由に傀儡化出来るかとか、支配し続けられる期間とか、とにかく誰かを支配する事を目的として試してた、そんな感じかな」
「実際あそこにいたリーフはどう感じた?」
「確かに言われて見れば、楽園の存在理由自体がおかしかったし、キュリアスがいる時点で男女の括りも変だしな」
リーフとスカイは顔を見合わせている。
・・・・ふっ、さっきから、こいつら仲良いな・・・・
二人の親密な空気にジェラルドは自然と顔が緩む、微笑ましくなり情報を与えてやる事にした。
「多分だけど金の出所は帝国じゃないかな、流石に皇子があれだけ動けば知らないと云う事は無いだろう、寧ろ帝国が後押ししている可能性すら有る」
「まさか、そんな事が・・・」
「いや、あり得るかもな」
「帝国のお家芸、制圧が使えない皇族が最近は増えているらしい。これまで制圧で支配してきた国が支配から脱却したらどうなると思う?」
リーフとスカイの顔が青ざめ、同時に叫ぶ。
「「 まさか! 」」
やっぱりこいつら仲良いなと思うジェラルドの目の端に、愛しい彼女の姿が見えた。
「おっとジェシカが来たから、ここで失礼するよ、じゃあな」
爆弾を落として去ったジェラルドの姿を見送っていると、店の外で寄り添うマリンとローズが見えた。楽園で生まれたカップルは、楽園にいた時よりも幸せそうでロランは嬉しくなった。
楽園にいた別の女性の暗い顔が頭を過るが、楽園に居た人間が全て不幸になった訳ではないとホッとしたのだ。
楽園から戻って沈みがちだったロランの顔が少し緩んだのを見て、自身の顔も緩んだジャスティンが声を掛ける。
「メイヴィス殿下に報告するか、しかし、ジェラルドは何者なんだろうな、普通の男では無さそうだ」
「ああ、そうだな謎めいている、が、やはり彼と話して正解だったな。しかしキュリアスは今どこに居るんだろうな」
リーフとスカイの二人は仲良く並んで歩き出した。
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* 関連話 *
煌く太陽と銀色の月【闇夜の龍は銀月と戯れる】
ジャスティンがパンを千切りながら、ロランに問いかける。
「マリンの話を聞いてどう思った?」
「一理ある、サイラスは皇子だが金銭的な事でいえばあれだけの施設を一人では賄え無いだろう。同じくキュリアスも同様だ。二人共身分はあっても自由になる金はそう多く無い」
ロランはナイフとフォーク使い、厚切りベーコンステーキを切っている。
ジャスティンがロランに香辛料を渡す。
「これをかけると美味くなる、二人共精神系の能力持ちで学生時代に仲が良かったし、その頃から計画していたかもな」
グレースが暫く不在の為、ジャスティンとロランの二人で大雑把な男料理を作って食べている。
「ああ、だが二人の後ろにまだ誰か黒幕がいそうだな。やはりキュリアスの身柄を確保して話を聞くのが近道かもな」
「今現在の居場所は不明だよな、ロランがサイラスに制圧を掛けて、自白させるのはどうだ?」
ジャスティンは二つ目のパンを食べている。ロランは付け合わせの野菜にフォークを刺した。
「いや明日の朝、帝国に送還されるからその時間は取れそうに無いな。それよりもう一度マリンと会ってみたい」
「そうだな彼は視点が鋭い人のようだ、他にも彼なりの気づきがあるかもな」
二人は食事を終えて、仲良く食器を片付け始めた、ジャスティンが食器を洗う、それを受け取り拭きながらロランが問う。
「それでグレースはいつまでナターシャ王女の所に居るんだ?、王妃に頼まれて王女を慰める為に療養先へついて行ったそうじゃないか」
「さあな、自死の心配もあるし気持ちが落ち着くまでは側にいると言っていた。ナターシャ王女はメイヴィス殿下に制圧を解かれた直後に大号泣したらしい。グレースは年も近いし程よい距離感の親族だし時間もあるから適任だよ」
「・・・・・・」
ロランは楽園に居た一人の女性を思い出した、サイラスと同じ能力を持つだけに色々と思う所はあるが、彼女の力になりたくても自分の無力さを思い知るだけだった。
◆◇◆◇◆◇
ジェラルドはいつものカフェにいた。
時々ジェシカと一緒に食事をしたり、待合せに使う馴染みの店だ。
目の前には、リーフとスカイがいる。
「今日は何の用かな?」
「何度も邪魔して悪いな、マリン。良かったらこの間の続きを聞かせてくれないか?」
「ジェラルドだ」
「えっ、何だって?」
「ジェラルド、もうマリンはいない」
かつてマリンと呼ばれていた男は確かに雰囲気が違っている、少年っぽかった彼は引き締まった男の顔になっていた。
リーフは頷き、質問を続けた。
「そうか、ジェラルド。楽園について君の見解を教えてくれないか?」
「またその話かまあいい。俺が思うに誰かが人間を操る為の実験を楽園でしてたんじゃないかって事さ」
リーフとスカイは目を見開き、同時に聞いてくる。
「何故そうなる?」
「何、実験だと?」
「集められた男達の能力値を測るとか、どの能力の奴がどの程度人を自由に傀儡化出来るかとか、支配し続けられる期間とか、とにかく誰かを支配する事を目的として試してた、そんな感じかな」
「実際あそこにいたリーフはどう感じた?」
「確かに言われて見れば、楽園の存在理由自体がおかしかったし、キュリアスがいる時点で男女の括りも変だしな」
リーフとスカイは顔を見合わせている。
・・・・ふっ、さっきから、こいつら仲良いな・・・・
二人の親密な空気にジェラルドは自然と顔が緩む、微笑ましくなり情報を与えてやる事にした。
「多分だけど金の出所は帝国じゃないかな、流石に皇子があれだけ動けば知らないと云う事は無いだろう、寧ろ帝国が後押ししている可能性すら有る」
「まさか、そんな事が・・・」
「いや、あり得るかもな」
「帝国のお家芸、制圧が使えない皇族が最近は増えているらしい。これまで制圧で支配してきた国が支配から脱却したらどうなると思う?」
リーフとスカイの顔が青ざめ、同時に叫ぶ。
「「 まさか! 」」
やっぱりこいつら仲良いなと思うジェラルドの目の端に、愛しい彼女の姿が見えた。
「おっとジェシカが来たから、ここで失礼するよ、じゃあな」
爆弾を落として去ったジェラルドの姿を見送っていると、店の外で寄り添うマリンとローズが見えた。楽園で生まれたカップルは、楽園にいた時よりも幸せそうでロランは嬉しくなった。
楽園にいた別の女性の暗い顔が頭を過るが、楽園に居た人間が全て不幸になった訳ではないとホッとしたのだ。
楽園から戻って沈みがちだったロランの顔が少し緩んだのを見て、自身の顔も緩んだジャスティンが声を掛ける。
「メイヴィス殿下に報告するか、しかし、ジェラルドは何者なんだろうな、普通の男では無さそうだ」
「ああ、そうだな謎めいている、が、やはり彼と話して正解だったな。しかしキュリアスは今どこに居るんだろうな」
リーフとスカイの二人は仲良く並んで歩き出した。
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