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43話 乗り越えてきて得た力で
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ここは王都城下町のとある区域。ミルフィからの情報提供により、カネフォーラ率いる反乱軍のアジトへの隠された入口が、この区域のどこかにあると分かっている。なので首尾よく指揮下に置くことが出来た騎士たちを使って、辺りの捜索をさせているところだった。
「ねぇ今更なんだけど」
「なに?」
情報提供者兼協力者こと、ミルフィ・クリミアが僕に話しかけてくる。彼女は僕を訪ねてきた当初に何故か着ていたドレスから、この探索へ出る前に動きやすい服装に着替えて僕の横に立っている。
「王太子の名前を利用したのって、そこそこヤバくない……?」
「本当に今更だね。しかも君から提案したことを」
「だって、最初のうちは必死だったけど、冷静に考えるとマズイかなって……」
結構大胆な性格かと思ったけれど、急にこういうことを気にしたりもするんだ。ふむ、待ち時間で少し暇だし、少し遊んでみようかな。
「別に大丈夫だよ」
「本当?」
そう言いつつ僕のことを見つめてくるミルフィは、期待に溢れた目で僕を見つめてくる。
大方、何かあっても僕が庇うなんて台詞を期待しているんだろうけども……。
「ああ、万が一死ぬ時は一緒だからね」
当然答える気はない。
「まぁ、とっても素敵な提案ね……でもアンタと一緒に死ぬなんてごめん被るわ、クソ王子」
「はは、そんなことを言える元気があるなら、まだまだ持ちそうだね」
「ええ、お陰様で心配するが馬鹿馬鹿しくなってきたわ」
露骨に不機嫌になるミルフィの様子が面白くて、もっとからかいたいという気持ちが湧いてくる。もっと何か言おうと口を開きかけたところで、探索に出していた騎士の一人が駆け込んできて、それを止めた。
「エキセルソ殿下、ご命令で探していたそれらしき場所が見つかったとのこと、すぐにご確認をお願いします」
「すぐに行こう」
そう答えながらミルフィには目配せで合図をする。彼女もすぐに頷いてくれたので、僕たちは騎士に案内されるまま、その場所へと向かった。
辿り着いたのは奥まったとある路地裏。本来は壁があるであろう場所に、ぽっかりと入口が開いており、地下へと続く下り階段が見える。
それを確認したミルフィは、すぐさま「間違いないと思う」と僕に耳打ちをしてきた。
思ったよりも早く見つかって良かった。ならば次の指示を騎士たちに出さないとね。
「この入口で間違いなさそうだ!! よってこれより内部の探索を行うので、今方々に散っている騎士たちにも招集を掛けて……」
僕がそこまで言いかけたところで、遠くで何かが爆発するような轟音が響いた。
「っ!?」
それに驚きながらミルフィの顔を見ると、目の合った彼女が「始まってしまった」と険しい顔で呟いた。
「どう、す……!?」
「グォォォォ!!」
またしても言葉を言い切る前に続けて聞こえてきたのは、何かとてつもな生き物の咆哮だった。これは……まさかドラゴンか!?
「もしかしてアイツ、市街地にドラゴンを放ったりしたんじゃないでしょうね……」
「…………そういえば今の時期は丁度、売買のためにドラゴンが連れてこられているから、それに何らかの細工した可能性があるぞ」
「流石、王子殿下お詳しいことで……!!」
ミルフィが半ばやけくそ気味にそう言ってくるが、この状況では流石の僕も悪ふざけする余裕がなくて頭を抱えた。
「クソッ、せっかく隠された入口を見つけたというのに……今起こった爆発の現場と、ドラゴンの対処、それぞれに人員を回す必要があるぞ!?」
「それぞれに……確かにそうよね」
そう言って少しだけ考え込んだミルフィが、僕の方をじっと見ながらおもむろに口を開く。
「ならドラゴンの方に割く人員は、少なくても構わないわ」
「え?」
「この私がなんとかするから」
「……君はいったい何を言ってるんだ?」
ミルフィの言葉が理解できなくて、僕は思わず聞き返す。だってこんな女の子がドラゴンをどうにかするなんて、どう考えてもおかしなことを言っているとしか思えなかったからだ。
すると今度のミルフィは不敵な笑みを浮かべながら、堂々と胸を張って大きな声で言った。
「私は《ダンジョン攻略専攻チーム》のミルフィ・クリミア!! 下手な人間なんかよりも、ドラゴンを始めとする魔物への対処方法への自信があるわ」
「っっ!!」
だ、ダンジョン攻略専攻チーム……それはゲームの主人公というやつを少しでも学園から遠ざけるつもりで、なんとなくぶち込むように誘導した、学園きってのイカれた戦闘集団の名前だった。なんだったら、ここで心が折れて退学でもしてくれたらとまで考えていた。
それをミルフィはこんなに堂々と……誇らしげに……。
「だから私に任せて、アンタはサッサと地下に行きなさい!! でも私に仕切れるはずがないから、騎士たちの再編成と指示だけはキッチリやってよね」
ミルフィ……自分がしたことは当然誉められたことではないが、主人公という存在はどんな逆境や困難にも負けずに、何かを掴み取っていくものなのだと、今の彼女の言動でなんとなく実感させられた。
いや、きっと主人公ではなく、目の前にいるミルフィ・クリミアという少女が強いのかもしれないが…………これに関しては、後で色々と謝らないとな。
「すまない、恩に着る」
「そんな気にしないでよ、私もすぐに追いつくから」
「ああ……必ず来てくれ、ミルフィ・クリミア!!」
「あら誰にモノを言ってるのよ、ミルフィちゃんは最強なんだから当然でしょ!!」
そうして彼女は笑う、真っすぐに眩しいほど自信たっぷりに……。
ああ、信じるよ、他でもない今まで努力を重ねてきたであろう君をね。
だから僕も君に負けないように頑張るとしよう。
……待っていてくれラテーナ、必ず助け出してみせるから。
「ねぇ今更なんだけど」
「なに?」
情報提供者兼協力者こと、ミルフィ・クリミアが僕に話しかけてくる。彼女は僕を訪ねてきた当初に何故か着ていたドレスから、この探索へ出る前に動きやすい服装に着替えて僕の横に立っている。
「王太子の名前を利用したのって、そこそこヤバくない……?」
「本当に今更だね。しかも君から提案したことを」
「だって、最初のうちは必死だったけど、冷静に考えるとマズイかなって……」
結構大胆な性格かと思ったけれど、急にこういうことを気にしたりもするんだ。ふむ、待ち時間で少し暇だし、少し遊んでみようかな。
「別に大丈夫だよ」
「本当?」
そう言いつつ僕のことを見つめてくるミルフィは、期待に溢れた目で僕を見つめてくる。
大方、何かあっても僕が庇うなんて台詞を期待しているんだろうけども……。
「ああ、万が一死ぬ時は一緒だからね」
当然答える気はない。
「まぁ、とっても素敵な提案ね……でもアンタと一緒に死ぬなんてごめん被るわ、クソ王子」
「はは、そんなことを言える元気があるなら、まだまだ持ちそうだね」
「ええ、お陰様で心配するが馬鹿馬鹿しくなってきたわ」
露骨に不機嫌になるミルフィの様子が面白くて、もっとからかいたいという気持ちが湧いてくる。もっと何か言おうと口を開きかけたところで、探索に出していた騎士の一人が駆け込んできて、それを止めた。
「エキセルソ殿下、ご命令で探していたそれらしき場所が見つかったとのこと、すぐにご確認をお願いします」
「すぐに行こう」
そう答えながらミルフィには目配せで合図をする。彼女もすぐに頷いてくれたので、僕たちは騎士に案内されるまま、その場所へと向かった。
辿り着いたのは奥まったとある路地裏。本来は壁があるであろう場所に、ぽっかりと入口が開いており、地下へと続く下り階段が見える。
それを確認したミルフィは、すぐさま「間違いないと思う」と僕に耳打ちをしてきた。
思ったよりも早く見つかって良かった。ならば次の指示を騎士たちに出さないとね。
「この入口で間違いなさそうだ!! よってこれより内部の探索を行うので、今方々に散っている騎士たちにも招集を掛けて……」
僕がそこまで言いかけたところで、遠くで何かが爆発するような轟音が響いた。
「っ!?」
それに驚きながらミルフィの顔を見ると、目の合った彼女が「始まってしまった」と険しい顔で呟いた。
「どう、す……!?」
「グォォォォ!!」
またしても言葉を言い切る前に続けて聞こえてきたのは、何かとてつもな生き物の咆哮だった。これは……まさかドラゴンか!?
「もしかしてアイツ、市街地にドラゴンを放ったりしたんじゃないでしょうね……」
「…………そういえば今の時期は丁度、売買のためにドラゴンが連れてこられているから、それに何らかの細工した可能性があるぞ」
「流石、王子殿下お詳しいことで……!!」
ミルフィが半ばやけくそ気味にそう言ってくるが、この状況では流石の僕も悪ふざけする余裕がなくて頭を抱えた。
「クソッ、せっかく隠された入口を見つけたというのに……今起こった爆発の現場と、ドラゴンの対処、それぞれに人員を回す必要があるぞ!?」
「それぞれに……確かにそうよね」
そう言って少しだけ考え込んだミルフィが、僕の方をじっと見ながらおもむろに口を開く。
「ならドラゴンの方に割く人員は、少なくても構わないわ」
「え?」
「この私がなんとかするから」
「……君はいったい何を言ってるんだ?」
ミルフィの言葉が理解できなくて、僕は思わず聞き返す。だってこんな女の子がドラゴンをどうにかするなんて、どう考えてもおかしなことを言っているとしか思えなかったからだ。
すると今度のミルフィは不敵な笑みを浮かべながら、堂々と胸を張って大きな声で言った。
「私は《ダンジョン攻略専攻チーム》のミルフィ・クリミア!! 下手な人間なんかよりも、ドラゴンを始めとする魔物への対処方法への自信があるわ」
「っっ!!」
だ、ダンジョン攻略専攻チーム……それはゲームの主人公というやつを少しでも学園から遠ざけるつもりで、なんとなくぶち込むように誘導した、学園きってのイカれた戦闘集団の名前だった。なんだったら、ここで心が折れて退学でもしてくれたらとまで考えていた。
それをミルフィはこんなに堂々と……誇らしげに……。
「だから私に任せて、アンタはサッサと地下に行きなさい!! でも私に仕切れるはずがないから、騎士たちの再編成と指示だけはキッチリやってよね」
ミルフィ……自分がしたことは当然誉められたことではないが、主人公という存在はどんな逆境や困難にも負けずに、何かを掴み取っていくものなのだと、今の彼女の言動でなんとなく実感させられた。
いや、きっと主人公ではなく、目の前にいるミルフィ・クリミアという少女が強いのかもしれないが…………これに関しては、後で色々と謝らないとな。
「すまない、恩に着る」
「そんな気にしないでよ、私もすぐに追いつくから」
「ああ……必ず来てくれ、ミルフィ・クリミア!!」
「あら誰にモノを言ってるのよ、ミルフィちゃんは最強なんだから当然でしょ!!」
そうして彼女は笑う、真っすぐに眩しいほど自信たっぷりに……。
ああ、信じるよ、他でもない今まで努力を重ねてきたであろう君をね。
だから僕も君に負けないように頑張るとしよう。
……待っていてくれラテーナ、必ず助け出してみせるから。
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